「日本一便利な福岡空港」が強み 福岡県観光局に聞く、インバウンド好調の理由

空港ターミナルの吹き抜け。三角格子の天窓から光が差し、エスカレーターを上り下りする利用者と到着案内板が見える
Photo: yoko1102 / photoAC
  • URLをコピーしました!

2025年、福岡県の延べ宿泊者数は2,548万人泊で全国8位、うち外国人は842万人泊(全国6位)と好調だった。ただ県の担当者は、その内側にある偏り、すなわち外国人と日本人、福岡市・北九州市の両政令市とそれ以外の県内各市町村とのあいだの差にも目を向ける。福岡県の観光振興は今、何を課題とし、どこへ向かうのか。県の観光振興施策を担う福岡県商工部観光局から、観光政策課の永島政宏氏(課長補佐)と、観光振興課の岡部良樹氏(課長補佐)に聞いた。観光政策課は主に観光施策の企画立案や宿泊税基金の管理・人材育成など政策・制度面を、観光振興課は国内外からの誘客および県内周遊の促進や観光地域の魅力向上など、需要の創出・拡大を担う。

目次

外国人が押し上げる好調と、伸び悩む日本人需要

――2025年の福岡県は、延べ宿泊者数2,548万人泊(全国8位)、うち外国人が842万人泊(全国6位・前年比プラス14.0%)となりました。足元の状況をどう評価していますか。

永島:全体としては、目標に対して好調な推移です。コロナ禍で一時期は落ち込みましたが、そこから回復してきました。

外国人宿泊者数は全国6位 九州で最も多い
都道府県別・外国人延べ宿泊者数(2025年)
外国人延べ宿泊者数の都道府県ランキング(2025年) 福岡県は842.1万人泊で全国6位。東京・大阪・京都・北海道・沖縄に次ぐ。 東京 6,012 大阪 2,452 京都 1,829 北海道 1,330 沖縄 921 福岡 842 神奈川 493 愛知 486 千葉 438 山梨 275 単位:万人泊
注:福岡県は九州7県で最も多い(沖縄県は九州地方に含めない集計。沖縄県は921.2万人泊で全国5位)。
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値〈確定値〉)」をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
外国人延べ宿泊者数ランキング
都道府県外国人延べ宿泊者数(万人泊)
東京6,011.6
大阪2,451.8
京都1,829.1
北海道1,330.3
沖縄921.2
福岡842.1
神奈川492.7
愛知486.0
千葉437.6
山梨275.1

私たちは「第三次福岡県観光振興指針」で、2026年(令和8年)の目標として、延べ宿泊者数2,344万人泊、うち外国人572万人泊を掲げています。差し引くと、日本人はおよそ1,772万人泊です。全体と外国人は、2025年で既にこの目標を上回っている一方、日本人はまだ目標に届いていません。

今伸びているのは主に外国人のお客様で、日本人の宿泊は横ばいの傾向です。インバウンド需要の更なる喚起ももちろんですが、日本人観光客の需要喚起も、私たちの大きな課題だと捉えています

コロナ前(2019年)比で外国人は約2倍、日本人は微増
福岡県の延べ宿泊者数の推移・日本人/外国人別(2019〜2025年)
福岡県の延べ宿泊者数の推移(日本人・外国人別) 外国人は2021年の10万人泊から2025年842万人泊へ急回復し2019年の約2倍。一方、日本人は2019年1,616万人泊に対し2025年1,706万人泊で、2019年比では微増にとどまる。 600 1,200 1,800 (万人泊) 日本人 1,706万 外国人 842万 10万 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025
注:日本人は延べ宿泊者数から外国人分を差し引いた値。2019〜2024年は福岡県「令和8年度の観光振興施策の方向性について」の掲載値と一致する(2025年は編集部算出)。外国人は2021年の10万人泊を底に回復し、2025年は2019年の約2倍。日本人は2019年1,616万人泊に対し2025年1,706万人泊で、2019年比プラス5.6%。
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」各年・年間値〈確定値〉および福岡県商工部観光局「令和8年度の観光振興施策の方向性について」をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
福岡県 延べ宿泊者数の推移(日本人・外国人別)
日本人(万人泊)外国人(万人泊)
20191,616426
202099762
202195210
20221,33961
20231,609504
20241,656739
20251,706842

