「ホテルを探す」から「AIが予約する」へ 予約の主導権をめぐる三つ巴

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「予約」までAIが代行する時代へ

旅行の入口が、検索サイトやOTA(オンライン旅行会社)からAIへと移りつつある。その次に来るのが「予約そのものをAIエージェントが代行する」段階だ。2025年から2026年にかけて、その地ならしをする発表が相次いだ。

口火を切ったのはGoogleである。Googleは2025年11月17日、検索の「AI Mode」に旅行予約のエージェント機能を載せる方針を公式に発表した。自然言語で条件を伝えると、フライトやホテルを価格やレビュー込みで比較し、絞り込んだうえで予約まで進められる仕組みだ。

レストラン予約は米国で先行して展開が始まった。一方でフライトとホテルの直接予約は「将来(in the future)」可能にすると記すにとどまり、2026年6月時点でも提供は始まっていない。開始日も示されていない。

連携パートナーには、Booking.com、Choice Hotels International、Expedia、IHG Hotels & Resorts、Marriott International、Wyndham Hotels & Resortsが名を連ねる。

ただし決済と予約の保持はパートナー側が担い、Google自身は販売主体(merchant of record)にならない。あくまで予約を「取り次ぐ」立場に徹する設計だ。

Googleは囲い込み、裏方は直販でつなぐ

注目すべきは、予約の主導権をめぐる動きがGoogleの一社だけではない点だ。ホテルの直販を支える裏方の技術企業が、AIエージェントから宿泊施設の予約・決済へ直接つなぐ仕組みを整え始めている。OTA(オンライン旅行会社)を介さずに予約を取り込む、いわば「直販ルート」の整備だ。

その一社が、スペイン・マドリードに拠点を置き、1995年からホテルの直販を支えてきた技術企業Miraiである。同社は外部のAIアシスタント内で予約を完結できる対話型インフラを発表した。ChatGPTやClaude、Geminiといったアシスタントとの会話の中から、ホテルの公式予約まで直接つなげる狙いだ。

中核には予約エンジン、ナレッジベース、会話AI層「Sarai」、ガバナンス層「Lobby」、外部AIとの接続層MCP(Model Context Protocol)の五つを据える。

決済まで踏み込むのが台湾発のOwlTing Group(NASDAQ: OWLS)だ。同社は2026年5月19日、AIエージェント起点の予約・決済を端から端まで通す「OwlPay Booking Engine for Agent Checkout」を発表した(2026年6月ロールアウト予定)。

OwlPayは三つの層からなる。x402標準の上で予約を確定し決済を受け取る「Agent Checkout」、AIエージェントが認可を得てUSDCなどで支払う「Agent Wallet」、そして越境のサプライヤー精算を担う「Harbor」だ。

初期の展開先は自社PMS「OwlNest」上の2,800を超えるホテル・宿泊施設で、その総予約額は2025年に約2.8億ドルにのぼる(同社の売上ではなく取引総額)。

つまり論点は、予約のAIの入口を誰が持つかに移る。一つはGoogleのようにプラットフォーム側が入口を握る型、もう一つはMiraiやOwlTingのように、宿泊施設の自社予約をAIへ直接つなぐ裏方の型だ。

ただしGoogleに乗っても、予約自体は各ホテルの予約エンジンに渡る。入口は明け渡しても予約は手放さない、という綱引きだ。

日本のホテルとOTAは経路選択を迫られる

この構図は日本の事業者にも無縁ではない。市場規模の予測がそれを裏づける。オンライン旅行の総予約額は2024年の約1.0兆ドルから2026年には約1.2兆ドルへ伸びる見通しで(Phocuswright)、IDCは2030年までに旅行予約の30%がAIエージェント経由になると予測する。

予約の三割がAI経由になるなら、その流れに乗れるかは無視できない。

ホテルチェーンの動きはさらに込み入っている。大手は「自前のAI」という第三の選択肢も握りにきており、二つの型の両方に同時に乗っている。

Marriottは2026年6月16日、自社専有AIで動く対話型検索「Ask Bonvoy」のベータ版を発表した。約1万施設を自社の検証済みデータだけで案内する自前の入口だ。同時に2025年11月からGoogleのAI Mode連携パートナーでもあり、そこでも予約はMarriottの予約エンジンに直接渡る。

IHGも両にらみだ。2026年6月にChatGPTアプリを公開し、7,000施設超を検索・比較できるようにしつつ、予約は自社チャネルへ誘導する。あわせて自社サイトにも対話型検索を組み込む。

あわせて読む Marriottの独自AI検索とIHGのChatGPTアプリの詳細は、それぞれこちらで詳しく解説している。

これらは前述の二つの型をまたぐ動きだ。大手ほど、プラットフォームに乗りながら自前のAIと直販で予約と顧客接点を握り直そうとしている。

日本のホテルやOTAも同じ選択に向き合う。Googleの予約機能に客室を載せて送客を受けるのか、直販ルートでAI経由でも自社予約として顧客接点を保つのか、あるいは両にらみか、である。

ただし、現時点で過大評価は禁物だ。Googleのフライト・ホテル直接予約はまだ始まっておらず、日本市場への展開時期や対応言語も各社とも明示が乏しい。

OwlPayやMiraiが掲げる「予約完結」も各社の設計・想定であり、実際の成約規模はまだ開示されていない。製品の仕様は事実として、その効果は見込みとして、区別して見ておく必要がある。

観光ビジネスの視点

注目すべきは、予約のAIの入口づくりで先頭に立つのが、検索を握るGoogleと自前AIを投入するMarriott、いずれもAI先進国・米国の企業である点だ。型は違えど、実装の試みは米国市場で先に立ち上がっている。直販でつなぐ裏方にはスペインのMirai、台湾のOwlTingといった非米国勢も加わる。

日本の事業者にとって賢いのは、未確定のうちに賭けを急ぐことではない。先行する米国勢がどの方式で勝つのかを注視しつつ、どの経路でも共通して効く「AIに正しく拾われる在庫・料金・施設情報の整備」を先回りで進めることだ。情報が古く断片的な施設は、どの予約経路でもエージェントの選択肢から最初に外れる。

<出典>

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