屋台の営業許可 保健所・道路・消防の三つをそろえる

夜の路上に出た屋台。カウンターを囲む10人ほどの客と、提灯と裸電球に照らされた店先。
Photo: Fumiaki Hayashi / Unsplash
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屋台を出したい、イベントに店を出したい。そう考えて調べ始めると、たいてい最初につまずく。「屋台の営業許可」という名前の許可は、法律のどこにも存在しないからだ。

必要になるのは性格の違う三つの許認可である。誰が売るかを見る保健所、どこに出すかを決める道路管理者と警察、火を使うなら消防。根拠法も審査の物差しも別で、道路に出すなら窓口は四つになる。

本記事では三つの構造を整理したうえで、屋台を出す方法がどのルートに分かれるか、費用はどれだけ違うか、道路に常設の屋台を制度で受け止めた街がなぜ限られるのかまでを、法令と省庁・自治体の資料をもとに解説する。地域で食を扱う事業者と、屋台を観光資源として使いたい自治体に向けた内容だ。

この記事のポイント

  • 食品衛生法施行令が定める営業許可業種は32業種で、そこに「屋台」という区分はない。屋台の許可は業種としては飲食店営業である。
  • 施設基準を定めるのは国の省令ではなく自治体の条例。取扱品目や設備の要件が自治体で違うのは、法律がそういう作りになっているため。
  • 道路に出すなら、道路管理者の占用許可と警察署長の使用許可が別々に要る。火気を使う露店には消防への届出と消火器の準備も必要。
  • 手数料は営業形態で開く。横浜市の臨時営業は屋台型4,000円に対しコンテナハウス等の簡易固定型13,500円。
  • 公共空間での屋台営業を条例で認めたのは福岡市が全国初。市の推計では屋台の経済波及効果は104.9億円(令和5年11月)で、屋台は約100軒ある。
目次

「屋台の営業許可」という許可はない

まず言葉の整理から入る。法令には「屋台」を正面から定義した全国共通の規定がない。

食品衛生法施行令第35条は営業許可が必要な業種を列挙しているが、そこに屋台という区分は出てこない。第1号の飲食店営業から第32号の添加物製造業まで、現行の許可業種は32業種で、屋台や露店の多くはこのうち飲食店営業として扱われる。その場で焼き菓子を作って売るなら菓子製造業になるなど、品目によって業種の判断が変わることもある。

業種数には注意したい。ウェブ上には「34業種」と書いた解説が今も多く残っているが、これは再編前の数だ。平成30年の改正食品衛生法とこれを受けた政令改正により、令和3年6月1日から業種が組み替えられ、リスクが低いとされた一部の許可業種は届出の対象になった。単純に2業種減ったのではなく、水産製品製造業などの新設と喫茶店営業などの統合が同時に起きている。再編前の一覧表もウェブに残っているので、年の入っていない資料は疑ったほうがよい。

では屋台に何が要るのか。誰が売るかを見る食品衛生法の営業許可(保健所)、どこに出すかを決める場所の許可(道路管理者・警察署長・公園管理者)、火を使うなら要る消防への届出。この三つである。

屋台に要る三つの許可
屋台・露店の営業に必要な許認可と窓口(2026年9月時点)
対象
屋台・露店で
飲食物を売る営業
キッチンカー・イベント出店を含む
誰が売るか 窓口=保健所
  • 食品衛生法第55条第1項の営業許可(多くは飲食店営業。品目により別業種のことも)
  • 施設基準は同法第54条により都道府県の条例で定まる
  • 原則としてすべての営業者にHACCPに沿った衛生管理と食品衛生責任者の設置
どこに出すか 窓口=道路管理者・警察署長・公園管理者
  • 道路占用許可(道路法第32条第1項第6号・道路管理者)
  • 道路使用許可(道路交通法第77条第1項第3号・警察署長)
  • 公園は都市公園法第6条の占用許可。民有地なら不要
何を燃やすか 窓口=消防署
  • 火災予防条例にもとづく露店等の開設届出
  • 対象火気器具等を使う場合の消火器の準備
  • 電気を熱源とするホットプレート等も対象に含まれる
違反した場合
  • 無許可営業は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(食品衛生法第82条第1項)
  • 刑の執行が終わってから2年を経過しない間は許可を与えないことができる(同法第55条第2項)
出典:食品衛生法・道路法・道路交通法・都市公園法、消防庁「改正火災予防条例(例)の運用について」(平成26年2月7日)をもとに編集部作成

