OTAは、インターネットで宿や航空券を売る事業者だ。楽天トラベル、じゃらんnet、Booking.com、Expedia、Agodaなどがあたる。
名前は誰でも知っている。ただ、旅行会社と何が違うのか、宿のお金はどう流れるのか、法律上どういう立場なのかとなると、説明しにくい。
この記事では、行政の定義と各社の公式資料でOTAの輪郭を確かめる。押さえるのは4つだ。比較サイトはOTAではないこと。代金を預かるかどうかでモデルが2つに分かれること。手数料の相場は公開されていないこと。同じ「OTA」でも日本の法律上の立場はそろっていないことである。
この記事のポイント
- 観光庁の定義では、OTAは国内OTAと海外OTAの2つ。比較サイトや場貸しサイトはOTAに含まれない。
- 一般に、旅行者とOTAの間に成立するのは「手配」の契約。泊まる契約は旅行者と宿の間に直接できる。
- モデルは、代金を預かるマーチャントと、預からないエージェンシーの2つ。Booking Holdingsでは取扱高の7割がマーチャントになった。
- 手数料に公開の相場はない。日本の旅行業登録も、第1種・第3種・確認できない海外法人と分かれる。
OTAとは何か
OTAはOnline Travel Agentの略で、ネット上で宿泊や交通の予約を扱う事業者を指す。この言葉には行政の定義がある。
観光庁の「オンライン旅行取引の表示等に関するガイドライン」が、冒頭で「オンライン旅行取引事業者(以下「OTA」という。)」と定めた。
ガイドラインはOTAを2つに分ける。
- 国内OTA=国内に拠点を持ち、日本の旅行業法令に従って営業する。楽天トラベル、じゃらんnetなど。
- 海外OTA=海外に拠点を持ちながら、日本語サイトで日本の旅行者に売る。Booking.com、Agodaなどが出発点とした形。
ここに場貸しサイトと比較サイト(メタサーチ)を加えた4種類を、ガイドラインは総称してOTA等と呼ぶ。傘の名前は「OTA等」だが、OTA自体は上の2つを指す。場貸しサイトと比較サイトは、その外側にある。
あわせて読む 旅行業そのものの市場規模やプレイヤーの全体像は、こちらで先に押さえておきたい。
旅行業界の全体像 市場・旅行会社・OTAをまとめて押さえる
OTA予約では一般に、手配契約が成立する
OTAは旅行会社と別物ではない。国内OTAの定義自体が「日本の旅行業法令に従い事業を営む」事業者で、楽天トラベルや一休.comは旅行業の登録を受けている(第10章)。違うのは看板ではなく、1件ごとの予約がどの契約になるかだ。
ガイドラインの説明はこうだ。
「一般に、OTAを通じて運送等サービスを予約する場合、旅行者とOTAとの間に運送等サービスの手配業務に関する契約(以下「手配契約」という。)が成立し、旅行者とサービス提供事業者との間で、直接、運送契約又は宿泊契約(以下「運送等契約」という。)が成立することになる」。
つまり一般には、泊まる約束そのものは旅行者と宿の間に直接できている。この整理でOTAが引き受けているのは、その手配である。旅行業法もこの形を「手配旅行契約」と呼ぶ(旅行業法第2条第5項)。
一方、旅行会社が売るパッケージツアーは企画旅行である。日程と価格を先に決めて募集し、自ら実施する。OTAが他社のパッケージツアーを売るときは旅行業法第14条の2の受託契約を使うが、条文の対象は募集型の企画旅行に限られる。
どちらの契約になるかは、旅行者に付く保護の中身も変える。募集型・受注型の企画旅行には、旅行会社の責任が生じるか否かを問わず補償金と見舞金が支払われる特別補償(標準旅行業約款・募集型企画旅行契約の部第28条、受注型は第29条)と、日程や運送・宿泊機関などが変わったときに変更補償金を支払う旅程保証(同第29条、受注型は第30条)が付く。特別補償の死亡補償金は別紙・特別補償規程第6条で海外2,500万円・国内1,500万円、変更補償金の支払限度は旅行代金に15%以上の各社が定める率を乗じた額である。一方、特別補償規程は対象を企画旅行契約に限っており(第2条)、旅程保証を定める条も企画旅行契約の部にしか置かれていない。手配旅行では、旅行会社の責任は手配旅行契約の部が定める一般の責任にとどまり、特別補償・旅程保証は付かない。
なお「一般に」という限定は残しておきたい。実際の契約当事者と契約の形は、商品と各社の利用規約によって異なる。第8章で見るように、OTAが代金の受け取り主体になるモデルもある。
あわせて読む 特別補償・旅程保証の中身と、変更補償金の率や免責の範囲は、こちらで詳しく扱っている。
標準旅行業約款とは 取消料・旅程保証・特別補償の基本
比較サイトはOTAではない
