旅行業を始めるには登録が要る。この登録は扱える仕事の範囲によって第1種・第2種・第3種・地域限定の4つに分かれていて、どれを取るかで売れる商品が変わる。
分かれ目は、よく言われる「国内か海外か」ではない。ツアーを募集して自社で実施するとき、それをどこでやるかだ。地域限定だけは、そこに手配の区域制限が加わる。この記事では、区分ごとにできること、必要なお金と人、申請先、あとから区分を変える方法までを、条文と観光庁の資料で確かめながら整理する。
この記事のポイント
- 旅行業の登録は仕事の範囲で4つに分かれる。第1種から第3種を分けるのは、募集型企画旅行をどこで実施するかだ。
- 第3種は「国内だけ」ではない。受注型企画旅行と手配旅行は、海外も含めて区域の制限なく扱える。
- 地域限定は企画旅行だけでなく、運送や宿泊の手配まで拠点区域の中に限られる。
- 基準資産額は第1種3,000万円・第2種700万円・第3種300万円・地域限定100万円。区分は変更登録で変えられる。
旅行業の登録は何を分けているのか
旅行業や旅行業者代理業を始めるには、観光庁長官の登録を受けなければならない(旅行業法第3条)。
では、どこからが「旅行業」なのか。法第2条第1項の柱書は「報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業」と定め、運送サービスを提供する側のためだけに代理して契約を結ぶ場合は除いている。報酬を得て、事業として各号の行為をやるなら、それは旅行業にあたる。各号は第1号から第9号まであり、企画旅行の計画づくりと運送等サービス(運送または宿泊のサービス)の契約締結(第1号)、旅行者のための代理・媒介・取次ぎ(第3号)、運送等サービスを提供する側のための代理・媒介(第4号)、旅行の相談に応じること(第9号)などが並ぶ。
そのうえで、旅行業にだけもう一つ区分がある。法第4条第1項第3号が、登録の申請書に「国土交通省令で定める業務の範囲の別」を書かせていて、これが登録業務範囲だ。この登録業務範囲があるのは、条文上、旅行業だけである。旅行業者代理業にも旅行サービス手配業にも、範囲による区分はない。
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線引きは募集型企画旅行をどこでやるか
登録業務範囲の中身を決めているのは旅行業法施行規則第1条の3だ。第1号から第4号が、第1種・第2種・第3種・地域限定の4つに対応する。
4つとも「法第2条第1項各号に掲げる行為のうち、○○以外のもの」という引き算の形で書かれている。全部できる状態から何を引くかで区分が決まる、という作りだ。第1号の第一種旅行業務は引き算がなく、他社のツアーを代理して売る受託販売まで含めて全部を扱える。
第2号の第二種旅行業務が引くのは「本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。次号において同じ。)の実施に係るもの」だ。海外の募集型企画旅行だけができない、ということになる。
第3号の第三種旅行業務が引くのは「企画旅行(一の企画旅行ごとに一の……拠点区域……内において実施されるものを除く。)の実施に係るもの」。ここでいう企画旅行は、第2号の括弧書きにある「次号において同じ」によって募集型に絞られる。つまり第3種で区域に縛られるのは募集型企画旅行だけで、受注型企画旅行と手配旅行は引き算に入っていない。
第4号の地域限定旅行業務は書き方が変わる。「企画旅行(……一の拠点区域内において実施されるものを除く。)の実施に係るもの及び同項第三号から第五号までに掲げる行為(一の行為ごとに一の拠点区域内における運送等サービスの提供に係るものを除く。)に係るもの」を引く。企画旅行に加えて、法第2条第1項第3号から第5号までの行為も拠点区域の中に縛られる。第3号・第4号の代理・媒介・取次ぎだけでなく、第5号の「他人の運送機関や宿泊施設を使って旅行者に運送等サービスを提供する行為」も入る。
なお、他社が実施する募集型企画旅行を代理して売る行為は、第1号の括弧書きが「以下この条において同じ」としているので、第2号から第4号の判定にも同じように入ってくる。区分を問わず、他社商品の代売は範囲の中にある。
| 登録区分 | 募集型 企画旅行 (海外) |
募集型 企画旅行 (国内) |
受注型 企画旅行 |
運送等サービス の手配 |
登録行政庁 | 基準 資産額 |
