クルーズツーリズムとは 市場規模と寄港地の経済効果

横浜港に寄港したクルーズ客船
Photo: Georgy Trofimov / Unsplash
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国土交通省の速報値によると、2025年に日本の港へのクルーズ船の延べ寄港回数は3,117回にのぼり、コロナ前のピークだった2018年(2,930回)を約6%上回った。寄港のたびに多くの乗客が上陸し、観光や買い物に向かう。クルーズツーリズムは、いま再び拡大の局面にある。

ただし、船が増えたことと、地域が潤うことは同じではない。クルーズ船で日本に入国した外国人旅客は176.7万人で、過去最多だった2017年(252.9万人)の約7割にとどまる。寄港地で1人が使う額も、平均で約2万2000円だ。

クルーズの経済効果は、寄港の回数だけでなく、どんな客がどれだけ滞在し、いくら使うかによって変わる。本記事では、クルーズツーリズムとは何か、世界と日本の市場規模、寄港地の経済効果の仕組み、代表的な港や船の事例、そして課題を解説する。

この記事のポイント

  • クルーズツーリズムは、客船で複数の港を巡る旅行と、それが寄港地にもたらす経済活動を指す。船に泊まりながら移動するのが特徴だ。
  • 2025年の日本への延べ寄港回数は3,117回(速報値)でコロナ前ピークを上回った一方、訪日クルーズ旅客数はピークの約7割で、寄港回数と旅客数は数え方が異なる別々の指標だ。
  • 港の役割は、途中で立ち寄る「寄港地」と、乗客が乗り降りする「発着地」に分かれる。これは外国船社か日本船社かという区分とは別だ。
  • 寄港地での消費は1人・1寄港地あたり平均約2万2000円で、政府は2030年までにこれを1.5倍にする目標を掲げる。
  • 政府は寄港回数・寄港港湾数に加え、1人あたり消費額と日本人クルーズ人口についても2030年の目標を設定している。
目次

クルーズツーリズムとは何か

クルーズツーリズムとは、客船で複数の寄港地を巡る旅行と、それにともなう経済・観光活動の総称だ。ホテルにあたる客船そのものが移動しながら宿泊機能を兼ねる点が、ほかの旅行と大きく違う。夜の間に船が次の港へ進み、朝には別の街に着いている。

港がクルーズに関わる形は、大きく二つに分けられる。一つは、航程の途中で船が立ち寄る「寄港地」。もう一つは、乗客が乗り込み、また降りる「発着地」だ。これは外国船社か日本船社かという運航会社の区分とは別で、外国船社の船による日本発着のクルーズもある。実際、2025年に日本発のクルーズを利用した訪日外国人は18.1万人と過去最高になった。

この二つは、地域経済への関わり方が異なる。寄港地では、乗客は数時間から半日ほど街に滞在し、買い物や現地ツアーを楽しんで船に戻る。宿泊は船の中だ。一方の発着地では、乗客が乗船前や下船後に周辺で宿泊し、飲食や観光にお金を使うこともある。

同じ1人でも、地域に落とす額は、港の役割や客層によって変わる。だからこそ、クルーズの経済効果は寄港回数だけでは測れない。以下、まず市場の規模から見ていく。

世界3,700万人、日本はピークの7割

寄港回数はコロナ前を超えた
クルーズ船の日本への寄港回数の推移(2016〜2025年・合計。横軸は西暦下2桁)
クルーズ船の日本への寄港回数の推移(2016〜2025年・合計) 日本各港へのクルーズ船の延べ寄港回数は、2018年の2,930回がコロナ前のピーク。2020〜2022年に大きく落ち込んだ後に回復し、2025年は3,117回で2018年を約6%上回った。 (回) 1,000 2,000 3,000 16 17 2,930 18 19 352 20 21 22 23 24 3,117 25
出典:国土交通省港湾局「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」別紙
この図表のデータを見る
クルーズ船 寄港回数(合計)
20162,017
20172,764
20182,930
20192,866
2020352
2021420
2022722
20231,888
20242,472
20253,117

国土交通省港湾局「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」別紙。寄港回数は日本船社・外国船社の延べ回数(回)。2025年の内訳は外国船社2,352回・日本船社765回。

世界のクルーズ人口は、コロナ禍からの回復を終え、過去最多を更新し続けている。クルーズライン国際協会(CLIA)によると、外航クルーズの旅客数は2019年の2,970万人から、2024年に3,460万人、2025年に3,720万人へと伸びた。2029年には4,210万人に達すると予測されている。

