道の駅は2026年9月4日の第65回登録で全国1,234駅になった。制度が始まった1993年の第1回登録は103駅である。
ところが、駅の数がこれだけ増えても、道の駅が全体でいくら稼いでいるのかを示す数字はなかなか出てこない。国土交通省の資料に出てくる「年間利用客2億人以上、年間売上高約2500億円」は、2019年の有識者提言が全国1,160駅の時点で示したものだ。その後にこれを更新した公表値は見当たらない。
代わりに、個々の運営会社の決算を開くと、はっきりした形が見えてくる。道の駅の過半では、施設を造る主体と、そこで稼ぐ主体が分かれている。この分離を前提に収益と投資を組めているかどうかで差がつく。
本記事では、道の駅の定義と登録要件を短く押さえたうえで、誰が造り誰が稼ぐのかという構造を、国の資料と自治体が公表する決算資料から整理する。
この記事のポイント
- 道の駅は市町村等が設置者となり、国土交通省が登録する休憩施設だ。全国1,234駅(2026年9月4日・第65回登録時点)。
- 一体型の道の駅では駐車場・トイレ・情報提供施設を道路管理者が整備する。運営を別法人に委ねる場合、稼ぐ側は施設の本体を持たないまま商売をすることになる。
- 千葉県南房総市が唯一の株主となって道の駅7駅などを運営する会社は、売上高8億7,484万円のうち2億1,475万円が市からの指定管理収入だった。それを計上したうえで営業損失2,719万円である。
- 一方、千葉県旭市の道の駅を運営する会社は、損益計算書に指定管理収入の科目がなく、逆に施設使用料763万円を払ったうえで営業利益2,950万円を出している。分離は必ずしも赤字を意味しない。
- 第3ステージの2025年目標は、キャッシュレス導入87%やBCP策定100%が達成された一方、外国人観光案内所の認定は23%、24時間利用できるベビーコーナーは26%で目標に届かなかった。
道の駅とは何か 制度が決めているのは休憩施設の水準までだ
道の駅は、道路利用者への安全で快適な道路交通環境の提供と、地域の振興に寄与することを目的とする施設である。国土交通省は、休憩機能・情報発信機能・地域連携機能の3つを併せ持つ施設と説明している。
登録の要件は具体的だ。国土交通省の資料によれば、休憩目的の利用者が無料で使える十分な容量の駐車場と清潔なトイレ、乳幼児の授乳やおむつ交換ができるベビーコーナーがあり、これらが24時間利用できること。道路と地域の情報を提供する案内所または案内コーナーがあり、原則として案内員を置くこと。文化教養施設や観光レクリエーション施設などの地域振興施設があること。施設とその間を結ぶ主要な歩行経路がバリアフリー化されていることである。
運用方針はさらに細かい。十分な容量の駐車場とは駐車台数が概ね20台以上(大型車用は2台分に換算)、十分な容量のトイレとは水洗式で便器数が概ね10器以上とされ、その水洗式便所は原則としてすべて洋式便座とすることとされている。
ここで押さえておきたいのが設置者の規定だ。案内・サービス施設の設置者は「市町村又は市町村に代わり得る公的な団体」でなければならない。国土交通省の運用方針は、市町村に代わり得る公的な団体を4つに限定している。都道府県、地方公共団体が3分の1以上を出資する法人、地域を代表して道の駅を設置するにふさわしいとして市町村が推薦する公益法人、そして市町村から土地・建物の貸与を受けて管理運営の協定を結ぶ法人である。
4つ目が民間事業者だ。ただし条件がつく。土地と建物は市町村から借りること、協定にはサービス確保の措置、機能の維持と改善の責任、定期的な報告、災害時の協力、地域課題への協力、事業継続が困難になった場合の取扱いという6項目を必ず定めることが求められる。
申請は道路管理者を経由して国土交通省道路局長に提出され、登録簿への登録と登録証の交付を受ける。つまり制度が定めているのは、設置者の要件と、道の駅として満たすべき施設・サービスの水準までである。どう稼ぐかについて、要綱は何も定めていない。