trivagoやKAYAKのような比較サイトを、まとめてOTAと呼ぶ説明は多い。だが行政の整理でも当事者の説明でも、両者は別物である。
まず流通の全体像を見ておきたい。旅行の流通は、比べる・売る・提供するの3つの層に分けて眺められる。
ガイドラインは、場貸しサイトや比較サイトについてこう書く。
「これらは、サービス提供事業者又はOTAが提供するサービス又は旅行商品を紹介するものに過ぎず、具体的な申込みや予約は、旅行者と、サービス提供事業者又はOTAとの間で直接行われ、場貸しサイト等の運営者は契約当事者とはならないため、これらのサイト運営者においては、旅行業の登録は不要である」。
trivago自身の説明も同じ向きだ。年次報告は自社を「ホテル検索・価格比較プラットフォーム」と定義し、利用者は通常、広告主のサイトで予約を完了すると書く。収益の柱はクリック課金(CPC)で、高いCPC入札額(またはCPA換算の入札額)を払う広告主が、一般により良い掲載位置と多くの送客を得る。
違いは決算にも出る。Expedia Groupは10-Kで、trivagoには総取扱高(gross bookings)もレベニューマージンも存在しないと説明する。Booking HoldingsもKAYAKとOpenTableは総取扱高に寄与しないと明記する。少なくともKAYAKとtrivagoの送客は、各社が示す総取扱高には算入されない。
比較サイトは独立系だけではない。trivagoの年次報告は、競合に「Kayak、TripAdvisor、Skyscanner、Google Hotel Ads」を挙げ、流入元であるGoogleが自社のホテル検索を推し続けているとも書いている。
境界も動いている。trivagoは2025年7月にHolisto社を買収してtrivago DEALSとし、一部の価格は自社上での予約も可能にした。比較サイトが絶対に予約させない、とまでは言えない。
なおAirbnbの扱いは見方が分かれる。会計上は代理人として純額で表示し、trivagoは「代替宿泊サイト」としてOTAとは別に置く。ただし純額表示はBooking Holdingsも同じで、会計処理は判定基準にならない。
あわせて読む 各社の規模を取扱額や売上で並べた業界地図と、航空券の業務間流通を担うGDSは、それぞれこちらで詳しく扱っている。
分かれ目は、代金を預かるかどうか
OTAが予約から得る収益は、大きく2つに分かれる。分かれ目は「旅行者の代金を自分で預かるかどうか」だ。ただし線の引き方は各社で違い、Booking Holdingsは決済を仲介するかどうかで、Expediaはmerchant of recordか代理人かで説明している。
Expedia Groupの説明がいちばん具体的である。マーチャントモデルでは「当社が当該予約のmerchant of record(記録上の販売者)となる」。
同社はホテル客室を例に、仕入先との契約は料金と空室の情報を提供するもので「当社は客室を支配しておらず、在庫リスクも負わない」と書く。マーチャント方式のホテル取引では、旅行者は旅行前、一般に予約時に代金をExpediaへ払う。
エージェンシーモデルでは「取引において代理人として行動し、旅行者が予約した内容を該当する旅行提供者へ引き渡す」。Booking Holdingsも、提供者との契約は「旅行サービスを提供する責任が当社に移転することなく」在庫を売り出せるものだと説明する。
代金を預かることと、サービスの責任を負うことは別である。
| マーチャントモデル | エージェンシーモデル | |
|---|---|---|
| 一般に、OTAが予約時に旅行者から受け取る | 代金 | OTAは受け取らない |
| OTA(merchant of record) | 記録上の販売者 | 供給者 |
| 旅行者への請求額と供給者への支払額の差額、および手数料 | 収益の形 | コミッション(手数料) |
| Expediaはホテル客室を例に「支配しておらず、在庫リスクも負わない」とする | 在庫リスク | 代理人として取り次ぐため負わない |
| 供給者に残る | サービス提供の責任 | 供給者に残る |
| Expediaではマーチャント取引の大半が宿泊 | Expediaでの構成 | Expediaではエージェンシー総取扱高の大半が航空券 |
同じ宿で両方が並ぶこともある。ExpediaのETPは、前払い(マーチャント)と現地払い(エージェンシー)を旅行者に選ばせる仕組みだ。
そのマーチャント側への移動が進んでいる。Booking Holdingsは、全社の総取扱高に占めるマーチャント方式の比率が2025年に70%となり、2024年の63%から上がったと開示した。
