ホテルオペレーターの基本 所有と運営はなぜ分かれるのか

Photo: Getty Images / Unsplash+
  • URLをコピーしました!

ホテルオペレーターとは、ホテルの日々の運営を担う会社だ。近年は、建物を「持つ会社(オーナー)」と、実際に「動かす会社(オペレーター)」を分ける形が広がってきた。たとえばマリオットのような世界的ブランドは、自分で持つホテルはごく一部で、他社のホテルの運営を引き受けたり、ブランドを貸したりして稼いでいる。

背景には、記録的なインバウンドと投資マネーの流入がある。2024年の日本のホテル投資額は1兆613億円に達した。本記事では、オペレーターの意味と、所有・運営を分ける4つのパターン、そして日本で今この分離が進む理由を整理する。

この記事のポイント

  • ホテルオペレーターとは、オーナーに代わって、あるいは建物を借りて、ホテルの日々の運営を担う会社だ。
  • 所有と運営の関係は、所有直営・リース・運営委託(MC)・フランチャイズ(FC)の4つのパターンで整理できる。
  • 日本は今もオペレーターが建物を借りるリース型が主流だが、インバウンドを背景に運営委託が増えている。
目次

ホテルオペレーターとは何か

ホテルオペレーターとは、ホテルの運営を専門に担う会社だ。客室の料金を決めて売り、フロントや清掃といった現場を回し、スタッフを雇って育て、売上と利益まで管理する。建物を持つ「オーナー」と、その建物でホテルを動かす「オペレーター」が、別々の会社であることも多い。

わかりやすい例が、マリオットやヒルトンのような世界的なホテルブランドだ。街で見かけるこれらのホテルの多くは、看板を掲げる会社が建物まで持っているわけではない。

マリオットの場合、世界で展開する9,805施設・1,779,936室(2025年末時点)のうち、自分で持つ・借りている施設は51施設と、全体の1%に満たない。残りは、他社が持つホテルの運営を引き受けたり、ブランド名の使用を許したりして成り立っている。

なお、法律(旅館業法)でいう「営業者」は、知事などの許可を受けてその施設で旅館業を営む責任者を指す。これは許可の名義人であって、ブランドやオペレーターとは必ずしも一致しない。「オペレーター」は法律の言葉ではなく、運営を担う会社を指す業界の呼び名だ。

所有・経営・運営という3つの役割

オペレーターを理解するには、ホテルの仕事を3つの役割に分けて見るとよい。ホテルには「所有(建物を持つ)」「経営(もうけと損を引き受ける)」「運営(日々動かす)」の3つの役割があり、これを誰が分担するかで契約の形が決まる。

かつては、この3つを1つの会社がまとめて担う「所有直営」も多く見られた。土地と建物を持ち、自社で経営の責任を負い、自社の従業員で運営する形だ。個人経営の旅館や、自社で土地・建物・運営を一体で持つホテルがこれにあたる。

これに対し、所有と運営を分けると、それぞれが得意分野に集中できる。不動産の見極めや資金集めはオーナーが、ブランド力や運営ノウハウはオペレーターが受け持つ。この分担を成り立たせるのが、次の章で見る契約の形だ。

所有と運営が分かれると、オーナー側には、オペレーターの予算や成績をチェックして利益を伸ばす役割も生まれる。これは「アセットマネジメント」と呼ばれる仕事だ。

なぜ所有と運営が分かれるのか

所有・経営・運営を「誰が担うか」で契約の形が決まる。所有直営/リース/運営委託(MC)/フランチャイズの4パターンでオーナーとオペレーターの役割分担を整理

所有と運営を分ける流れは、もともと海外で始まった。アメリカでは1990年代前半の不動産不況をきっかけに広がり、1993年には、所有直営が中心だったマリオットがオペレーターと不動産の保有会社の2社に分かれた。

