アジア太平洋の旅行者、半数がAIで行き先探し
国際的な決済大手のVisaは2026年6月16日、旅行の意向を探る旗艦調査「2026年版グローバル・トラベル・インテンションズ(GTI)」の主要結果を公表した。
調査は世界47,000人超、うちアジア太平洋地域の17,000人超を対象に実施され、20年以上続く同社の看板調査の最新版にあたる。
調査に回答したアジア太平洋の旅行者のほぼ半数、49%が旅行先やアイデアを探す際にAIツールを使っている。これはAI活用のなかで最も多い用途だ。
世界情勢が揺れるなかでも、この地域の旅行者は旅行を減らすのではなく、より計画的・実利的に動いている、というのがVisaの見立てだ。
AIは「旅マエの下調べ」の主役になりつつある
GTI調査によると、AIの用途は旅行先探しにとどまらない。旅行レビューの収集・整理に41%、現地ツアーや体験を見つけるために35%が活用している(用途は複数回答)。
旅行者は出発前に、宿泊や保険、ビザ要件、現地の最新情勢まで、さまざまな要素を「事前にチェック」する傾向を強めている。AIは旅行サイトやSNSと並ぶ情報収集チャネルとして定着しつつある。
つまり、旅行者が日本を含む目的地を選び、何をするかを検討する最初の接点に、AIが本格的に入り込み始めている。
決済はデジタルが前提、消費は現地で決まる
支払い面でも準備は周到だ。旅行前のチェック項目では、決済のセキュリティを重視する人が33%、カードが使えるかどうかを気にする人が27%にのぼる。
実際、アジア太平洋の旅行者の73%がカードまたはモバイルウォレットを旅行に携行しており、デジタル決済はもはや旅の前提になっている。
一方で、旅行の中身はすべてを事前に固めるわけではない。事前予約の割合は宿泊が79%、体験が51%だ。これに対し、飲食の72%、交通手段の65%は、現地に到着してから決めている。
必須のものは早めに押さえつつ、現地での偶然や気分に合わせて柔軟に動く。「旅マエはAIで精緻に、旅ナカは柔軟に」という使い分けが、この地域の新しい行動様式として浮かび上がる。

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| 項目 | 事前に予約 | 現地で決定 |
|---|---|---|
| 宿泊 | 79% | 21% |
| 体験 | 51% | 49% |
| 交通 | 35% | 65% |
| 飲食 | 28% | 72% |
対象=アジア太平洋の調査回答者。宿泊・体験は事前予約率、飲食・交通は現地決定率が公表値で、対となる値は100%からの補数。
日本はアジアの受け皿、決済対応は道半ば
この調査は日本にとって他人事ではない。アジア太平洋の旅行者が直近で実際に訪れた旅行先では、日本が最多の19%(ほぼ5人に1人)だった。今後12か月に訪問を計画する旅行先でも28%が日本を挙げ、いずれも域内トップだ。
2025年の訪日外客数は4,268万人と過去最高を更新し、旅行消費額(確報)も9兆4,549億円と初めて9兆円を超えた。アジアの旅行需要の「慣れ親しんだ行き先」として、日本は選ばれ続けている。
ところが、その受け入れ側の足元を見ると課題が残る。日本国内のキャッシュレス決済比率は2025年で58.0%まで上昇し、「2025年までに4割程度」という政府目標はすでに達成した。政府は次の目標として2030年までに65%、将来的に80%を掲げており、決済のデジタル化はなお途上だ。
AIで下調べを済ませた旅行者が、到着後にその場で飲食や体験、移動を決め、スマートに支払おうとしたとき、現金しか使えない店や施設では、その場の消費を取りこぼす可能性がある。
あわせて読む AIが予約を担う動きと、観光DXの全体像は、それぞれこちらで詳しく解説している。
Visaの調査が映すのは、旅行者が「旅マエ」と「旅ナカ」で行動を使い分けている事実だ。出発前はAIを使って情報を精緻に詰め、到着後は飲食も交通も体験もその場で柔軟に決める。日本の受け入れ側に突きつけられる宿題は二つある。一つはAIの検索・推薦に正しく拾われる情報整備、もう一つは到着後に発生する予約と支払いをその瞬間に取りこぼさないキャッシュレス対応だ。「選ばれる入口」と「使われる出口」の両輪をそろえて初めて、域内最大級の旅行需要を消費につなげられる。
<出典>
- 「Asia Pacific Travellers Seek Familiarity, Practicality, Flexibility Amid Shifting Global Dynamics: Visa Report」(Visa Worldwide/PR Newswire)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2025年12月推計値)」
- 観光庁「2025年訪日外国人旅行消費額(確報)」
- 経済産業省「2025年のキャッシュレス決済比率を算出した」




