【決算解説】共立と藤田、ホテルは減益 利益を伸ばしたのは寮と婚礼

ホテルのロビーラウンジ。木のルーバー壁を背に、ソファやスツールが間隔をあけて置かれている
Photo: Frames For Your Heart / Unsplash
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2社とも増収、それでもホテルは減益

シリーズ「決算で読む観光ビジネス」の今回は、2026年8月に業績を開示した宿泊業2社を取り上げる。共立メンテナンスと藤田観光は、どちらもホテル部門が営業利益を落とした。増益に寄与したのは、共立では寮事業、藤田では婚礼が伸びたラグジュアリー&バンケット事業である。

共立メンテナンスは2026年8月7日、2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の決算を発表した。売上高は611.4億円で前年同期比7.6%増、営業利益は48.6億円で8.2%増。会社は決算説明資料で6期連続の増収増益としている。

経常利益48.1億円(3.9%減)と純利益30.4億円(15.5%減)は前年を割った。会社が挙げる理由は持分法による投資利益の減少と前期の税金コスト減少の反動で、本業の採算とは別の話だ。

藤田観光は2026年8月6日、2026年12月期の中間決算(1〜6月)を発表した。売上高407.6億円(2.0%増)、営業利益62.7億円(8.8%減)、経常利益60.7億円(10.7%減)である。

中間純利益は80.2億円で77.4%増と伸びた。その主因は、投資有価証券売却益60.0億円を特別利益に計上したことである。

2社に共通するのは、客室単価を上げながらホテル部門が減益になったことだ。共立のホテル事業は増収でも営業利益37.4億円で8.1%減、藤田のWHG事業は0.4%の減収で営業利益52.7億円の12.6%減。対象期間もセグメントの区分も違うが、決算の形は似ている。

共立の減益はリゾートで起きた

共立のセグメントは寮・ホテル・総合ビルマネジメント・フーズ・デベロップメント・その他の6区分に分かれる。売上を最も押し上げたのはホテル事業だ。外部顧客への売上高は26.5億円増え、連結の増収額43.3億円の6割を占める(編集部算出)。

一方、営業利益を伸ばしたのは寮事業だった。売上160.8億円(7.6%増)に対し営業利益は22.7億円で29.6%増。4月に全国13事業所2,401室を開業し、寮事業全体の期初稼働率は98.5%と前年より1.1ポイント高い。

ホテル事業は売上370.6億円(7.8%増)に対し、営業利益37.4億円で8.1%減。3.3億円の減益である。決算説明資料でブランド別に見ると、内訳がはっきりする。

ドーミーイン事業は売上233.6億円(7.2%増)で、営業利益45.1億円と前期比0.08億円の減益にとどまった。対してリゾート事業は売上136.9億円(8.7%増)ながら、営業損益が4.4億円の赤字から7.6億円の赤字へ3.2億円広がっている。

ホテル事業の3.3億円の減益は、数値上そのほとんどがリゾート事業の赤字拡大に対応する。

会社は両ブランドの営業利益の増減を4つに分けて説明している。ドーミーインは既存棟が4.3億円の増益で、内訳はRevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益)上昇による7.5億円の増益と、リネン・清掃費・賃借料などのコスト上昇による3.2億円の減益だ。

ここに新規開業棟の負担1.1億円と、その他3.3億円(大規模リニューアル工事の増加3.8億円など)が乗る。リゾートも形は同じで、既存棟の1.7億円の増益に開業棟の負担1.8億円とその他3.1億円が乗った。どちらもRevPAR上昇による増益が、コスト上昇と改装・新規開業の負担に相殺されている。

売り止め10万室、ADRは9%上昇

藤田のWHG事業(ワシントンホテル、ホテルグレイスリーなど)は、売上243.7億円(0.4%減)、営業利益52.7億円(12.6%減)。会社はセグメントの増減額のみを開示しており、増減率は実額からの編集部算出である。稼働率は前年同期の87%から82%へ5ポイント落ちた。

理由は改装だ。2026年1〜6月に東京ベイ有明ワシントンホテル、キャナルシティ・福岡ワシントンホテル、ホテルグレイスリー札幌などで、延べ約10万室を売り止めた。売り止め客室を除いたベースの稼働率は89%で、前年同期を1ポイント上回っている。

一方、客室単価(ADR)は18,709円と前年同期比で9%上がった。会社はこの上昇を、欧米豪の需要獲得、商品力と海外セールスの強化、改装による1室あたり利用人員の増加、イールド機能の強化によるものと説明している。

稼ぎ方は逆でも利益は伸びず
共立メンテナンス ドーミーイン事業と藤田観光 WHG事業の営業指標
共立 ドーミーイン事業観点藤田 WHG事業
2026年4〜6月
(第1四半期)
対象期間2026年1〜6月
(中間期累計)
88.6%
(前年同期比 +2.0pt)
稼働率82%
(前年同期 87%)
16.7千円
(+0.4千円)
客室単価(ADR)18,709円
(前年同期比 +9%)
28.2%
(+1.1pt)
インバウンド比率63.3%
(+3.6pt)
233.6億円
(+7.2%)
売上高243.70億円
(▲0.4%)
45.1億円
(▲0.08億円)
営業利益52.73億円
(▲12.6%)
(注:両社は決算期が異なり、対象期間は一致しない。共立の稼働率・客室単価は2025年4月以降に開業したホテルを除いた同一条件での比較値で、客室単価は千円単位の開示。藤田の稼働率・客室単価はWHGホテルズのFC・MC施設およびサービスアパートメントを除く。藤田の稼働率は改装にともなう売り止め客室を除くと89%〔前年同期比+1pt〕)
出典:共立メンテナンス「2027年3月期 第1四半期 決算説明資料」、藤田観光「2026年12月期 第2四半期決算説明資料」「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」をもとに編集部作成