日本にも古い例がある。1963年開業の東京ヒルトンホテルは、東急電鉄が建物を持ち、ヒルトンが運営を受け持った。日本で初めて運営を外部に委ねた(運営委託方式の)ホテルとされる。

その考え方への関心が、日本でいま改めて高まっている。訪日客の急増で、ホテルは「うまく運営すれば稼げる資産」として投資家の注目を集めているからだ。

2024年の日本のホテル投資額は1兆613億円と、統計をとり始めた2008年以降ではじめて1兆円を超えた。ホテル・旅館という「収益を生む不動産」の規模も、2024年には約17兆円に達したとの推計がある(前年から約7割増)。

投資家がホテルを持つなら、運営のノウハウを持つ専門会社と組んだほうが合理的だ。建物はオーナーが持ち、運営はオペレーターに任せる。この分業が、投資マネーの流入とともに広がってきた。

4つの契約形態の違い

所有と運営の関係は、大きく4つのパターンで整理できる。所有と運営が同じ会社の中にある「所有直営」と、それ以外の外部との契約(リース・運営委託・フランチャイズ)だ。誰がもうけと損を引き受け、誰が利益を取るかがパターンごとに違う。

  • 所有直営:オーナーと運営者が同じで、外部との契約を挟まない形。利益もリスクもすべて自社に集まる。個人経営の旅館や、自社で土地・建物・運営を一体で持つホテルがこれにあたる。
  • リース(賃貸借):オペレーターがオーナーから建物を借り、賃料を払って運営する。決まった額の賃料を払う契約なら、もうけが増えても減っても、その差はオペレーターが引き受ける。日本では今もこの形が多い。
  • 運営委託(MC=マネジメント・コントラクト):オペレーターが総支配人などを派遣・任命し、ブランドと予約サイトを使って運営することが多い。もうけと損はオーナーが引き受け、オペレーターは売上や利益に応じた手数料(運営フィー)を受け取る。
  • フランチャイズ(FC):ブランドの看板と予約システム、運営ノウハウを借り、その対価(ロイヤリティ)を払う。ただしブランドの基準や契約の条件には従う。運営委託との一番の違いは、誰が現場の人を雇い、指揮するかだ。FCでは支配人やスタッフをオーナー側が抱え、運営委託ではオペレーターが総支配人などを派遣・任命することが多い。

日本の特徴は、世界の中では珍しいほど、オペレーターが建物を借りて運営する「リース型」が今も主流だという点だ。ただし訪日客で収益が想定以上に伸びやすくなり、その伸びをオーナーが受け取れる運営委託(MC)を選ぶ動きが増えてきた。

日本と海外の実例

契約の形は、実際の会社を見ると分かりやすい。国内では、ドーミーインを運営する共立メンテナンスが好例だ。同社はホテル143か所・22,294室を運営するが、その多くは建物をオーナーから10〜20年の長期契約で一括して借りている(一括賃借)と有価証券報告書に記している(2026年3月末時点)。

一方、ソラーレ ホテルズは公式サイトで、施設を「直営/運営支援/フランチャイズ」などと契約の形ごとに分けて載せている。1社の中に複数の形が同居する様子がよく分かる。

会社(主なブランド)主な契約形態施設数・規模特徴
共立メンテナンス(ドーミーイン)リース中心(10〜20年の長期契約で一括賃借)143か所・22,294室(2026年3月末・受託除く)建物を長期で借りて運営する「リース型」の代表。一部は自社所有→投資家へ売却しつつ運営を継続
ソラーレ ホテルズ直営/運営支援/フランチャイズ など併用国内51か所・8,628室(2026年4月)1社のなかに複数の契約形態が同居。契約の使い分けが分かりやすい例
マリオット・インターナショナル運営委託+フランチャイズ中心(アセットライト)世界9,805施設・1,779,936室(2025年末)自社で所有・賃借するのは51施設で1%未満。運営とブランドで稼ぐ海外大手の代表例