市町村・県・九州広域の三層で担う

――観光振興は、行政・DMO・事業者がそれぞれ役割を担います。福岡県ではどのように分担していますか。

永島:まず土台になるのが、市町村との連携です。例えば、「食べる」「遊ぶ」「泊まる」を一体的に楽しめる、複数市町村で構成された広域での観光地域づくりを推進しています。

また県内には、都道府県単位のDMOである(公社)福岡県観光連盟があります。県が施策の方向を定め、連盟と県が連携しながら誘客や観光地域づくりの事業を担っていきます。

さらに広域では、九州観光機構が九州を一体として売り込み、ツーリズムEXPOジャパンや、首都圏・海外での現地商談会などを展開しています。福岡県だけでなく、九州が一体となって誘客に取り組んでいるわけです。

市町村、県と連盟、そして九州広域という層が、それぞれの役割を分けながらつながっていく形です。

あわせて読む 福岡県観光連盟にも取材した。DMOとしての財源や、県内周遊の手応えはこちらで詳しく聞いている。

「FUKUOKA」のモニュメントが置かれた公園と、奥に建つ旧福岡県公会堂貴賓館 福岡県観光連盟に聞く インバウンド好調と、県内周遊への次の一手
博多駅コンコースの「博多織のタイルアート」
博多駅コンコースの「博多織のタイルアート」(写真提供:福岡県観光連盟)

「日本一便利な福岡空港」と食の豊かさ

――好調を支えている要因は、どこにあるとお考えですか。

永島:服部誠太郎知事もよく話されますが、「日本一便利な福岡空港」が強みです。空港から地下鉄に乗れば、10分ほどで街の中心に着く。これほど空港と都心が近い都市は多くありません。

路線にも恵まれていて、羽田と結ぶ便が1日およそ50便、韓国・仁川と結ぶ便もおよそ20便が就航しています。

福岡空港は都心への鉄道アクセスが際立って短い
主要空港から都心の主要駅までの最速の鉄道所要時間
主要空港から都心・最速の鉄道所要時間 福岡空港から博多駅までは鉄道最速5分。他の主要空港(11〜53分)に比べ際立って短い。 福岡空港→博多 5分 羽田→品川 11分 中部→名鉄名古屋 28分 新千歳→札幌 33分 関西→なんば 34分 成田→東京 53分
注:いずれも各社の速達列車の所要時間で、到達駅は各都市の主要ターミナル(東京圏は羽田・成田の2空港)。福岡空港から博多駅までは5分、天神までは11分。地下鉄が直結するのは国内線ターミナルで、国際線ターミナルは無料連絡バスへの乗り換えが必要。
出典:福岡市地下鉄・京浜急行電鉄・名古屋鉄道・JR北海道・南海電鉄・JR東日本の各公式情報をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
主要空港の都心アクセス時間
区間最速の鉄道所要時間
福岡空港→博多5分
羽田→品川11分
中部→名鉄名古屋28分
新千歳→札幌33分
関西→なんば34分
成田(空港第2ビル)→東京53分

そこに、食の豊かさが加わります。われわれは「食の王国・福岡」と言っています。

全国有数の漁獲量を誇る天然のマダイ、イカやカキといった海鮮、イチゴの王様「あまおう」、600年以上の歴史を持つ八女茶、さらには県内に65の酒蔵がある全国有数の酒どころでもあり、ここでしか味わえないものを目当てに来られる方も多い。こうした豊かな食文化を通じて、福岡県の魅力を感じていただけるのが強みだと考えています。

八女市の茶畑
八女市の茶畑。八女茶は600年以上の歴史をもつ(写真提供:福岡県観光連盟)

