リゾートホテルの季節変動をどう埋めるか 閑散期を収益化する視点

Photo: Cory Bjork / Unsplash
  • URLをコピーしました!

リゾートホテルと聞くと、海辺や高原に建つ非日常の宿を思い浮かべる人が多いだろう。ビジネスホテルやシティホテルとの違いは、つい「立地」や「雰囲気」で語られがちだ。だが運営する側から見ると、両者の違いは立地や雰囲気だけでは説明できない。リゾートホテルの経営を大きく特徴づけるのは、需要の季節変動(繁閑差)と、それに伴う通年稼働の難しさだ。

実際、2025年の客室稼働率をタイプ別に見ると、リゾートホテルは56.9%で、ホテル系3タイプ(リゾート・ビジネス・シティ)の中でいちばん低い。宿泊需要の回復が進んだ2025年でも、この序列は変わらなかった。本記事では、統計上の定義を出発点に、なぜリゾートは通年で埋まりにくいのか、シティ系と運営がどう違うのかを整理する。

この記事のポイント

  • 観光庁の統計は、行楽地や保養地に立地し主に観光客を対象とするホテルをリゾートホテルと定義する。
  • 2025年の客室稼働率はリゾートホテル56.9%で、ホテル系3タイプのなかで最も低かった。
  • リゾート経営の難しさは、季節による需要の波(繁閑差)と、それに伴う通年稼働・通年雇用の難しさにある。
目次

リゾートホテルとは何か

日本で宿泊施設の種別を統計上分類しているのが、観光庁の「宿泊旅行統計調査」だ。この調査は宿泊施設を旅館・リゾートホテル・ビジネスホテル・シティホテル・簡易宿所・会社団体の宿泊所の6つに区分し、このうち洋式のホテルをリゾート・ビジネス・シティの3つに分けている。この分類でリゾートホテルは「行楽地や保養地に建てられた主に観光客を対象とするホテル」と定義される

ポイントは、リゾートホテルが立地(行楽地・保養地)と客層(観光客)で定義されている点だ。出張客を主な対象とするのがビジネスホテル、リゾートでもビジネスでもない都市部のホテルがシティホテル、という区分になる。つまり同じ「洋式のホテル」でも、どこに建ち、だれを泊めるかで種別が変わる。設備の豪華さや価格帯そのものが分類の基準ではない。

なぜ通年で埋まりにくいのか

施設タイプ別の客室稼働率(2025年速報値)。リゾートホテルが56.9%とホテル系で最も低いことを示す横棒グラフ
この図表のデータを見る
施設タイプ客室稼働率(2025年・速報値)
ビジネスホテル75.3%
シティホテル74.2%
全体61.8%
リゾートホテル56.9%
旅館38.4%
簡易宿所29.6%

(注:2025年・年間値(速報値)。確定値の公表で小幅に修正される場合がある。

種別ごとの違いは、客室稼働率(販売できる客室のうち実際に利用された割合)の数字にはっきりあらわれる。2025年の客室稼働率(観光庁・速報値)を施設タイプ別に見ると、ビジネスホテル75.3%、シティホテル74.2%と続き、リゾートホテルは56.9%だ。リゾートホテルは、ホテル系3タイプのなかで最も稼働率が低い。全体平均61.8%も下回り、旅館38.4%・簡易宿所29.6%より上、という位置だ。

しかも、これは単に前年から回復しただけの数字でもない。前年からは2.8ポイント上がったが、コロナ前の2019年(58.5%)と比べても、なお1.6ポイント低い。宿泊需要が回復した2025年でも、リゾートホテルはホテル系3タイプのなかで客室稼働率が最も低かったといえる。

この低さの背景としてよく指摘されるのが、需要の「波」だ。都市部のビジネスホテルやシティホテルは、出張や都市内の用務、観光、イベントなど、通年で発生しやすい需要に支えられる。いっぽうリゾートは、行楽シーズンや連休、夏休みといった時期に需要が集中し、閑散期には埋まりにくい。一般に、観光地の宿泊施設は季節による稼働の差が大きいとされ、この繁閑差が、年間でならしたときの稼働率を押し下げると考えられる。

この繁閑差は、個々のリゾート地の統計にもあらわれる。スキーで国際的に知られる北海道のニセコでも、ニセコ町の月平均の延べ宿泊客数は、オンシーズン(1〜2月と8月)の約6万人に対し、オフシーズン(4〜6月と11月)は約3万人と半分に落ち込む。町は夏の「グリーンシーズン」の底上げや連泊化を課題に掲げ、通年型リゾートへの脱皮を目指している。冬の集客力が世界的に高い地域でも、季節の波は大きい。

閑散期の需要をどう作るかは、リゾート経営の重要な課題だ。企業の合宿やMICE(会議・報奨旅行・国際会議・展示会など)の誘致、ワーケーション需要の取り込み、地域と組んだイベントなど、行楽シーズン以外の「平時の需要」をどれだけ作れるかが、年間の稼働率を左右しやすい。

シティホテルとの運営の違い

リゾート系とシティ系ホテルの運営の違いを5つの軸で対比した概念図

立地と需要が違えば、運営の作り方も変わる。リゾートホテルと、ビジネスホテル・シティホテル(本稿ではまとめて「シティ系」と呼ぶ)を運営面で対比すると、おおよそ次のように整理できる。

第一に需要の性質だ。シティ系が出張・都市需要という通年で平準的な客を相手にするのに対し、リゾートは観光・レジャー需要が季節に集中する。第二に滞在の長さ。都市部は一泊の短期利用が中心だが、リゾートは連泊・滞在型の利用を想定した客層が相対的に多い。第三に付帯施設。リゾートはプールや温泉、アクティビティなど、宿泊以外の「過ごす」ための施設を併せ持つことが多く、客室以外の運営体制も必要になりやすい。

