飲食店や宿の経営者が配膳ロボットを検討すると、まず気になるのは「いくらなのか」だ。公式ページで公表されている価格は、事業者ごと、契約の形ごとに条件が違い、そのまま並べて相場とは言えない。
本記事は、2026年10月時点で事業者の公式ページと補助金の公募要領に載っている数字を、条件をそろえて読む方法を整理する。確認する点は3つある。購入かレンタルか、保守は含まれるか。自店の通路に機種が合うか。補助金の対象製品かだ。市場の相場を調べた記事ではなく、機種の機能比較、ランキング、人手不足の全体像、導入の効果値も扱わない。
この記事のポイント
- 購入価格の月額換算に保守が含まれない例があり、レンタル月額には保守が含まれる例がある
- アイリスオーヤマのレンタル4プランは、月額に契約期間を掛けると約359万〜599万円になる(税別・初期費用除く)
- 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は補助率が1/2以下で、対象は登録製品に限る
「価格」は、何を含む数字かで意味が変わる
配膳ロボットの価格には、4つの要素が絡む。本体の価格、保守の費用、初期費用、契約の期間だ。何の費用が入った数字なのかを確かめずに並べても、比較にならない。
たとえば、ある購入価格は、月額に直した数字に保守が入っていない。別のレンタル月額は、本体も保守も含んでいる。この2つを並べて安い高いを言えば、保守の分だけ読み違える。
補助金のカタログに、配膳ロボットのカテゴリがある
配膳ロボットの費用を考えるときは、補助金も確認しておきたい。国の中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、登録された製品の中から選んで導入する仕組みで、製品カタログには「配膳ロボット」のカテゴリがある。
取得日時点で、製品カタログの検索画面でこのカテゴリを選ぶと、3件が表示された(BUDDY、カチャカプロ+シェルフ3段、カチャカプロ+ベース)。アイリスオーヤマやソフトバンクロボティクスが公表する機種は、この結果に出なかった。ただし、検索に出るのは詳細情報が登録された製品だけだ。出ないことは、対象外を意味しない。対象かどうかは、製品と販売事業者の登録で決まる。本記事の価格やプランが対象かどうかは、ここでは確認していない。
公募要領(第11回改訂、令和8年3月19日)によると、申請の受け付けは令和9年3月末頃までだ。公式サイトのカタログ注文型のページには、取得日時点で「随時公募 受付中」と表示されている。補助の詳しい条件は、後半で整理する。
購入とレンタルで、保守の扱いが違う例がある
ソフトバンクロボティクスは、Keenbot T8の購入価格を2,020,000円と公表している。この価格を5年(60か月)で割った月額(税別)には、保守サポート費用の月16,000円(税別)が含まれないと注記している。
同じ事業者のレンタルには、保証サービスが含まれる。アイリスオーヤマのServiのレンタルプランには、機器本体と付属品、ソフトウェアとクラウドサービスの利用、保守サービスが含まれる。
保守や保証が付く場合も、故障時の費用負担や交換までの日数は契約によって異なる。破損や誤操作が対象になるかも、書面で確認したい。
故障時の交換には条件がある。ソフトバンクロボティクスは最短で翌日の交換を案内しているが、翌日交換は12時までに交換が確定した場合に限り、エリアによって配送日数も変わる。アイリスオーヤマも、翌日の機体交換に条件があると注記している。
購入価格の月額換算に保守が含まれず、レンタルには含まれる例がある。ただし、これは事業者ごとに違う。一般化はできない。今回確認した公式ページでは、ソフトバンクロボティクスのレンタルの月額を確認できなかった。
| 購入(T8) | レンタル(Servi) | |
|---|---|---|
| 購入価格÷60か月 | 本体 | 機器本体と付属品 |
| 含まない | 保守 | 含む |
| 60か月で割る前提 | 期間 | 3年・5年プラン |
公表されている価格は、事業者ごとに条件が違う
今回確認した公式ページの公表の仕方は、2つに分かれる。1つは、価格の考え方だけを示し、金額は見積もりで出す形だ。ソフトバンクロボティクスのページは、打ち合わせとヒアリングの後に正式な見積もりを出すと書く。料金のよくある質問には、契約によって異なると答えている。
ベアロボティクスとプードゥの日本語の公式ページでは、価格の記載を確認できなかった。