全国1,234駅 数は増えたが、経営を語る数字は2019年で止まっている
登録数の内訳を地方別に見ると、関東189、東北181、近畿160、九州146、中部137、北海道128、中国108、四国91、北陸84、沖縄10で、合計1,234となる。
一方、経営の全体像を示す数字は乏しい。冒頭に挙げた年間利用客2億人以上、年間売上高約2500億円は、2019年11月に新「道の駅」のあり方検討会が提言を出した際の背景資料に、全国1,160箇所という記述と並んで置かれた数字だ。同じ資料には、道の駅の53%は民間が運営していること、約8割が中山間地に設置されていることも記されている。
運営主体の内訳はさらに古い。国土交通省が2013年9月に有識者懇談会へ提出した資料では、指定管理者44.3%(445駅)、第三セクター31.1%(312駅)、自治体直轄15.7%(158駅)となっている。総駅数1,004駅の時点の数字で、この3区分の合計は915駅にとどまり、残る約9%の内訳は資料から確認できない。
(注:この内訳は国立国会図書館の調査資料「道の駅の現状と役割の拡大」が引用したもので、原典は2013年9月時点の国土交通省資料である。以後これを更新した全国内訳は確認できなかった。なお、この2つの数字は分類の定義が異なる。第三セクターを民間に数えるかどうかで比率は変わる。)
全国の道の駅を売上高で並べた公的なランキングは確認できなかった。駅ごとの数字を知るには、運営会社や自治体の公表資料を個別に当たることになる。本記事も以下ではその方法をとる。
造る主体と稼ぐ主体は、制度の段階で分かれている
道の駅の経営を読むうえで最初に押さえるべきは、施設が誰の資産かという点である。
国立国会図書館が2018年10月に公表した調査資料によれば、道の駅の整備方法には2種類ある。市町村等が地域振興施設を、道路管理者が駐車場・トイレ・情報提供施設をそれぞれ整備する「一体型」と、市町村等がすべての施設を整備する「単独型」だ。同資料は、一体型54%(624駅)、単独型46%(521駅)という内訳を示している。合計1,145駅で、同資料が全国の登録数として挙げる2018年4月時点の数と一致する。
道路管理者とは、直轄国道なら国、指定区間外の一般国道と都道府県道なら都道府県または政令指定都市を指す。つまり過半の道の駅では、駐車場とトイレという最も利用の多い部分を国や都道府県が造り、物販や飲食の入る地域振興施設を市町村が造っている。
そして運営は、その市町村から指定管理者や第三セクターへ渡ることが多い。ここに三層ができる。道路管理者が休憩施設を造り、市町村が地域振興施設を造って設置者となり、運営者が中で商売をする。稼ぐことを期待されている主体が、施設の本体を持っていない。
ただし、これがすべてではない。2013年時点の内訳では自治体直轄が15.7%あり、この場合は設置者が自ら運営する。分離は道の駅に必ず生じる構造ではなく、外部に運営を委ねたときに生じる構造だ。それでも、指定管理者と第三セクターを合わせれば当時で75.4%を占める。
では民間事業者が設置者になれば分離は解けるのか。運用方針を読むと、そうはならない。この類型では民間事業者が制度上の設置者になる一方、その条件が「市町村から土地・建物の貸与を受け」ることだからだ。設置者になっても、土地と建物は借りたままである。
なお、施設の本体を持たないこと自体は不利とは限らない。建物を自前で保有すれば、減価償却や大規模修繕の負担が毎年のしかかる。それを負わずに商売を始められるのは、参入する側から見れば利点だ。実際、後述する運営会社の決算にも減価償却費は計上されており、什器や設備は自前で持っている。持っていないのは土地と建物である。
問題は、負担の軽さではなく判断の分かれ方にある。売り場を広げる、厨房を入れ替える、駐車場を増やす。こうした「稼ぐための投資」のうち、建物や駐車場に手を入れるものは、所有者である自治体や道路管理者との調整なしには進められない。どこまでを運営者が決められるかは協定の内容で変わる。
