ビザ発行手数料5倍で1,200億円 政府が進める「入口の負担増」

成田空港第2ビル駅の改札前をスーツケースを引いて歩く旅行者
Photo: Tan / Unsplash
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外国人政策の一環で査証手数料を見直し

政府は2026年7月1日、外国人に発給する査証(ビザ)の発行手数料を従来の5倍に引き上げた。2025年12月26日に閣議決定した2026年度当初予算案に盛り込まれ、2026年6月19日に改正政令が閣議決定された。

1回限り入国できる一次ビザは、3,000円程度から約1万5,000円に引き上げられた。複数回入国できる数次ビザも、6,000円程度から約3万円になった。外務省は2026年6月24日、改定後の手数料を確定値として告知している。

査証手数料は2026年7月1日から5倍に。一次ビザ3,000円→約1万5,000円、数次ビザ6,000円→約3万円

手数料を負担するのは、日本に渡航するためにビザを取得する外国人だ。財務省の予算資料によると、この引き上げによる査証手数料の増収は、前年度当初比で約1,200億円にのぼる見込みだ。

約48年ぶりの改定、背景に主要国との手数料差

日本の一次査証の標準手数料は長く据え置かれてきた。報道では1978年以降初の改定で、約48年ぶりとされる(起点となる1978年について、外務省の公表資料では確認できなかった)。

背景にあるのは、訪日外国人(インバウンド)の急増と、主要国に比べて低い手数料水準だ。米国や英国の短期滞在ビザは日本円で2万円を超え、改定前3,000円の日本は主要7か国(G7)のなかで低い水準にあった。

政府はこの引き上げを外国人施策の財源確保策と位置づけ、査証分の増収は在外公館の領事活動や外交実施体制の強化に充てるとしている。同じ財務省資料によると、混雑対策などのオーバーツーリズム対策の財源は、主に同時に引き上げる出国税が担う。

ただし全員が対象になるわけではない。査証取得が必要なのは、中国・フィリピン・ベトナム・インド・ロシアなどからの渡航者だ。訪日客数で上位の韓国・台湾・香港や欧米主要国はビザ免除で、今回の値上げの直接の対象外となる。施行日は「領事官の徴収する手数料に関する政令」の改正により2026年7月1日と定められた。同日以降に在外公館で受理された申請に新手数料が適用される。

影響は中国に集中、消費押し下げは「軽微」

5倍という数字のインパクトに対し、インバウンド全体への影響は限定的との見方が出ている

野村證券は、手数料が約2万3,000円に上がった場合の影響を試算している。これはG7並みの水準を訪日客数で加重平均した、民間の想定値だ。それによると、年間の訪日客数は約1.7%(約63万人)、1人当たりの旅行支出額は約2.0%押し下げられる。客数と単価を掛け合わせたインバウンド消費額の減少は約3.7%、額にして約2,840億円と見込む。それでも年間GDPへの影響は約0.05%にとどまり、同社は影響を「軽微」と評価している。減少分の大半は、対象客の多い中国からの旅行者が占める形だ。

ビザ手数料の引き上げは、訪日客の負担増をめぐる一連の動きの一つでもある。政府は2026年7月1日に出国税(国際観光旅客税)を1,000円から3,000円へ引き上げ、短期滞在ビザの免除国を対象にした電子渡航認証制度(日本版ESTA、通称JESTA)の2028年度導入も検討している。入口と出口の双方で、訪日にかかるコストは段階的に上がっていく。

あわせて読む 出国税の3倍化の詳細は、こちらで詳しく解説している。

曇天の空港駐機場。旅客機とボーディングブリッジが並ぶ 出国税が7月に3倍へ 1,300億円の使い道と海外旅行への影響
観光ビジネスの視点

「5倍」という見出しは強烈だが、対象は要ビザ国に限られ、訪日全体への影響は試算上「軽微」だ。注目すべきは、約1,200億円という増収の使い道である。

政府の予算資料を見ると、混雑対策などのオーバーツーリズム対策の財源は出国税が担う。一方でビザ手数料の増収が向かう先は在外公館の領事活動や外交実施体制の強化で、観光の現場に直接戻るわけではない

「インバウンド政策の一環」と語られがちだが、ビザ値上げと観光振興は財布が別だ。観光業界が見ておくべきは、訪日客から得た負担増がどこへ向かうのかという点である。

(注:本記事は2026年6月29日に公開し、2026年7月29日に施行後の内容へ更新した。制度・数値は2026年7月29日時点。訂正:数次査証の金額と施行日を「検討中・未確定」としていた記述を、外務省が2026年6月24日に告知した確定値と施行日に改めた。)

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