もう1つは、レンタルの月額を載せる形だ。アイリスオーヤマは、Keenbot T5とServiのアイリスエディションについて、3年プランと5年プランの月額を公表している。いずれも税別で、買い取りプランは問い合わせとされている。価格プランのページには、初期費用が別途必要と書かれている。
同じ形式で月額を確認できたのは、今回の公式ページではアイリスオーヤマの4プランだけだ。表にまとめる。
| 機種(レンタル・税別月額・1台) | 3年プランの月額 | 5年プランの月額 |
|---|---|---|
| Keenbot T5 アイリスエディション | 99,800円 | 89,800円 |
| Servi アイリスエディション | 119,800円 | 99,800円 |
(注:すべて税別。初期費用は別途必要と、価格プランのページに書かれている。2026年10月17日取得。アイリスオーヤマの公式ページによる。)
この2機種では、5年プランのほうが月額は安い。月額だけを見ると、契約期間の違いが見えなくなる。この表の数字を、ソフトバンクロボティクスの購入価格や、他社の見積もりと並べることはしない。
月額は、契約期間全体の支払額でも見る
月額だけでなく、契約期間を通した支払額も見ておきたい。上の4プランを、プランの名称どおり3年を36か月、5年を60か月として掛けた額が、次の表だ。
| 機種 | 3年プランの月額の積算 | 5年プランの月額の積算 |
|---|---|---|
| Keenbot T5 アイリスエディション | 3,592,800円 | 5,388,000円 |
| Servi アイリスエディション | 4,312,800円 | 5,988,000円 |
(注:月額×月数の単純計算。税別、初期費用別。編集部の算術であり、契約上の最低支払額や実際の請求総額を示すものではない。)
Serviのページには、5年プランと並んで「初回36ヶ月契約、以降12ヶ月毎の自動更新」との注記がある。5年プランの契約期間の扱いは、ページだけでは読み取れない。契約前に、最低利用期間、更新後の料金、途中解約時の負担を事業者に確かめる必要がある。
この積算額は、購入価格とそのまま比べられない。機種も契約の形も、保守の範囲も違うからだ。購入と比べるときは、同じ利用期間で必要な総額を見積もる。購入なら本体代に保守費用などを加え、レンタルなら契約期間中の支払いと、途中解約や返却の条件を確認する。見積もりの月額は、契約期間を掛けた金額で読み直す。
事業者の試算は、前提を読んでから使う
ソフトバンクロボティクスのページには、導入メリットとして「時給約94円」という数字がある。Keenbot T8の購入価格を5年で割った月額を、1日12時間営業×30日の営業時間で割った、1時間あたりの費用だ。式は、33,667円÷(12時間×30日)=93.51円と示されている。
この月額には、保守サポート費用が含まれない。保守の月16,000円を足すと、月49,667円になる。同じ360時間で割ると、1時間あたり約138円だ。試算の前提を変えずに保守を入れるだけで、1時間あたりの費用は約1.5倍になる。
(注:編集部の計算。事業者が示した月360時間の営業時間と、5年での購入価格の月額換算をそのまま使った算術であり、ロボットの実稼働時間や効果を示すものではない。)
約94円も約138円も、営業時間で割った費用であり、人件費の削減額ではない。1台が何時間分の仕事を置き換えるかは、今回確認した資料からは分からない。実際の判断には、料理を運ぶ回数やスタッフの移動がどれだけ減るかを、自店で確かめる必要がある。
補助金を使う場合に、確かめること
補助金を使う場合は、契約する順番に注意する。交付決定の通知を受けてから、補助事業に着手する必要がある。
公募要領は、交付決定前に購入した製品や発生した費用を補助の対象外とし、事前着手はいかなる理由でも認められないとしている。補助事業には、契約や納品、支払いも含まれる。補助金は、実績報告と確定検査のあとに請求し、支払われる。
カタログ注文型の補助率は、公募要領で「1/2以下」とされている。補助上限額は従業員数で決まる。5人以下は500万円、6〜20人は750万円、21人以上は1,000万円だ。従業員5人以下の事業者にも、上限500万円の枠がある。
一定の賃上げ目標を満たす計画の場合は、上限がそれぞれ750万円、1,000万円、1,500万円に上がる。目標は、事業場内最低賃金を3.0%以上、給与支給総額を6%以上増やすことで、申請時に従業員へ表明する必要がある。達成できない場合は、補助額が減額される。補助上限額は、申請する事業者の従業員数の枠で決まる。複数店舗を運営する法人は、導入店舗だけの人数で判断しない。
