調査では注目先2位、訪日中国人は半分以下
中国本土の旅行者向けに海外旅行(アウトバウンド)商品を販売する業界従事者310人への調査で、日本は「2026年の最も注目すべき渡航先」の2位に挙げられた。1位はタイである。
この調査は、Dragon Trail Internationalの調査部門Dragon Trail Researchが2026年7月29日に公表したChinese Outbound Travel Trade Surveyだ。渡航先として挙げた回答者の割合は、タイが19%で1位、日本が16%で2位、韓国が13%で3位だった。
調査期間は同年6月15〜26日。中国本土の旅行者に海外旅行商品を販売している業界従事者310人から、有効回答を得ている。
同じ調査で、2026年上期の中国アウトバウンド需要が「前年同期より増えた」と答えた回答者は77%にのぼる。夏についても70%が「前年夏より増えた」と回答した。
一方、実際に日本を訪れた中国人は大きく減っている。日本政府観光局(JNTO)が2026年7月15日に公表した6月の訪日外客数(推計値)によると、中国は340,700人で前年同月比57.3%減、1〜6月の累計は2,058,200人で56.4%減となった。なお比較の相手となる2025年の数値は暫定値である。
中国アウトバウンド全体では回答者の77%が需要の増加を報告した一方で、訪日中国人は半分以下に落ちている。この二つは同じ需要を測った数字ではない。それでもなぜここまで開くのかを、中国側の調査と日本側の航空便数の両方から読み解く。
あわせて読む 6月の訪日外客数全体の内訳は、こちらで詳しく解説している。
訪日6月315万人、6.8%減の大半は中国一国の落ち込み
JNTOは6月の資料で、中国市場の減少要因をこう説明している。「中国政府より日本への渡航を避けるよう注意喚起があった」。続けて、昨年は5月末に始まった端午節が今年は6月中旬にずれた点を「影響等はあったものの」と譲歩の形で挟んだうえで、「航空便の減便の影響等もあり、訪日外客数は前年同月を下回った」と記す。
JNTOが減少要因として挙げたのは、渡航自粛の注意喚起と航空便の減便の二つである。端午節のずれは、今年の6月にはむしろ押し上げに働きうる要素として触れられている。つまり需要側の要素と供給側の要素が併存している。
供給側で何が起きているのかを見ていく。方面別の内訳まで開示している関西国際空港の資料から入る。
他方面の純増は中国便の減少の3分の1
関西エアポートが2026年3月24日、夏期スケジュールを公表した。関西国際空港の国際旅客便は週1,202.8便の計画である。前年夏の実績1,449.0便から246.2便、17%の減少だ。
方面別に見ると、減少はほぼ中国に集中している。中国は週536.5便から162.9便へ373.6便減り、70%の減少となった。この資料は香港・マカオを別区分として扱っており、ここでいう「中国」は中国本土である。
一方で増えた方面もある。韓国は372.6便から468.6便へ96.0便増えた(26%増)。東南アジアは181.1便から207.1便へ26.0便増(14%増)で、台湾は5.7便増、欧州は1.4便増と小幅に伸びた。
この図表のデータを見る
| 方面 | 2025年夏(実績) | 2026年夏(計画) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 536.5 | 162.9 | ▲373.6 |
| 韓国 | 372.6 | 468.6 | +96.0 |
| 東南アジア | 181.1 | 207.1 | +26.0 |
| 台湾 | 131.4 | 137.1 | +5.7 |
| 欧州 | 27.0 | 28.4 | +1.4 |
| 香港・マカオ | 128.6 | 128.4 | ▲0.2 |
| 北米 | 31.8 | 31.6 | ▲0.2 |
| オセアニア・グアム | 21.2 | 20.0 | ▲1.2 |
| その他 | 18.9 | 18.6 | ▲0.3 |
| 国際旅客便 合計 | 1,449.0 | 1,202.8 | ▲246.2 |
