100万人という数字と、届かなかった150万人
沖縄本島北部・今帰仁村のテーマパーク「ジャングリア沖縄」が、2025年7月25日の開業から1年を迎えた。運営会社が発表した初年度の来場者数は、併設する「ジャングリア・スパ」の利用を含めて約100万人。1日平均では約2,700人が訪れた計算になる。
売上高は100億円超の見通しで、加藤健史CEOは「美ら海水族館に近い水準を達成した」と説明する。りゅうぎん総合研究所は、開業後1年間の経済波及効果を494億円と推計した。来場者数・売上・経済効果のいずれも、初年度としては相応の規模に達している。
ただし、刀が開業前に示した年間150万人以上という目標には届かなかった。これは美ら海水族館(年間300万人超)の半分にあたる水準だ。約100万人はその3分の2にとどまる。
満足度は改善も、来場ペースは伸び悩む
体験そのものの評価は悪いわけではない。開業直後は待ち時間が最大約300分に達する日もあったが、その後は約60分まで短くなった。運営会社の調査では、来場者の約9割が満足と回答したという。
一方で、来場者数は伸び悩んだ。開業から半年(2025年7月25日〜2026年1月24日)の来場は約65万人。スパ利用を除くと約55万人で、1日平均は3,000〜3,500人にとどまった。来場が千人を下回る日もあったという。年間150万人に達するには単純計算で1日あたり約4,100人が必要になり、半年間のペースはこれを大きく下回っていた。
こうしたなかで打ち出したのが、価格の選択肢を広げる施策だ。通常の1Dayチケットは大人が税込6,930円で、複数のアトラクションを1日かけて楽しむ商品である。これに加えて2026年夏には、大人税込2,970円の「ふらっとチケット」を期間限定で投入した。対象の5アトラクションから1つを体験できる商品で、滞在時間の制限はない。来場対象は9月30日までの夏季に限られ、通常券も引き続き販売される。低価格で体験を一部に絞った券を加えることで、これまで取り込めていなかった需要を掘り起こす狙いとみられる。
大型テーマパークでは、需要予測に見合った規模の設備投資になっているかが、採算を左右する。ジャングリア沖縄は総額700億円規模と報じられる大型プロジェクトで、開業前には13の金融機関から366億円の協調融資を受けた。しかし開業後の入場数が想定を下回り、資金繰りは苦しい状況だ。運営を支えるため、琉球銀行は2026年4月、商工中金や沖縄振興開発金融公庫などとともに計20億円を追加融資した。
パークを手がけた刀(森岡毅氏が率いるマーケティング会社)は、別事業の「イマーシブ・フォート東京」を2026年2月に閉館しており、森岡氏自身も足元の状況を「相当厳しい」と認めている。待ち時間の改善や新アトラクションの導入、県内向けのプロモーションなど、テコ入れは続いているが、来場ペースの反転にはまだつながっていない。
ジャングリア沖縄の経営改善は、一企業の集客だけの問題ではない。沖縄本島北部の観光振興を担う事業として、地元の金融機関や経済界も資金面で支えている。
一方、運営会社が6月末に各行へ提出した営業報告では、追加融資を12月までに使い切る試算も示された。厳しい資金繰りが続くなか、2年目に重要なのは来場者数を増やすことだけではない。季節や天候による需要の変化に合わせて、料金や運営体制を調整し、支援が続く間に経営を立て直せるかが問われる。北部振興への期待が大きいだけに、その成否は沖縄観光全体のイメージにも影響する。
出典
- ジャングリア沖縄「チケットガイド」
- 琉球新報「ジャングリア沖縄、1年目の入場者数100万人 売上見通しや経済効果を発表」
- 琉球新報「開業1年 ジャングリア苦戦「期待値が高すぎた」 年間150万人厳しく」
- 沖縄タイムス「ジャングリア沖縄開業1年 満足度9割も来場者数は伸び悩み」
- 沖縄タイムス「ジャングリアへ366億円融資 商工中金・琉銀・公庫・沖銀など」
- 日本経済新聞「ジャングリア、初年度来場100万人 集客増へ運営・設備をテコ入れ」
- 日本経済新聞「ジャングリア来場は計画の4割 想定外続いた1年、苦肉の割安チケット」
- 日本経済新聞「それでもジャングリア支援 追加融資の琉球銀「リスク取り地域振興」」
- 現代ビジネス「開業1年のジャングリア沖縄 森岡毅氏も「相当厳しい」と認めた苦境の実態」


