日本人の海外旅行、なお2019年の7割 戻らないのは「回数」だった

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消費額は過去最高、なのに旅行回数は増えない

外国人入国者数が初めて年間4,000万人を超えた2025年、日本人自身の旅行は様相が異なっていた。出入国在留管理庁の確定値によると、2025年の日本人出国者数は1,473万人だ。

前年から13.3%増えたものの、コロナ前のピークだった2019年の2,008万人と比べると、2025年の出国者数はなお2019年の約73%にとどまる。回復はしているが、戻りきってはいない。

足元の月次でも傾向は同じだ。日本政府観光局(JNTO)の推計では、2026年3月の出国者数は約152万人で前年同月比6.7%増だった。プラス成長は続いているが、絶対水準は依然として低いままだ。

では国内旅行は堅調かというと、ここにも見落とされがちな断層がある。観光庁の確報によると、2025年の日本人国内旅行消費額は26兆7,845億円で、2019年比22.1%増と暦年として過去最高を更新した。

ところが、旅行に出かけた延べ人数は5億5,313万人で、2019年の5億8,710万人と比べて約94%とコロナ前に届いていない。金額は最高、回数は未達だ。海外も国内も、日本人が「出かける回数」は2019年に戻っていない。

ただし、海外と国内では減り方の理由が違う。順に見ていく。

2019年を100とした2025年の水準。日本人出国者数73、国内延べ旅行者数94に対し、国内旅行消費額は122
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指標(2025年)2019年=100
日本人出国者数73
国内延べ旅行者数(回数)94
国内旅行消費額122

出国=出入国在留管理庁、国内=観光庁 旅行・観光消費動向調査(2025年確報)。2019年実績を100とした指数(編集部算出)。

海外旅行を遠ざける、二つの壁

海外旅行の回復を阻む大きな要因の一つが為替だ。ドル円相場は2019年の平均約109円から、2026年5月には約158円まで円安が進んだ。

1ドルを支払うのに必要な円は5年でおよそ45%増えた計算で、現地の物価上昇も重なれば、海外旅行の体感コストは数年前の比ではない。

実際、JTB総合研究所の調査(2024年3月実施)でも、海外旅行に行くきっかけとして挙げられた条件の上位は「円高が進めば」「休みが取れれば」だった。裏を返せば、円安が続く限り海外旅行の金銭的なハードルは下がらない。

同研究所の意識調査では、年内に海外旅行を計画していた人は全体のわずか8.7%にとどまった。

その入口であるパスポートの普及も鈍いままだ。外務省の旅券統計によると、2025年の一般旅券の発行数は約360万冊で前年比5.4%減だった。

保有率は2025年末時点で約17.8%と前年の16.8%から小幅に上がったものの、国民のおよそ6人に1人にとどまる。海外へ出る「装備」を持つ人の裾野が大きく広がっていないことも、出国者数が伸びにくい背景にある。

国内が減った理由は、円安ではなく人口減と高齢化

一方、国内旅行の減少は円安では説明できない。鍵は人口構成の変化だ。総務省の人口推計・国勢調査によると、日本の総人口は2019年の約1億2,617万人から2025年には約1億2,305万人へと、およそ2.5%減った。

延べ旅行者数の減少幅(2019年比5.8%減)のうち、人口減で説明できるのはおよそ4割にすぎない。残りの大半は、旅行から遠い世代が増えたことによるものだ。

残りの大半を生んでいるのが高齢化だ。観光庁の令和7年版観光白書によると、観光目的の国内宿泊旅行の経験率(2024年は速報値)は若年層ほど高く、20代以下は62.8%から64.0%へと堅調に推移している。

ところが70代以上は38.6%から30.7%へ下がり、観光目的の宿泊旅行に限ると2024年は70代以上の約7割が出かけていなかった。経験率の低い高齢層が人口比で増えれば、若者が元気でも市場全体は押し下げられる。

