標準旅行業約款とは 取消料・旅程保証・特別補償の基本

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標準旅行業約款は、旅行会社と旅行者が結ぶ契約のひな形(モデル約款)だ。観光庁長官と消費者庁長官が定めて公示し、多くの旅行会社が標準旅行業約款と同一またはこれに沿った約款を使っている。

パッケージツアーを申し込むとき、取消料はいくらか、旅程が変わったら何が返ってくるのか、旅先で事故に遭ったらどう補償されるのか。その答えの多くは、この約款に書かれている。本記事では、取消料・旅程保証・特別補償という3つの柱を中心に、2026年4月に施行された最新版にもとづいて整理する。

この記事のポイント

  • 標準旅行業約款は観光庁・消費者庁が定めるモデル約款で、これと同一なら各社は認可を受けたものとみなされる。
  • 取消料には時期ごとの上限が定められ、国内は旅行20日前から、海外(航空機利用)は30日前(ピーク時40日前)から発生する。
  • 旅程が事前の約束と変わると、事由に応じて旅行代金の1.0〜5.0%の変更補償金が支払われる。
  • 企画旅行の参加中に事故があれば、旅行会社の過失を問わず死亡海外2,500万円・国内1,500万円などの特別補償が出る。
目次

標準旅行業約款とは何か

標準旅行業約款は、旅行業法第12条の3にもとづき、現在は観光庁長官と消費者庁長官が定めて公示するモデル約款だ。

旅行会社は、旅行業約款について認可を受ける必要がある。ただし、標準旅行業約款と同一の内容を使う場合は、認可を受けたものとみなされる。このため、旅行業者の約款では標準約款が広く参照・採用されている。

背景には、旅行取引が複雑で、旅行者と事業者の間に情報の差が生じやすいという事情がある。国が契約条件のひな形を示すことで、旅行契約における基本的な条件をそろえ、旅行者保護の基準を示す役割を果たしている。

6つの契約類型と適用範囲

標準旅行業約款は、旅行の形態ごとに6つの部で構成されている。募集型企画旅行契約、受注型企画旅行契約、手配旅行契約、渡航手続代行契約、旅行相談契約、そして別紙の特別補償規程だ。

このうち、パンフレットやサイトで広く旅行者を募る一般的なパッケージツアーが「募集型企画旅行」にあたる。旅行会社があらかじめ目的地・日程・サービス内容・代金を定めて実施するものだ。

一方、企業の視察旅行や学校の修学旅行のように、旅行者の依頼を受けて計画を作るのが「受注型企画旅行」である。本記事では、主に募集型企画旅行を例に、取消料・旅程保証・特別補償を整理する。なお、特別補償は募集型・受注型を含む企画旅行が対象となる一方、航空券やホテルだけを手配する「手配旅行」では、企画旅行と同じ旅程保証・特別補償の枠組みでは説明できないため、利用する際は各社の約款・旅行条件書を確認してほしい。

標準旅行業約款が定める6つの契約類型と本記事の対象範囲

取消料はいつ・いくら発生するか

旅行者の都合でツアーをキャンセルすると、時期に応じた取消料がかかる。約款は取消料の「上限」を定めており、旅行会社はこの範囲内で設定する。国内旅行と海外旅行で発生時期が異なる。

国内旅行(募集型)の取消料は、次のとおりだ。

解除の時期取消料の上限
旅行開始日の前日から数えて20日目(日帰りは10日目)以降旅行代金の20%以内
前日から数えて7日目以降30%以内
旅行開始日の前日40%以内
旅行開始日の当日50%以内
旅行開始後・無連絡での不参加100%以内

海外旅行(航空機利用の募集型)は、より早い時期から取消料が発生する。

解除の時期取消料の上限
ピーク時で前日から40日目以降旅行代金の10%以内
前日から30日目以降20%以内
旅行開始日の前々日から当日まで50%以内
旅行開始後・無連絡での不参加100%以内

(注:ピーク時とは12月20日〜1月7日、4月27日〜5月6日、7月20日〜8月31日を指す。上記はいずれも上限であり、実際の取消料はこれより低く設定されている商品もある。)

貸切航空機を利用する旅行は、上記とは別の区分が適用される。

なお、受注型企画旅行では、契約書面に企画料金を明示していれば、20日前より前のキャンセルでも企画料金相当額を取消料として請求できる。募集型とは異なる取り扱いだ。

旅程が変わると支払われる変更補償金

ツアーの日程や宿泊先が、契約時の約束と変わることがある。旅行会社に故意・過失がある場合の損害賠償とは別に、契約内容に一定の重要な変更が生じた場合、約款の定めに従って「変更補償金」が支払われることがある。これが旅程保証の仕組みだ。ただし、後述のとおり天災地変など一部の事由による変更は対象外となる。

補償金の額は、変更の内容ごとに旅行代金へ乗じる率が決まっている。旅行開始前の変更か開始後の変更かで率が変わる。主な変更の例は次のとおりだ。

変更の内容開始前開始後
旅行の開始日・終了日の変更1.5%3.0%
観光地・観光施設などの変更1.0%2.0%
運送機関の等級・設備が、より低い料金のものに変わる場合1.0%2.0%
運送機関の種類・会社名の変更1.0%2.0%
本邦内の発着空港が異なる便への変更1.0%2.0%
直行便から乗継便・経由便への変更1.0%2.0%
宿泊機関の種類・名称の変更1.0%2.0%
宿泊機関の客室の種類・設備・景観などの変更1.0%2.0%
上記のうちツアータイトルに記載があった事項の変更2.5%5.0%