Expediaは分母が違う。2025年通期(暦年)の総収益147億ドルの内訳が、マーチャント70%・エージェンシー22%・広告等8%である。数字は同じ70でも、片方は取扱高、片方は収益の構成比だ。
宿にとっては入金の話でもある。Expediaは「一般に、供給者に支払う前に旅行者から現金を受け取る」と書く。
代金をOTAが預かる方式なら、宿への入金は契約上の締めと支払サイクルを経る。現地払いなら宿が先に受け取り、手数料を後から払う。ETPのようにモデルを選べる仕組みもあり、実際の入金時期はOTA・契約・決済方法によって異なる。
手数料率は契約ごとに個別に決まる
宿からいちばん多く出る問いは「結局、手数料は何%なのか」だろう。ところが公式の答えは、ほとんど存在しない。パートナー向けの公開ページはこう書いている。
- Booking.com=「正確な割合は、貴施設の所在国、宿泊施設タイプ、および弊社へのご登録時に締結した宿泊施設パートナー契約によって異なります」
- Expedia=「報酬は世界各地で異なり、貴社の市場における比率は契約手続の一環でお伝えします」
- Agoda=所在地と、場合によっては決済モデルによって変わる
- Trip.com=「手数料率は登録手続の『契約』ステップで表示されます」
- 楽天トラベル=「リーズナブルなお手数料」/じゃらんnet=「お手頃な料金」/一休.comは確認した公開FAQに料率の記載なし
確認したOTA7社の公開ページに料率の数字はなく、確認できたのは位置づけの分かれるAirbnbだけだった。
そのAirbnbのホストサービス料には、ゲストと分け合う方式と、ホストだけが負担する方式(単一方式)がある。ホテルやサービスアパートメントなどには、後者が必須とされる。
単一方式の料率は大半のホストで15.5%、それ以外は通常14〜16%だ(2026年8月10日閲覧)。ホスト向けのサービス料であり、宿泊施設がOTAに払うコミッションとそのまま比べられる数字ではない。
料率が分かっても総額は決まらない。上位表示の任意プログラムがあるためだ。Booking.comは「プリファード・プログラムまたは露出強化ツールをご利用の場合、追加の割合が基本コミッションに加算されます」と説明する。ExpediaのAccelerator、AgodaのGrowth Expressにも追加報酬の仕組みがあるが、上乗せ幅は公開資料からは比較できなかった。
キャンセル時の扱いも違う。確認できた4社(Booking.com・Agoda・Trip.comの公式ヘルプと、ExpediaのEMEA版ETP規約)では、キャンセル料を宿が徴収すれば手数料が発生し、免除すれば発生しない設計が中心だった。ただしExpediaの根拠はEMEA版で、日本の契約に一般化はできない。国内3社(楽天トラベル・じゃらんnet・一休.com)の公開ページでは、同種の記載を確認できなかった。
各社はいずれも、率が国・施設タイプ・決済方式・契約によって変わると説明している。自社に適用されている率と上乗せ幅は、契約書とパートナー向け管理画面で確かめられる。
あわせて読む 宿の手取りが実際にいくら減るのか、ポイント原資や決済手数料まで含めた実質コストの分解は、こちらで詳しく扱っている。
OTA手数料とは 宿が実際に負担する「実質コスト」の正体
同じOTAでも旅行業の登録は違う
OTAに旅行業の登録は要るのか。答えは「原則として要る。ただし線引きがある」だ。
出発点は旅行業法第3条で、「旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者は、観光庁長官の行う登録を受けなければならない」と定める。何が旅行業にあたるかは第2条第1項が並べている。旅行者のために代理・媒介・取次ぎをする行為(第3号)と、提供事業者のために代理・媒介をする行為(第4号)が、宿や航空券の予約仲介にあたる。
オンラインの判定は、観光庁の「旅行業法第2条に規定する『旅行業』の取扱いについて」(令和2年12月11日)が具体的だ。運送事業者から手数料を受けるなど報酬を得る場合、または「システムを用いて検索・予約から決済まで一括して行うことができるサービスを提供し報酬を得る場合」を、原則として旅行業に該当するとしている。
そのうえで、該当しない場合を5つ挙げる。
- 報酬性・事業性を伴わない場合
- 運送事業者が、自らの運送に加えて別のサービスを提供・手配する場合
- 専ら運送事業者を代理して契約を結ぶ場合(付随業務を除く)
- システムだけを提供する場合(報酬を得て代理・媒介・取次ぎを行うものを除く)
- 旅行者と運送事業者との間の取引の媒介を行わない場合