公募要領によると、主な条件は次のとおりだ。
- 補助の対象は、カタログに登録された製品に限る。購入先の販売事業者も、その製品を取り扱う事業者として登録されている必要がある
- 補助事業の終了後3年間、労働生産性を年平均3.0%以上向上させる事業計画を立てる必要がある
- 購入は、単価が50万円以上のものが対象になる。補助額が25万円未満の申請はできない(借用を除く)
- 購入価格が製品ごとの補助上限額の2倍を超えると、補助率は1/2未満になる
- 設置や運搬、動作確認などの導入経費も対象になる。ただし、借用(レンタル)の場合、導入経費は対象外になる
- 借用(賃貸借契約を指し、ファイナンス・リースを含まない)は、年額で借料が定められて登録された製品について、12か月分の借料が補助対象経費になる。実際の補助額は、補助率と上限額で決まる。賃貸借契約を1年未満で解約すると、交付決定が取り消される
- ファイナンス・リースは、対象のリース会社との共同申請になる
- 人手不足の状態であることの確認が要る。例として、直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えることが挙げられている
購入者の自己負担を減らす取引には、注意が必要だ。ポイントやクーポン、払い戻しで購入額を減らし、証憑の金額と実際の支払額が一致しない取引は、不適切とされる。不当な申請と判断されれば、交付決定や販売事業者の登録が取り消されることがある。
このほかに、「一般型」という別の枠がある。補助率と上限額は別に定められており、本記事は扱わない。
導入前に施設で確かめること
確かめる点は3つある。まず、施設の通路に機種が通るかどうかだ。ソフトバンクロボティクスのページには、機種ごとの最小通過幅が載っている。主な機種は次のとおりだ。
| 機種 | 最小通過幅 |
|---|---|
| Servi Q | 45cm以上 |
| Keenbot T8 | 55cm以上 |
| Servi | 60cm以上 |
| BellaBot、Servi Plus | 70cm以上 |
| Keenbot T5 | 80cm以上 |
(注:ソフトバンクロボティクスのページの掲載値の抜粋。アイリスオーヤマのServi(60cm以上)とKeenbot T5(80cm以上)も同じ値。必要な通過幅は環境や使い方で異なると、アイリスオーヤマは注記している。)
通路幅は最初の確認項目だが、それだけでは判断できない。椅子を引いた状態や、客とスタッフが行き交う時間帯でも走れるかが問われる。可能であれば導入前に実機を試し、厨房から客席までの動きや待機場所を確認したい。ホテルや旅館では、朝食会場や宴会場など、使う場面を先に決める。
次に、見積もりの条件をそろえてもらう。購入かレンタルか、契約期間と更新の条件、保守の範囲、初期費用、途中解約時の費用と返却条件の5点を、書面で確認する。条件が違う見積もりは、金額が近くても、そのままでは比べにくい。
最後に、補助金の対象かどうかを確かめる。検索に出ない場合は、製品と販売事業者それぞれの登録の有無を事業者に聞く。申請の手順と条件は、公募要領で確認する。
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配膳ロボットの価格は、月額の大きさではなく、何が含まれる数字かで読む。Keenbot T8は、購入価格を60か月で割った月額に、別途示されている保守サポート費用の月16,000円が含まれていない。一方、アイリスオーヤマのServiのレンタルプランには、保守サービスが含まれる。
数字が近くても、含まれるものが違えば、別の商品として読む必要がある。月額を見る前に、その数字に保守と期間が入っているかを、事業者に聞くことだ。
よくある質問
出典
- 中小機構「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)公募要領 第11回改訂(令和8年3月19日)」
- 中小機構「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」
- 中小機構「省力化製品検索(カタログ注文型)」
- ソフトバンクロボティクス「最新配膳ロボット徹底解説!猫型モデルや価格などレストランの導入解説」
- アイリスオーヤマ「配膳ロボット 価格プラン」
- アイリスオーヤマ「配膳ロボットServi IRIS EDITION」


