ビザ発行手数料5倍で1,200億円 政府が進める「入口の負担増」

Photo: Tan / Unsplash
  • URLをコピーしました!
目次

外国人政策の一環で査証手数料を見直し

政府は2026年度から、訪日外国人に発給する査証(ビザ)の発行手数料を現行の5倍に引き上げる方針だ。2025年12月26日に閣議決定した2026年度当初予算案に盛り込んだ。

1回限り入国できる一次ビザは、現行の3,000円程度から1万5,000円程度に引き上げる。複数回入国できる数次ビザも、6,000円程度から3万円程度にする方向で検討している。

査証手数料は一律で5倍に。一次ビザ3,000円→1万5,000円、数次ビザ6,000円→3万円

手数料を負担するのは、日本に渡航するためにビザを取得する外国人だ。財務省の予算資料によると、この引き上げによる査証手数料の増収は、前年度当初比で約1,200億円にのぼる見込みだ。

1978年以降初の改定、背景に「G7最安」水準

日本の一次査証の標準手数料は、記録が残る1978年以降、据え置かれてきた。今回が実現すれば約48年ぶりの改定となる。

背景にあるのは、訪日外国人(インバウンド)の急増と、主要国に比べて低い手数料水準だ。米国や英国の短期滞在ビザは日本円で2万円を超え、現行3,000円の日本は主要7か国(G7)で最も安い部類にある。

政府はこの引き上げを外国人施策の財源確保策と位置づけ、査証分の増収は在外公館の領事活動や外交体制の強化に充てるとしている。同じ財務省資料によると、混雑対策などのオーバーツーリズム対策の財源は、主に同時に引き上げる出国税が担う。

ただし全員が対象になるわけではない。査証取得が必要なのは、中国・フィリピン・ベトナム・インド・ロシアなどからの渡航者だ。訪日客数で上位の韓国・台湾・香港や欧米主要国はビザ免除で、今回の値上げの直接の対象外となる。施行時期は法令成立後に政令で定められるため、本稿時点で確定していない。2026年度内の施行が見込まれている。

影響は中国に集中、消費押し下げは「軽微」

5倍という数字のインパクトに対し、インバウンド全体への影響は限定的との見方が出ている

野村證券は、手数料が約2万3,000円に上がった場合の影響を試算している。これはG7並みの水準を訪日客数で加重平均した、民間の想定値だ。それによると、年間の訪日客数は約1.7%(約63万人)、1人当たりの旅行支出額は約2.0%押し下げられる。客数と単価を掛け合わせたインバウンド消費額の減少は約3.7%、額にして約2,840億円と見込む。それでも年間GDPへの影響は約0.05%にとどまり、同社は影響を「軽微」と評価している。減少分の大半は、対象客の多い中国からの旅行者が占める形だ。

ビザ手数料の引き上げは、訪日客の負担増をめぐる一連の動きの一つでもある。政府は2026年7月から出国税(国際観光旅客税)を1,000円から3,000円へ引き上げることが決まっており、短期滞在ビザの免除国を対象にした電子渡航認証制度(日本版ESTA、通称JESTA)の2028年度導入も検討している。入口と出口の双方で、訪日にかかるコストは段階的に上がっていく。

あわせて読む 出国税の3倍化の詳細は、こちらで詳しく解説している。

出国税が7月に3倍へ 1,300億円の使い道と海外旅行への影響
観光ビジネスの視点

「5倍」という見出しは強烈だが、対象は要ビザ国に限られ、訪日全体への影響は試算上「軽微」だ。注目すべきは、約1,200億円という増収の使い道である。

政府の予算資料を見ると、混雑対策などのオーバーツーリズム対策の財源は出国税が担う。一方でビザ手数料の増収が向かう先は在外公館の領事活動や外交体制の強化で、観光の現場に直接戻るわけではない

「インバウンド政策の一環」と語られがちだが、ビザ値上げと観光振興は財布が別だ。観光業界が見ておくべきは、訪日客から得た負担増がどこへ向かうのかという点である。

<出典>

NEWS LETTER編集部が選ぶ注目記事をお届け限定イベントや独自レポートも先行案内ニュースレター登録
  • URLをコピーしました!
目次