日本市場も回復の途上にある。国土交通省によると、2025年に日本へクルーズ船で入国した外国人旅客(訪日クルーズ旅客)は176.7万人(速報値)で、前年の約1.2倍に増えた。クルーズ船の寄港回数は3,117回(同、前年比約1.3倍)、外国クルーズ船が寄港した港は93港にのぼる。

ここで注意したいのが、二つの数字の性質の違いだ。寄港回数の3,117回は、日本船社・外国船社の船が全国の港に立ち寄った延べ回数を数えている。一方の176.7万人は、クルーズ船で入国した外国人の数で、1人が複数の港に寄っても1人と数え、日本人客は含まない。

寄港回数は過去のピークを超えたが、訪日クルーズ旅客数はまだ2017年の約7割であり、両者は別々の指標として読む必要がある。 過去最多だった2017年の訪日クルーズ旅客数は252.9万人。2025年の176.7万人は、その69.9%にあたる。

寄港が多い港トップ10

寄港が多い港トップ10
2025年 港別クルーズ船寄港回数 上位10港
2025年 港別クルーズ船寄港回数 上位10港 2025年に寄港回数が多かったのは博多と横浜(ともに209回)、那覇205回、長崎198回。以下、神戸142回、石垣130回、鹿児島129回、佐世保128回、広島106回、清水105回。 (回) 博多 209 横浜 209 那覇 205 長崎 198 神戸 142 石垣 130 鹿児島 129 佐世保 128 広島 106 清水 105
出典:国土交通省港湾局「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」別紙
この図表のデータを見る
順位寄港回数(回)
1博多209
2横浜209
3那覇205
4長崎198
5神戸142
6石垣130
7鹿児島129
8佐世保128
9広島106
10清水105

国土交通省港湾局「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」別紙。寄港回数は日本船社・外国船社の延べ回数。博多・横浜は同数で1位。

寄港がどこに集中しているかを見ると、クルーズツーリズムの地理がわかる。2025年に寄港回数が多かったのは、博多と横浜(ともに209回)、那覇(205回)、長崎(198回)だ。以下、神戸(142回)、石垣(130回)、鹿児島(129回)、佐世保(128回)、広島(106回)、清水(105回)と続く。

上位には九州・沖縄の港が多い。外国船社だけの寄港回数を見ると、長崎194回、博多191回、那覇187回と、これらの港では寄港の大半を外国船社が占める。

一方、横浜では日本船社の寄港が104回あり、乗客が乗り降りする発着の拠点にもなっている。港ごとに、外国船中心か、発着拠点かといった性格の違いがある。次に、経済効果の中身を分解する。

寄港地の経済効果は、何で決まるのか

寄港地と発着地の違い
クルーズが地域に落とすお金は、港の役割で変わる
寄港地(通過)
寄港
船が航程の途中で数時間〜半日だけ立ち寄る。宿泊は船内で、街では買い物や現地ツアーが中心。
地域に落ちるお金=寄港中の消費。滞在時間が長いほど増える傾向。
発着地(乗下船)
発着
乗客が乗り込み・降りる拠点。乗船前後に周辺で宿泊し、飲食や観光にお金を使うことがある。
とくに外国人客で1人あたり消費額が大きい傾向(国交省調査)。
(注:1人・1寄港地あたりの平均消費額は約2万2000円。船のクラス・国籍・発着/寄港の別によって1万円台から数万円まで幅がある)
出典:国土交通省港湾局「クルーズ船寄港に伴う経済効果の見える化」(2026年)、横浜市「クルーズ客の観光実態調査(2023〜2024年度)」をもとに作成

クルーズが寄港地にもたらす経済効果は、大きく三つに分けられる。乗客が街で使う消費、乗員の消費、そして船が支払う港湾関連の費用(入港料や物資の調達など)だ。このうち地域が実感しやすいのは、乗客の消費である。

国土交通省港湾局が2026年7月に公表した調査によると、クルーズ旅客が寄港地で使う額は、1人・1寄港地あたり平均で約2万2000円だった。この数字は、2025年8月から12月に寄港した18隻の乗客アンケートに加え、観光庁のインバウンド消費動向調査、出入国在留管理庁のデータ、船社への聞き取りなどを組み合わせ、船のクラス別・国籍別の単価を2025年の寄港実績にあてはめて推計したものだ。

消費の大きさは、船のクラスや客層によって差がある。同じ調査では、寄港地でのオプショナルツアーへの参加率が、ラグジュアリー・探検型の船(LEクラス)で60%、カジュアル・プレミアム型の船(CPクラス)で20%だった。寄港地での1人あたり消費額も、船のクラスや、日本人か外国人か、日本発着か海外発着かによって、1万円台から数万円まで幅がある。