この三つは、どれかを取れば他が省けるという関係にない。それぞれ独立して審査され、かかる期間もばらばらだ。開業のスケジュールは、いちばん時間のかかる許可に引きずられる。

許可は営業者が施設ごとに取り、品目の条件が付く

食品衛生法の側から見ていく。屋台・露店・キッチンカーとも、業種は飲食店営業である。

許可の根拠は食品衛生法第55条第1項で、営業を営もうとする者が都道府県知事の許可を受ける。受けるのは人だが、同条第2項は施設が基準に合うことを許可の要件とするので、申請は施設ごとに立て、施設が変われば取り直しになる。

保健所を置く市と東京23区では市長・区長が許可権者になる。窓口は出店地を管轄する保健所だ。

事業者が実際に照らされるのは、国の省令ではなく自治体の条例のほうである。同法第54条は、厚生労働省令で定める基準を「参酌して」条例で基準を定めなければならない、と書く。省令の基準は条例が参考にするもので、そのまま事業者を縛るわけではない。屋台の要件が自治体で違うのは、これが理由だ。

もうひとつ効いているのが同法第55条第3項だ。都道府県知事は許可に「五年を下らない有効期間その他の必要な条件」を付けることができる。有効期間を付けるなら5年を下回らせない、という規定で、屋台や露店の取扱品目の制限も、この「必要な条件」として付けられている。千葉県は同項にもとづく要綱を置き、許可の際に食品営業許可証の備考欄へ取扱品目の制限を書き込む運用にしている。

東京都保健医療局の説明によれば、行事のたびに場所を移す移動型の臨時営業では、生もの(さしみ、生卵、生肉等)と生クリームを扱えず、細切などの仕込みもできない。認められるのは、おでんや焼きとりのようにその場で加熱するだけの品目か、かき氷のような簡単な調製だ。

裏を返すと、現場で仕込みが認められない以上、その作業は許可か届出を受けた別の施設で行うことになる。大阪市は露店営業の申請先を、出店場所ではなく基地施設を管轄する保健所としている。神戸市の要領も、車外の下処理は許可または届出を受けた施設で行うこととしている。仕込みが要る品目を出すなら、屋台一台では完結しない。

キッチンカーはタンクの容量で決まる

自動車で営業する場合も業種は飲食店営業だが、こちらは条件が数字で細かく決まっている。

給水・排水タンクの容量は、食品衛生法施行規則の別表で、簡易な営業は約40リットル、比較的大量の水を要しない営業は約80リットル、大量の水を要する営業は約200リットルと定められている。このタンクの容量が、扱える調理工程と品目の数を左右する。工程や品目の目安を示しているのは令和元年12月27日付の厚生労働省通知で、40リットルなら簡易な調理のみか単一品目のみ、80リットルなら2工程程度までか複数品目、200リットルなら複数工程と通常の食器の使用、としている。

ただし通知はあくまで「目安」で、自治体の運用は同じではない。関西広域連合が令和7年3月に共通化した指針では、40リットルは単一工程かつ単一品目、200リットルは3工程以上と国の通知より厳しい。兵庫県は工程数とは別に「リスクリスト」を置き、通常の食器を使う場合などは工程数にかかわらず容量を引き上げる。売りたいものから逆算して車を仕立てる必要があり、後から品目を増やすには許可条件の変更や再申請が要ることもある。

