タクシー運転者は15年で4割減 観光地の二次交通を支えるライドシェア

Photo: Yanghong Yu / Unsplash
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「観光の足」をめぐる制度と予算が動いている

訪日客を地方に呼び込む施策が進むなか、駅や空港から目的地まで運ぶ「二次交通」の不足が、いま政策上の課題として前面に出てきた。この観光の足をどう確保するかが問われている。

国土交通省は2024年7月17日、国土交通大臣を本部長とする「交通空白」解消本部を設置した。全国の自治体でタクシー・ライドシェア・乗合タクシー・オンデマンド交通の導入を進める司令塔だ。

その柱の一つが、地方の主要駅や空港など主要な交通結節点(約700カ所)から観光地までのアクセスを底上げする「観光の足」対策である。日本版ライドシェアや公共ライドシェアに未着手の自治体(約600)への伴走支援も同じ枠組みに置かれた。

財源面でも観光庁の2026年度予算1,383億円のうち、地方誘客による需要分散に749億円が充てられ、円滑な移動環境の整備が位置づけられている。

あわせて読む 地方誘客による需要分散の論点は、こちらで詳しく解説している。

2026年3月27日に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画は、成長を阻む交通分野の課題として、国際空港の混雑やグランドハンドリング体制と並んで、二次交通とバス・タクシーのドライバー不足を明記した。

あわせて読む 観光と交通の全体像と、第5次観光立国推進基本計画は、それぞれこちらで詳しく解説している。

担い手は15年で4割減った

二次交通が細る大きな理由の一つが、運ぶ人の不足だ。タクシー運転者数はピークの約38万人(2009年度)から、2023年3月末には23万1,938人まで減った。およそ14〜15年で4割近い減少である。

直近でも2022年3月末の24万1,727人から1年で約1万人減り、2023年3月末時点でも減少が続いていた。同じ期間に国内の就業者数が1割以上増えたのとは対照的だ。

訪日需要はコロナ後に回復したが、タクシー運転者数はピーク水準に戻っていない。とりわけ週末の夜間など、需要が集中する時間帯に車両が足りなくなる。

この供給不足を、限られた地域・時間帯に限って補うのが2024年4月に始まった日本版ライドシェア(自家用車活用事業)である。国交省は不足の度合いを数字で示す仕組みも整えた。

東京・横浜・名古屋・京都・大阪など12地域はアプリの実需データから不足車両数を算定・公表し、それ以外の地域は金曜・土曜の16時台から翌5時台に、タクシー車両数の5%を不足分とみなす簡便法を用いる。不足の量に応じてライドシェア導入の枠を設ける設計だ。

日本版ライドシェアは「Uber型」ではない

ここで押さえておきたいのは、日本版ライドシェアが海外で広がるUberやGrabのような仕組みとは別物だという点だ。日本版は、タクシー会社が運行管理を担い、ドライバーはそのタクシー会社に所属する。

運行できるのは行政が認めた地域・曜日・時間帯に限られ、料金もタクシーと同等に設定される。プラットフォーム事業者が直接ドライバーを束ねる「元締め」になることは認められておらず、連携するタクシー会社を通じてしか関われない。

項目日本版ライドシェアグローバル型(Uber・Grab等)
配車・運行管理タクシー会社が管理プラットフォーム事業者が直接仲介
ドライバータクシー会社に所属(講習等あり)個人事業主(ギグワーカー)が中心
車両自家用車(会社の管理下)個人の自家用車
営業エリア・時間不足する地域・曜日・時間帯に限定国・都市の規制によるが日本版より制約は小さい
料金タクシーと同等(事前確定)変動料金(需給で上下)
供給への効果限定的(ピークの補完)制度上は供給拡大の余地が大きい

(注:「グローバル型」は海外で一般的なプラットフォーム主導モデルを説明するための編集部の便宜的な整理で、実際の規制は国・都市ごとに異なる。日本版ライドシェアは道路運送法第78条の自家用車活用事業で、料金・エリアは国交省と地域の協議で決まる。)

この設計は安全管理や既存事業者との摩擦を抑える一方で、供給を増やすスピードと規模を制約しやすい。解禁から時間がたっても普及が限定的にとどまる一因とみられる。

規制改革推進会議の委員を務めるLINEヤフー会長の川邊健太郎氏は「既存事業者への配慮が過ぎる現行の仕組みとモニタリングの状況を見る限り、日本版ライドシェアだけでは問題解決が成されるとは思えない」と述べ、新たな法制度の具体化を求めている。観光地の繁忙ピークを本当に埋め切れるのかは、まだ見通せない。

制度の壁とnewmoの方向転換

制度上の制約があるなかで、ライドシェア新興のnewmo(ニューモ)も、タクシー会社の買収とデジタル化に軸足を広げている。元メルペイの青柳直樹氏が率いる同社は、ライドシェアの本格普及を掲げて参入したが、現在はむしろ大阪などのタクシー会社を相次いで買収している。

2024年に守口市の老舗みらいとの運営権を取得したのを皮切りに、堺相互タクシー、タカラ自動車、2026年には京急タクシーグループ6社(うみかぜ交通へ再編)まで傘下に収めた。

背景には、大阪・関西万博の期間が終わり、フルタイムでのライドシェア運行が再び難しくなった事情がある。供給を自由に増やせないなら、既存のタクシー事業者そのものを取り込み、配車や運行をデジタルで効率化する――。

newmoの動きは、ライドシェア単独ではなく、既存タクシー事業の取得とDXも含めて供給力を高めようとする現実的な適応と読める。

中長期の切り札となるか――無人タクシー

運転者不足への中長期の対応策として注目されるのが、ドライバーそのものを必要としない自動運転タクシーだ。米Waymoは日本交通、配車アプリのGOと組み、2025年4月から東京都心7区(港・新宿・渋谷・千代田・中央・品川・江東)で公道走行テストを始めた。

当面は運転席に人が乗り、日本の道路環境に適応するための走行データを集める段階だ。国内でもティアフォーや日産が横浜・お台場で実証を重ね、一部エリアでは2026年内の商用化観測も出ている。

制度面では、2023年4月施行の改正道路交通法で、運転者を乗せない「特定自動運行」(レベル4相当)の許可制度が新設された。運転者なしの自動運行を許可する制度上の枠組みは整っている。

ただし高精度地図の整備や安全性の社会的な受容には時間がかかり、観光地を含む全国展開はなお先だ。短期はライドシェアや配車アプリで既存の供給を補い、中長期で自動運転を選択肢に入れる――時間軸で打ち手を組み合わせる必要がある。

観光ビジネスの視点

地方誘客は「どう呼ぶか」ばかりが語られるが、勝負を分けるのは「呼んだ客をどう運ぶか」だ。二次交通は観光地の満足度や再訪意向に影響する裏方のインフラで、ここが細れば誘客施策も効果を出しにくい。

日本版ライドシェアはその補完策だが、制度上、供給を一気に増やす仕組みではない。観光事業者や自治体に求められるのは、主要な交通結節点から自地域までの移動実態を確かめ、配車アプリによる効率化・ライドシェアによる補完・自動運転への布石を、時間軸で組み合わせて設計する発想である。単一の特効薬を待つのではなく、複数の手段を重ねる前提で「運ぶ」を組み立てたい。

<出典>

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