(注:上記は変更事由と率の全項目〔9区分〕を示している。)

変更補償金の総額には上限がある。旅行者1名・1企画旅行あたり、旅行代金に各社が定める率を乗じた額が限度で、この率は15%以上とされている(各社の約款で確認できる)。また、1件あたりの支払額が1,000円未満の場合は支払われない。

対象外となる事由は、天災地変、戦乱、暴動、官公署の命令、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、当初の運行計画によらない運送サービスの提供、旅行参加者の生命・身体の安全確保のため必要な措置など、約款に定められている。標準約款を前提にする限り、旅行者に不利な免責を自社判断で広げることはできない。

事故に備える特別補償

企画旅行の参加中に、旅行者が事故で死亡・けが・手荷物の損害を受けることがある。標準約款は、旅行会社に過失があるかどうかを問わず、補償金や見舞金を支払うと定めている。これが特別補償で、別紙の特別補償規程が根拠となる。

主な補償金額は次のとおりだ。海外旅行と国内旅行で水準が異なる。

補償の種類海外旅行国内旅行
死亡補償金2,500万円1,500万円
後遺障害補償金(上限)2,500万円1,500万円
入院見舞金4万〜40万円2万〜20万円
通院見舞金2万〜10万円1万〜5万円
携帯品損害補償金(1名の限度)15万円15万円

死亡補償金は、事故の日から180日以内に死亡した場合に支払われる。携帯品の損害は、補償対象品1個あたり10万円が上限で、現金・有価証券・クレジットカード・パスポートなどは対象外だ。

「企画旅行参加中」とは、最初の運送・宿泊などのサービス提供が始まってから、最後の提供が終わるまでを指す。なお、故意や自殺、犯罪行為、無資格・酒酔い運転、戦争などによる損害は補償されない。国内旅行では地震・噴火・津波も対象外となる。

損害賠償と払戻しの主なルール

特別補償とは別に、旅行会社自身の責任を定めた条項もある。旅行会社が故意または過失で旅行者に損害を与えたときは、賠償責任を負う。ただし、損害発生の翌日から2年以内に通知した場合に限られる。

手荷物の損害については、国内旅行では14日以内、海外旅行では21日以内に通知した場合に限り、旅行者1名15万円を限度に賠償される(故意・重過失の場合を除く)。これは前述の特別補償の携帯品とは別枠の扱いだ。

キャンセルや減額があった場合の払戻しにも期限がある。旅行開始前の解除なら解除の翌日から7日以内、減額や開始後の解除なら旅行終了日の翌日から30日以内に払い戻される。

2026年4月施行の改正で何が変わったか

標準旅行業約款は、令和8年(2026年)3月9日の告示改正を経て、同年4月1日から新しい内容が適用されている。今回の改正点は1つに絞られる。特別補償規程が定める「通院見舞金」の対象に、オンライン診療が加わったことだ。

医療法等の改正でオンライン診療の法的な位置づけが明確になったことを受け、約款側でも「通院」の定義にオンライン診療受診施設へ通うこと・オンライン診療を受けることが含まれるよう整理された。旅行中の事故でオンライン診療を利用した場合も、通院見舞金の対象になる。

なお、通信契約の定義に「インターネット」を明記し、契約の成立時期を「承諾通知が旅行者に到達した時」に統一するという大きな見直しは、2026年ではなく2020年(令和2年)4月の改正で既に行われている。

(注:本記事の数値・条文は2026年4月1日適用版にもとづく。最新の改正状況は観光庁の公表資料を確認のこと。)

観光ビジネスの視点

標準旅行業約款は、旅行会社にとって契約条件の共通土台になる。標準約款を採用する会社どうしでは、取消料の上限や特別補償の基本額など、契約条件の骨格が共通化されやすい。だからこそ商品づくりでは、契約条件そのもので差をつけようとするより、旅程内容やサポート体制、トラブル時の対応力で信頼を積み上げる設計が重要になる。

よくある質問

自社の約款は、標準旅行業約款と同一にする必要があるか。

法律上の義務ではない。ただし標準約款と同一の内容にすれば、個別に認可を受けたものとみなされる。独自の約款を使う場合は、認可を受けた規定以外の部分に、改正後の標準約款の内容を反映させる必要がある。

取消料を、約款の上限より低く設定してよいか。

問題ない。約款が定めるのは上限であり、事業者はこの範囲内で自由に設定できる。集客施策として取消料を軽減した商品を設計する場合も、上限を超えていないかを確認したい。

受注型企画旅行で、20日前より前のキャンセルでも取消料を請求できるのはどんな場合か。

契約書面に企画料金の額を明示している場合に限られる。明示を怠ると、募集型と同じ発生時期のルールが適用される点に注意したい。

変更補償金の対象外事由を、自社の判断で追加できるか。

できない。対象外となる事由は、天災地変、戦乱、暴動、官公署の命令、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、当初の運行計画によらない運送サービスの提供、旅行参加者の生命・身体の安全確保のため必要な措置など、約款に定められている。標準約款を前提にする限り、この範囲を超えて免責を自社判断で広げることはできない。

特別補償は、自社に過失がない事故でも支払う必要があるか。

支払う必要がある。特別補償は旅行業者の責任の有無を問わず支払う仕組みだ。過失が明らかな事故では、特別補償とは別に損害賠償責任も生じうるため、両者の違いを社内で整理しておきたい。

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