このほか、令和3年6月1日に完全施行された仕組みとして、原則としてすべての営業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられている。食品衛生責任者の設置も同様だ。責任者の資格は講習会の受講で得られ、厚生労働省の通知が示す標準的なプログラムは計6時間程度。調理師や製菓衛生師などの有資格者は、講習会を受けなくても責任者になれる。

道路に出すには許可が二つ要る

次が場所の許可である。ここが屋台の最大の関門になる。

道路に店を出す場合、必要な許可は二つある。ひとつが道路交通法第77条第1項第3号にもとづく道路使用許可で、条文は「場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者」を対象とし、許可権者は所轄の警察署長だ。祭礼の日だけ出す店もこの3号にあたる。もうひとつが道路法第32条第1項にもとづく道路占用許可で、同項第6号の「露店、商品置場その他これらに類する施設」がこれにあたり、許可権者は道路管理者である。道路管理者は国道・都道府県道・市町村道で分かれるので、出したい場所がどの道路かを先に確かめたい。

交通の安全を見る警察と、道路という財産の使い方を見る道路管理者は、別々に判断する。福岡市屋台基本条例が市道での営業に「市道等占用許可、道路使用許可及び飲食店営業許可」の三つをそろえて求めているのは、この構造をそのまま条文にしたものだ。

二つの許可は必要になる場面がずれる。道路法第32条の柱書きにあるのは「継続して道路を使用しようとする場合」で、短期の催しで占用許可まで要るか、主催者の許可に出店者が含まれるかは、道路管理者と主催者に確認するほかない。毎晩同じ場所に出すなら、継続利用として占用許可の世界に入る。公園に出す場合は都市公園法第6条の占用許可で、期間は10年を超えない範囲で政令が定める期間が上限だ。

民有地に出すなら、道路占用許可は要らない。地権者の同意があれば場所は押さえられる。ただし道路交通法上の道路には一般交通の用に供する場所も含まれるので、私道や誰でも通り抜けられる広場では道路使用許可が要ることもある。屋台村や商業施設の区画では、この重い場所の許可が外れることが多い。

「対象火気器具等」に電気コンロも入る

三つめが消防だ。ここは見落とされやすい。

きっかけは事故である。平成25年8月に京都府福知山市で起きた福知山花火大会の火災を受け、消防庁は平成26年2月7日付の消防予第33号で、改正火災予防条例(例)の運用を各自治体に示した。柱は三つ。祭礼・縁日等で対象火気器具等を使う場合の消火器の準備義務、大規模な催しを「指定催し」として防火管理体制の構築を義務づける仕組み、露店等を開設するときの届出である。

条例(例)は国が示すモデルで、実際に効くのは各市町村の火災予防条例だ。全国一律の施行日はないが、消火器の準備を条例に入れる期限が平成26年8月1日とされたため、この日に施行した自治体が多い。

対象火気器具等の範囲は広い。省令が挙げるのは気体燃料・液体燃料・固体燃料を使う器具と、電気を熱源とする器具の四つで、電気のホットプレートやグリドルもここに入る。火を使っていないから届出は要らない、という判断は通らない。

義務の中身は自治体の条例で決まる。長野市は原則として露店等ごとに消火器を1本以上と案内している。条例(例)は指定催しの防火管理計画を開催の14日前までに消防署長へ出すこととし、提出しなければ30万円以下の罰金、法人にも同額が科される両罰規定を置く。数値も条番号も条例次第なので、出店地の消防に確認するのが早い。