指定管理と何が違うのか 道の駅だけに乗る3つの条件
ここまで読んで、これは道の駅に限った話ではないと感じた方もいるだろう。図書館も体育館も温泉施設も、行政が造って指定管理者が運営する。設置者と運営者が分かれる構図は、公の施設に広く共通する。
そのとおりである。そのうえで、道の駅には他の公の施設にない条件が3つ乗る。
第一に、収益を生まない部分が制度で決まっている。駐車場とトイレとベビーコーナーは無料で24時間開けておかなければならない。案内・サービス施設には原則として案内員を置く。面積も人手もそこに割かれるが、そこからは1円も入らない。コストを削ろうにも、削れる下限が国の運用方針で固定されている。
第二に、当事者が三者になる。一般の公の施設なら設置者と運営者の二者だが、一体型の道の駅では駐車場・トイレ・情報提供施設を道路管理者が整備する。設置者である市町村ですら、その部分の改修を単独では決められない。
第三に、それでいて運営者が担うのは物販と飲食という完全な収益事業である。図書館の指定管理者に売上目標はないが、道の駅の運営者には売上がある。無料開放の義務と収益事業の責任が、同じ敷地の中に同居している。
この3つが重なるところに、道の駅の経営の難しさがある。以下、実際の決算で確かめていく。
稼ぐ側の損益はどう見えるか 指定管理収入2億円を含めて営業赤字
この図表のデータを見る
| 期 | 売上高 (百万円) | 営業損益 (百万円) | 経常損益 (百万円) | 補助金収入 (百万円) | 当期純利益 (百万円) |
|---|---|---|---|---|---|
| 第33期 | 960.6 | 9.4 | 14.0 | 77.5 | 25.8 |
| 第34期 | 843.7 | ▲12.1 | ▲11.2 | 26.9 | 9.5 |
| 第35期 | 874.8 | ▲27.2 | ▲23.5 | 25.2 | 0.6 |
「補助金収入」は特別利益に計上された補助金収入。南房総市「道の駅を運営している第三セクターの決算状況」に掲載の株式会社ちば南房総 第35期経営状況報告書「損益の推移」より。原資料の単位は円で、百万円は小数第2位以下を四捨五入した値。第35期は売上高874,841,809円、営業損失27,196,108円、経常損失23,483,426円、特別利益(補助金収入)25,200,000円、当期純利益588,097円。第35期の売上高の内訳は、営業売上高525,244,471円、指定管理収入214,745,257円、受託手数料収入98,758,648円、観光売上高28,836,650円、業務受託収入7,256,783円。第33期は特別損失57,219,811円、第34期は同4,747,339円、第35期は同140,677円を計上しており、当期純利益は特別損失と法人税等を差し引いた後の額。第35期は2024年10月1日から2025年9月30日まで、第34期は2023年10月1日から2024年9月30日まで。
千葉県南房総市は、道の駅を運営する第三セクターの決算状況を市のウェブサイトで公表している。株式会社ちば南房総という会社で、発行済株式は1,900株、資本金9,500万円、当期末の株主数は南房総市の1名だけである。
同社が主な営業所として挙げる道の駅は、とみうら枇杷倶楽部、おおつの里花倶楽部、三芳村鄙の里、ローズマリー公園、富楽里とみやま、ちくら潮風王国、和田浦WAO!の7駅にのぼる。ほかに千葉県酪農のさと、みねおか工房も営業所に含まれる。
まず売上高の中身を見る。第35期(2024年10月1日から2025年9月30日まで)の売上高8億7,484万1,809円は、営業売上高5億2,524万4,471円、指定管理収入2億1,474万5,257円、受託手数料収入9,875万8,648円、観光売上高2,883万6,650円、業務受託収入725万6,783円で構成されている。
売上の4分の1近くを、指定管理収入が占める。店頭で売ったものではない。