宿泊者の約77%が福岡市・北九州市の両政令市に集中

――県の「『モバイル空間統計』を活用した、観光客の来訪・宿泊や周遊の状況調査」では、2024年の宿泊者の76.7%が、福岡市・北九州市の両政令市に集中しています。この地域偏在を、重点課題としてどう見ていますか。

永島:宿泊のお客様は、今もおよそ7割が日本人です。そしてその多くが福岡市と北九州市に集中している。ここをどう広げるかが重点課題です

県としては、その他の地域にもお金が落ちるよう、周辺へ誘客していきたい。入口は福岡空港や北九州空港、新幹線などさまざまですが、そこからいかに周遊してもらうかが鍵です。

岡部:市場の面でも偏りがあります。お客様は韓国や台湾など東アジアの方が多く、これは本当にありがたいことですが、欧米豪の方はまだ少ない。ですので、欧米豪からの誘客については、本県の現地観光拠点(観光レップ)と連携してプロモーション施策などに力を入れているところです。

また滞在のなかでどうお金を落としていただくか、消費単価をどう上げるかも課題です。旅行会社との連携や、現地でのSNSを使った発信も進めています。

東アジアが約8割 欧米豪は全国比で低い
福岡県の外国人延べ宿泊者数の国籍別構成(2025年)
福岡県の外国人延べ宿泊者数の国籍別構成(2025年) 韓国36.8%を筆頭に、台湾・中国・香港と続く。東アジア上位4市場で約79%を占める。 韓国 36.8% 台湾 18.2% 中国 13.7% 香港 10.4% 米国 2.7% タイ 2.5% その他 15.7%
注:国籍別構成は従業者10人以上の宿泊施設を対象とした集計で、母数には国籍不詳を含む。同区分の外国人延べ宿泊者数は、全施設の外国人延べ宿泊者数842.1万人泊の約93%に相当する。
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値〈確定値〉)」参考第1表をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
福岡県 外国人宿泊者の国籍別構成
国・地域構成比
韓国36.8%
台湾18.2%
中国13.7%
香港10.4%
米国2.7%
タイ2.5%
その他(欧米豪ほか)15.7%

国内需要の喚起と県内周遊への取り組み

――県内の誘客を担う福岡県観光連盟からは、直近の月次では日本人の延べ宿泊が前年同期を下回ったと説明がありました。日本人需要の喚起や、両政令指定都市以外の地域への誘客については、どのような手を打っていますか。

岡部:県内を周遊してもらう仕組みづくりに力を入れています。2024年に実施した福岡・大分デスティネーションキャンペーンをきっかけに、県内周遊バスツアー「よかバス」を開始しました。

「よかバス」は県内を手軽に周遊できるバスツアーで、政令市以外の地域に足を延ばしてもらう取り組みを進めています。

加えて、平日の宿泊需要をどう取り込むかが課題です。県の「ふくおか平日おトク旅」など、平日に県内の宿泊施設へ誘導する取り組みには一定の手応えを感じています。日本人のお客様に、県内をもっと回っていただきたいと考えています。

柳川の川下り
柳川の川下り。県は政令市以外への周遊を促している(写真提供:福岡県観光連盟)

宿泊税18.7億円の使い道と5年ごとの検討

――福岡県は2020年4月から宿泊税を導入しました。宿泊税収は2023年度の約17.3億円から、2024年度は約18.7億円となっています。この財源を、どのような施策に活用していますか。

永島:宿泊税は、さまざまな事業に活用しています。コロナ禍では宿泊施設の感染予防対策の支援に、収束後は観光や旅行業の本格的な回復に向けた取り組みに、と局面に応じて活用してきました。

2024年4月から6月にかけての福岡・大分デスティネーションキャンペーンにも活用し、全国から多くの方に訪れていただきました。経済波及効果は、福岡県分で356億円です。また県が実施する事業だけでなく、市町村にも宿泊税交付金として配分し、市町村独自の取り組みにも活用しています。連盟への補助金も、この宿泊税を財源のひとつとしています。

