令和8年熊本地震で熊本城が休園 火の国まつりなど夏の行事も中止に

地震発生前に撮影された熊本城の天守
地震発生前の熊本城。7月28日から臨時休園が続いている(写真=Unsplash/Luo Jin Hong、2025年6月公開)
  • URLをコピーしました!
目次

震度7の地震、被害の集計は続いている

7月28日16時27分、熊本県熊本地方を震源とする地震が発生した。規模はマグニチュード7.1(暫定値)、震源の深さは16キロ(暫定値)で、宇城市と氷川町で最大震度7を観測している。気象庁は同日、この地震を「令和8年熊本地震」と命名した。

人的被害の集計は続いている。熊本県が7月30日7時30分時点でまとめた資料では、死者17人、心肺停止6人、重症5人、中等症40人、軽傷14人が確認されている。傷病の程度が定まっていない4人もおり、数値は今後も変わる。総務省消防庁が同日14時時点でまとめた第20報も熊本県の死者を17人とし、内訳は八代市11人、嘉島町5人、甲佐町1人である。避難所は県内415カ所に開設され、1万467人が身を寄せている。

住家被害の全容は、まだ分かっていない。消防庁が7月30日6時30分時点で計上した熊本県の住家被害は、全壊1棟と一部破損1棟である。同庁は各報に「これは速報であり、数値等は今後も変わることがある」と注記している。救助については、発生していた59件のうち57件で対応が終わった。八代市の工場の煙突崩落と、嘉島町の商業施設の2階部分の崩落では、緊急消防援助隊による対応が続いている。火災は11件発生し、すべて鎮火した。

気象庁は、この地域では過去に大地震の発生から1週間程度の間に同程度の地震が続発した事例があるとして、1週間程度は最大震度7程度の地震に注意するよう呼びかけている。場所や規模によっては今回より強く揺れる場合があるともしている。

火の国まつりも熊本城の夏も、9月分まで中止に

熊本市や熊本城の公式サイトでは7月29日までに、8月・9月に予定されていた催しの中止が発表されている。

イベント日程会場
第49回火の国まつり7月31日〜8月2日中心市街地・花畑広場
城彩苑夜市8月1日・8日・15日桜の馬場城彩苑
熊本城REVIVAL2026夏ノ彩8月7日〜16日熊本城二の丸広場
熊本城特別見学ツアー8月7日・8日・14日・15日熊本城内
熊本城ツアー”夏の陣”8月8日〜30日の土日ほか熊本城内
熊本城竹の丸特別公開8月8日・9日、9月5日・6日熊本城竹の丸

熊本城そのものも、7月28日から「安全が確認されるまでの間」の臨時休園に入った。熊本市は7月29日、石垣の崩落が28カ所、天守閣と本丸御殿の壁の割れが計4カ所確認されたと発表している。来園者と職員に負傷者はなかった。

中止は地震当日の催事にとどまらず、8月から9月にかけての集客期の行事に及んでいる。

再開の見通しも、ほとんど立っていない。熊本市が7月30日9時時点でまとめた閉館施設の一覧では、大半が期限を定めない「当面の間」の閉館である。熊本城ミュージアムわくわく座、熊本城ホール、熊本博物館も「当面の間」とされている。期限が示された数少ない施設が熊本市動植物園で、8月2日までの臨時休園とされた(注:市の一覧は随時更新され、同じ施設について異なる記載が併存することがある)。

宿泊の4割が集まる熊本市が揺れた

気象庁が発表した市町村別の震度では、震度7が宇城市と氷川町、震度6強が熊本市南区、八代市、宇土市、美里町、益城町だった。震度6弱は上天草市、合志市、大津町、西原村、御船町、芦北町である。

熊本市は県内観光の周縁ではない。日本銀行熊本支店の資料によれば、2023年の県内の延べ宿泊者数の構成比は熊本市が43.1%で最大、阿蘇地域が20.7%で続く。県内の宿泊の4割超が集まる熊本市も、南区で震度6強、中央区など4区で震度5強を観測した。

一方、延べ入込客数の構成比では阿蘇地域が22.9%で最大となり、熊本市は18.2%である。訪れる人の集積で最大の阿蘇と、泊まる人の集積で最大の熊本市は、別の場所にある(資料:日本銀行熊本支店。原データは熊本県「令和5年(2023年)熊本県観光統計表」ほか。いずれも県全体に占める地域別の構成比)。

その阿蘇でも、揺れ方は一様ではなかった。阿蘇市、南阿蘇村、高森町が震度5弱だったのに対し、黒川温泉のある南小国町と、小国町、産山村は震度4である。阿蘇の震度は、ひとつの数字では答えられない。

あわせて読む その後に判明した宿泊キャンセルの規模と、風評による影響の広がりは、続報にまとめている。

晴天の阿蘇くまもと空港の旅客ターミナルと管制塔 「正しく伝わっていない」 隣県の知事も動いた熊本地震の宿泊キャンセル9億円

同じ路線でも復旧の見込みは区間で違う

九州新幹線は7月29日、始発から全線で運転を見合わせた。JR九州が7月30日14時時点で示した同日の計画では、博多〜筑後船小屋は本数を減らして運行する一方、筑後船小屋〜熊本は終日運休となった。同社は30日の再開を目指していたが、余震により復旧に時間を要しているとしている。熊本〜鹿児島中央も終日運休である。新幹線などの設備被害は200カ所以上確認されている。代替として、博多〜熊本には臨時快速が上下各4本、計8本設定された。

