旅行サブスクとは 「使い放題」ではなく「積立・利用枠型」が主流

旅の道具を俯瞰で並べた木製デスク。ノートパソコンに地図、麦わら帽子、カメラ、地球儀、コーヒーが置かれ、旅行サブスクで旅を計画するイメージ
Photo: Getty Images / Unsplash
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旅行サブスクとは、月額など定額の継続課金で宿泊・住まい・移動を利用できる旅行サービスの総称だ。「使い放題」のイメージで語られがちだが、実際の多くはコインやチケットを積み立てて使う「積立・ポイント型」である。会員数約13万人のHafHも2025年6月に「つみたて旅行サービス」への刷新を発表し、この構造を鮮明にした。住まい型のADDress、宿泊定額型のTsugiTsugiのように続くサービスがある一方、LACは月額プランを終え、航空定額もANAは実証止まり、JALはHafH内のベータ版にとどまる。主要サービスの料金・条件を比較しながら、続くモデル・止まったモデルの分かれ目を整理する。

この記事のポイント

  • 旅行サブスクは月額など定額課金で宿泊や移動を利用できるサービスの総称だが、実態の多くは使い放題でなく積立・ポイント型だ。
  • HafHは2025年6月に「つみたて旅行サービス」への刷新を発表し、同年8月からコイン積立制の新料金体系を開始した。
  • 現行の主要サービスは住まい型のADDress、宿泊定額型のTsugiTsugiとHafHで、料金・利用条件はそれぞれ異なる。
  • LACは月額プランを終了し、航空定額もANAは実証止まり、JALは限定運用にとどまるなど、続くモデルと止まったモデルが分かれつつある。
  • 海外でも動きがあり、米国の「Inspirato Pass」やAirAsia MOVEの「ASEAN Explorer Pass」が代表例だ。
目次

旅行サブスクとは何か

旅行サブスクとは、月額など定額の継続課金によって、宿泊・移動・多拠点滞在などを利用できる旅行サービスの総称だ。その都度代金を支払う一般的な旅行と異なり、月額料金に応じて利用枠やポイント、チケットなどを保有する仕組みを持つ点が特徴になる。

旅行サブスクは「定額=使い放題」と語られることがあるが、主要サービスを見ると、無制限利用ではなく、コイン・ポイント・チケットなどの利用枠を消費する仕組みが多い。HafHも2025年に「つみたて旅行サービス」へとコンセプトを刷新しており、この構造がより鮮明になっている。

旅行サブスクは「積立型」へ動いた

KabuK Styleが運営するHafHは、2025年6月24日に「旅のサブスク」から「つみたて旅行サービス」へのコンセプト刷新を発表し、同年8月1日から新料金体系とウォレット機能の提供を開始した。新料金体系は「積立コイン数×32円+メンバーシップ料金200円」で、月々の支払いがそのままコインの積立額に連動する仕組みだ。

積立を後押しする仕掛けもある。会員ランクに応じてコイン残高へ年率ボーナスが付与され、最上位ランクではボーナス率が年率最大12%に達する。積立が続くほど得になる設計は、旅行サブスクを「使い放題の権利」ではなく、将来の旅行に使う利用枠を計画的にためるサービスとして位置づけ直す動きだと言える。

利用者から先に代金を預かる設計は、資金決済法の前払式支払手段に触れうる領域でもある。同法は対価を得て発行され代価の弁済に使えるものを前払式支払手段と定め(第3条)、発行者とその密接関係者からの購入にしか使えない自家型と、それ以外の第三者型に分ける。第三者型の発行業務は内閣総理大臣の登録を受けた法人でなければ行えない(第7条)。自家型でも、基準日(毎年3月31日と9月30日)の未使用残高が政令の基準額1,000万円(施行令第6条)を初めて超えた時点で届出が必要になり(第5条)、以後は基準日未使用残高の2分の1以上を発行保証金として供託する義務が生じる(第14条第1項)。ただし発行の日から6か月以内に使わなければならないものは適用除外で(第4条第2号・施行令第4条第2項)、有効期限の置き方が規制の掛かり方を左右する。積立型を設計するなら、コインやウォレットがこの枠組みに入るかどうかを先に確かめておきたい。

