値上げに動いた施設は、1年で21減った
テーマパークの入場料値上げが相次いでいる、と報じられている。実際、東京ディズニーリゾートは10月から1デーパスポートの最高価格を12,400円へ引き上げる。だが業界全体の統計を開くと、値上げに踏み切った施設の割合は前年より下がっていた。減ったのはテーマパークと水族館で、公営の運営が多い動物園だけが増えた。その一方で、各施設が掲げる価格の平均は上がり続けている。
帝国データバンクが2026年7月16日に公表した「2026年『主要レジャー施設(テーマパーク)』価格調査」によると、全国191施設のうち2026年にチケット料金を値上げする施設は50施設、約26%だった。
調査対象は全国の主な遊園地・テーマパーク・動物園・水族館である。2026年はポケパーク カントー(東京)が新たに加わり、閉園したノースサファリサッポロと休業中の東京ドームシティ アトラクションズが外れた。
前年と料金を比較できるのは、新規のポケパーク カントーを除く190施設。この190施設で見ると、値上げは50施設・26.3%になる。前年は71施設・37.4%だったので、値上げに踏み切る施設の割合は1年で11.1ポイント下がったことになる。
ジャンル別では、テーマパーク(遊園地を含む)が対象101施設のうち32施設。2025年の51施設からほぼ4割減っている。テーマパークで値上げ施設が半数を超えたのは、調査開始以降で2025年が初めてだった。そこから一気に戻したことになる。
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「続く」は当たり、「広がる」は外れた
減速そのものは、1年前の見通しと矛盾しない。2025年7月の同じ調査は、結びでこう書いていた。
「レジャー施設全体では大規模な施設を中心にこれまでの客数=『量』から客単価=『質』を求める傾向が強まり、2026年以降も値上げの動きが続くものとみられる」
予告されたのは値上げの継続であって、値上げする施設が増えることではなかった。1年後の実績は、値上げ施設が71から50へ、テーマパークが51から32へ。動き自体は続いたが、広がりはしぼんだ。
さらに1年さかのぼると輪郭がはっきりする。2024年の値上げは37施設・19.5%、2023年は60施設だった。いずれも各年7月時点で判明した改定を集計した数字である。その基準では2025年の71施設が4年で最も多く、2026年はその前後の水準へ戻ったことになる。
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| 調査年 | 値上げ施設数 | 割合 |
|---|---|---|
| 2023年 | 60 | ― |
| 2024年 | 37 | 19.5% |
| 2025年 | 71 | 37.4% |
| 2026年 | 50 | 26.3% |
注:割合は前年と料金を比較できる190施設を母数とする(2026年の調査対象総数は191施設だが、新規対象1施設を比較から除外。発表値は「約26%」)。2023年は2026年版での再集計値で、2025年版では62施設・32.6%と集計されていた。各年7月時点で判明した改定の集計。出典:帝国データバンク「主要レジャー施設(テーマパーク)価格調査」2025年版・2026年版
コスト転嫁の必要が消えたわけではない。2026年版も、人件費と電気代の転嫁は続いていると書いている。それでも、比較できる190施設のうち7割を超える140施設では値上げが確認されなかった。
動物園だけ値上げが増えた
減り方はジャンルによって割れた。2026年の値上げは、テーマパークが101施設中32施設、水族館が40施設中7施設、動物園が49施設中11施設である。水族館が前年の10施設から減ったのに対し、動物園は10施設から11施設へ増えた。
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| ジャンル | 2025年 | 2026年 | 2026年の母数 | 2026年の値上げ率 |
|---|---|---|---|---|
| テーマパーク(遊園地を含む) | 51 | 32 | 101 | 31.7% |
| 水族館 | 10 | 7 | 40 | 17.5% |
| 動物園 | 10 | 11 | 49 | 22.4% |
| 合計 | 71 | 50 | 190 | 26.3% |
注:2026年の母数は新規対象1施設を除く190施設の内訳。値上げ率は編集部算出(合計の発表値は約26%)。出典:帝国データバンク「主要レジャー施設(テーマパーク)価格調査」2025年版・2026年版
ただし、この1施設の増加を調査が説明しているわけではない。調査が経営形態に結びつけているのは、値上げ幅が小さいことのほうである。動物園について「餌代の高騰など物価高の影響で、動物園でも入場料を引き上げる動きが広がっているものの、市町村など自治体・公営による運営が多いため公共サービス色が強く、値上げに対する利用者の反発が大きいことから、値上げ幅が少額にとどまるケースが目立つ」と記した。