白書はこれを「経験率の低い高齢層の増加が国内旅行市場全体を押し下げ」と表現している。

国内宿泊旅行の経験率の年代別推移。20代以下は62.8%から64.0%、70代以上は38.6%から30.7%に低下
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年代2014年2024年
20代以下62.8%64.0%
30〜40代55.1%54.1%
50〜60代48.8%47.3%
70代以上38.6%30.7%

観光・レクリエーション目的。2024年は速報値。

行かなかった理由も年代で分かれる。白書の調査では、20〜60代は「休暇がとれない」「家計の制約」を、70代以上は「健康上の理由」を主に挙げた。結果として国内旅行は、行かない層と何度も行く層に分かれる「二極化」が進んでいる。

目的別に見ると、もう一つの押し下げ要因が浮かぶ。2014年を100とした指数では、宿泊をともなう観光旅行が109.6まで伸びる一方、国内旅行の約14%を占める出張は回復が鈍く、日帰り出張は2014年比でほぼ半減している

オンライン会議の定着など働き方の変化が、ビジネス目的の移動を抑えている可能性がある。海外は円安というブレーキ、国内は人口減と高齢化、そして出張需要の地盤沈下。同じ「観光離れ」でも、効いている力はまるで違う。

訪日に沸く裏で、政府も海外旅行の回復へ

それでも消費額が過去最高なのは、1回あたりの単価が上がったからだ。2025年の国内旅行の単価(交通費や現地消費も含む1人1回当たりの旅行支出)は4万8,424円で過去最高、宿泊をともなう旅行では1回7万2,412円に達した。

あわせて読む 国内旅行の単価上昇の内訳は、こちらで詳しく解説している。

国内旅行消費は5.9兆円・4.8%増 伸びの主役は人数でなく単価

この単価には物価上昇分も映っているが、延べ宿泊者数(人泊。回数を示す延べ旅行者数とは別の指標だ)は2024年時点ですでに2019年を上回っており、少なくなった旅行機会に、これまで以上のお金と日数が注がれている。

その一方で、日本人の旅行は量として2019年に戻っていない。2025年の国内総旅行消費37.6兆円のうち、訪日外国人による消費は9.5兆円と全体の約4分の1まで拡大した。

あわせて読む 訪日外国人による消費の内訳は、こちらで詳しく解説している。

訪日消費1〜3月2.3兆円 中国半減で台湾が首位に

訪日需要が伸びる裏で、日本人の出国者数も国内延べ旅行者数も2019年の水準には届いていない。観光立国がうたう「双方向の交流」は、人の流れで見ればなお訪日側に大きく傾いているのが実情だ。

政府も動き始めている。2026年3月に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画は、訪日6,000万人・消費15兆円を掲げる一方で、「国内交流・アウトバウンド拡大」を新たな柱に据えた。

あわせて読む 第5次観光立国推進基本計画の全体像は、こちらで詳しく解説している。

日本の象徴・富士山。観光立国推進基本計画の解説記事のイメージ 観光立国推進基本計画とは?訪日6000万人・消費額15兆円に向けた国の観光戦略

日本人の海外旅行者数を過去最高(2,008万人)超えとする目標を初めて設定し、パスポート手数料の引下げなどの施策も盛り込んでいる。インバウンド一辺倒から、日本人の旅行需要をどう取り戻すかへと、政策の視線も動き始めている。

観光ビジネスの視点

「日本人の観光離れ」を需要の消滅と読むと、打ち手を誤る。2025年の数字が示すのは、旅行が「回数を増やす消費」から「一回に厚く払う消費」へと質を変えつつある転換だ。

海外は円安、国内は人口減と高齢化が重なり、出国者数も延べ旅行者数も短期に2019年水準へ戻すのは容易ではない、と編集部はみている。だとすれば旅行業・ホテル・DMOが賭けるべきは、量の回復ではなく単価と滞在価値の設計だ。

経験率が堅調な若年層を深く取り込み、70代以上の「行かない7割」には健康や同行の不安を外す商品を用意する。回数が戻らない前提に立った品ぞろえへの組み替えこそ、当面の現実解になる。

<出典>

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