タイの富豪の別荘は、岐阜県庁の1階だった
日曜劇場「VIVANT」(TBS系)第2シーズンのロケ地になった岐阜県庁に、県外からの来訪者が集まっている。県観光企画課の話として日本経済新聞が8月21日に伝えたところでは、20階展望ロビーの訪問者は1日平均で、8月8日以降の土日祝日が8月2日以前の土日祝日の4倍に達した。20階は一般来庁者を数えやすい場所で、1階のロケ地に来た人を直接数えた数字ではない。県はこの数字を公表資料としては出していない。
登場したのは8月2日の放送分である。県庁舎1階の交流スペース「ホワイエ」が、重要人物の潜伏先であるタイの富豪の別荘の一室として使われた。第2シーズンは7月26日に始まり、2クール連続で放送される。
県は8月14日、そのホワイエに「VIVANT」の世界を体験できるフォトスポットを設置したと公表した。開放は平日が7時30分から17時45分まで、土日祝日は10時から20時までで、20階展望ロビーの開放時間に合わせている。設置の終了日は決めていない。9月12日・13日・16日は撮影できる場所が限られるなどの制限がかかり、撤去はしない。撤去の予定は9月18日の午前9時から11時30分までで、雨天の場合に限られる。県は8月31日から、県庁舎玄関前の屋外に「VIVANT」のモニュメントも設置している。
4倍を受け止めたのは、前年から開いていた土日
県庁は本来、平日に業務をする建物だ。日曜の夜9時に放送されるドラマを見た人にとって、最初のまとまった来訪機会は翌週末になる。その土日に、県庁は開いていた。
20階展望ロビーの土日祝日開放が本格実施に移ったのは2025年9月6日で、放送のおよそ11か月前にあたる。試行は2025年5月24日から8月末までで、そのうち8月17日までの土日祝28日間の来場者は13,254人、1日平均は約470人だった。試行中の5月24日から8月11日までに集めたアンケート3,592件では、「非常に満足」59.1%と「満足」38.9%を合わせて約98%が満足と答え、回答者の居住地は県内が83.1%、県外は16.5%だった。管財課の資料は本格実施の理由をこの評価に置いており、将来のロケ需要への備えとは書いていない。
つまり土日開放が4倍を生んだのではない。比較された放送前・放送後のどちらの土日祝日も、20階は開いていた。休日開放が果たしたのは、放送後に動いた人を受け止める前提になったことである。倍率そのものには、8月8日以降に入る山の日とお盆、7月18日から8月30日の土日祝に20階会議室を開ける夏休みの追加開放も混ざる。
一方、ロケ地そのものは既存の運用の外にあった。2025年の本格実施で休日に立ち入れるとされたのは20階展望ロビーと1階GALLERY GIFUで、管財課の資料には「上記4以外には立ち入ることはできません」と明記されている。フォトスポットが置かれた1階ホワイエは、そこに含まれていない。休日に扉を開ける範囲は、今回あらためて広げられている。
「君の名は。」の3万6千人と、足し算できない3万5千人
県内には先例がある。2016年公開の「君の名は。」に風景が描かれた飛騨市では、2016年の観光入込客総数が1,005,881人と前年より3.6%増え、約3万5千人の増加となった。市は市図書館の入館者数の前年比から、年末までに訪れた聖地巡礼者を約3万6千人と推計している。映画の公開は8月26日で、この推計は約4か月分にあたる。
ただし、この2つの数字を対応させることはできない。入込客総数は観光地点ごとの延べ数を合算した年間値で、巡礼者は推計の実人数である。しかも同じ年から、宮川下流と高原川の釣り客2万3千人、池ヶ原湿原の5千人が新たに集計へ加えられている。暖冬で市内2か所のスキー場が計3万2千人の大幅減となるなかでの総数増だが、その増加分には約2万8千人の集計範囲の変更が入っている。
岐阜市は最大50万円、県のページに補助金はない
県のフィルムコミッション機能は観光企画課の観光魅力創造係が担う。掲げているのは撮影地の情報収集と提供、撮影許可や公共施設の使用許可の手続き調整、宿泊施設など周辺サービスの紹介である。公開されているページに補助金の案内はない。
岐阜市は観光コンベンション課に「ロケツーリズム推進室」を置き、ロケ候補地とエキストラ、ロケ弁の登録事業者を募集している。登録は情報提供のためのもので、発注を保証するものではない。補助金は、市内で2日以上の撮影と1泊以上の宿泊を伴い、3以上の都道府県で公開される作品などを対象に、市内事業者へ支払う宿泊費や食事代、施設使用料、機材借上料の2分の1を、補助対象事業ごとに50万円を上限として交付する。交付は1つの映像作品につき1回、1年度につき1回である。
今回のホワイエは県庁舎である。ロケ地の選定に県の支援がどこまで働いたかは、公表資料からは分からない。
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ドラマや映画には、人を実際の場所へ動かす力がある。飛騨市では、映画「君の名は。」の公開後、約3万6千人が聖地巡礼に訪れたと推計されている。岐阜県庁でも、ドラマ放送後の休日の来訪者数が放送前の4倍に増えた。ただしこの倍率には、山の日とお盆、20階会議室の夏休み開放も重なっている。
こうした効果を生かせるかどうかは、注目が集まったときに素早く対応できるかにかかっている。岐阜県は8月2日の放送からわずか12日後にフォトスポットを公表し、それまで休日には立ち入れなかった1階ホワイエを土日祝日にも開放した。前年から庁舎の一部を土日に開放していた経験を生かし、短期間で公開範囲を広げた形である。
出典
- 岐阜県「日曜劇場「VIVANT」(TBS系)を契機とした観光振興」
- 岐阜県「県庁舎20階展望ロビーの土日祝日開放(本格実施)について」
- 飛騨市「平成28年 飛騨市観光客入込数等について」
- 岐阜市「岐阜市ロケーション誘致推進事業補助金のご案内」
- 日本経済新聞「岐阜県庁、人気ドラマ登場で来庁者4倍 SNSきっかけに県外客ら続々」


