モニターツアーとは 目的・進め方・補助金の基礎

宮島・厳島神社の朱塗りの大鳥居の前を進む渡し船と、菅笠をかぶって乗る観光客。モニターツアーで観光地を体験するイメージ
Photo: Bing Hui Yau / Unsplash
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モニターツアーとは、地域が造成した観光コンテンツや着地型旅行商品を試行的に催行し、参加者へのアンケート等で再来訪意向や消費額を調べ、改善につなげる実証ツアーである。観光庁が2017年に示した通知により、自治体が実質的に企画・運営し営利性・事業性がなければ旅行業法の適用外になりうる一方、その場合でも責任者の設置や損害賠償責任保険への加入など、安全と旅行目的を確保するための措置が求められる。国の2026年度概算要求では福島復興・ブルーツーリズムの支援事業がモニターツアーの実施を事業内容として明記しており、造成を支援する事業は2024〜2026年度で年度ごとに名称が変わっている。

この記事のポイント

  • モニターツアーは実証・検証目的の試行ツアーで、販促目的のファムトリップとは一般に区別されるが、線引きは資料によって幅がある。
  • 自治体が実質的に企画・運営し営利性がなければ旅行業法は適用外だが、その場合も責任者設置や保険加入などの安全確保の措置は求められる。
  • 造成系の補助金は2024〜2026年度で名称が変わっており、制度名でなく探し方を押さえるべきだ。
  • 効果測定は観光庁のKGI・KPI手引書も参考に、満足度と再来訪意向を軸に設計するのが基本となる。
目次

モニターツアーとは(ファムトリップとの違い)

モニターツアーとは、地域が造成した観光コンテンツや着地型旅行商品を試行的に催行し、参加者へのアンケートやヒアリングで再来訪意向・消費額・満足度などを調べ、コンテンツの改善につなげる実証ツアーを指す。

モニターツアーは一般に、想定顧客など一般の旅行者による検証を主目的とする市場調査型の試行と説明される。

混同されやすい言葉にファムトリップ(Familiarization Trip=視察招請)がある。こちらは旅行会社・メディア等の業界関係者を対象とする販促・理解促進目的の招請旅行とされ、一般に対象・目的が異なる。

ただし、この線引きは資料によって幅がある。訪日コンテンツ造成の現場マニュアルでは、外国人目線の課題抽出を狙う「モニターツアー」と、海外旅行会社・OTA向けの「FAMツアー」をともにコンテンツ見直しの手法として並べて扱う例もある。

両者を厳密に区別する統一的な行政定義は、現時点で見当たらない。本記事では「一般消費者向けの検証=モニターツアー」「業界関係者向けの販促=ファムトリップ」という一般的な使い分けを軸としつつ、実務では境界が揺れることも踏まえておきたい。

モニターツアーは単発のイベントではなく、造成から改善まで一巡する実証サイクルとして設計することが重要になる。

モニターツアーは5ステップの実証サイクル

造成から改善までを一巡させ、繰り返してコンテンツの質を高める

1
観光コンテンツの造成
着地型旅行商品を企画する
2
モニターツアーの催行
通知の条件を満たす形で実施する
3
参加者アンケート
満足度・再来訪意向を聴取する
4
効果測定
KGI・KPI手引書を参考に指標を検証する
5
コンテンツ改善
商品化・磨き上げへ反映する
改善の結果を次回の①造成へ反映し、このサイクルを繰り返す

出典:観光庁「自治体が関与するツアーの旅行業法上の取扱いについて(平成29年7月28日通知)」「DMOによるKGI・KPI計測に係る手引書 ver1.0」をもとに編集部作成

なぜ今モニターツアーなのか

2026年度(令和8年度)の観光庁関係予算は合計1,383億円(対前年度比2.39倍)に達し、過去最大となった。財源には国際観光旅客税1,300億円が充てられている。この旅客税は2026年7月1日以降の出国から1,000円→3,000円に引き上げられており、税収は快適な旅行環境整備・情報発信の容易化・観光資源整備の3分野に使われる。

こうした予算拡大と並行して、観光コンテンツの造成を支援する国の公募事業は年度ごとに看板を掛け替えながら継続している。

2024年度「地域観光新発見事業」、2025年度「地域観光魅力向上事業」に続き、2026年度は「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業」などが公募された。

観光庁関係予算が過去最大に拡大する一方、造成支援の公募事業は事業名も要件も年度ごとに異なり、地域は最新の公募要領を都度確認する必要がある。

旅行業法の扱い 「適用外」でも安全確保は必須

モニターツアーを企画・実施するうえで最初に確認すべきは、旅行業法の適用可否である。旅行業法上、あらかじめ計画を作成して旅行者を募集する旅行を「募集型企画旅行」、旅行者の依頼で計画を作成する旅行を「受注型企画旅行」と呼び、報酬を得て反復継続の意思をもって旅行業務を行う場合は旅行業の登録が必要になる。