原則として該当する場合が2つ、該当しない場合が5つ並ぶ。なおこの通達が扱うのは運送サービスの予約である。比較サイトのうち、紹介と送客にとどまり契約当事者にならないものに登録が要らないとされる根拠は、2015年のガイドラインの側にある。自社で予約まで完結させる形(第7章のtrivago DEALS)に、この説明がそのまま当てはまるとは限らない。登録先も区分で分かれ、第1種は観光庁長官、第2種・第3種と旅行業者代理業は都道府県知事が登録する。
| 類型 | サイトの役割 | 契約当事者に なるか |
日本の 旅行業登録 |
OTAに 含まれるか |
|---|---|---|---|---|
| 国内OTA | 国内に拠点を置き、予約を受ける | 一般に、なる(手配契約) | 必要 | 含まれる |
| 海外OTA | 海外に拠点を置き、日本語サイトで予約を受ける | 一般に、なる(手配契約) | 日本で旅行業を営むなら必要 | 含まれる |
| 場貸しサイト等 | サービスや旅行商品を紹介する | ならない | 不要 | 含まれない |
| メタサーチ | 価格を比較し、予約サイトへ送客する | ならない | 不要 | 含まれない |
では実際の主要OTAはどうか。各社の標識と観光庁の第1種旅行業者一覧(令和8年6月29日現在)を突き合わせると、そろっていない。
- 楽天トラベル=観光庁長官登録旅行業第1964号・第1種。登録年月日は同一覧では2013年12月26日
- 一休.com=第1973号・第1種。業務範囲は国内旅行・海外旅行
- じゃらんnet=東京都知事登録旅行業第3種7538号。運営は株式会社リクルート、業務範囲は国内旅行
- ANAじゃらんパック=別法人の株式会社ANAじゃらんパック(第1968号・第1種)が登録旅行業者。商品ページにも「募集型企画旅行 登録番号1968号」とある
第3種は、自ら実施する募集型企画旅行が拠点区域の内側に限られる区分だ(旅行業法施行規則第1条の3第3号)。他社の募集型企画旅行を受託契約で売るときは、この縛りはかからない。扱う商品が変われば、必要な登録区分が変わる。
海外勢はさらに分かれる。Agoda International Japan株式会社は2024年7月12日に第1種(登録番号2161)を取得し、日本向けの規約でも登録番号を示している。株式会社Trip.com International Travel Japanも2025年9月19日に第1種(2187)を取得したが、2026年8月9日に開いた利用規約と会社紹介のページでは、その表示を確認できなかった。
Booking.comについては、同日に開いた日本語の3ページ(法的事項・利用規約・会社情報)で、日本の旅行業登録に関する記載を確認できなかった。英国のATOL保有は利用規約に明記されている。
これは表示の有無を見たもので、登録の有無を確認したものではない。第2種以下と旅行業者代理業は都道府県知事の登録で全国一覧が公表されていないため、言えるのは「第1種一覧に載っていない」「開いたページでは確認できなかった」までである。
2015年のガイドラインには「しかしながら、海外OTAについては、日本の旅行業登録を有していないケースがほとんどである」とある。表示については海外制度の登録情報でも足りるとしたが、「同等の法的効力を認めるものではない」とも断っている。それから11年で、AgodaとTrip.comは日本法人で第1種を取得した。
なお観光庁は、「我が国に営業所を有しない外国の旅行会社」の日本語サイトで申し込んだ旅行について、「我が国の旅行業法その他の関係法令に基づく保護を受けることはできません」と旅行者に注意を促している。海外の旅行会社一般への注意喚起で、本章で挙げた個社について述べたものではない。
あわせて読む 登録区分そのものの違いと、ダイナミックパッケージの仕組みは、それぞれこちらで詳しく解説している。
価格を縛る条項は国ごとに違う
OTAと宿の関係でいちばん争われてきたのが、価格や部屋数を他の販売経路と同等以上にさせる条項だ。扱いは国で分かれる。
日本では、公正取引委員会が2019年に楽天、2022年にBooking.comとエクスペディアについて確約計画を認定した。いずれの公表文にも「本認定は…独占禁止法の規定に違反することを認定したものではない」とあり、違反そのものを認定した処分ではない。2026年8月10日に確認した観光庁・公正取引委員会・消費者庁・国民生活センターの公表資料では、2025年秋以降の新たな国レベルの施策・調査を確認できなかった。
EUでは、Booking Holdingsが2024年5月13日にデジタル市場法(DMA)のゲートキーパーに指定され、同年11月14日から全義務の対象になった。欧州委員会は2024年11月の発表でこう説明している。Bookingは、関連サービス提供者が自社サイトを含む他のチャネルでBooking.comより有利な価格・条件を出すことを認めなければならない。指定を受けた事業者への義務で、EU域内のすべてのOTAに広がる話ではない。
