首位が中国から台湾へ交代
観光庁が発表した2026年1〜3月期のインバウンド消費動向調査で、訪日外国人の旅行消費額は2兆3,378億円(前年同期比2.5%増)となった。総額は伸びたが、中身は大きく入れ替わっている。
国・地域別で最も多かったのは台湾の3,884億円(構成比16.6%、22.5%増)だった。台湾が四半期の消費額で中国・韓国を抜いて首位に立つのは、比較可能な統計の範囲では初めてとみられる。次いで韓国が3,182億円(13.6%、12.7%増)、中国が2,715億円(11.6%)、米国が2,592億円(11.1%、16.6%増)と続いた。
長く首位を占めてきた中国は、消費額が前年同期から半減した。1年前の2025年同期は5,478億円で全体の24.0%を占めていたが、今期は11.6%までシェアが下がった。わずか1年でインバウンド消費の構図が大きく変わった格好だ。

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| 国・地域 | 2025年1-3月期 | 2026年1-3月期 |
|---|---|---|
| 台湾 | 3,171 | 3,884 |
| 韓国 | 2,823 | 3,182 |
| 中国 | 5,478 | 2,715 |
| 米国 | 2,223 | 2,592 |
| 香港 | 1,535 | 1,482 |
| オーストラリア | 1,151 | 1,389 |
中国の落ち込みは、消費単価ではなく人数の急減によるものだ。1〜3月期の中国の訪日客数は104.5万人(50.3%減)と半分になった。1人当たりの旅行支出は25万9千円とむしろ微増しており、来た人はよく使う一方で、そもそも来る人が大きく減ったことがわかる。人数が落ち込んだ背景には、2025年11月に中国政府が出した日本への渡航自粛要請がある。
この流れは速報後も続いている。日本政府観光局(JNTO)によると4月の訪日客数は369万人で、2026年の単月としては最高だったが、前年同月比では5.5%減だった。中国市場の落ち込みに加え、欧州ではイースター休暇の時期のずれも影響したとみられ、市場構成の変化が続いている。
あわせて読む 4月の訪日客数の詳細は、こちらで詳しく解説している。
訪日369万人・5.5%減は中国と期ずれ 9市場で4月の過去最高
穴を埋めたのは単価と9市場
中国がこれだけ減っても総額が前年を上回ったのは、ほかの市場がそろって伸びたためだ。1〜3月期はベトナムが71.3%増、スペインが64.0%増、ドイツが59.6%増、英国が46.9%増と、東南アジアと欧州が大きく伸長した。JNTOの4月のデータでも、韓国・台湾・フランスなど9市場が4月として過去最高を更新している。
注目したいのは1人当たりの単価だ。全体の旅行支出は22万1千円とほぼ横ばいだったが、フランスは40万8千円、オーストラリアは40万4千円、ドイツは39万9千円と、欧米豪の旅行者は全体平均を大きく上回る。首位の台湾(19万5千円)や最多客数の韓国(10万4千円)が人数で稼ぐ市場であるのに対し、欧米豪は滞在が長く宿泊や飲食にお金を落とすため、人数が少なくても単価で消費額を押し上げる。同じ1人でも、韓国と欧米豪では消費額に4倍近い開きがある。

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| 市場 | 1人当たり旅行支出 |
|---|---|
| フランス | 40.8万円 |
| オーストラリア | 40.4万円 |
| ドイツ | 39.9万円 |
| 英国 | 39.9万円 |
| 米国 | 32.4万円 |
| 中国 | 25.9万円 |
| 香港 | 23.1万円 |
| タイ | 22.6万円 |
| 台湾 | 19.5万円 |
| 韓国 | 10.4万円 |
費目の構成も変わりつつある。買物代のシェアは前年同期の29.4%から25.2%へ下がり、代わりに宿泊費が33.5%から36.7%へ上がった。いわゆる「爆買い」中心から、宿泊や滞在へ支出が移る傾向が、数字の上でも読み取れる。
中国半減の中身が重要だ。1人当たり支出は25万9千円とむしろ増えており、減ったのは「来たい人」ではなく「来られる人」。需要が消えたのではなく政治が蛇口を絞っているためで、自粛要請が解ければ数字は急回復するとみられる。
本当の分岐はその時だ。戻る中国需要をかつての24%依存のまま受けるのか、今期育った台湾・欧米豪の柱の上に上乗せするのか。いまの分散はその準備期間である。
出典
- 観光庁「インバウンド消費動向調査 2026年1-3月期(1次速報)」
- 観光庁「インバウンド消費動向調査2026年1-3月期(1次速報)の結果について」
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年4月推計値)」
- 日本総合研究所「日中関係が本格悪化なら訪日消費額は3年で2.3兆円減少も」