どのルートで屋台を出すか

三つの許認可を並べると、屋台を出す方法が実務上いくつに分かれるかが見えてくる。場所の許可の重さで、四つになる。

屋台を出す四つのルート
場所の許可を誰が負うかで手続きの重さが変わる
道路に常設で出す
常設占用
道路占用許可・道路使用許可・飲食店営業許可の三つが要る。条例で正面から認めた例は福岡市が全国初。
祭り・イベントに出る
臨時営業
場所の許可は主催者側が押さえていることが多い。扱える品目は、現地で加熱する食品や工程が単純な食品に制限される。
キッチンカーで動く
自動車営業
給排水タンクの容量や工程・品目で営業内容が制限される。車外で仕込むなら適法な施設を使う。
屋台村・商業施設に入る
民有地
場所の許可は運営者が負う。出店者の手続きは保健所と消防に絞られる。
(注:どのルートでも食品衛生法上の手続きは必要になるが、営業内容により許可・届出の別が分かれる。消防への届出は多くの自治体の条例が「催しに際して開設する露店等」を対象としており、民有地の常設営業では対象外のこともある。)
出典:食品衛生法、道路法、道路交通法、福岡市屋台基本条例、横浜市中区・大阪市・兵庫県の営業許可の案内をもとに編集部作成

道路に常設で出すルートは三点セットが要り、後述するとおり、これを条例で正面から受け止めた例は多くない。祭りやイベントに臨時営業として出るルートでは、場所の許可を主催者側がまとめて調整していることが多い。横浜市は臨時営業の対象を「概ね1か月程度を超えない一時的である行事」に限っている。キッチンカーは民有地や商業施設の敷地を借りることが多く、車の設備が基準を満たせば動ける。屋台村や商業施設の区画に入るルートでは、場所の許可を運営者が負う。

その場で調理して出す屋台なら保健所の許可はどのルートでも要り、違うのは場所の許可を誰が負うかである。消防への届出は祭礼・縁日のような催しに出す露店等が対象なので、民有地の常設営業では対象外のこともある。自分で道路を押さえにいくのか、押さえている人の下に入るのか。開業準備の重さは、ここで大きく変わる。

費用は営業形態で大きく開く

手数料は都道府県や保健所設置市の条例で定まるため全国一律ではなく、同じ自治体でも営業形態で別建てになっている。

屋台の許可にかかるお金
三自治体の手数料・占用料の例(同一条件の比較ではない・2026年9月時点)
店舗を構えるイベントに出る道路に常設で出す
食品衛生の営業許可18,300円(新規)4,000円(屋台型)16,600円
場所の許可不要主催者が取得することが多い道路使用許可 2,400円
許可にともなう月額費用なしなし道路占用料 月額41,250円
例に用いた自治体東京都中央区横浜市中区福岡市
店舗を構える
イベントに出る
道路に常設
食品衛生の営業許可
18,300円
(新規)
4,000円
(屋台型)
16,600円
場所の許可
不要
主催者が取得することが多い
道路使用許可
2,400円
許可にともなう月額費用
なし
なし
道路占用料
月額41,250円
例に用いた自治体
東京都中央区
横浜市中区
福岡市
(注:自治体・営業形態・許可期間がそれぞれ違うため、金額の大小をそのまま比べることはできない。店舗の賃料は含まない。東京都中央区の額は令和3年6月1日改定時点。福岡市の道路占用料は令和8年度の額で、令和9年度以降に変わりうる。このほか市が整備した給水装置・汚水桝・受電箱の使用料がかかる〔条例別表の上限は月額1,200円・1,200円・800円〕。横浜市中区の屋台型臨時営業は短期営業なら3,000円。)
出典:東京都中央区「営業許可業種と申請手数料一覧」、横浜市中区「行事・イベントに付随する臨時営業の新規営業許可」、福岡市「屋台営業候補者募集要項(令和8年4月)」をもとに編集部作成

同じ臨時営業でも、形態が変わると手数料は3倍を超える。横浜市(窓口は各区の福祉保健センター)では、写真の添付で現地調査を代替できる屋台型が4,000円、現地調査を行うコンテナハウス等の簡易固定型が13,500円だ。

自治体によっては更新にも手数料がかかる。東京都中央区の飲食店営業は更新8,900円、移動または臨時に限る飲食店営業は更新2,700円だ。

見落としやすいのは、場所の許可にかかる継続費用のほうだ。初期の手数料は数万円で収まるが、道路を継続して使う形になると月額の占用料が固定費として乗る。占用料は場所と自治体で変わるので、出店を検討する地域では道路管理者に確認したい。