在来線は、同じ日のうちに区間ごとの明暗が分かれた。鹿児島本線は、午前に運休していた鳥栖〜熊本が14時の一覧から外れ、通常の運行に戻っている。熊本〜八代は終日運休が続く。豊肥本線では熊本〜肥後大津が肥後大津11時56分発の列車から運行を再開し、本数を減らして走っている。一方の肥後大津〜宮地は始発から運休したままで、15時頃の再開を目指す。三角線の宇土〜三角は終日運休で、九州横断特急、あそぼーい!、A列車で行こうも終日運休である。同じ豊肥本線の中で、動き出した区間とまだ止まっている区間が分かれた。

阿蘇くまもと空港は7月28日に滑走路点検で一時閉鎖したが、同日19時に運用を再開した。28日は国内線21便を含む計27便が欠航し、29日も日本航空の11便に加えて全日空の便などに欠航が出た。空港は30日について「本日7月30日は平常運航を予定しております」としたうえで、余震の状況などにより変更となる可能性があるとして、各航空会社の最新の運航情報を確認するよう呼びかけている。新幹線の運休を受けて、日本航空は30日に羽田発熊本行きの臨時便1便と、福岡〜鹿児島線の臨時便を設定している(注:鉄道・空の便の状況は日々変わるため、最新は各社の発表を確認してほしい)。

10年前の震災後、客足の戻り方はどうだったか

10年前の熊本地震のあと、熊本市の観光は指標によって戻り方が分かれた。泊まりに来る客は地震前より増えた一方で、日帰りを含めた観光客の総数は、地震前の水準に届かないままだった。

平成29年(2017年)の熊本市観光統計は、宿泊客数について、復興業務従事者の滞在や国内観光客の回復、外国人観光客の大幅な増加により「地震発生前の数値を上回り」と総括した。熊本城、城彩苑、水前寺成趣園の入園者数も平成27年を上回り、主たる観光地は「地震発生前の数値を上回る結果となった」とされている。

一方、宿泊客と日帰り客を合わせた観光客の総数(入込観光客数)は「熊本城をはじめとする観光施設で立入規制や復旧工事に伴う休館・休園等が継続しており、地震発生前の水準には戻っていない」とした。地震の翌年の2017年になっても、泊まる客は増えたのに、観光客の総数は地震前に戻っていなかった。(注:熊本城の入園者数は地震前とカウント方法が異なり単純に比較できないと市は注記している)

地域差も大きかった。立命館大学歴史都市防災研究所の調査では、地震後の第1四半期の観光関連事業所の売上は熊本県全体で前年の64%、地域別では熊本市93%に対し阿蘇39%、天草58%だった。調査者は天草について「ストックの被害が軽微であったものの、売上額の減少が見られた」として風評被害を挙げている。

(注:計950社に配布し289社が回答、回収率30.4%のアンケート。回答の地域構成は熊本市23%・阿蘇37%・天草20%・その他19%で、熊本市の対象は熊本城周辺・水前寺公園周辺・上通下通商店街が中心。2015年度の売上を基準とした自己申告の比較であり、地域の観光需要そのものを測った統計ではない。四半期ごとの水準には九州ふっこう割の影響が含まれる)

その後の8年で、熊本市の観光は違う規模になった。2025年は観光消費額1,280億円、入込数654.7万人、延べ宿泊者数418.0万人がいずれも2年連続の過去最高で、外国人延べ宿泊者数も約115万人と過去最高を更新している。

あわせて読む 災害時の観光対応と、危機のあとの需要回復の考え方は、こちらで詳しく解説している。

救急用品・軍手・携帯ラジオ・笛・地図とチェックリストが並ぶ防災備品。観光危機管理・防災のイメージ 観光危機管理とは 災害に強い観光地をつくる4つの段階

あわせて読む 発災から支援策が動き出すまでの流れは、九州ふっこう応援割の回でたどっている。

草原の向こうにそびえる阿蘇の山並み。手前のススキと草地を、点在する人影が歩いている 九州ふっこう応援割は10月1日宿泊分から 熊本・鹿児島は補助率6割
観光ビジネスの視点

救助と安全確認が続く現段階で、送客を促すのは早い。ただ、地震の翌日から始まっている仕事もある。問い合わせへの回答だ。「熊本は大丈夫か」という問いに、県をひとまとめにした答えを返せる状況ではない。同じ阿蘇で震度5弱と4が並び、同じ豊肥本線でも動き出した区間と止まったままの区間が分かれ、同じ市内でも施設ごとに再開時期が違う。

2016年の調査では、ストックの被害が比較的軽かった天草でも、第1四半期の回答事業所の売上は前年同期の58%だった。被害の軽い地域にも、需要の減少が及ぶおそれがある。

熊本市の外国人延べ宿泊者は2025年に約115万人で、最多は台湾の約32万人である。施設名・交通の区間・確認時刻をそろえた情報を、繁体字・簡体字・韓国語でも同じ粒度で更新し続けたい。

出典

NEWS LETTER編集部が選ぶ注目記事をお届け限定イベントや独自レポートも先行案内ニュースレター登録
  • URLをコピーしました!
目次