もう一つの手がかりが、滞在時間だ。国交省の調査では、寄港地での滞在時間が1時間長くなるごとに、1人あたりの消費額が平均約900円増える傾向が確認された。寄港地に落ちるお金を増やす手がかりは、滞在時間、現地ツアー、そして発着地としての利用にある。 とくに外国人客では、発着地での消費が寄港地を上回る傾向がある。次に、具体的な港と船で見ていく。

横浜・長崎・飛鳥Ⅲで見る分かれ目

発着港としての横浜 前後泊が生む消費

横浜港は、寄港回数が2025年に209回へ伸び、博多と並ぶ全国トップとなった。前年の146回から大きく増えており、内訳は外国船社が77回から105回、日本船社が69回から104回へと、いずれも増加している。

横浜市の観光実態調査(2023〜2024年度)では、4隻の乗下船客846人を対象に行動を調べた。市内での宿泊率は4隻全体で27.0%(市内外を問わない宿泊率は37.1%)で、市内で観光した人は42.3%、飲食は27.1%、買い物は14.4%だった。乗船前後に横浜市内で宿泊・観光・飲食する乗客が一定数いることがわかる。

この調査は消費金額そのものは尋ねていないため、経済効果の大きさまでは測れない。それでも、乗り降りの拠点になることで、通過するだけの寄港では生まれにくい前後泊や市内観光が生じることは読み取れる。

外国船が集中する港 回数を消費につなげられるか

長崎、博多、那覇は、外国船社の寄港が集中する港だ。2025年の寄港回数はそれぞれ約200回前後にのぼり、繰り返し立ち寄る外国船社が寄港の大半を占める。寄港の「回数」という点では、日本を代表する港である。

ただし、寄港回数の多さが、そのまま地域の実入りの大きさを意味するわけではない。1回の寄港でどれだけの乗客が街に出て、どれだけ現地ツアーに参加し、どれだけ滞在するか。そこがお金の落ち方を左右する。回数の多い港ほど、その一隻一隻をどう消費につなげるかが問われることになる。

日本船の裾野づくり 飛鳥Ⅲの就航

外国船社が寄港回数の約4分の3を占める一方、日本船社でも供給を広げる動きがある。2025年7月20日、郵船クルーズが34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」を就航させた。総トン数5万2265トンの日本船最大級の客船で、母港は横浜。就航にあわせて国内30港への寄港も予定された。

日本人のクルーズ人口も回復途上にある。国土交通省によると、2025年の日本人クルーズ人口は24.3万人(前年比約8%増)で、内訳は国内クルーズ7.6万人、外航クルーズ16.7万人だった。過去最多だった2019年の35.7万人には届いていない。

政府は2030年までに、この日本人クルーズ人口を100万人に増やす目標を掲げている。現状の24.3万人からは4倍を超える野心的な水準だ。飛鳥Ⅲのような新造船は日本船市場の象徴だが、100万人規模の市場を育てるには、より手ごろな価格帯や短期クルーズなど、幅広い供給の広がりも欠かせない。

消費の細さ・混雑・抜港という課題

拡大するクルーズツーリズムには、いくつかの課題もある。まず、寄港地での1人あたり消費額をどう伸ばすかだ。政府は第5次観光立国推進基本計画で、1人・1寄港地あたり約2万2000円の消費額を、2030年までに2025年の1.5倍へ引き上げる目標を掲げた。港湾局はその水準を約3万3000円と見込む。

次に、混雑への対応だ。大型船が1隻着けば、多くの乗客が同じ時間帯に街へ集中する。特定の観光地や時間に人が偏り、住民生活や観光の質に影響しかねない。受け入れ側には、二次交通の確保や動線の分散といった対応が求められる。

受入環境の整備も欠かせない。船の大型化に対応する岸壁、税関・出入国・検疫(CIQ)の体制、旅客の受入施設などが必要になる。とくに乗客が乗り降りする発着港では、全員分の出入国手続きを捌く体制が要り、通過するだけの寄港よりハードルが高い。国は受入促進の補助や、受入機能を高めるためのガイドラインを整えてきた。

さらに、天候などによる寄港中止(抜港)が起きれば、事前に手配したツアーやバスが空振りになり、寄港地の経済は計画どおりにいかない。クルーズの経済効果は、船を呼ぶだけでは決まらず、受け入れる側の体制と設計に支えられて地域に根づく。