住まい型から鉄道型まで、4つの定額モデル

本稿では、旅行サブスクを便宜上、主に4つのモデルに分けて整理する。住まい型・宿泊定額型は現在も続く一方、航空定額型は実証・限定運用にとどまり、鉄道の「キュンパス」は月額でなく買い切り型だ。

旅行サブスクは4つのモデルに分かれる
住まい・宿泊・航空・鉄道の類型と代表サービス(編集部による便宜的な分類)
住まい・多拠点居住型
(ADDress)
継続中
国内外の家に定額で滞在できる「住まいのサブスク」。
宿泊定額型
(TsugiTsugi・HafH)
継続中
全国の宿泊施設に定額で1泊単位、またはコイン積立で利用する。
航空定額型
(ANA・JAL)
実証・限定運用
ANAは2020年に実証。JALは2023年からHafH内の予約ベータ版へ移行し、限定的に継続している。
鉄道・移動定額型
(JR東日本「キュンパス」)
継続中
平日限定の乗り放題きっぷ。月額課金でなく期間限定の買い切り型商品で、他の3類型とは仕組みが異なる。
出典:ADDress公式、TsugiTsugi公式、KabuK Style公式(PR TIMES)、ANAホールディングス公式、JAL公式、JR東日本公式をもとに編集部作成

第一は住まい・多拠点居住型で、代表格はADDressだ。国内外の家に定額で滞在できる「住まいのサブスク」を自称している。

第二は宿泊定額型で、東急運営のTsugiTsugiは2026年4月時点で全国450以上の宿泊施設を対象に、月額料金でポイント・チケットを使い1泊単位で泊まれる。HafHはコイン積立型の宿泊定額サービスで、会員数は約13万人にのぼる。

第三は航空定額型で、日本では恒常的な無制限乗り放題型のサブスクとしては定着していない。ANAは2020年1月にADDressと組み、月額3万円で国内指定便を月2往復利用できるプランの実証を行った。JALも2021年から2022年にかけてKabuK Style・ジャルパックと2度にわたり航空サブスクの実証を実施しており、その後2023年5月からはHafH内でJAL国内線航空券を予約できる「航空サブスクサービス(ベータ版)」へ移行し、現在も提供が続いている。

鉄道・移動分野では、JR東日本の「キュンパス」のような期間限定の乗り放題きっぷも関連例として挙げられる。ただしこれは1日有効の買い切り型商品であり、月額で払い続けるサブスクとは仕組みが異なる。このほかワーケーション拠点定額型としてLiving Anywhere Commons(LAC)があったが、後述のとおり2025年に月額プランを終了し縮小している。

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同じ定額でも、中身は三者三様

現行で提供が続く主要サービスの料金・条件を比べると、同じ「旅行サブスク」でも仕組みはかなり違うことが分かる(2026年7月・公式サイト確認時点)。

サービス運営料金の目安主な条件
ADDressADDress月額980円〜199,600円の7プラン(チケット制。新規入会時に選べるのは980円〜99,800円の5プラン、10枚・60枚プランは既存会員のみ)チケット有効期限6か月・初期費用ゼロ・初月解約可
TsugiTsugi東急月額23,980円〜157,800円の3プラン最低利用3か月・定員2名以上の客室は同料金で2名まで宿泊可
HafHKabuK Style積立コイン数×32円+メンバーシップ料金200円会員ランクで年率最大12%のボーナスコイン、会員数は約13万人

(注:各社公式サイトの2026年7月確認時点の情報。プラン内容は変更されることがある)

ADDressはチケット1枚で1泊利用でき、毎月のプラン変更も可能だ。宿泊を伴わなくても食事やイベントに参加できる月額980円の「コミュニティプラン」も新設しており、関わり方の選択肢が広がっている。

TsugiTsugiは平日(日〜木・祝前日除く)中心の利用条件を設けている。ADDressは空き家・遊休不動産の再生を掲げ、拠点数は国内外276件にのぼる。

サブスクが狙う「稼働の平準化」

旅行サブスクの経済性を見ると、各社が「継続」を前提に設計していることが見えてくる。

ADDressの遊休不動産活用は、利用者の多拠点生活者が前年から120.31%に増加(=約2割増)、年間平均利用物件数5.98件、総予約の48.4%がリピートという実績を伴っており、空き家・遊休不動産の再生と関係人口創出を社会的価値として掲げている。地方創生の文脈と重なる訴求だ。

