上野駅前に開いた「初の高品質リユース商品特化型業態」
ハードオフコーポレーションが2026年7月31日、東京・上野に新業態の1号店「モードオフVINTAGE&LUXURY上野駅前店」を開いた。JR上野駅の不忍改札から徒歩2分、同じ日に開業した「ハードオフ上野駅前店」との複合店である。買い取りは7月24日から先行して始めていた。
扱うのは腕時計、ハイブランド、ジュエリーなど。同社は8月6日に開示した決算説明資料でこの店を「初の高品質リユース商品特化型業態」と位置づけ、狙いをこう書いた。
「バッグ、ジュエリー等のラグジュアリーブランドを取り揃え、都心駅前出店によりインバウンド需要を取り込みます」
リユース(中古品の買い取り・再販売)大手が、訪日客の買い物需要を名指しで取りにいった格好だ。
訪日客は人数より単価 買物代が消費額の26.8%
訪日客側の条件は、高価格帯の品ぞろえに向いている。
2026年4〜6月期の訪日外国人旅行消費額は、クルーズ客を除く一般客ベースで2兆5,066億円、前年同期比0.5%増だった。一般客数は2.7%減の1,025.4万人。人数が減るなかで、1人当たり旅行支出が3.3%増の24万4,457円と伸びた形である。
費目別に見ると、買物代は6,731億円で宿泊費に次ぐ2番目の規模だった。クルーズ客を含む消費額全体に占める割合は26.8%で、前年同期の26.1%から高まっている。
人数より単価が効く構図であり、単価の高い商材をそろえる意味は増している。(注:クルーズ客を含む全体では訪日客数1,040.1万人・5.3%減、消費額2兆5,096億円・0.2%増。クルーズ客が67.1%減と大きく落ち込んだため)
あわせて読む 訪日客数と消費額の最新動向は、こちらの記事で詳しく解説している。
訪日消費4〜6月は微増2.5兆円 客数減を単価が支え、首位は米国へ
リユース市場3.3兆円 伸びているのはブランド品と店舗販売
受け皿となる国内市場も、高価格帯と店舗に寄っている。
リユース経済新聞の推計では、2024年の国内リユース市場は3兆2,628億円で15年連続の拡大となった。うちブランド品は15.7%増の4,230億円と全体の伸びを上回り、衣料・服飾品と合わせたファッション分野は初めて1兆円を超えた。同紙は2030年に4兆円まで拡大すると予測する。
チャネル別では店舗販売が8.2%増、フリマアプリなどの個人間取引が1.4%増である。ブランド品と店舗販売は、それぞれ市場全体の伸びを上回った。ただし公開されている推計は商材と販路のクロス集計ではなく、どちらの伸びがどちらを押し上げたかまでは読み取れない。
真贋の判定が要る高価格帯の商材は、現物を確認できる店舗と組み合わせやすい。訪日客を都心の駅前で受け止める形は、この構図に沿っている。
それでも決算が語る追い風は節約志向だった
もっとも、会社の決算資料はインバウンドをほとんど語っていない。
同じ日に開示された2026年4〜6月期の連結決算は、売上高が前年同期比30.0%増の112億5,100万円と過去最高を更新した。会社が増収の理由に挙げたのは、国内の既存店売上高8.9%増と、前期に開業した直営30店舗、子会社エコノスの69店舗の寄与である。
業界環境については「循環型社会への関心の高まりや消費者の生活防衛意識の高まりを背景に、リユース品に対する需要は引き続き堅調に推移いたしました」と説明した。決算短信の本文に「インバウンド」「免税」「訪日」の語は出てこない。
新業態の母体であるモードオフも大きくはない。4〜6月期の連結売上に占める構成比は2.6%で、6月末の店舗数は直営13店、フランチャイズ2店の計15店舗にとどまる。国内客と訪日客を分けた売上や免税売上も開示されていない。
ただし、店舗を取り巻く条件は先に動く。2026年11月1日からは、外国人旅行者向け消費税免税制度がリファンド方式に切り替わる。購入時にいったん税込みで支払い、出国時に税関で持ち出しの確認を受けてから消費税相当額の返金を受ける仕組みだ。高額品を扱う店舗ほど、返金までの運用をどう設計するかが問われる。
裏を返せば、訪日客の買い物需要を名指しで狙って開いた上野の1号店にとって、制度が変わる11月以降は実力の見える局面になる。インバウンドに賭けた一手が数字に表れるか、ここからが見どころだ。
あわせて読む 訪日客の買い物需要を左右する免税制度は、2026年11月に大きく変わる。
免税リファンド方式、11月1日始動 不正対策で店頭は「割引」から「返金」へ
上野の1店は、いまのところ全社のごく一部にすぎない。ただ、それを取り巻く条件のほうが先に動いている。訪日客は人数が減っても1人当たり支出を伸ばし、買物代の構成比は26.1%から26.8%へ上がった。リユース市場は2030年に4兆円まで拡大するとの予測がある。11月には免税の仕組みも変わる。需要と受け皿と制度が同時に動くなかで、この店は訪日客の買い物を店舗でどう捕まえるかを実地で試す場になる。見たいのは、免税売上や訪日客比率という成否を測れる指標の開示と、2号店の計画だ。そこが出てくれば、単店の実験は再現可能なインバウンド戦略に変わり、同じ問いを抱える小売にとっての先行事例になる。
出典
- ハードオフコーポレーション「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」
- ハードオフコーポレーション「2027年3月期第1四半期 決算説明資料」
- ハードオフコーポレーション「モードオフVINTAGE&LUXURY上野駅前店」
- ハードオフコーポレーション「【新店舗】開店準備のお知らせ(2026年6月〜8月)」
- 観光庁「インバウンド消費動向調査 2026年4-6月期(1次速報)」
- 観光庁「消費税免税店サイト(リファンド方式)」
- リユース経済新聞「リユース業界の市場規模推計2025(2024年版)」