営業 保証金 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1種 | 可 | 可 | 海外・国内とも可 | 海外・国内とも可 | 観光庁長官 | 3,000万円 | 7,000万円 |
| 第2種 | 不可 | 可 | 海外・国内とも可 | 海外・国内とも可 | 都道府県知事 | 700万円 | 1,100万円 |
| 第3種 | 不可 | 拠点区域内のみ | 海外・国内とも可 | 海外・国内とも可 | 都道府県知事 | 300万円 | 300万円 |
| 地域限定 | 不可 | 拠点区域内のみ | 拠点区域内のみ | 拠点区域内のみ | 都道府県知事 | 100万円 | 15万円 |
| 旅行業者 代理業 |
登録業務範囲の区分はない。所属旅行業者のために代理して契約を締結する。所属旅行業者以外の旅行業者のための取扱いは原則として禁止される(受託契約に基づく他社の企画旅行契約の代理締結を除く。法第14条の3第1項) | 都道府県知事 (観光圏内限定 代理業は 観光庁長官) | ― | ― | |||
第3種は国内専門、ではない
よく見かける誤解が「第3種は国内旅行しか扱えない」というものだ。条文はそうなっていない。第3号に「本邦外の」という限定はなく、その言葉が置かれているのは第2号(第二種旅行業務)だけだ。第3種でも、海外の受注型企画旅行と海外の手配旅行は区域の制限なく扱える。
では第3種と地域限定は何が違うのか。縛られる範囲が違う。第2号の括弧書きが効くのは「次号において同じ」=第3号までで、第4号には届かない。だから第4号の「企画旅行」は募集型も受注型も指すし、法第2条第1項第3号から第5号までの行為にも別に区域の縛りがかかる。国内か海外かではなく、拠点区域の外でやれる仕事がどれだけ残るかが、第3種と地域限定を分けている。
言葉づかいにも注意したい。区域の縛りを「特定区域」と説明する記述を見かけるが、旅行業法・施行令・施行規則のどこにもこの言葉は出てこない。法令の言葉は拠点区域で、定義は施行規則第1条の3第3号にある。
日本旅行業協会(JATA)の説明も条文と同じ向きだ。第3種は「海外・国内の受注型企画旅行の企画・実施、海外・国内旅行の手配旅行」などができ、募集型企画旅行は「実施する区域を限定し」国内のみとしている(注:JATAは業界団体で、根拠そのものは条文にある)。
扱える範囲だけの話ではない。企画旅行と手配旅行では、旅行者に付く保護の中身も違う。募集型・受注型の企画旅行には、旅行会社の責任が生じるか否かを問わず補償金と見舞金が支払われる特別補償(標準旅行業約款・募集型企画旅行契約の部第28条。死亡補償金は別紙・特別補償規程第6条で海外2,500万円・国内1,500万円)と、変更補償金を支払う旅程保証(同第29条。支払限度は旅行代金に15%以上の各社が定める率を乗じた額)が付く。特別補償規程は対象を企画旅行契約に限っており(第2条)、手配旅行にはこのどちらも付かない。
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拠点区域は隣接市町村と交通の拠点まで
拠点区域は3つでできている。自社の営業所がある市町村(特別区を含む)、それに隣接する市町村、そして観光庁長官が定める区域だ。
3つめの「観光庁長官の定める区域」は告示で決まっている(平成19年国土交通省告示第445号。平成30年観光庁告示第9号で改正)。中身は大きく2つで、営業所のある市町村の港を出た船が最初に着く港のある市町村と、地域内・地域間の交流を促す交通網や輸送の拠点がある市町村だ。
交通拠点の運用は観光庁の通達が示している。挙がっているのは駅・空港・港湾・バスターミナルなどで、営業所から最寄りの交通拠点がある市町村なら、そこを発着地にできる。その市町村の中であれば、交通拠点以外の場所から発着しても構わない。
ただし途中で立ち寄れる場所には制限がある。交通拠点のある市町村の中での立ち寄りと、そこから営業所やその隣の市町村へ向かう途中での立ち寄りは認められない(注:通達は行政の解釈を示すもので、条文そのものではない)。
区分ごとに必要な資金と有資格者
区分が決まると、必要なお金が決まる。人の要件はこれとは別で、営業所ごとに決まる。施行規則第3条が定める基準資産額の下限は、第一種旅行業3,000万円、第二種旅行業700万円、第三種旅行業300万円、地域限定旅行業100万円だ。