TsugiTsugiが平日中心の利用条件を設けているのも、単なる制約ではない。東急は2026年4月の発表で、平日中心の宿泊需要創出を通じて宿泊施設の未稼働客室の活用や観光需要の平準化に貢献しているとしている。平日限定という条件には運営会社が公式に示す狙いがある。

HafHが会員ランクに応じて最大年率12%のボーナスコインを付与するのも、単発の値引きではなく継続課金ユーザーを重視する設計だ。ADDressは2024年10月にクラウドファンディングで6,990万円を調達し、累計調達額は1億6,920万円に達している。継続課金だけでなく、外部からの資金調達も行っている。

広がる一方で、止まったサービスも

続くモデルがある一方、縮小・撤退した事例もある。

ワーケーション拠点定額型のLiving Anywhere Commons(LAC、LIFULL運営)は、物価上昇でサービス提供が困難になったとして、2024年9月にLAC横瀬・LAC会津磐梯の宿泊営業終了を告知し、2025年1月からは「LACうるま」のみの運営に縮小した。

現在は月額サブスクの「Standardプラン」の受付を終了し、都度払い・チケット制(6,600円〜)が主軸になっている。旧来の月額料金のまま「現行の旅行サブスク」として扱うのは誤りで、多拠点サブスクとしては撤退した事例と位置づけるのが実態に近い。

航空定額型は、恒常的な「乗り放題型」としての商用定着には至っていない。ANA・ADDressの実証は2020年1月から2021年3月末搭乗分までにとどまった。JALはKabuK Style・ジャルパックと2021年・2022年に航空サブスクの実証を重ねたのち、2023年5月からHafH内でJAL国内線航空券を予約できる「航空サブスクサービス(ベータ版)」へ移行している。ただしこれも無制限に乗り放題となるサービスではなく、あくまで航空券予約とコイン決済を組み合わせた仕組みだ。

続くサービス・終了/限定運用のサービス
旅行サブスク主要サービスの現状(2026年7月確認時点)
ADDress
継続中
空き家・遊休不動産276件を活用。
TsugiTsugi
継続中
全国450以上の宿泊施設で運営。
HafH
継続中
コイン積立型、会員数は約13万人。
JAL航空定額
限定運用(ベータ)
2021〜2022年に実証。2023年からHafH内の予約ベータ版へ移行し、現在も提供中。
ANA航空定額
実証で終了
2020年に実証。その後の商用化には至らず。
LAC(多拠点型)
月額プラン終了
都度払い・チケット制へ移行。
出典:ADDress公式、TsugiTsugi公式、KabuK Style公式、LAC公式、ANA・JAL各社公式をもとに編集部作成

住まい・宿泊定額型は継続中の一方、多拠点型のLACは月額プランを終え、航空定額はANAが実証止まり、JALは限定運用のベータ版にとどまる。

海外の旅行サブスク動向

旅行サブスクは日本国内に限った動きではない。住まい・航空それぞれの領域で、海外にも同様の定額課金モデルがある。

米国では、高級別荘に特化したInspiratoが2025年8月、会員制プログラム「Inspirato Pass」の年会費を40,000ドル(改定前は31,900ドル)に改めた。世界各地の厳選された別荘に、追加の宿泊料・税・手数料なしで無制限に滞在でき、同時に2件の旅程を保有できる仕組みだ。会員枠は2,500人に限定されている。ただし経営は楽観できず、2025年第2四半期は530万ドルの純損失を計上している(前年からは損失幅が縮小)。

東南アジアでは、マレーシア発のLCCグループが運営するアプリ「AirAsia MOVE」が2024年4月、「ASEAN Explorer Pass」の提供を始めた。年間の定額で、対象となるASEAN域内の国際線と一定の国内線を基本運賃ゼロで繰り返し予約できる仕組みで、政府税・手数料・付帯サービス料金は別途必要となるほか、座席供給状況や除外期間による制限もある。国内線は原則として旅券上の自国以外のASEAN加盟国が対象だ。2025年1月時点で、提供開始から2万5,000回以上の旅行が完了したと公式が発表している。ANA・JALの実証実験が商用化に進まなかった日本の状況とは対照的に、実際に商用化が続いている数少ない航空定額の例だ