使い道については、2023年度に宿泊税検討委員会で、税収の使途や制度のあり方を検討しました。個別の施策では、実施後のアンケートなどで効果を確かめる取り組みも行いました。

条例では、施行後3年での検討に続き、その後も5年ごとに施行の状況を検討することになっています。2028年度(令和10年度)あたりが次の節目になると見ています。

宿泊税は18.7億円 プロモーションと体制強化に手厚い
福岡県の宿泊税収と施策の柱ごとの充当額(2024年度)
福岡県の宿泊税(2024年度)の税収と使途 2024年度の宿泊税収は18.7億円で前年度比プラス8.1%。充当額は戦略的プロモーションと体制強化に厚い。 2024年度(令和6年度)の宿泊税収 18.7億円(前年度比 +8.1%) 施策の柱ごとの宿泊税充当額 単位:百万円 戦略的プロモーション 999 観光振興の体制強化 606 観光資源の魅力向上 315 受入環境の充実 186
注:施策の柱ごとの充当額の合計は2,106,859千円で、2024年度の宿泊税収1,873,814千円を上回る。差額は福岡県宿泊税基金を取り崩して充当している。このほか賦課徴収に要した経費131,526千円(うち宿泊税充当額108,827千円)がある。市町村への財政的支援470,342千円は「観光振興の体制強化」の内数。
出典:福岡県「宿泊税の活用状況について(令和6年度)」をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
宿泊税の施策の柱ごとの充当額
施策の柱宿泊税充当額(千円)
戦略的プロモーション998,953
観光振興の体制強化606,122
観光資源の魅力向上315,474
受入環境の充実186,310

“つながる”福岡観光と、地域の稼ぐ力

――今後の展望を、県の指針に沿ってお聞かせください。

永島:福岡県は「第三次福岡県観光振興指針」で、目指す姿を「“つながる”福岡観光」と定めています。指針では①受入環境の充実、②観光資源の魅力向上、③戦略的なプロモーション、そして④観光振興の体制強化という4つの施策の柱を立てています。

受入環境の充実には、ユニバーサルツーリズムのように、障がいの有無等にかかわらず誰もが快適に旅を楽しめる基盤づくりなどが含まれます。体制強化の面では、宿泊業の人材不足への対応として、観光業界を目指す学生と事業者とのマッチングイベントなども行っています。

こうした施策を通じて、持続可能な観光を地域経済にきちんと波及させていきたいと考えています。

――最後に、県が観光振興で重視している考え方をお聞かせください。

永島:大切なのは、地域の関係者と連携しながら、地域が自ら稼ぐ力を引き出していくことだと考えています。持続可能な観光地域を、そうやって創っていく。

また、そこに暮らす人たちが自分の地域に誇りと愛着を持てるようにすることも欠かせません。地域の資源を磨き上げ、関係者同士をつなぎ、こうした取り組みをまとめていく。それこそが、私たちの重要な役割だと考えています。

観光ビジネスの視点

福岡の強みは、空港から都心まで地下鉄で約10分というアクセスの良さにある。一方、県は、東アジアに偏った外国人観光客、消費単価の低さ、福岡市・北九州市への観光客の集中を課題に挙げる。このうち消費単価と地域集中は、福岡を訪れた人に県内をどう周遊し、どう滞在してもらうかという問題につながっている。

重要なのは、来訪者数を増やすだけでなく、県内各地へ足を延ばし、宿泊や消費につなげることである。県が進める「よかバス」や平日の宿泊を促す取り組みは、周遊と滞在を増やす施策という点で共通する。

周遊と滞在を増やす材料に、福岡は恵まれている。八女茶や日本酒、柳川の川下りなど、政令市以外にもさまざまな観光資源がある。福岡空港という強い玄関口と県内各地の観光資源を結ぶことで、来訪者数の伸びを地域の宿泊や消費へ広げていけるはずだ。

出典

NEWS LETTER編集部が選ぶ注目記事をお届け限定イベントや独自レポートも先行案内ニュースレター登録
  • URLをコピーしました!
目次