そのうえで損益はこうなる。売上原価3億1,671万2,646円を引いた売上総利益は5億5,812万9,163円。販売費及び一般管理費が5億8,532万5,271円かかり、営業損失2,719万6,108円を計上している。営業外収益371万2,682円を加えても経常損失は2,348万3,426円。ここに特別利益として補助金収入2,520万円が乗り、固定資産除却損14万677円を差し引いて税引前当期純利益は157万5,897円となる。法人税等98万7,800円を納めた後の当期純利益は、58万8,097円だった。
指定管理収入2億1,474万円を売上に計上し、さらに補助金収入2,520万円を特別利益に立てて、残った利益が58万円である。
ここで注意したいのが売上総利益の比率だ。売上高に対して63.8%になるが、これは物販の粗利ではない。売上原価に計上されているのは商品仕入高と観光仕入高だけで、売上の24.5%を占める指定管理収入と11.3%を占める受託手数料収入には、対応する仕入がない。一般の小売業の粗利率と並べて読むことはできない。
3期分の推移を見ると、これが単年の事情でないことがわかる。第33期は売上9億6,055万337円で営業利益935万9,571円の黒字だったが、第34期は売上8億4,370万7,840円で営業損失1,212万9,578円、第35期は前述のとおり営業損失2,719万6,108円である。直近2期は営業段階でも経常段階でも赤字で、補助金収入がなければ最終赤字だった。
第33期から第34期にかけては売上が1億1,684万2,497円減っている。この減収の理由は、公表されている営業報告書からは確認できなかった。
コスト側では、会社は営業報告書で販管費が前期より3,209万5,360円増えた理由として、最低賃金の引き上げ、社会保険の適用拡大、水道光熱費の高騰、キャッシュレス決済の利用増による手数料負担の増加などを挙げている。販管費の内訳を見ると、水道光熱費が9,088万5,464円、パート・アルバイトの人件費にあたる雑給が1億3,502万5,354円で、正社員の給料手当9,982万9,759円を上回る。
(注:決算書が示す従業員数は正社員15名と準社員10名の計25名である。雑給1億3,502万円がどの従業員の人件費にあたるか、その人数は決算書に記載がない。)
補助金なしで営業黒字を出している駅もある
分離があるから赤字になる、という単純な話ではない。同じ千葉県内に、対照的な決算がある。
千葉県旭市は、道の駅「季楽里あさひ」を運営する株式会社季楽里あさひの経営状況を、地方自治法に基づいて議会に提出し公表している。発行済株式は880株、その総額は4,400万円、当期末の株主数は10名だ。取締役には旭市長、ちばみどり農業協同組合長、旭市商工会長、海匝漁業協同組合副組合長、旭市役所農水産課長が名を連ねる。
第11期(2025年4月1日から2026年3月31日まで)の売上高は2億8,610万4,216円。ここから売上総利益1億9,914万6,960円、販売費及び一般管理費1億6,964万5,515円を経て、営業利益2,950万1,445円を計上している。経常利益3,428万6,014円、当期純利益2,424万713円で、期末の純資産は2億466万7,209円だ。前期も営業利益3,006万9,238円の黒字だった。
決算書の上で確認できる違いの一つが、収入と費用の科目の構成だ。この会社の損益計算書に指定管理収入の科目はない。逆に、施設使用料763万6,368円が販売費及び一般管理費に計上されている。同社の事業計画はこれを「市施設使用料」と記している。市から運営費を受け取るのではなく、市に使用料を払ったうえで営業利益を出しているということになる。