間違えやすいのが、この基準資産額の中身だ。単純な純資産ではない。施行規則第4条は、資産の合計から繰延資産と営業権を引いたうえで、負債の合計と営業保証金(旅行業協会の保証社員になるなら弁済業務保証金分担金)を差し引いた額としている。貸借対照表の純資産が300万円あるから第3種を取れる、とはいかない。なお旅行業者代理業には、そもそも財産的基礎の要件がない。
営業保証金は、前の事業年度の旅行者との取引額に応じて段階的に増える。取引額400万円未満の区分なら第1種7,000万円・第2種1,100万円・第3種300万円・地域限定15万円だ。供託して届け出るまでは事業を始められない(法第7条)。
人の要件は営業所ごとだ。法第11条の2第1項により、営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選ばなければならない。見落としやすいのは、必要な資格が登録区分ではなく営業所で扱う範囲で決まることだ。同条第6項は、拠点区域内の国内旅行だけを扱う営業所なら地域限定(その営業所がある地域の試験に受かった人に限る)・国内・総合のどれか、国内旅行だけを扱う営業所なら国内か総合、それ以外は総合、としている。第3種の登録でも、海外の手配旅行を扱う営業所には総合旅行業務取扱管理者が要る。
あわせて読む 旅行業務取扱管理者の資格・試験・研修は、こちらで詳しく解説する。
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3つの問いで自社の区分を絞る
第1種・第2種・第3種のどれを取るかは、3つの問いに順に答えれば絞れる。
1つめは、募集型企画旅行を自社で実施するかどうかだ。法第2条第1項第1号は、企画旅行の計画を「旅行者の募集のためにあらかじめ」作る場合と「旅行者からの依頼により」作る場合を書き分けていて、前者が募集型、後者が受注型にあたる。旅行者を募って自社のパッケージを売るのでなければ、区域の縛りは効かない。受注型企画旅行と手配旅行だけで事業が回るなら第3種で足りて、基準資産額は300万円で済む。
2つめは、その募集型企画旅行を拠点区域の外でやるかどうかだ。拠点区域の中で完結する着地型ツアーなら、第3種のままで実施できる。区域の外に出る国内の募集型企画旅行が要るなら、第2種へ上がることになる。
3つめは、海外の募集型企画旅行を自社で実施するかどうかだ。これができるのは第1種だけになる(他社が実施する募集型企画旅行の代売は、区分を問わず扱える)。
地域限定を選ぶかどうかは、この3問とは別に考えたほうがいい。基準資産額100万円・営業保証金15万円(前の事業年度の旅行者との取引額が400万円未満の場合)という軽さと引き換えに、受注型企画旅行も運送・宿泊の手配も拠点区域の中に限られるからだ。
申請先と手続き、区分を変えるとき
申請先は区分で分かれる。施行規則第1条の2によれば、第一種旅行業務の新規登録と更新登録は観光庁長官、第二種・第三種・地域限定は主たる営業所がある都道府県の知事、旅行業者代理業も知事への新規登録(代理業に更新登録の定めはない)だ。ただし政令の振り分けは、区分の名前ではなく仕事の中身で書かれている。旅行業法施行令第5条第1項が知事の仕事としているのは「本邦外の企画旅行(参加する旅行者の募集をすることにより実施するものに限る。)を実施しないものに限る」旅行業で、結果として第2種以下が知事の所管になる。観光圏内限定旅行業者代理業(後述)はここから除かれていて、観光庁長官の所管のままだ。
観光庁が地方運輸局あてに出した通達では、登録・更新登録・変更登録の標準処理期間はいずれも60日とされている。手数料は国と自治体で分かれ、観光庁長官が処理する更新登録は施行令第4条第1項で29,200円(電子申請なら28,300円)、知事が処理する登録は自治体ごとの定めによる(注:知事登録の実際の処理期間と手数料は申請先に確かめたい。大阪府の旅行業新規登録申請の手数料は20,600円〔2026年8月5日確認〕)。
登録には期限がある。法第6条の2は旅行業の登録の有効期間を5年とし、更新の申請は期限が切れる2か月前までに出すことになっている。この5年の期限と更新登録があるのは「旅行業の登録」だけだ。旅行業者代理業に準用する規定はなく、旅行サービス手配業の登録にも有効期間の定めはない。
