パークアンドライドとは、郊外の駐車場に自動車を停め、そこから鉄道やバスに乗り換えて目的地へ向かう仕組みだ。まちなかへ流れ込む車を手前で受け止め、渋滞や排ガス、歩行者との交錯を減らすことを狙う。観光地では、紅葉シーズンなど観光客が集中する時期の渋滞対策として使われてきた。
本記事では、パークアンドライドの定義と関連する乗り継ぎ方式、目的と効果、そして京都・高野山・鎌倉など国内の観光地での実際の使われ方までを、業界外の読者にもわかるように解説する。
この記事のポイント
- パークアンドライドは、郊外に駐車(パーク)し、公共交通に乗り換えて(ライド)目的地へ向かう仕組み。
- 狙いは、都心部や観光地の渋滞緩和、歩行者空間の安全確保、排ガスの抑制。
- 自家用車から公共交通への転換は、一般に1人あたりのCO2排出量の削減につながる。ただし、示されている数値は輸送機関ごとの排出原単位の比較であり、パークアンドライド全体の削減量を示すものではない。
- 国内では、京都市が紅葉期などに継続して実施しているほか、高野山では2024年度に実証が行われた。
- 鎌倉の事例からは、乗り換え先の輸送力や沿線住民への影響が、パークアンドライドの継続条件になる場合があることが分かる。
パークアンドライドとは 郊外で車を停め、公共交通へ
パークアンドライド(Park and Ride)とは、市街地の周辺部(郊外)に自動車を駐車し、そこから鉄道やバスなどの公共交通機関に乗り換えて目的地へ向かう仕組みだ。
「パーク(駐車する)」と「ライド(乗る)」を組み合わせた言葉で、まちなかへ直接乗り入れる車を郊外で振り分けるのが基本の発想になる。国土交通省のガイドラインも、鉄道駅の周辺に設ける「パークアンドライド駐車場」を、車から鉄道等へ乗り継ぐための駐車場と説明している。
「駐車して公共交通に乗り換える」という考え方は、乗り換える手段によっていくつかの呼び方に分かれる。和歌山県は、次の5つの方式を整理している。
- パーク&レールライド:最寄りの駅まで自家用車で行き、電車に乗り換える
- パーク&バスライド:最寄りのバス停まで自家用車で行き、バスに乗り換える
- パーク&サイクルライド:自家用車から、途中で自転車に乗り換える
- キス&ライド:駅まで家族などに送ってもらい、電車やバスに乗る
- サイクル&ライド:最寄りの駅やバス停まで自転車で行き、電車やバスに乗り換える
このうち、パークアンドライドの中心にあるのは、自分で駐車してから乗り換える最初の3つだ。キス&ライドは本人が駐車せず、サイクル&ライドは自動車を使わないため、厳密には一般的なパークアンドライドとは別の方式とされる。観光地の渋滞対策では、駅の駐車場に停めて電車に乗るパーク&レールライドと、バス停に停めてバスに乗るパーク&バスライドがよく使われる。
観光地の混雑対策として、いま改めて注目
パークアンドライドという考え方自体は新しくない。近年も、オーバーツーリズムや観光地の交通混雑に対応する施策の一つとして、各地で活用されている。
背景にあるのが、オーバーツーリズム(観光公害)への対応だ。政府は2023年10月、「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を決定し、混雑やマナーの問題に取り組む地域を「先駆モデル地域型」として支援している。
観光客の自動車利用などによる交通混雑は、この対策で扱われる主要なテーマの一つであり、その手段としてパークアンドライドが使われている。実際、後で紹介する高野山(和歌山県)の取り組みは、この観光庁の支援事業の成果として報告されている。
国土交通省は2025年5月、最新のガイドライン『持続可能なまちづくりと都市交通の実現に向けた駐車場マネジメントの推進のためのガイドライン』を公表した。
同ガイドラインは観光を巡る動向として、「観光客が集中する一部の地域や時間帯等においては、観光バスの乗降場所や駐車場不足を含む過度な混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響」が課題になっていると指摘し、「中心市街地への自動車流入の抑制を目指したパーク&ライド」を駐車場政策の取組の一つに挙げている。
旧版の『まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン』(第2版・2023年4月)も、公共交通でのアクセスが難しいまちなかの観光エリアや、観光バスによる交通環境の悪化などを課題に挙げ、駐車の集中を和らげるには「徒歩、自転車あるいは公共交通機関等の利便性の向上」を図るべきだとしていた。
あわせて読む 観光地の交通全体の見取り図と、オーバーツーリズムなど混雑対策の全体像は、それぞれこちらで詳しく解説している。
観光地によっては、来訪車両の集中が幹線道路だけでなく、住民が利用する道路や公共交通にも影響することがある。観光客の足が住民の足を圧迫しかねないこの構図をどう解くかが、パークアンドライドが問われている理由の一つだといえる。
まちなかの車を減らし、渋滞と排ガスを抑える
パークアンドライドは、郊外で車を止めて公共交通に乗り換えてもらうことで、まちなかに入る車を減らすことを狙う仕組みだ。その効果として、国土交通省の資料は「都心部における交通渋滞の緩和、歩行者空間の安全性確保、交通大気汚染回避等の効果」を挙げている。郊外で車の流れを吸収することで、渋滞や排ガス、車と歩行者の交錯を抑える効果が期待される、という考え方だ。