2030年、政府は何を目指すのか

クルーズツーリズムをめぐる政府の目標は、量と質の両面にわたる。2026年3月に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画は、2030年に向けて、訪日クルーズ旅客250万人に向けた取り組みの継続、外国クルーズ船などの寄港回数3,000回、寄港港湾数150港という目標を掲げる。

同時に、1人・1寄港地あたりの消費額を2025年の1.5倍にすること、日本人クルーズ人口を100万人にすることも目標に据えた。寄港回数や港数を追うだけでなく、寄港した客の消費や日本人市場の広がりも、あわせて目標に組み込んだ形だ。

そのために問われるのが、寄港した客をどれだけ長く滞在させ、地域で消費してもらい、発着拠点として取り込めるかだ。船を呼ぶ取り組みに加え、寄港した客の消費をどう地域に取り込むかも、政策上の課題になっている。

あわせて読む 観光交通の全体像と、訪日市場全体の動きは、それぞれ別の記事で整理している。

観光ビジネスの視点

クルーズ市場の回復は、寄港回数で語られがちだ。2025年の寄港回数は3,117回となり、コロナ前を上回った。しかし、寄港が増えれば、地域の収入も同じように増えるとは限らない。寄港回数は、船が港に立ち寄った回数の合計である。一方、訪日クルーズ旅客数は日本に入国した人数であり、そもそも数え方が違う。さらに、乗客1人が寄港地で使う金額は平均約2万2000円にとどまる。寄港回数を増やすだけでは、1人あたりの消費額は伸びない。

政府が寄港回数だけでなく、消費額や日本人市場の目標も掲げたのは、この課題に対応するためだ。地域への経済効果を高めるには、乗客の滞在時間を延ばし、現地ツアーへの参加や、日本発着クルーズの利用につなげる必要がある。今後は船を何回呼ぶかだけでなく、寄港した乗客に地域でどう過ごし、消費してもらうかが問われる。

よくある質問

クルーズツーリズムとは何か。

客船で複数の寄港地を巡る旅行と、それにともなう寄港地での経済・観光活動の総称だ。移動する客船が宿泊機能を兼ねるのが特徴で、夜のうちに次の港へ進む。港がクルーズに関わる形には、船が途中で立ち寄る「寄港地」と、乗客が乗り降りする「発着地」があり、運航会社が外国船社か日本船社かとは別の区分だ。外国船社による日本発着のクルーズもある。

クルーズの寄港回数と訪日クルーズ旅客数は何が違うのか。

数え方が異なる別の指標だ。寄港回数は、日本船社・外国船社の船が全国の港に立ち寄った延べの回数で、2025年は3,117回だった。訪日クルーズ旅客数は、クルーズ船で日本に入国した外国人の数で、1人が複数港に寄っても1人と数え、日本人は含まない。2025年は176.7万人だった。両者を直接比べて「1隻あたりの客が増えた・減った」とは判断できない。

クルーズ客は寄港地でどれくらいお金を使うのか。

国土交通省港湾局の調査では、寄港地での消費は1人・1寄港地あたり平均で約2万2000円と推計されている。船のクラスや客層によって差があり、オプショナルツアーへの参加率は高級船(LEクラス)で60%、カジュアル・プレミアム型(CPクラス)で20%だった。政府は2030年までに、この消費額を2025年の1.5倍(港湾局の試算で約3万3000円)へ引き上げる目標を掲げている。

寄港と発着では、地域への経済効果はどう違うのか。

とくに外国人客では、発着地での1人あたり消費額が寄港地より大きくなる傾向が国交省調査で示されている。発着地では乗客が乗船前後に周辺で宿泊し、飲食や観光にお金を使うためだ。横浜市の調査でも、乗下船客の市内宿泊率は27.0%だった(消費額そのものは調査していない)。ただし日本人客では逆に寄港地での消費が発着地を上回る例もあり、客層によって変わる。

日本のクルーズ市場の目標はどうなっているか。

第5次観光立国推進基本計画(2026年3月閣議決定)は、2030年に向けて訪日クルーズ旅客250万人に向けた取り組みの継続、外国クルーズ船などの寄港回数3,000回、寄港港湾数150港という目標を掲げる。あわせて、1人・1寄港地あたりの消費額を2025年の1.5倍にすること、日本人クルーズ人口を100万人にすることも目標としている。前者の訪日クルーズ旅客はインバウンド(訪日外国人)、後者の日本人クルーズ人口は国内・海外向けと、対象の異なる目標である。

出典

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