自治体が絡むモニターツアーがすべて登録対象になるわけではない。観光庁は2017年7月28日付の通知(観観産第173号)で、(1)自治体が実質的に企画・運営し、(2)営利性・事業性がない場合は、旅行業法の適用がないと解される、という考え方を示している。

ここでいう「営利性・事業性がない」とは、①参加費等で収支を償わない、②日常的に反復継続しない、③不特定多数に募集しない、の3点が裏付けとして求められる。

ただし、旅行業法の適用がなくても、安全確保のための備えまで不要になるわけではない。同通知は、責任者の設置・法令知識・安全確保能力・連絡体制・損害賠償責任保険への加入といった措置を、安全と旅行目的を確保するための留意事項として挙げている。参加費を徴収しないモニターツアーであっても、事故対応の備えは欠かせない。

実務では、自治体が前述の3要件を満たす形で実施する方法のほか、登録旅行業者に企画・実施を委託する方法などが考えられる。旅行業法の適用可否は、参加費の有無だけでなく、実施主体・運営実態・募集方法・継続性などを踏まえて個別に判断されるため、企画段階で都道府県の旅行業担当部署に確認しておきたい。

標準旅行業約款は、2026年3月9日付の観光庁・消費者庁告示第1号で改正され、同年4月1日から適用されている。ただし約款の本文には、モニターツアーや自治体主催ツアーを個別に扱う規定はない。登録旅行業者が募集型企画旅行などとして実施する場合は、採用している約款に基づいて契約条件を整える必要がある。

どの契約で組むかは、参加者に付く保護の中身も変える。募集型・受注型の企画旅行には、旅行会社の責任が生じるか否かを問わず補償金と見舞金が支払われる特別補償(標準旅行業約款・募集型企画旅行契約の部第28条、受注型は第29条)と、日程や運送・宿泊機関などが変わったときに変更補償金を支払う旅程保証(同第29条、受注型は第30条)が付く。特別補償の死亡補償金は別紙・特別補償規程第6条で海外2,500万円・国内1,500万円、変更補償金の支払限度は旅行代金に15%以上の各社が定める率を乗じた額である。一方、特別補償規程は対象を企画旅行契約に限っており(第2条)、旅程保証を定める条も企画旅行契約の部にしか置かれていない。手配旅行では、旅行会社の責任は手配旅行契約の部が定める一般の責任にとどまり、特別補償・旅程保証は付かない。

あわせて読む 旅行業法の登録区分や約款の仕組みそのものは、こちらでより詳しく解説している。

補助金の探し方と実例

造成系の補助金を探すときは、観光庁の公募ページで現在応募できる制度を確認するとともに、予算・概算要求資料から翌年度以降の施策動向を把握するとよい。ここでは、実際に公募された事業と、予算文書に事業内容として記載された事業の両面から見ていく。

まず公募事業の系統では、2024年度「地域観光新発見事業」が2024年3月8日〜4月17日に一次公募され、観光資源の磨き上げから販路開拓・情報発信までを一貫支援した。同事業では「造成した観光コンテンツに関するモニターツアーの開催」が補助対象経費に含まれる一方、モニターツアー参加者の実施場所までの旅費は対象外とされていた。

補助率は400万円まで定額、超過分は1/2、補助上限1,250万円という水準だった。2025年度にはこの事業が「地域観光魅力向上事業」に名称を変えて引き継がれている。

2024〜2026年度でみると、こうした造成支援事業は年度ごとに名称が変わっている。2026年には「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業」が公募され、二次公募は6月18日に受付を終了した。

いま募集中かどうかは年度や時期で変わるため、地域側は制度名を覚えるより観光庁の公募ページを定点観測するほうが確実だ。

この「観光需要分散のための地域観光資源のコンテンツ化促進事業」(2025年度補正予算による事業)の募集要領では、「造成した観光コンテンツに関するモニターツアーの開催」が補助対象経費として明記されている。ただしモニターツアー参加者の実施場所までの旅費は対象外で、試行だけで終わり当初から販売する予定がない使い方は審査上問題視される。

同じ公募事業の系統でも、要件は一様ではない。「地方部における観光コンテンツとローカルガイド人材の一体的な質的向上事業(実証事業)」では、モニターツアーを「原則として有償で実施する」ことを補助の要件としている。ただしこれは補助メニュー側の実施条件であり、旅行業法の適用可否は実施主体や募集・運営の実態に応じて別途確認する必要がある。

もうひとつの見方が、国の予算・概算要求資料自体がモニターツアーを事業内容として明記する例である。2026年度概算要求では、福島県観光関連復興支援事業(要求額500百万円)で「ホープツーリズムのプログラム磨き上げのためモニターツアーを実施」と明記されている。