読むときに注意したい点が一つある。この2億8,610万円は道の駅の店頭取扱高ではない。直売所は委託販売方式のため、生産者から預かった商品の売上そのものではなく、そこから得る手数料が会社の収入になる。同社の予算書は第11期の受取手数料を1億4,500万円と置き、備考に「委託商品販売手数料」と記している。同じ予算書が「道の駅全体売上」の目標として掲げるのは10億450万円で、会社の売上高とは桁が違う。ちば南房総の受託手数料収入と同じ構造だ。
(注:受取手数料と道の駅全体売上はいずれも予算書上の目標値であり、実績ではない。)
(注:旭市の出資割合は公表資料に記載がない。本報告が地方自治法243条の3第2項に基づくものであることから、市の出資は資本金の2分の1以上と読めるが、実数は確認できなかった。)
2社の違いをどう読むか。立地も規模も運営年数も違うため、優劣として並べることはできない。確かなのは、設置者と運営者が分かれていること自体が赤字の原因ではない、ということだ。分離があっても、収益の組み方しだいで結果は分かれる。
あわせて読む 地域の農産物をどう売るかという論点は、地産地消の記事でも扱っている。
地産地消とは 数字で見る直売所と観光活用の事例
川場村の文書にある「投資は村、採算は会社」という役割分担
自治体の側は、この分離をどう認識しているのか。群馬県川場村が公表する第三セクター等経営健全化方針に、その答えが書かれている。道の駅川場田園プラザを運営する株式会社田園プラザ川場についての文書で、2021年11月1日に村のむらづくり振興課が作成したものだ。
文書にはこうある。「これまで、資本金及び資本準備金以外で村が出資はしていませんが、施設整備や大規模な修繕は村主体で行っています」。
そのうえで村はこう述べる。「村は、道の駅施設設置者として、施設の修繕等に必要な投資を続ける必要はありますが、同社が行っている事業のなかには民間事業者でも提供可能なサービスがあります。今後の事業を継続していくには、採算性の確保が求められると捉えています」。
投資は村が続ける。採算は会社が確保する。分離が制度の建前ではなく、実際の役割分担として自治体自身の言葉で書かれている。
分けたままどう噛み合わせるか 国が始めた「まちぐるみ」の支援
分離そのものは制度の設計であって、なくすことはできない。動いているのは、分かれたままどう噛み合わせるかという方向である。
国土交通省は「道の駅」第3ステージ応援パッケージという制度をつくり、まちと道の駅が一体となって取り組む自治体を関係省庁で支援している。支援対象は10駅で、るもい(北海道留萌市)、むらやま(山形県村山市)、しもつま(茨城県下妻市)、もてぎ(栃木県茂木町)、南魚沼(新潟県南魚沼市)、あらい(新潟県妙高市)、筆柿の里・幸田(愛知県幸田町)、草津(滋賀県草津市)、きくすい(熊本県和水町)、アリストぬまくま(広島県福山市)が選ばれている。伴走支援は2027年度まで続き、事例集の作成は2028年度に予定されている。
推進委員会の資料で具体像が示されているのが、道の駅もてぎの「茂木モデル」だ。まちぐるみで再定義した町のコンセプトを掲げ、道の駅の中に「もてぎルーム」を設けてそれを体現する。あわせて移住相談窓口、観光案内所、役場職員の常駐といった地域の機能を道の駅の中や近くに置き、道の駅とまちのつながりを見える形にするという。リニューアル工事の中で具体化していく段階にある。
道の駅の売り場を磨くのではなく、町の機能を道の駅に寄せる。投資の主体である自治体側から設計を組み直そうという発想だ。
全国道の駅連絡会も動いている。同会は2019年5月に法人化し、2025年12月からは「3ステ応援」アドバイザリー制度の運用を始めた。登録アドバイザー26名の名簿から派遣し、1案件あたり5万円程度の報酬を連絡会が一部負担する仕組みで、3年間で100駅の個別支援を目標に掲げている。1案件5万円という規模は、ここまで見てきた投資と採算の分離を解くには小さい。ただし現場の課題を横につなぐ回路が制度として置かれた意味はある。
第3ステージの目標は、設備で達成し、人で届かなかった
| 観光 | キャッシュレスの導入 87%(1,074駅)/目標80%以上 | 達成 |
|---|---|---|