(注:各方面の値は週平均の公表値を小数第1位まで示したもの。端数処理のため内訳の合計は合計行と一致しない。ハワイ13.0→12.8便は北米の内数)
関西エアポートは「中国を除く」国際旅客便の系列も示している。週912.5便から1,039.8便へ127.3便増、14%増だ。便数の差し引きで見ると、中国以外の純増127.3便は、中国の減少幅373.6便の34%に相当する。国際旅客便の全体では、246.2便の減少が残る。
(注:国際貨物便は週150.7便から197.0便へ増えており、旅客と貨物を合わせた国際線全体の減少は199.9便となる)
資料は、他方面の増便が中国便を置き換えたとは認定していない。読み取れるのは便数の差し引きだけで、中国以外の純増は中国の減少幅の3分の1に相当し、全体では減少幅の約66%に当たる純減が残った、というところまでである。
全国でも方向は同じである。国土交通省の2026年夏期スケジュールによると、日本発着の国際定期便は週5,996.5便で、前年同時期(2025年夏期当初)の計画から3%減だった。うち旅客便は5,445.5便で当初計画比4%減となっている。資料は「中国路線は大幅に便数が減少しましたが、韓国、台湾、香港、マレーシア、インドのアジア路線や米国本土、欧州路線で前年同時期より便数が増加しました」と記す。
日本が首位なのは言及の少ない項目だけ
供給の話に、需要側の構造を重ねてみる。同じDragon Trailの調査は、回答者が渡航先を「注目すべき」と考えた理由も集計している。
理由の上位は自然景観が22%、市場需要の伸びが19%、近さ・交通の便が17%だった。コストパフォーマンスと文化体験がそれぞれ14%で続く。為替メリットは5%で、レポートが分類した14テーマのうち下位に位置する。この%は重要度の評価ではなく、その理由を挙げた回答者の割合である。
巻末の付録には、理由ごとの国別言及回数が載っている。日本が他国を上回った項目は、14テーマのうち「為替メリット」の1つだけだ。日本8回に対し、韓国4回、タイ1回だった。
ただしこれは他国との相対順位であって、日本自身にとっての比重とは別の話である。日本に付けられた理由を回数順に並べると、最も多いのは「近さ・交通の便」の11回で、為替メリットの8回はそれを下回る。
そしてその「近さ・交通の便」では、韓国が17回、タイが15回で日本の前にいる。「コストパフォーマンス」もタイ20回、韓国9回、日本8回の順だ。
日本は、よく挙げられる理由のどれでも1位を取れていない。1位に立てたのは、回答者全体での言及率が5%にとどまる為替メリットだった。
その「近さ・交通の便」で日本が3番手に置かれている結果は、事業者にとって考えるに値する。便数とアクセス利便性の評価がどう結び付くかは、今後の確認事項である。
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関西国際空港の中国便は、2026年夏期計画で前年夏の実績を週373.6便下回る。中国以外の純増で補えるのは、その34%にあたる127.3便にすぎない。しかも計画値は期中に変わり得るため、中国便の回復時期を見込んで売上計画を一本化するのはリスクが高い。中国便の回復を待つ計画と、待たない計画を分けて持つ必要がある。
一方、韓国は週96.0便増(26%増)、東南アジアは26.0便増(14%増)となる。この2方面への振り替えは、言語対応や送客チャネル、商品構成を見直す好機だ。次に確認すべきは、関西エアポートと国土交通省が公表する冬期スケジュールだ。中国便の動きを見極め、振り替えをどこまで進めるか決めたい。
出典
- Dragon Trail Research「Chinese Outbound Travel Trade Survey: July 2026」(レポートPDF)
- 関西エアポート「2026 Summer Schedule Average Weekly International Flights to Reach 1,399.8」
- 国土交通省「2026年夏期スケジュール 国際定期便の概要について」
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年6月推計値)」