区分は固定ではない。法第6条の4第1項は、業務の範囲を変えるときは変更登録を受けなければならないとしている。第3種で始めて、扱いたい範囲が広がった段階で第2種へ上がることもできる。変更登録で問われるのは、営業所ごとに旅行業務取扱管理者を確実に選べるかと、財産的基礎があるかの2つだけだ。同条第2項が法第6条を準用するときに、拒否事由を同条第1項第9号・第10号へ読み替えているためである。とはいえ変更後の区分の要件は満たさなければならない。第3種から第2種なら基準資産額を300万円から700万円へ、営業保証金を300万円から1,100万円へ引き上げることになり、手続きにも60日ほどを見込む。変更登録を受けずに範囲を変えれば罰則の対象になる。営業所の名前や場所の変更は、変更登録ではなく30日以内の届出でいい。
無登録営業と登録取消しのリスク
登録を受けずに旅行業を営むと、法第74条第1号により1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方になる。不正な手段で登録を受けること(第2号)、名義貸し(第4号)、無登録の旅行サービス手配業(第6号)も同じ条に並んでいる。
罰則とは別に、登録そのものを失う道もある。登録が下りても、営業保証金を供託して届け出るまでは事業を始められない。届出がなければ催告が行われ、催告で決めた期間内にも届出がなければ登録を取り消すことができる(法第7条第3項〜第5項)。観光庁の行政処分情報によると、2026年2月19日に大阪府が第2種の旅行業者1社の登録を取り消した例がある。なおこの一覧は旅行業法にもとづく命令・業務停止・登録取消しを過去5年度分だけ載せるもので、無登録営業は罰則の対象なので入らない(注:一覧に件数がないことは、無登録営業がないことを意味しない)。
旅行業者代理業には別の失効事由がある。法第15条の2は、所属旅行業者のために旅行業務を扱う契約が切れたとき、または所属旅行業者が法第20条第1項・第2項によって旅行業の登録を抹消されたときに、代理業の登録は効力を失うとしている。自社に落ち度がなくても、所属先の事情で登録が消える作りだ。
2026年の制度の現在
登録制度そのものは、このところ動いていない。2026年8月5日の時点で、旅行業法・同施行令・同施行規則とも2026年2月以降の改正はなく、未施行の改正も置かれていない。基準資産額・営業保証金・弁済業務保証金分担金の額の改定もない。
動きがあるのは周辺だ。観光庁が2026年2月20日に公表した観光圏の機能強化に係る有識者会議のとりまとめは、旅行業法の特例(実務上は観光圏内限定旅行業者代理業を指す。観光圏の滞在促進地区で旅館業を営む人が、旅行業の登録を受けずに観光圏内の旅行について宿泊者と契約できる制度で、根拠は観光圏整備法第12条第1項にある)について、「必須要件となっている研修の受講機会を、観光圏整備計画及び整備実施計画の認定時のみならず、定期的な開催に変更することにより、活用機会を拡充」する方針を示した。いつからかは示されていない。
登録業者数は観光庁の一覧表で確かめられる。2026年4月1日現在で第1種599者、第2種3,224者、第3種5,081者、地域限定870者、旅行業者代理業450者、旅行サービス手配業3,901者、合計14,125者だ。第3種が5,081者で最も多く、地域限定は870者にとどまる。東京都は第1種を324者抱えていて、全国599者の過半を占める(注:主たる営業所の所在地で数えた値)。
区分選びに関わる直近の予定としては、令和8年度の地域限定旅行業務取扱管理者試験が2026年9月27日に実施される(2026年8月5日時点)。この記事で確かめた範囲(2026年の観光庁の報道発表とトピックス)では、登録区分そのものを見直す動きは見当たらない。
登録区分は、資金力に応じた会社の「ランク」ではない。区分ごとに異なるのは、会社の規模ではなく、取り扱える旅行業務の範囲である。
第3種旅行業は、基準資産額が300万円必要であるが、海外の受注型企画旅行や手配旅行を、拠点区域に縛られず取り扱える。一方、地域限定旅行業の基準資産額は100万円と低いものの、受注型企画旅行や運送・宿泊の手配は、拠点区域内に限られる。
つまり、資金要件の軽さは、拠点区域を越えて旅行商品を組む自由と引き換えになっている。登録区分を選ぶ際は、用意できる資金額より先に、「どのような商品を売り、そのために必要な業務をどこで行うのか」を明確にすることが重要である。
よくある質問
出典
- e-Gov法令検索「旅行業法(昭和27年法律第239号)」
- e-Gov法令検索「旅行業法施行令(昭和46年政令第338号)」
- e-Gov法令検索「旅行業法施行規則(昭和46年運輸省令第61号)」
- 観光庁「営業保証金制度及び弁済業務保証金制度の概要」
- 観光庁「各都道府県の旅行業者・旅行業者代理業者・旅行サービス手配業者数一覧表」(令和8年4月1日現在)