航空分野ではもう一つ、米国のSurf Airも見ておきたい。2013年、月額料金で無制限に飛行できる会員制フライトサービスとして創業し、航空サブスクという発想の早期の事例の一つとなった。親会社のSurf Air Mobility(NYSE:SRFM)は、その後は地域航空や航空機の電動化関連事業へと領域を広げている。なお、2021年に発表した電動航空機開発企業Ampaireの買収は、2022年に中止されている。2026年には資金調達を行う一方、株価下落や資金消費の速さも報じられており、単体の会員制フライト事業として見た場合の採算性は楽観できる状況ではない。

旅行業法という、もう一つの前提

旅行サブスク事業を設計するうえでは、規制の論点も押さえておく必要がある。報酬を得て旅行者のために他社の宿泊・運送サービスを手配・媒介・代理する場合は、旅行業登録が必要になる可能性がある。一方、旅行業者から依頼を受けて宿泊施設や運送機関などを手配するランドオペレーター業務は、旅行サービス手配業登録の対象になりうる。自社施設を直接販売する場合や、他社の宿泊・交通を組み合わせて販売する場合など、事業の契約構造によって適用関係は異なり、宿泊提供の形態によっては旅館業法・住宅宿泊事業法(民泊)の適用可能性もある。

新規に事業を設計する場合は、観光庁やe-Govで一次条文を確認したうえで、登録行政庁や専門家にも確認するのが安全だ。

契約の形は、利用者に付く保護の中身にも及ぶ。募集型・受注型の企画旅行には、旅行会社の責任が生じるか否かを問わず補償金と見舞金が支払われる特別補償(標準旅行業約款・募集型企画旅行契約の部第28条。死亡補償金は別紙・特別補償規程第6条で海外2,500万円・国内1,500万円)と、変更補償金を支払う旅程保証(同第29条。支払限度は旅行代金に15%以上の各社が定める率を乗じた額)が付く。特別補償規程は対象を企画旅行契約に限っており(第2条)、手配旅行にはこのどちらも付かない。

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旅行サブスクの継続性を分けるのは、価格の安さよりも、部屋・座席という有限な供給枠と在庫リスクをどこまで管理できるかだ。ADDressは空き家・遊休不動産を活用し、TsugiTsugiはポイント・チケットで宿泊枠を管理し、HafHはコイン積立と宿泊・航空券予約を組み合わせる。一方、LACは物価上昇・光熱費高騰を理由に月額プランを終え、ANAの航空券サブスクは実証にとどまった。JALはHafH内の予約ベータ版として限定的に継続しているが、無制限の乗り放題型として広く定着した段階ではない。新規参入を検討する事業者は、自社が扱う供給枠は何か、どの需要を平準化したいのかを先に整理したうえで、料金設計に取りかかる必要がある。

よくある質問

旅行サブスクは「使い放題」なのか。

実際には多くが使い放題でなく、積立・ポイント型のサービスだ。HafHのようにコインを積み立てる仕組みや、チケット・ポイントを消費する仕組みが多く、無制限に宿泊や移動ができるサービスばかりではない。

主要な旅行サブスクにはどんなサービスがあるか。

住まい・多拠点居住型のADDress、宿泊定額型のTsugiTsugiとHafHが現行の代表例だ。料金体系や利用条件が異なるため、比較したうえで自分の使い方に合うサービスを選びたい。

航空券や鉄道の定額サブスクはあるか。

ANAは過去に実証実験を行ったが、商用化には至っていない。JALは実証実験を経て、HafH内でJAL国内線航空券を予約できるベータ版サービスへ移行しているが、無制限の乗り放題型として広く定着した段階ではない。JR東日本の「キュンパス」は平日限定の乗り放題きっぷで、恒常的な月額サブスクとは性質が異なる。

旅行サブスク事業を始める際に注意すべき法律は何か。

報酬を得て旅行者のために他社の宿泊・運送サービスを手配・媒介・代理する場合は旅行業登録が必要になることがある。旅行業者から依頼を受けて宿泊・運送を手配するランドオペレーター業務は旅行サービス手配業登録の対象になりうるなど、事業の契約構造によって適用関係は異なる。宿泊提供の形態によっては旅館業法・住宅宿泊事業法の適用も考えられるため、事業設計の段階で一次情報や専門家への確認をしておきたい。

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