運転者が運転操作をしないレベル4の自動運転バスが、限られた区間で公道を走り始めている。数年前は実験施設の中が中心だったが、いまは大学都市や道の駅の周辺にも広がり、温泉街ではレベル2の実証も行われている。ただしレベル4は「車内が無人」という意味ではなく、安全確認のために乗務員が同乗する運行もある。
国土交通省によると、運転者を必要としないレベル4のバスなどの実装は2026年3月時点で全国10か所にのぼる。ところが2026年春、その象徴だった路線が相次いで止まった。
日本初のレベル4として知られる福井県永平寺町は2026年4月1日から運行を休止し、中型バスで国内初のレベル4営業運行を実現した茨城県日立市も同じ4月1日から営業運行を休止している。レベル4の実装事例が増える一方で、運行の継続を休止する路線も出てきた。
本記事では、国内の主要な実証・実装の事例と、観光地でどう使われているのかを解説する。
この記事のポイント
- 運転者を必要としないレベル4のバスなどは、2026年3月時点で全国10か所で実装されているが、専用道や施設内、一般路線の一部区間など走行条件を限定した事例が中心だ。
- 「レベル4」は運転者が運転操作をしない水準を指し、車内が無人という意味ではない。
- 現在のレベル4事例は、専用道や施設内など走行条件を絞り込めた場所が中心だ。走行環境を限定できることが、導入を後押しする一因と考えられる。
- 難しいのは技術だけではない。車両やシステムの保守、費用負担、運行体制を続けられるかが実装の壁になる。
- 専用レーンや低速ルートを確保しやすい大型施設などでは導入の条件を整えやすい一方、歩行者や自転車の多さ、季節や天候が運行を難しくする面もある。
自動運転バスの「レベル4」とは何か
自動運転バスを理解するうえで、最初に押さえたいのが「レベル」の意味だ。自動運転は運転操作をどこまで機械が担うかで0から5に分かれる。このうちレベル4は「特定の条件下で運転者が運転操作をしない」水準を指す。
決められたルートや区域など、条件を満たす範囲でシステムが運転を受け持つ。日本では2022年の道路交通法改正で、運転者がいない状態での自動運転を「特定自動運行」として許可制で認める枠組みが作られ、2023年4月に施行された。都道府県公安委員会の許可を受けて、初めて運転者なしの運行ができる。
ここで誤解しやすいのが、レベル4と「車内無人」は同じではないことだ。レベル4は運転者が運転操作をしないという意味であり、安全確認や案内のために乗務員が同乗する運行もある。実際、後で触れる千葉県柏市の例では、レベル4の区間でも運転席に乗務員が座っている。
つまり「レベル4=誰も乗っていないバス」ではない。この記事で見ていくのは、どんな場所で、どんな条件のもとで、機械が運転を受け持つバスが走り始めているか、という現実の姿だ。
実装は全国10か所、目標は100か所
まず、いまどれくらいの場所で走っているのかを数字で見てみる。国土交通省の資料によると、運転者を必要としないレベル4のバスなどの実装は、2026年3月時点で全国10か所とされる。大阪・関西万博の会場内から、永平寺町、松山市、上士幌町、日立市、多気町、塩尻市、羽田、柏市、気仙沼市まで、都市部から地方部まで広がっている。
ここで、本記事での「実証」と「実装」の使い分けを断っておく。期間や区間を区切って試しに走らせる段階を実証、許認可を得てサービスとして運行する段階を便宜的に実装と呼ぶ。ただし政府資料によって用語の範囲は異なり、両者の線引きは必ずしも一律ではない。
実証の裾野は広い一方、そこから継続的なサービスへ抜け出せた例はまだ限られる、というのが現状だ。政府はこれを大きく増やそうとしている。目標は2027年度までに無人自動運転移動サービスを100か所以上、2030年度に自動運転サービスの車両を1万台。
2026年3月には、デジタルライフラインの整備などを通じて2027年度目途の事業化を目指す「先行的事業化地域」として、横浜市や神戸市、日立市など13地域が選ばれた。10か所の現在地から100か所へ、という目標との開きは大きい。なぜ政府が急ぐのか。
背景の一つが、バスの運転者不足だ。日本バス協会の推計では、2030年に約3万6千人(必要数の約3割)の運転者が不足するとされる。人手が足りないなかで機械に運転を任せる動機は強い。
自動運転バスは「新しい観光の目玉」である前に、まず「地域の足をどう守るか」という課題の解決策として期待されている面がある。
走行環境をどこまで単純にできるか
各地の事例を並べると、現在レベル4に届いているのは、専用道や施設内など走行環境を絞り込めた場所が多いことに気づく。歩行者や対向車の動きが読みにくい道では、機械の運転は難しくなる。こうした事例からは、走る空間を限定できるほど運行のハードルが下がりやすい傾向がうかがえる。