環境面では、自家用車から公共交通への転換が、一般に1人あたりのCO2排出量の削減につながるとされている。国土交通省は、旅客の輸送量あたりのCO2排出量について「自家用乗用車に対し、バスは約5分の2、鉄道は約8分の1」としている。和歌山県も、パークアンドライドの推進にあたって「バスは乗用車の約3分の1、鉄道は約9分の1」という比較を紹介している。
ただし、この数字の読み方には注意が必要だ。これらはあくまで1人を1キロ運ぶときの排出量(排出原単位)を交通機関ごとに比べたものであり、「パークアンドライドでこれだけ減る」という削減量や削減率を示すものではない。
パークアンドライドには、駐車場まで自分の車で移動する区間が残る。そのため、乗り換え後の区間で公共交通の効率がよくても、行程全体の削減率がそのまま3分の1や8分の1になるわけではない。とはいえ、公共交通への転換は、まちなかへ流入する自動車の抑制や、1人あたり排出量の削減につながる可能性がある。
京都・高野山・鎌倉に見る、国内の事例
京都市(嵐山・東山ほか)
京都市は「京都観光パークアンドライド」を2005年度以降続けている。地元・交通事業者・行政が連携する「嵐山交通対策研究会」が、紅葉のピーク時などに無料の臨時駐車場を開設し、交通規制と組み合わせて車の流入を抑える取り組みだ。
パークアンドライドとして利用できる駐車場の収容規模は、2002年度の1,727台から2016年度の8,258台へと、およそ4.8倍に広がった。これは実際に利用された台数ではなく、受け入れられる駐車場の規模である点に注意したい。2025年度も、秋の観光課題対策として2025年11月に無料の臨時駐車場開設などが継続実施された。
高野山(和歌山県高野町)
和歌山県の高野町は、2024年度に観光渋滞対策の実証を行った。中心部の駐車場を有料化し、駐車場の空き情報を発信しながら、山の外にある無料の大門南駐車場へ車を誘導し、そこからパークアンドバスライドで山内へ運ぶ、という組み合わせだ。
有料化期間中の対象駐車場の利用は合計25,363台、駐車料金の収入は合計1,470万6,000円にのぼった。報告書では、徒歩で観光する旅行者の増加に加え、警備員数が169人から147人に減ったことが報告されている。
鎌倉市
鎌倉市は、観光渋滞の緩和を目的に、周辺の駐車場に停めて江ノ電などに乗り換える「パーク&ライド」を運用してきた。由比ガ浜では5時間1,700円、大船では駐車料金が最大500円割引になるなど、協賛する店や寺社およそ70か所で特典が用意されている。一方で、江の島のパーク&レールライドは2025年9月末で終了し、七里ガ浜も同年10月から休止している。
鎌倉市が示す理由は、乗り換え先である江ノ電の慢性的な混雑と、沿線住民の生活への影響だ。鎌倉市は終了・休止の理由として採算や利用の落ち込みを挙げていない(参考情報として、休止前の七里ガ浜は5時間の駐車と江ノ電のフリーきっぷ2枚を組み合わせて1,850円だった)。
金沢市
金沢市は、土曜・日曜・祝日を中心に、無料の臨時駐車場に停めて既存のバスや鉄道でまちなかへ向かう「休日パーク&ライド」を、現行の制度として運用している。観光や買い物での利用を想定した制度で、東金沢駅西口では最大110台、森本駅東口では23台などの駐車場が用意され、パーク&ライド利用時の駐車は無料だ。利用できる日や時間は駐車場ごとに異なる。
軽井沢町
軽井沢町は「軽井沢交通快適化対策」の一環として、駅周辺の駐車場に停めてしなの鉄道に乗り換え、町内は循環バスで移動する「パーク&レールライド」を、現行の取り組みとして実施している。駐車料金は施設ごとに異なり、町の公式ページでは小諸駅・御代田駅周辺の対象駐車場について24時間まで500円という例が案内されている。町内の循環バスは運賃100円だ。
日光市(栃木県)
栃木県は、2020年秋の日光地域の渋滞対策として、日光宇都宮道路「清滝インターチェンジ」の出口付近に無料の臨時駐車場を設け、路線バスに乗り換える「パーク&バスライド」を実施した。これは2020年秋の取り組みで、その後も同じ内容で続いているとは限らない。
なお、富士山(富士スバルライン)のように、麓の駐車場に停めてシャトルバスで五合目へ向かう「マイカー規制」も、構造としてはパーク&バスライドに近い。ただしこちらは車の乗り入れを制度として制限する「規制」であり、任意の乗り換えを促すパークアンドライドとは区別して考える必要がある。
パークアンドライドは「駐車場さえ整備すれば効果が出る」という単純な話ではない。高野山の実証は、有料化・満空情報の発信・山外駐車場への誘導・パークアンドバスライドをセットで動かした結果として報告されている。有料化収入は約1,470万円にのぼり、徒歩観光の増加とあわせて警備員数も169人から147人に減った。高野山のように有料化収入を情報発信や誘導の原資に回せるかどうかが、他地域が同じ設計を再現できるかどうかのカギになる。
よくある質問
出典
- 国土交通省(国土計画)「交通システム パーク・アンド・ライド 技術概要」
- 国土交通省「国土交通白書(令和3年版)交通・物流の脱炭素化」
- 国土交通省 近畿地方整備局「第1回 京都エリア観光渋滞対策実験協議会(京都市提案)」2017年
- 高野町「令和6年度実施事業報告書」(観光庁サイト掲載)
- 鎌倉市「パーク&ライド」