あわせて読む 全国の宿泊需要がどう動いているかは、こちらで詳しく解説している。

ホテル客室の窓辺。デスクランプの奥の大きな窓から市街地の高層ビル群が見える 6月の宿泊6.5%減、日本人4.4%減・外国人11.9%減

その需要の中身も動いている。決算説明資料によると、インバウンド宿泊者数は122万5千人で1.8%減。総宿泊者数が6.5%減ったため、インバウンド比率は60.7%と2.9ポイント上がった(国内事業所全体。WHG事業単独では63.3%・3.6ポイント増)。

国別シェアでは中国(香港を含む)が22.3%から12.3%へ下がり、実数で12万6千人減った。代わりに北米(米国とカナダ)が16.1%から18.2%へ伸びて資料の区分では最大になり、豪州、台湾、その他欧州も比率を上げている。

中国からの宿泊者が減る一方で欧米豪が増え、会社はこの需要獲得がADR上昇につながったと説明している。

藤田で利益を伸ばしたのは、婚礼が伸びたラグジュアリー&バンケット事業(ホテル椿山荘東京など)だった。営業利益は9.6億円で28.2%増。婚礼の施行件数が707件から828件へ増え、1件当たり単価も上がっている。

増収分を上回った5つの費用

藤田の決算説明資料は、営業利益6.0億円の減益を要因別に分解している。増収による限界利益の増加は4.87億円。これに対して費用の増加は10.92億円で、内訳は労務費3.75億円、減価償却費2.77億円、投資一時費用2.63億円、広告宣伝費1.25億円、その他0.52億円だった。

増収分は費用増に食われた
藤田観光 営業利益の要因別増減(2025年→2026年 中間期累計)
藤田観光の中間期営業利益 要因別増減 前年同期の68.77億円に対し、増収による限界利益の増加は4.87億円にとどまった。一方で労務費3.75億円、減価償却費2.77億円、投資一時費用2.63億円、広告宣伝費1.25億円、その他費用0.52億円の合計10.92億円の費用増があり、当期は62.70億円へ6.0億円の減益となった。 75 70 65 60 (億円) 68.77 +4.87 ▲3.75 ▲2.77 ▲2.63 ▲1.25 ▲0.52 62.70 前年 限界 利益 労務費 減価 償却 投資 一時 広告 宣伝 その他 当期
(注:会社開示は百万円単位。億円は編集部で換算した。縦軸は60億円を基点としており0からの目盛りではない。各項目を積み上げると62.72億円で、公表値62.70億円と2百万円ずれる(会社は差の内訳を開示していない)。「限界利益」は増収にともなう利益の増加分で、WHG事業▲0.69億円・ラグジュアリー&バンケット事業+4.69億円・リゾート事業+0.87億円の合計)
出典:藤田観光「2026年12月期 第2四半期決算説明資料」をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
藤田観光 中間期営業利益の要因別増減(2025年2Q累計→2026年2Q累計)
区分項目金額(億円)会社開示(百万円)
前年実績2025年2Q累計68.776,877
限界利益WHG事業▲0.69▲69
限界利益L&B事業+4.69+469
限界利益リゾート事業+0.87+87
限界利益小計+4.87(編集部計)
費用増加労務費▲3.75▲375
費用増加減価償却費▲2.77▲277
費用増加投資一時費用▲2.63▲263
費用増加広告宣伝費▲1.25▲125
費用増加その他費用▲0.52▲52
費用増加小計▲10.92(編集部計)
当期実績2026年2Q累計62.706,270

注:L&B事業=ラグジュアリー&バンケット事業。WHG事業の限界利益▲0.69億円は、改装にともなう売り止めによる減益▲10.65億円とADR上昇などによる増益+9.96億円の差し引き。小計は個別項目からの編集部合算で、会社は小計を開示していない。各項目を積み上げると62.72億円で、公表値62.70億円と2百万円ずれる(会社は差の内訳を開示していない)。億円表記は百万円開示からの編集部換算。出典:藤田観光「2026年12月期 第2四半期決算説明資料」

会社はこの費用増を「人材への投資と、客室改装など施設への投資を積極的に実施し、成長基盤を強化」した結果と説明している。両社が減益要因として示したのは、いずれも改装・新規開業・人件費といった費用の増加だった。

ただし藤田では総宿泊者数が6.5%減り、共立のリゾート事業も稼働率が0.9ポイント下がっている。費用の増加だけで説明しきれる決算ではない。

上方修正でも前期は超えない

共立は2027年3月期の通期予想を据え置いた。売上2,770億円(0.6%増)、営業利益260億円(4.6%増)、純利益180億円(3.8%減)である。

藤田は8月6日に通期予想を上方修正した。売上840億円、営業利益132億円、純利益125億円。ただし修正は上期実績の反映にとどまり、下期は前回予想を据え置いている。

しかも上方修正後の営業利益132億円は、前期実績138.0億円を4.3%下回る。経常利益も6.6%減の見込みだ。上方修正と対前期減益が同時に起きている決算である。

観光ビジネスの視点

2社の決算に共通するのは、客室単価を上げながら営業利益が伸びなかったことだ。共立のドーミーインは稼働率も単価も前年を上回り、藤田のWHGは売り止めで稼働率を落としつつADRを9%上げた。それでも利益が横ばいか減益に沈んだのは、費用の増加が増収分を上回ったからである。

ただし、改装も出店も、単価を上げるための投資として説明されている。藤田の下期が据え置いた予想どおりに着地するか、共立のホテル事業が今後増益へ戻るか。この2社に限れば、稼働率とADRの水準だけでなく、投資の負担と回収の時期を併せて見る局面に入っている。

出典

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