中国では処罰が出た。Trip.com Groupは2026年7月25日、国家市場監督管理総局から行政処罰の決定を受けたと開示した。認定されたのは、市場支配的地位にある事業者による排他的取引の強制と、不合理な取引条件の付加である。根拠は中国の独占禁止法(反壟断法)第22条第1項第4号・第5号で、日本の独占禁止法とは別の法律だ。
罰金は35億2,100万元(5億1,890万ドル)で、2025年の中国事業売上の7.5%にあたる。違法所得の没収と、ホテル事業者から差し引いた保証金の返還も命じられた。同社は「決定を真摯に受け止め、法令に従って是正措置を講じる」としている。
3か国は制度の作りが違う。日本は事業者の申し出による確約手続、EUは指定事業者への事前の義務づけ、中国は違反行為への行政処罰である。規制の強さを一直線に並べられるものではない。
宿の側から見ると、在庫をどのチャネルにどれだけ出すかの自由度は、契約に残っている同等性条項と、参加している上位表示プログラムの条件に左右される。まず自社の契約書と特約の該当条項を確かめるのが先になる。
あわせて読む 客室の在庫と価格をチャネル別にどう配分するかは、レベニューマネジメントの領域になる。
ホテルの稼ぐ力を高めるレベニューマネジメントとは
AI予約の提携先にOTAは残っている
生成AIが予約を代行するようになれば、OTAは中抜きされる。そういう見立てをよく聞く。当事者の一次資料を読むと、様子は少し違う。
Booking Holdingsは年次報告のリスク要因で「AIエージェントはさらに進化してフルサービスの予約プラットフォームとなり、競争圧力を高め、オンライン旅行会社を中抜きする可能性がある」と書いた。ただしリスク要因は起こりうることを網羅的に並べる欄で、記載があること自体が重大性を示すわけではない。
Googleは2025年11月の公式ブログで、AI Modeのエージェント予約をまず米国のレストラン・イベントチケット・ローカル予約から始めると発表した。
同じ発表で「今後、フライトとホテルの予約もAI Mode内で完結できるようにする」と述べ、旅行分野の提携先にBooking.comとExpedia、Choice Hotels、IHG、Marriott、Wyndhamを挙げている。
公表されている構想では、OTAと宿泊チェーンの双方が提携先に並ぶ。少なくとも発表の時点では、OTAを一律に外す設計とは読めない。ただしホテル予約は「今後」とされ、実際の候補の並びや予約経路までは確定していない。
AI経由の集客もまだ小さい。trivagoは2026年第1四半期の説明で「生成AI由来のトラフィックからの収益は、当社の収益の1%未満にとどまる」と述べた。trivago1社の数値であり、業界全体の比率ではない。
数字が動いているのは、むしろ別のところだ。Expedia Groupの2026年第2四半期(注:4〜6月。Expedia・Booking Holdingsとも12月期決算)は、総取扱高がB2Bで21%増、B2Cで8%増だった。第1四半期もB2B22%増・B2C10%増である。
Booking Holdingsの同四半期はルームナイト5%増、総取扱高9%増、売上8%増である。2026年8月10日に確認した同社の決算リリースでは、B2B・B2C別の内訳を確認できなかった。少なくともExpedia Groupでは、直近2四半期ともB2Bの伸びがB2Cを上回った。業界全体の重心が動いたかどうかは、構成比と他社の開示を見ないと言えない、と考える。
Booking Holdingsの総取扱高に占めるマーチャント方式の比率は、2024年の63%から2025年に70%へ上がった。OTAが旅行者から代金を先に受け取る形が増えている。
Expediaも、供給者に払う前に旅行者から現金を受け取ると自ら書いている。同じ料率でも、代金を誰が預かるかで宿への入金の時期は変わる。実際の時期はOTA・契約・決済方法によって異なる。
OTAとの取引は、手数料率の話であると同時に資金繰りの話でもある。契約の決済方式と入金サイクルは、料率と同じ重さで見ておきたい。
よくある質問
出典
- 観光庁「オンライン旅行取引の表示等に関するガイドライン」
- 観光庁「観光庁長官登録第1種旅行業者リスト」
- e-Gov法令検索「旅行業法」
- Booking Holdings Inc.「Form 10-K(FY2025)」
- Expedia Group, Inc.「Form 10-K(FY2025)」