同じ概算要求のブルーツーリズム推進支援事業(要求額166百万円・補助率8/10)でも「モニターツアーや商談会の実施等」でコンテンツ造成・磨き上げを支援するとされた。国の予算・概算要求資料に「モニターツアー」という言葉自体が明記された実例である。ただし予算資料への記載は施策動向を示すもので、そのまま申請できる補助制度とは限らない点に注意したい。

効果測定の設計

モニターツアーを実施したあと、何をもって「効果があった」と判断するか。個別のモニターツアー専用の基準ではないが、評価項目を検討する際には観光庁「DMOによるKGI・KPI計測に係る手引書 ver1.0(令和7年4月)」も参考にできる。同手引書は、来訪者満足度を5段階で聞き「大変満足+やや満足」の割合を用いる方法を示している。

満足度は単独で見るのではなく、平均泊数・リピーター率・再来訪意向などと合わせて把握するのが効率的とされる。ここで注意したいのは、同手引書がサンプル数の目安として示す満足度調査1,000以上・観光地点パラメータ調査3,000以上は、いずれもマネジメント区域全体を対象とするDMO調査の数字であり、数十人規模の個別モニターツアーに求める参加者数ではない点だ。個別ツアーでは原則として全参加者から回答を得たうえで、自由記述やヒアリングで改善点を具体的に把握することが重要になる。

KPI一覧(ツリー図・別表を含む)には「再来訪意向」「リピーター率」「SNSによる高評価率」「開発を支援した旅行商品・コンテンツの売上」などが並ぶ。このうち満足度や再来訪意向のように参加直後に確認できる項目はアンケート設計の参考になり、売上やリピーター率などは販売開始後の実績データとして別途追跡する必要がある。

SNSでの発信を成果指標に置くなら、景品表示法のステルスマーケティング規制も設計に織り込む必要がある。2023年10月1日に施行された指定告示は、その名のとおり「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を不当表示とするものだ。消費者庁は「規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です」「企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません」と明示している。つまり参加者に投稿を依頼する側、すなわちモニターツアーの主催者が責任を負う立場になる。無償招待や謝礼を伴う投稿を成果に数えるなら、事業者の関与が一般消費者に分かる形を募集条件の段階で決めておきたい。どう表示すれば足りるかは消費者庁の運用基準に当たる。

観光ビジネスの視点

モニターツアーの本当の勝負は、催行したあとにある。参加者アンケートを取った時点で満足すると、モニターツアーは「やって終わり」の単発イベントになり、造成にかけた費用も一度きりで消える。観光庁の補助事業や手引書が想定しているのは、造成・催行・検証・改善から商品化・販売までを一巡させる実証サイクルだ。満足度や再来訪意向をその場で測るだけでなく、改善した商品が実際に売れたか、リピーターを生んだかという販売開始後の実績まで追ってこそ、投じた予算が地域に残る。2026年度は観光庁予算が過去最大に膨らみ、造成を支援する公募も相次ぐ。試す機会が増える今だからこそ、「作って終わり」にしない設計を最初に決めておきたい。

よくある質問

モニターツアーとファムトリップは同じものか。

どちらも「試しに旅をしてもらう」点は似ているが、一般には対象と目的が異なるとされる。モニターツアーは一般の旅行者を対象に市場調査を主目的とし、ファムトリップは旅行会社・メディア・インフルエンサーなど業界関係者を対象に販促を主目的とする。ただしこの区分を厳密な行政定義として使い分けない資料もあり、境界は幅を持って理解しておきたい。

参加費を取ると旅行業の登録が必要になるか。

一律には決まらない。観光庁の2017年の通知によれば、自治体が実質的に企画・運営し、①参加費等で収支を償わない、②日常的に反復継続しない、③不特定多数に募集しない、という3条件をすべて満たす実施であれば、旅行業法の適用外になりうる。逆に、このいずれかを満たさない場合は、この通知に基づいて適用外と整理することが難しくなるため、実施前に都道府県の旅行業担当部署や専門家に確認する必要がある。

補助金はどこで探せばよいか。

造成系の補助事業は年度ごとに名称が変わるため、特定の制度名を覚えるより観光庁の公募ページを定点観測するほうが確実である。いま応募できる制度は公募ページや各事業の公式サイトで確認し、翌年度以降の施策動向は概算要求や予算決定資料から早めにつかんでおくとよい。

モニターツアーの効果はどう測ればよいか。

観光庁のDMO向けKGI・KPI手引書が参考になる。満足度は5段階で「大変満足+やや満足」の割合を使い、平均泊数・リピーター率・再来訪意向とあわせて把握するのが効率的とされる。ただし手引書のサンプル数の目安は地域全体調査のものなので、個別ツアーでは原則として全参加者からの回答を基本にしたい。

出典

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