もっとも分かりやすいのが、専用の道を用意する型だ。福井県永平寺町は、京福電気鉄道の廃線跡を転用した町道「永平寺参ろーど」(自転車歩行者専用道路)の約2キロで、7人乗りの小型カートを走らせてきた。最高速度は時速12キロと遅く、対向車も入ってこない。
こうした走行環境に加え、車両認可や特定自動運行許可、遠隔監視の体制を整えたうえで、永平寺町は2023年5月、全国で初めて運転者なしのレベル4運行にこぎつけた。運賃は大人100円、未就学児は無料という地域の足だ。同じように走行空間を絞った例は、ほかにもある。
北海道上士幌町は交通ターミナルと認定こども園を結ぶ約600メートルの区間で、東京・羽田イノベーションシティは施設をつなぐ約800メートルの循環ルートでレベル4を実現した。いずれもハンドルのない小型車両を使い、短い距離を低速で走る。走る空間が短く単純な区間ほど、運転者なしの運行にこぎつけやすい傾向がうかがえる。
施設の中も条件を整えやすい。三重県多気町の大型商業リゾート「VISON」では、BOLDLYがエストニア製の小型EV「MiCa」を走らせ、2024年10月に車両認可、11月に特定自動運行許可を得て、2025年2月末までレベル2・4の実証運行を行った(期間限定の実証で、現在の継続運行ではない)。
時速20キロで、あらかじめ決めたルートを走った。ただし施設内といっても専用レーンだけでなく、一般の車や歩行者、自転車が混じる道も含み、「私有地だから単純」と一括りにはできない。一方、条件を絞りきれない一般道では、レベル4はまだ「一部区間」にとどまる。
千葉県柏市の柏の葉では、2026年1月に東武バスセントラルと先進モビリティが一般道でのレベル4営業運行を始めたが、レベル4で走るのは運行ルートのうち700メートルの区間にとどまり、残りは手動運転だ。国産の中型バスが最高時速40キロで走り、運転席には乗務員が座る。
専用空間から混在交通の一般道へレベル4が広がり始めているものの、その範囲はまだ限定的だ。
「達成」と「継続」は別の問題だ
| 達成(走らせる) | 継続(走り続ける) | |
|---|---|---|
| 走らせられるか | テーマ | 走り続けられるか |
| 走行環境の単純化と特定自動運行の許可 | カギ | 保守・車両更新・費用の負担と運行体制 |
| 永平寺・日立でレベル4を達成 | 実例 | 両路線とも2026年春に運行を休止 |
| 専用道での認識の限界・接触事故(永平寺) | トラブル | 保証・保守期間の満了(永平寺)/日立は理由非公表 |
自動運転バスの現実を語るうえで避けて通れないのが、「走らせる」と「走り続ける」の間にある溝だ。ここに2026年春の出来事が重なる。日本初のレベル4として注目された永平寺町は、2026年4月1日から当面の運休に入った。
理由は、車両やシステムの保証・保守を受けられる期間が2025年度末で満了したことだ。技術で「日本初」に届いた路線でも、車両やシステムの保守を続けられなければ運行が止まりうることを示した。同じ時期、中型バスで国内初のレベル4営業運行を実現した日立市の「ひたちBRT」も動きを止めた。
2025年2月に、BRT専用道約6.1キロという国内最長のレベル4区間で通常運賃の営業運行を始めた先進例だったが、こちらも2026年4月1日から営業運行を休止している(日立市は休止理由を公表していない)。看板とされた2つのレベル4が、同じ春に相次いで休止した。継続の難しさは、レベル4に限った話でもない。
自治体として国内で初めて公道での定常運行を始めた茨城県境町は、フランス製「NAVYA ARMA」などを使い、2020年11月から無料で走らせてきた。乗車定員11人以上の車両を、期間を限定せず大半の区間で自動走行させるのは国内初とされる(BOLDLY調べ。自動運転サービス自体は2019年の秋田県上小阿仁村が全国初)。
その境町も、2026年時点では車両のメンテナンスのため自動運転バスを休止し、普通車のハイエースなどで代替運行している。2025年の大阪・関西万博でも、同じ課題が表れた。
会場アクセスの舞洲パーク&ライドでは、一般道を走る大型EVバスとして国内初のレベル4認可(乗務員が同乗する形)を受けた自動運転バスが運行したが、4月末に待機場で停車していた車両が動き出して擁壁に接触する事故を起こし、翌日から自動運転を停止した。
原因は自動運転システムの設定の誤りとされ、けが人はなかったものの、運行の再開は対策を講じた約2か月後の6月末になった。
なお、万博のEVバスはその後、車両側の不具合が相次いだことから、大阪メトロは導入した190台すべての使用中止を決め、2026年7月に公表した調査報告書で「安全リスクへの認識が不十分だった」と総括している。