(注:施設数・室数は各社の開示時点の数値で、変動が大きい。契約形態は主なものを示した。)

海外の大手は、自分では建物をあまり持たず、運営とブランドで稼ぐ「アセットライト」型が目立つ。その代表がマリオットだ。持つ・借りる施設は1%未満で、残りは運営委託とフランチャイズが占める。

ヒルトンやアコー、IHGなど、同じ型をとる大手はほかにもある。ただ本記事では、公式資料で数値を確かめられるマリオットを代表例として扱う。建物を持たず、運営とブランドで稼ぐ。外資系の大手ではこの形が広く見られる。

所有と運営が分かれる動きは、足元でも続いている。2026年2月、投資家のお金で不動産を持つ「REIT(不動産投資法人)」のジャパン・ホテル・リート投資法人(JHR)が、「ハイアット リージェンシー 東京」を1,260億円で取得すると発表した。国内のREITによるホテル1棟の取得としては最大級とされる。

この取引では、所有はREIT、運営はオペレーター(賃借人)、ブランドはハイアットと、担い手が分かれている。ただし契約は固定+変動の賃料を払う賃貸借型で、運営委託(MC)そのものではない。

観光ビジネスの視点

ホテル投資では、建物そのものだけで収益が決まるわけではない。所有者と運営者が分かれる場合、誰に運営を任せるか、どのブランドにするか、賃料を固定にするか業績連動にするかといった設計も、投資家側の収益を左右する。

たとえばJHRは、旧「ホテル京阪 ユニバーサル・シティ」について、賃借人をHMJグループへ変更し、リブランドと契約スキームの見直しを進めた。JHRは2020年時点で、2019年と同じRevPARを想定した場合でも、NOIが669百万円から1,101百万円へ増えるとの試算を示していた。つまり、市場全体の需要回復だけでなく、運営者の変更、ブランドの見直し、賃料設計の変更によって、同じホテルの投資収益が変わりうるということだ。

もちろん、実際の業績には地域需要や旅行市場の回復も影響する。そのため、個別ホテルのRevPAR上昇だけをもって「運営の成果」と断定するのは避けるべきだ。ただ、ホテル投資では、土地や建物の価値に加え、運営体制と契約設計によって稼ぐ力を高められるかが重要な見方になる。

よくある質問

ホテルオペレーターとホテルチェーン(ブランド)は同じものか。

重なることも多いが、厳密には別だ。オペレーターは「運営を担う会社」、ブランドは「マリオット」「ヒルトン」などの看板を指す。運営委託では1つのオペレーターが複数のブランドを扱うこともあり、フランチャイズではブランドだけを借りて運営はオーナー側が行う。

運営委託(MC)とフランチャイズ(FC)は何が違うのか。

一番の違いは、誰が現場の人を雇い、指揮するかだ。運営委託ではオペレーターが総支配人などを派遣・任命して現場を仕切ることが多い。フランチャイズでは看板と予約網・ノウハウを借り、ブランドの基準に従いつつ、スタッフや支配人はオーナー側が雇う。支払う対価も、MCは運営フィー、FCはロイヤリティと呼び分ける。

なぜ大手ブランドは自社での所有を抑えるのか。

不動産を持つには多額の資金が要り、値下がりのリスクも負う。運営とブランド提供に特化すれば、少ない自己資金で世界に施設を増やせる。この「アセットライト」戦略で、マリオットなどは世界規模の展開を実現している。

日本ではどの契約形態が多いのか。

今もオペレーターが建物を借りて運営する「リース型」が主流だ。ただし訪日客で収益が想定以上に伸びやすくなり、その分をオーナーが取れる運営委託(MC)を選ぶ例が増えている。

<出典>

NEWS LETTER編集部が選ぶ注目記事をお届け限定イベントや独自レポートも先行案内ニュースレター登録
  • URLをコピーしました!
目次