道路に店を出すのは建前として例外

なぜ道路に常設の屋台を出せる街が限られるのか。答えは道路法第33条第1項にある。占用許可は、道路の敷地の外に余地がないためやむを得ない場合に認めるという建前で、収益のために道路上に店を置くことは本来この要件を満たしにくい。道路上の常設営業は許可の対象ではあるが、通常の占用ではこの無余地性の壁が立つ。

公共空間での屋台営業を条例で正面から認めたのは、福岡市が全国で初めてだった。戦後から続いてきた屋台という既成事実を、営業者の資格と歩道幅員の基準を明示することで、行政が説明できる形に載せ直した制度である。

根拠は平成25年7月1日に制定され、同年9月1日に施行された福岡市屋台基本条例だ。条例は屋台を「軽車両に飲食店営業のための設備を備え付けたもの」と定義し、第7条で市道等での営業に市道等占用許可・道路使用許可・飲食店営業許可の三つを求めている。

占用許可の基準は第9条にある。暴力団員等でないこと、公募で選ばれた候補者か、現営業者の配偶者・直系血族でその屋台の収入により生計を立てている従事者であること、歩道の有効幅員を2メートル以上確保し、視覚障がい者誘導用ブロックから0.6メートル以上離すこと。歩行者が通れる幅を必ず残させる、という設計だ。

「一代限り」で守る福岡の屋台

第13条は、占用許可を受けた者が自ら営業しなければならず、譲渡・転貸・担保への供与を禁じている。営業権が個人に固定され、売買の対象にならないのはこの規定によるものだ。もっとも条例は、長く行政指導で貫かれてきた「一代限り」をそのまま固めたのではなく、親族1名への承継と公募という二つの出口を制度として開いた。第10条は、2回以上の警告や効力停止を受けても是正しなかった者の更新を認めない。市の公表資料によれば令和7年度の文書指導は24件だった。

新しい担い手は公募で入る。条例第25条から第27条が市長の公募と屋台選定委員会での選定を定め、選ばれた者の営業期間は3年を限度に、2回まで2年と5年の延長ができる。合わせて10年だ。令和8年の第6回公募では23区画に102人が応募した。

そして数字である。福岡市が令和5年11月30日に公表した推計によれば、屋台の経済波及効果は104.9億円で、平成23年12月の前回調査53.2億円から約2倍に増えた。屋台を主な目的に市外から訪れた人の割合も、前回のおよそ2倍にあたる11.4%になっている。ただしこの12年には訪日客の急増とコロナ禍が挟まっており、伸びを条例だけの成果とみるのは無理がある。屋台の数は市の統計で令和8年度に100軒、ピークだった昭和40年度の427軒からは大きく減ったが、令和元年度以降はおおむね100軒前後で横ばいだ。条例は既存の屋台のルール化と、公募による新規参入の両方を担ってきた。

無許可営業は拘禁刑か罰金200万円

罰則も押さえておく。食品衛生法第82条第1項は、第55条第1項の営業許可の規定に違反した者を「二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金に処する」と定める。同条第2項により、情状によって拘禁刑と罰金を併科することもできる。

刑名に注意したい。条文はすでに「懲役」ではなく「拘禁刑」である。令和4年法律第68号による刑法等の改正で刑名が改まり、この規定は令和7年6月1日から施行されている。「2年以下の懲役」と書いた解説が今も多く残っているので、条文を引くときは施行日を確かめたい。

罰金だけで終わらない点も見ておきたい。食品衛生法第55条第2項は、法に違反して刑に処せられ執行が終わってから2年を経過しない者や、許可を取り消されてから2年を経過しない者には許可を与えないことができるとしている。一度の違反が、その後2年間の再参入を閉ざしうる。

