この記事のポイント
- シンガポールが192の国・地域で単独首位、日本は188で2位を維持した。
- 米国は180で10位まで後退し、米国より上位の国・地域は36にのぼる。
- 20年で1旅券あたりの平均渡航先は58から108へほぼ倍増、一方で上位と下位の格差は拡大した。
- 指数が測るのは「他国が自国民に開く扉」で、訪日を動かす「日本が外国人に開く入口」とは別の軸である。
首位シンガポール、日本は2位
投資移住コンサルティング会社のヘンリー&パートナーズ(本社はスイス・チューリヒ)は2026年7月21日、「ヘンリー・パスポート・インデックス」の2026年7月版を発表した。指数の開始から20年の節目となる版だ。公式のメソドロジーが「Updated monthly」と明記するとおり同指数は月次で更新されるため、本記事が扱う順位はいずれも2026年7月版の値である。
首位はシンガポールで、事前のビザ取得なしで渡航できる国・地域は192にのぼる。単独の1位である。日本は188で、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)と並ぶ2位だった。
米国は180で10位、中国は83で60位、台湾は134で34位、香港は174で14位。最下位はアフガニスタンの22で、104位だった。米国はかつて世界首位に立ったが、20年で順位を下げ、2025年後半には一時トップ10圏外へ転落した。今回は10位に復帰し、圏内に踏みとどまっている。
上位は欧州勢が中心、アジア勢も存在感
トップ10の顔ぶれは次のとおり。数字は事前のビザなしで渡航できる国・地域の数を示す。ヘンリー指数では通常のビザ免除に加え、到着ビザや電子渡航認証(ETA)なども1点として数える。
| 順位 | 国・地域 | 渡航先の数 |
|---|---|---|
| 1 | シンガポール | 192 |
| 2 | 日本、韓国、UAE | 188 |
| 3 | スウェーデン | 187 |
| 4 | ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダなど11か国 | 186 |
| 5 | オーストリア、スイス、ポルトガルなど5か国 | 185 |
| 6 | 英国、ハンガリー、ポーランド | 184 |
| 7 | オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、マレーシアなど8か国 | 183 |
| 8 | クロアチア、エストニア | 182 |
| 9 | リヒテンシュタイン、リトアニア | 181 |
| 10 | 米国、アイスランド | 180 |
上位は欧州勢が多数を占めるが、シンガポールや日本、韓国、UAE、マレーシア、オーストラリア、カナダなど、アジア・中東・オセアニア・北米の旅券もトップ10に入る。英国は184で6位につけた。国の人口や経済の規模だけで順位は決まらず、外交関係や地域統合なども影響する。
日本はかつて長年にわたり世界首位に立っていたが、近年はシンガポールに抜かれ2位が定位置になっている。
ヘンリー&パートナーズによると、この20年で世界の移動の自由は大きく広がった。1つの旅券で平均して渡航できる国・地域の数は、2006年の58から2026年には108へとほぼ倍増している。
ただし恩恵は均等ではない。渡航可能先は多くの旅券で増えたが、首位と最下位の差は2006年の118から170へと開いた。シンガポールが192まで伸ばす間に、アフガニスタンは20年で10しか増えず22にとどまる。移動の自由の広がり方には、大きな差がある。
同社会長のクリスチャン・ケーリン氏は「パスポートの力は、その国の地政学的資本を最も明確に示すものの一つだ。平和や繁栄だけで測れるものではない」と述べている。
順位を分ける「開放」の姿勢
この指数が示すのは、自国のパスポートでビザなし渡航できる国・地域の多さだ。順位には外交関係や経済力、地政学、地域統合などが影響する。相手国からビザ免除を引き出す外交努力も重要になる。
米国はアイスランドと並ぶ10位で、トップ10を維持した。ただし、1〜9位には同順位を含めて36の国・地域が並ぶ。英国は今回、中国へのビザなし渡航を実現したが、米国民は引き続きビザが必要だ。こうした外交関係の違いが、旅券の点数にも表れる。
長く上位にあった米国がじりじりと後退してきたこと自体が、順位を決める物差しの変化を映している。ヘンリー社のケーリン会長は「開放と協力を受け入れる国々が躍進する一方、過去の特権に安住する国々は取り残されつつある」と述べる。相手国に扉を開かせ、自らも開く。その外交の積み重ねが、旅券の強さを左右する時代になりつつある。
一方、中国のパスポートは83か国・地域に渡航でき、順位は60位にとどまる。しかし、中国は外国人を受け入れる側ではビザ免除を広げている。2024年11月には日本を含む9か国を加え、対象を38か国に拡大。その後も対象国を増やし、一般旅券を持つ人の観光や商用などを目的とした30日以内の滞在について、ビザを免除している。
つまり、自国民が海外へ行きやすいかと、外国人を広く受け入れているかは別の指標であり、必ずしも一致しない。
あわせて読む 日本の出国コストと、訪日側で5倍になったビザ手数料は、それぞれ別の記事で扱っている。
パスポート指数が示すのは、その旅券で海外へ行きやすいかであり、外国人が日本へ入国しやすいかとは別の指標だ。中国は旅券順位が60位である一方、日本を含む40か国超にビザ免除を広げている。訪日需要に直接関わるのは、日本側のビザや入国手続きである。さらに航空便、旅行費用、為替も影響するため、旅券順位だけでなく、入国条件と旅行者の負担を分けて見る必要がある。
出典
- Henley & Partners「Passport Power Doubles as Global Peace Declines(ヘンリー・パスポート・インデックス20周年版のプレスリリース)」(Henley & Partners、2026年7月21日)
- 中国政府網「China to extend unilateral visa-free policy for over 40 countries」(gov.cn、2025年11月)
- Henley & Partners「Henley Passport Index Methodology」(指数は月次更新。到着ビザ・ETAは1点、事前取得型eVisaは0点。原データはIATA提供)




