宿泊税が全国に拡大 京都は上限1万円、東京は定率制へ、北海道は道税を新設

瓦屋根の町並みの奥に法観寺の五重塔(八坂の塔)が立つ京都市街の眺め
Photo: Daisy Chen / Unsplash
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宿泊税の導入が全国に広がる

ホテルや旅館に泊まると、宿泊料金とは別に1泊あたり数百円が上乗せされる。この「宿泊税」を導入する自治体が、ここ数年で急速に増えている。

参議院調査室の整理によると、2025年10月時点で総務大臣の同意を得た自治体は42団体、うち施行済みは14団体だった。2026年は、京都市が上限を1万円に引き上げ、東京都が定率制への移行を決め、北海道が道税を新設するなど、制度の節目が集中する年になった。

宿泊税は、地方税法に税目の定めがない「法定外目的税」である。自治体が条例で定め、総務大臣の同意を得て導入する。使途は各自治体の条例で定められ、観光振興や受け入れ環境の整備、混雑対策、住民と観光客の共生などに充てられる。一般の財源には使えない。

徴収は宿泊施設が担う。宿泊者から税を預かり、自治体へまとめて申告・納付する「特別徴収」の仕組みで、住宅宿泊事業法にもとづく民泊も多くの自治体で対象になる。

税額は「定額・段階・定率」の3類型

全国の宿泊税は、税額の決め方で大きく3つに分かれる。

ひとつは1泊あたり同じ額を取る定額制だ。次に、宿泊料金の帯ごとに税額が上がる段階制があり、東京都や大阪府、京都市などが採る。三つめが宿泊料金に一定の率を掛ける定率制で、北海道倶知安町や長野県野沢温泉村が採用している。

主要な自治体を施行の早い順に並べると、次のようになる。

自治体施行方式・税額
東京都2002年10月(2027年度に定率制へ移行予定)段階定額 100〜200円。2026年3月に定率3%(1万3千円未満は非課税・上限なし)への改正条例を可決
大阪府2017年1月(2025年9月改定)段階定額 200/400/500円(5,000円未満は非課税)
京都市2018年10月(2026年3月改定)段階定額 200〜10,000円(10万円以上で1万円)
金沢市2019年4月段階定額 200/500円(5,000円未満は非課税)
倶知安町(北海道)2019年11月(2026年4月改定)定率 3%(道税分を内包)
福岡市・北九州市2020年4月県税+市税の二層。福岡市は200/500円、北九州市は200円(いずれも県税50円を含む)
北海道(道税)2026年4月段階定額 100/200/500円
長野県2026年6月定額 300円(当初3年は200円・6,000円未満は非課税)
湯河原町2026年4月段階定額 300/500円
岐阜市・鳥羽市2026年4月定額 200円

(注:税額は原則として1人1泊あたり。北海道・福岡県・長野県などでは道県税と市町村税が重なる場合があり、表中の額が宿泊者の総負担額と一致しないことがある)

注目したいのが、都道府県税と市町村税が同じ宿泊に重なる「二層課税」だ。福岡県では県税に福岡市・北九州市の市税が乗り、長野県でも県税と松本市などの市税が並ぶ。長野県は両者が重い負担にならないよう、市町村が課税する宿泊については県税を半額に調整する仕組みを設けた。

あわせて読む 長野県の宿泊税・二層課税の調整の仕組みは、こちらで詳しく解説している。

緑豊かな渓谷を流れる川(長野県のイメージ) 長野県の宿泊税、6月から1人200円 市町村税と重なる地域は県税半額

2026年の改定で税額が一段と上がる

2026年は、既存の宿泊税を引き上げる動きと、新たな課税の両方が重なった年だ。

京都市は2026年3月1日の宿泊分から税額を見直し、従来の3区分を5区分に細分化したうえで、宿泊料金10万円以上に1人1泊1万円という最上位区分を設けた。1泊1万円は、主要自治体の段階定額制では突出して高い。市はこの見直しで税収が約126億円に増えると見込む。

東京都は2026年3月、現行の段階定額制を定率3%へ改める改正条例を可決した(2027年度に施行予定)。非課税の範囲を宿泊料金1万円未満から1万3千円未満へ広げる一方、税額に上限を設けないため、高額の宿泊ほど負担が増す。日本最大の宿泊市場である東京の定率化は、他の自治体の制度設計にも影響しうる。

大阪府は2025年9月1日から、非課税となる宿泊料金の線引きを「7,000円未満」から「5,000円未満」に引き下げ、最高税額も300円から500円に上げた。課税の対象と負担の両方が広がった。

北海道は2026年4月1日に道税として宿泊税を新設した。宿泊料金に応じて100〜500円を課し、小樽市や函館市などの市税が上乗せされて、道内で二層課税が広がった。一方、定率制を採る倶知安町は、道税と二重に手続きが生じるのを避けるため、道税分を取り込んだ定率3%に一本化し、税率を2%から3%へ引き上げている。

背景は受け入れ環境整備の財源確保

宿泊税がここまで広がる理由は、観光客の集中による混雑や受け入れ環境の負担を、観光で得た財源でまかなおうという発想にある。混雑対策にとどまらず、観光案内や多言語対応、観光地の魅力向上など、自治体ごとに使い道は幅がある。

国もこの方向を後押ししている。観光庁の2026年度予算では、オーバーツーリズム対策を含む観光地の受け入れ環境整備に約100億円が計上され、前年度(約12億円)の8.34倍に増えた。国費と地方の宿泊税が、観光地の環境整備を支える両輪になりつつある。

一方で、宿泊事業者には実務の負担がのしかかる。予約システムでの税額表示、毎月の申告・納付、宿泊客への税額の説明が必要になり、税額や免税点、徴収方式が自治体ごとに異なれば、全国で宿泊施設を持つ事業者ほど対応の手間は増える。

観光ビジネスの視点

宿泊税ラッシュの本質は、観光客を集められる自治体ほど自前の観光財源を持ちやすくなる点にある。独自に課税できる市町村と、道県税の配分や事業の採択に頼る地域とでは、財源の使い道を自分で決められる自由度に差が出る可能性がある。一方で、道県税には広域での周遊促進や小規模地域への再配分という役割もある。事業者にとっては、全国でばらつく税額・免税点・徴収方式への対応が、これからの固定的な事務コストになっていく。

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