これは自動運転の技術そのものというより、車両の品質と大量導入の判断をめぐる問題だが、走らせ続けることの難しさを別の角度から示す出来事だった。自動運転バスの実装で問われるのは、最初の走行にこぎ着ける技術力だけではない。車両やシステムの保守と更新、その費用や運行体制を誰が担い続けるかも、継続を左右する要素になる。
実証の華やかさと継続の地味な難しさは、分けて見る必要がある。
観光地での使われ方は「目玉」か「足」か
では観光の文脈では、自動運転バスはどう使われているのか。大きく二つの顔がある。一つは移動手段としての「足」、もう一つは乗ること自体が体験になる「目玉」だ。
温泉地はその両方が重なる場所だ。札幌市は2025年10月21日から11月3日まで、定山渓温泉で自動運転バスの実証運行を行った。小型EV「MiCa」をオペレーター同乗のレベル2・時速20キロ・無料で走らせ、温泉街の周遊に使うと同時に、「自動運転バスそのものを観光コンテンツにする」ことを目的に掲げた。
もっとも、車両のメンテナンスのため、10月22日から11月3日まで偶数便が運休した。長野県軽井沢町でも2025年6月末に、軽井沢駅北口と旧軽井沢ロータリーを結ぶ区間でレベル2の実証が行われている。観光地へのアクセスを担う「足」としての使い方もある。
日立市のひたちBRTは、道の駅「日立おさかなセンター」とJR常陸多賀駅を結ぶ約8.6キロを走り、うち専用道約6.1キロがレベル4だった。道の駅という観光拠点への足を、営業運行として提供していた点で先進的だった(前述のとおり2026年4月から休止中)。商業リゾートのVISONは、観光施設が自ら自動運転を導入した例だ。
広い敷地に専用レーンを設けつつ、一般車や歩行者と混じる区間も含めて小型EVを走らせた。大型施設のように専用レーンや低速ルートを確保しやすい観光拠点は、導入の条件を整えやすい場合がある。ただし繁忙期の歩行者の多さ、季節や天候による変動は、むしろ運行を難しくする方向に働く。
観光地だから簡単、とは言えない。
残る課題はコスト・天候・混在交通
自動運転バスが広がるうえでの壁は、いくつかに整理できる。第一に費用だ。車両やセンサー、遠隔監視の仕組みには相応の投資が要り、保守や更新の負担も続く。
永平寺町が保証・保守期間の満了で運休したことは、この負担を地域が抱え続けられるかという問いを示した。第二に走行環境だ。歩行者や自転車、対向車が入り混じる道では、機械の判断は一気に難しくなる。
永平寺町では2023年10月29日、待避所付近で駐輪していた自転車と車両が接触する事故が起きた(乗客・自転車ともにけがはなかった)。前方カメラが駐輪していた自転車を認識できず、ミリ波レーダーなどは物体を検知していたものの、それらの情報を総合して停止する判断に至らなかった。その後、複合的な対策を経て運行を再開した。
専用道であっても、駐輪した自転車などを正確に認識して止まる判断につなげる難しさを示す出来事だった。第三に費用負担と体制だ。車両やシステムの保守・更新を誰が負担し続けるかは、継続運行の検討課題になる。
国は事業化の後押しを強めているが、公的な支援がなくても回る形をどう作るかは、これからの課題として残る。技術の確立と並んで、費用・走行環境・保守体制の条件が、実装が広がるスピードを左右する要素になっている。
あわせて読む 自動運転バスが担う二次交通そのものの解説と、観光交通の全体像は、別の記事で扱っている。
自動運転バスは「未来の観光体験」として注目されるが、課題は運行を続けられるかだ。日本初のレベル4だった永平寺町は保証・保守期間の満了で休止し、日立市も理由を公表しないまま休止した。観光地に必要なのは、目玉として導入することではない。
走行環境や保守費用、混雑・天候への対応まで含め、地域の足として続けられる仕組みをつくることだ。問われているのは「走らせたか」ではなく、「走り続けられるか」である。
よくある質問
出典
- 国土交通省・RoAD to the L4「自動運転の普及・拡大に向けた取組み(2026年3月5日)」
- 永平寺町「レベル4自動運転「ZEN drive」」
- 経済産業省「一般道における中型バスでのレベル4自動運転による運行を開始します(柏市・2026年1月13日)」
- 日立市「ひたちBRTで自動運転バスの営業運行がスタートします(2026年4月1日より休止)」
- 日本自動車会議所(日本バス協会の運転者不足推計を引用)「〈レベル4自動運転バス〉実証は広がるが本格営業運行には高い壁」
- 大阪・関西万博公式「舞洲万博P&Rシャトルバス(自動運転車両)の事故及び一時運行の取りやめについて(2025年4月29日)」