金額にも表れている。動物園の一般券平均は1,473円で全ジャンル最低だ。2022年からの上昇率も14.8%で、水族館の34.6%、テーマパークの19.6%を下回る。
民間の比重が高いジャンルで実施施設が減るなか、公営の多い動物園だけが1施設増えた。件数が増えた理由は調査に書かれていない。読み取れるのは、値上げの動きだけが逆を向いたという事実である。
施設は減り、価格は上がる
ただし「値上げが止まった」と読むのは早い。値上げに動いた施設の数は減っても、各施設が掲げる価格の平均は上がり続けている。
2026年の一般券(入場料)平均は1,768円で、前年比4.2%・71円増。フリーパスの平均は5,033円となり、調査開始以降で初めて5,000円を超えた。もっともフリーパスの上げ幅は158円と3年ぶりに100円台にとどまり、調査は「急激な価格上昇ペースからは一服感もみられる」と書いている。
調査は家計への影響にも触れ、「特にテーマパークのフリーパスは2022年比で約23%高くなり、家族4人で来場した場合の負担増加額は数千円規模に達する」と指摘した。値上げに動く施設は減り、各施設が掲げる価格の水準は上がる。この2つは両立する。
数字を実務に持ち込む前に、断っておくべき条件が2つある。
1つ目は集計方法だ。この調査は「変動料金制の場合はハイシーズン料金(最高値)を採用」すると明記している。平均1,768円は各施設の設定価格を単純平均した数字で、来場者数や販売枚数で重みづけした平均ではない。 売上を入場者数で割った客単価とは、別の指標として扱う必要がある。
2つ目は変動価格制の普及度である。導入が確認できたのは対象191施設のうち約17%、少なくとも32施設にとどまる。8割超は未導入だ。「変動価格制が浸透している」という語り方は、大手の動きを業界全体へ広げすぎている。
上げているのは、価格帯の上限だけだ
2026年版の結びは、価格の付け方そのものへ論点を移している。
「これまでの一律的な値上げではなく、付加価値の高いチケット種別の拡充や変動料金制、さらには訪日外国人向け料金の導入などを通じて収益を確保するなど、『どのような価値なら利用者が対価を支払うのか』を考慮した柔軟な価格戦略が問われる局面に突入するとみられる」
背中を押しているのは需要側の変化だ。調査は「大幅な価格改定が来場者の減少を招くリスクも顕在化しつつある」とし、「若者のテーマパーク離れ」に代表される、高額な価格設定に対する若年層の来園意欲の減退と、既存顧客のリピート率低下を挙げる。この警告は2025年版にも書かれており、2年続けて同じ懸念が示された。
上限価格を引き上げた東京ディズニーリゾートも、対象は絞っている。オリエンタルランドの決算説明資料は「パークチケット:価格帯構成比の変更に加え、高価格帯チケットを追加(2026年10月10日〜)」と記すにとどまり、金額は示していない。実際の価格は公式のチケットカレンダーで公表されており、1デーパスポート(大人)の最高価格は10月10日入場分が11,900円、10月11日入場分から12,400円である。同社は価格帯の構成比を変更したうえで高価格帯を追加するとし、特定日にのみ需要が高い部分を改定対象としたと説明している。動かしたのは価格帯の上限と構成であって、すべての日が12,400円になるわけではない。
サンリオピューロランドも8月1日入館分から、デイパスポート(大人)の価格帯を3,900〜5,900円から3,900〜6,900円へ改めた。下限は据え置き、上限だけを1,000円引き上げている。
同じ値上げでも、全員に一律で乗せる形から、需要の高い日の上限を伸ばす形へと中身が変わってきている。
あわせて読む 入場料の外側で何が起きているかは、ディズニーの課金の組み替えを追った記事で詳しく扱っている。
値上げは入場料だけではない ディズニーが売る「時間の確実性」
「値上げが相次ぐ」との報道とは裏腹に、2026年に値上げしたのは4施設に1施設で、割合は前年を下回った。値上げが止まったわけではない。一律に上げる段階から、上げられる施設が可能な幅だけ上げる段階へ移ったのだ。
その線引きは、需要やコストだけでは決まらない。調査は、動物園の値上げ幅が小さい理由に、公共性の強さと利用者の反発を挙げる。反発に対応するには、改定の根拠や使途を誰にどこまで説明するかという工数がかかる。公営施設では議会や住民への説明も必要だ。今回の集計では、この負担と需要の弱さを切り分けられない。それでも、来場者数や価格帯別の販売動向だけでなく、説明にかかる工数も見積もる必要がある。
出典
- 帝国データバンク「2026年『主要レジャー施設(テーマパーク)』価格調査」
- 帝国データバンク「2025年『主要レジャー施設(テーマパーク)』価格調査」
- 東洋経済オンライン「オリエンタルランドがディズニーランドとディズニーシーのチケット上限価格引き上げへ…23年度以来の値上げの成否は?」
- サンリオピューロランド「パスポートチケット価格改定のお知らせ」