ほこみちが開いた最長20年の占用

最後に、いまの制度の動きを見ておく。

道路の使い方はこの数年で変わった。令和2年5月27日に公布され同年11月25日に施行された道路法等の改正で創設されたのが、歩行者利便増進道路(通称ほこみち)である。道路管理者が道路法第48条の20第1項により区間を定めて指定し、同法第33条第2項第4号の利便増進誘導区域を設けることで、賑わいのための道路利用を正面から認める仕組みだ。

国土交通省の説明によれば、公募で選ばれた占用者は無余地性の基準にとらわれず施設を置け、認定の有効期間は最長20年になる。通常の占用期間が政令で5年程度とされているのに比べると、投資を回収できる長さだ。占用者が除草や清掃など道路の維持管理に協力する場合、占用料が減額される。国土交通省は国道の場合は90%減額と説明しており、地方道の扱いは道路管理者ごとに異なる。指定箇所の一覧は令和8年3月時点のものが公開されている。

移動営業の側でも広がりが出ている。関西広域連合は令和7年3月に自動車の飲食店営業許可基準を共通化する指針をまとめ、これを受けて兵庫県は同年6月1日以後の許可について県内全域での営業を認めた。府県をまたぐ相互乗り入れは大阪府と和歌山県の間で実現している。厚生労働省も令和8年3月に、この事例を全国へ横展開する方針を各自治体へ通知した。

あわせて読む 屋台をどう位置づけるかは、地域の食を観光にどう使うかという話でもある。全体像はこちらで整理している。

市場の屋台に並ぶ串料理。賑わう食市場(錦市場とみられる)の情景。フードツーリズムのイメージ フードツーリズムとは 飲食費2兆円を「地方」と「単価」に変える
観光ビジネスの視点

福岡の104.9億円を見て「うちも屋台条例を」と考えるのは遠回りになる。福岡市の条例は戦後から続く屋台を制度に載せ直したもので、ゼロから常設の露店を生む道具ではない。新しく起こすなら、公募で長期の占用を認めるほこみちのほうが現実的だ。

ただし道路の区画を空けただけでは応募は集まらない。屋台に要る許認可は三つの系統と四つの窓口に分かれていて、事業者はその全部を自力で当たることになるからだ。保健所は取扱品目を絞り、警察と道路管理者は別々に判断し、火を使えば消防が加わる。区画の公募要項にあるのは、たいてい道路のことだけだ。

自治体が下げられる障壁はここにある。区間を指定して公募するとき、その区画で認められる調理工程と品目、要る届出の一覧を、保健所・警察・消防と詰めて同時に示す。福岡市の募集要項が三つの許可と実額を並べているのは、その先例だ。事業者は逆に、公募より先にこの三系統を当たっておきたい。

よくある質問

自分の土地に屋台を出すなら許可はいらないか。

道路占用許可は道路法上の道路に出す場合の制度なので要らない。道路使用許可のほうは、道路交通法上の道路に一般交通の用に供する場所が含まれるため、私道や誰でも通り抜けられる広場では要ることがある。民有地でも、食品衛生法上の許可または届出は営業形態に応じて要る。火気を使う場合の消防への届出は、多くの自治体の条例が「催しに際して開設する露店等」を対象にしており、常設営業が当たるかは条例と運用による。出店地の保健所と消防署に確認したい。

キッチンカーの許可は他の都道府県でも使えるか。

原則は許可を出した自治体の区域内である。県内の広域化は進んでおり、兵庫県は令和7年6月1日以後の許可について県内全域での営業を認めた。府県をまたぐ相互乗り入れは大阪府と和歌山県の間で実現しており、厚生労働省が令和8年3月にこの事例の横展開を各自治体へ通知した。営業したい区域の保健所に確認したい。

イベントに出店するとき、道路使用許可は誰が取るのか。

露店・屋台の出店は道路交通法第77条第1項第3号、祭礼行事やパレードなど通行の形態に影響する行為は同項第4号の対象になる。主催者が一括して取得・調整している場合もあるので、自分の手続きが要るかどうかは出店前に主催者と所轄の警察署に確認したい。

出典

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