観光庁の概算要求1,905億円 94%が出国税財源

国土交通省の庁舎前に立つ黒御影石の看板。「観光庁」「海上保安庁」の文字が並び、背後に庁舎と青空が広がる
Photo: Reelen / photoAC
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概算要求は約1,905億円 うち1,800億円が出国税財源

観光庁は2026年8月28日、令和9年度(2027年度)の予算概算要求を公表した。要求額は3つの区分を合わせて約1,905億円になる(注:観光庁は「観光庁予算の推移」のグラフで令和9年度の要求額を一般会計ベースの1,900億円と示している〈同資料p.3〉。一般会計の2区分に東日本大震災復興特別会計を加えた3区分の合計は資料に記載がなく、本紙集計で1,905.4億円。総括表の原数値は180,000+9,976+566=190,542百万円)。

内訳は、国際観光旅客税(出国税)を財源とする事業が1,800億円、一般財源事業が99.76億円、東日本大震災復興特別会計が5.66億円。前二者は一般会計、復興特別会計は特別会計で、会計をまたぐ合算である。なお同資料の主要事項ページ(p.5)は、一般財源を100億円、復興枠を6億円と丸めて表記している。要求額の94%を、使途が観光分野に限定された出国税の財源が占める

前年度当初予算は3区分の合計で約1,390億円だった。旅客税財源は1,300億円から1.38倍、一般財源は1.20倍で、復興特別会計だけが0.85倍と減る。全体では1.37倍にあたる。

要求額の94%は、個別の事業が示されていない

ただし観光庁は、この1,800億円について事業の内訳を示していない。概算要求の資料はこう書いている。「概算要求時点では要求額のみ示し、具体的な事業については、上記の考え方に基づき予算編成過程において検討され、民間有識者の意見も踏まえ、観光立国推進閣僚会議(本部長:総理)において決定される」。

充てる分野は法律と閣僚会議決定によって3つに絞られている。8月末に示されたのは、金額と使途の枠組みまでだ。個別の事業と配分額が固まるのは予算編成過程で、前年度の令和8年度予算は2025年12月26日に決定概要が公表されている。

さらに、旅客税財源は観光庁が全額を執行するわけではない。令和8年度の1,300億円は億円単位で内訳が公表されており、観光庁が執行官庁となるのは468億円で全体の36%にとどまる。ほかは文化庁224億円、環境省178億円、外務省175億円、出入国在留管理庁128億円、財務省71億円、宮内庁58億円だ。

旅客税財源はいったん観光庁に一括計上したうえで、関係省庁へ移し替えて執行する仕組みだ。大手休憩所(仮称)の整備費だけは、皇室経済法を踏まえて皇室費における宮廷費として整理される。

一般財源は99.8億円 伸び率の首位はアウトバウンド

一般財源事業は3つの柱と「その他(経常事務費等)」に分かれる。最大は「インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立」の66.7億円(1.06倍)で、日本政府観光局(JNTO)の運営に必要な経費や各種民泊サービスの適正化が入る。

伸び率で目を引くのは「国内交流・アウトバウンド拡大」の12.2億円だ。前年度の5億円から2.44倍と、4つの区分で最も高い。「地方空港を活用した相互交流の促進」「ワーキングホリデーを通じた双方向交流の促進」「海外教育旅行を通じた若者の国際交流の促進」などが並ぶ。

「観光地・観光産業の強靱化」は11.9億円で1.63倍。観光地経営人材・宿泊人材の育成や、通訳案内士を支える安定的なシステム運営、観光統計の整備が含まれる。

昨年は要求700億円 今年は要求段階から1,800億円

前年の概算要求(2025年8月26日公表)は総額約814億円で、旅客税財源は700億円だった。財源について資料は「財源確保策について必要な検討を行い、所要の措置を講じる」と書くにとどめており、夏の段階では税率の引き上げは示されていない。

その後、2025年12月26日の予算決定で旅客税財源は1,300億円まで積み増された。令和8年度当初予算は、旅客税財源と一般財源で1,383億円、復興特別会計を含めると約1,390億円である。

出国税は2026年7月1日以後の出国分から、原則として1回1,000円が3,000円へ引き上げられている(引き上げ日より前に締結され出国日も定まっていた運送契約などには経過措置がある)。令和9年度は、引き上げ後の税率が年度を通じて適用される最初の年度にあたる。要求ベースで並べると約814億円から約1,905億円へ2.34倍になる(編集部試算)。

予算の器が、基本計画の柱に組み替わった

一般財源の区分名にも変化がある。令和8年度の要求では「持続可能な観光地域づくり」「地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取組」「国内交流拡大」の3つが柱だった。令和9年度はこれを「インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立」「国内交流・アウトバウンド拡大」「観光地・観光産業の強靱化」へ組み替えている。

この3つは、2026年3月27日に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画の施策の柱とそのまま同じだ。計画期間は令和8〜12年度(2026〜2030年度)。予算の器が、計画の章立てに合わせて引き直された形になっている。前年度予算額の欄も、この新しい区分に沿って示されている。

税制改正要望も1件ある。電子渡航認証制度(JESTA)の令和10年度中の導入に合わせ、免税店での確認事務を見直すというものだ。JESTAの導入で一部の入国者は上陸許可証印が省略される。免税購入対象者の確認は現在この証印も含めて行っているため、手続きの見直しが必要になる。

あわせて読む 財源である出国税と、令和8年度予算の中身は、それぞれこちらで詳しく解説している。

観光ビジネスの視点

1,800億円の使い道は年末に決まる。見どころは、前年度から増える500億円がどこへ向かうかだ。令和8年度事業の例示として観光庁が挙げたのは、出入国手続の円滑化や訪日プロモーション、文化・自然資源の整備が中心で、日本人旅行者向けは「安全・安心な海外旅行環境の整備」の一つだけだった。一方、令和9年度の一般財源では「国内交流・アウトバウンド拡大」が2.44倍と最も伸び、第5次観光立国推進基本計画もこれを3本柱の一つに据える。同じ傾斜が旅客税財源にもかかるなら、出国税を負担する日本人旅行者に返る事業が初めてまとまった規模になる。年末の閣僚会議決定で、この一点を確かめたい。

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