そして第四が、ここまで見てきた稼働と雇用の問題だ。一般に、繁忙期に合わせて人員を厚くすると、閑散期には人件費の負担が重くなりやすい。観光地によっては都市部より働き手の確保が難しい場合もあり、季節変動と人手の両立が課題になりやすい。リゾートとシティ系の違いは「格」や「豪華さ」ではなく、季節に左右される需要と、それをどう平準化するかという運営構造の違いにある。

なお、日本のリゾートホテルには、一泊二食・短期滞在を前提とする温泉地の和風リゾート型と、長期滞在・滞在型を志向する外資ラグジュアリー型が併存する。一般に、欧米型の数週間の長期バカンス滞在は日本では限定的とされ、比較的短い滞在を前提としたリゾートが多い。

季節変動をどう埋めるか

リゾートや温泉旅館を中心に規模を広げてきた国内の代表格が、星野リゾートだ。同社は2025年4月時点で国内外に71施設を運営する。「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO」「BEB」「LUCY」といったブランドを、客層や立地に応じて使い分ける。国内外で施設を展開し、近年は新規開業の計画も進める。

同社は閑散期対策にも力を入れてきた。その一つが、近隣の需要を取り込む「マイクロツーリズム」だ。遠方や海外からの客が減った局面で近郊客の掘り起こしに動き、コロナ禍の2020年には、星のや京都で近畿圏の客の比率を1割以下から約3割へ高めて稼働を下支えした。平日や仕事の日を旅先で過ごすワーケーションの提案も、行楽シーズン以外の需要をならす工夫の一例だ。

ニセコでも、閑散期の底上げが具体的に動き出している。世界的なスキーリゾートであるニセコひらふでは、東急不動産と東急リゾーツ&ステイが2025年で3回目となる「NISEKO HIRAFU GREEN PARK」を開催し、ゲレンデを活用したサマーゴンドラやマウンテンバイクパークなど、夏季営業を7月から始めた。これは2022年10月に東急不動産と倶知安町が結んだ「オールシーズン型国際リゾートの形成に関する包括連携協定」に基づく取り組みで、行政・観光協会・地域住民も加わり、冬のゲレンデという資産をグリーンシーズンの集客にも転用する狙いがある。

このほか、沖縄やニセコなどの人気リゾート地には、アマンやハレクラニといった外資系のラグジュアリーブランドが進出し、長期滞在・高単価を志向するリゾートを展開している。いずれも繁閑差という共通の課題を抱えるなかで、ブランド力や体験価値による単価の向上と、閑散期の需要づくりが運営上の重要な論点になっている。

海外には、季節性そのものを事業のかたちで吸収する例もある。全世界で約70のリゾートを約40か国に展開するクラブメッド(Club Med)は、冬の山岳(スキー)と夏の海辺(ビーチ)の双方に施設を持ち、季節の異なる需要を組み合わせてグループ全体の稼働をならしている。日本でも、冬に強い北海道(トマムなど)と、夏に強い石垣島(川平)の両方を運営する。一つの施設で繁閑差と向き合うだけでなく、季節の違う立地を束ね、ポートフォリオ全体で平準化するという発想だ。

観光ビジネスの視点

リゾートホテルの稼働率がホテル系3タイプのなかで低いのは、立地と季節による需要の波を背景とする構造的なものだ。ただし、稼働率が低いことだけで事業の良し悪しは判断できない。リゾートを見るうえで大事なのは、繁忙期にどれだけ稼ぐかよりも、閑散期の需要をどれだけ作れるかだ。合宿やMICE、ワーケーション、地域と組んだイベントなど、行楽シーズン以外の需要をどう積み上げるか。年間平均の稼働率だけでなく、季節の波を前提にした需要づくりができているかを読むことが、リゾートを見るうえでの勘所になる。

よくある質問

リゾートホテルとシティホテルの違いは何か。

観光庁の統計では、リゾートホテルは行楽地・保養地に立地し主に観光客を対象とするホテル、シティホテルはリゾート・ビジネス以外の都市部に立地するホテルと定義される。運営面では、リゾートは季節による需要の波が大きく連泊志向でレジャー施設を併せ持つのに対し、シティ系は通年で平準的な都市需要に支えられる点が異なる。

リゾートホテルの稼働率はなぜ低いのか。

2025年の客室稼働率はリゾートホテル56.9%で、ホテル系3タイプのなかで最も低い。主な背景は需要の季節変動だ。行楽シーズンや連休に需要が集中し、閑散期に埋まりにくいため、年間を通してならすと稼働率が下がりやすい。

リゾートホテルの経営で重要なことは何か。

一般に、閑散期の需要をどう作るかが鍵とされる。企業合宿やMICE、ワーケーション、地域と組んだイベントなどで行楽シーズン以外の需要を取り込むことに加え、繁忙期には体験価値やブランド力を生かした単価づくりも、収益設計上の重要な論点になる。

日本のリゾートホテルは長期滞在が中心なのか。

欧米のような数週間の長期バカンス滞在は日本では限定的で、一泊二食の温泉地の和風リゾートなど比較的短い滞在が主流だ。ただし外資系ラグジュアリーブランドなど、長期滞在・高単価を志向するリゾートも見られる。

<出典>

NEWS LETTER編集部が選ぶ注目記事をお届け限定イベントや独自レポートも先行案内ニュースレター登録
  • URLをコピーしました!
目次