| 外国人観光案内所の認定 23%(246駅)/目標50%以上 | 未達 | |
| 防災 | BCPの策定 100%(781駅)/目標100% | 達成 |
| 地方創生 | ベビーコーナー(24時間利用可能) 26%(314駅)/目標50%以上 | 未達 |
| 大学等との連携 67校/目標50校 | 達成 |
国土交通省は道の駅の展開を3つのステージで整理している。第1ステージ(1993年〜)は通過する道路利用者へのサービス提供の場、第2ステージ(2013年〜)は道の駅自体が目的地、第3ステージ(2020年〜)は地方創生・観光を加速する拠点である。委員会は、これらは切り替わるものではなく、機能が拡張され高度化してきた変遷を表すものだと説明している。
第3ステージには2025年までの数値目標が置かれた。2026年3月27日の第14回推進委員会で、その実績が示されている。
達成した項目はこうだ。キャッシュレス導入は開始時40%(513駅)から87%(1,074駅)となり、目標の80%以上を上回った。地域防災計画に位置付けられた道の駅のBCP策定率は開始時2%(15駅)から100%(781駅)に達し、目標を満たした。大学等との連携は24校から67校に増え、目標の50校を超えている。
届かなかった項目もある。観光案内所のある道の駅のうち日本政府観光局の外国人観光案内所に認定されたのは開始時10%(113駅)から23%(246駅)にとどまり、目標の50%以上に届かなかった。24時間利用できるベビーコーナーの設置は開始時4%(53駅)から26%(314駅)で、こちらも目標の50%以上に届いていない。ただし24時間利用に限定しなければ51%(626駅)が設置済みである。
(注:これらの実績は2026年3月の推進委員会資料に「2025年実績」として示された値で、資料には基準日と、確報か見込かの別が記載されていない。また母数となる対象駅は項目ごとに異なる。キャッシュレスとベビーコーナーは全道の駅1,231駅、外国人観光案内所の認定は観光案内所のある道の駅1,053駅、BCP策定は地域防災計画に位置付けられている道の駅781駅である。この1,231駅は同資料の基準時点の登録数で、本記事冒頭の1,234駅とは時点が異なる。開始時の比率も同じ母数で計算されているとは限らないため、開始時と実績の比率を直接引き算しないこと。)
機器を入れれば済む目標は達成され、人の配置と運用が要る目標は届かなかった。キャッシュレス端末やBCPの文書は導入すれば数に入る。外国人観光案内所の認定は多言語で応対できる人員を要し、24時間利用できるベビーコーナーは夜間も開けておける施設と管理の体制を要する。運営者が資産と人件費の裁量を持たない構造は、ここにも表れている。
防災の面では前進が大きい。広域防災拠点となる防災「道の駅」は、2024年時点の39駅から2025年5月に40駅が追加され、79駅になった。
30年目のリニューアルと、外から来るコスト
道の駅が抱える課題は、制度創設から30年を超えたところで形を変えている。
国土交通省の推進委員会が2024年にまとめた中間レビューは、制度創設初期に誕生した道の駅を中心に、施設の老朽化と陳腐化、利用者増加への対応、魅力向上のための機能強化といった課題があり、リニューアルへのニーズが高まっていると指摘した。加えて物流の2024年問題への対応、ドローン配送拠点としての活用、車中泊ニーズへの対応も挙がっている。車中泊については、休憩利用と車中泊利用が混在することで問題も発生しているとされる。
国立国会図書館の調査資料も、2018年の時点ですでに道の駅の主な課題として、設備投資に係る費用負担の増加と経営の自立化を挙げていた。
この2つはつながっている。施設を新しくしなければ客は減る。だが施設を新しくする判断と資金は設置者である自治体の側にあり、稼ぐ側にはない。一方で稼ぐ側の損益は、最低賃金、社会保険、光熱費、決済手数料に削られていく。ちば南房総の水道光熱費は9,088万円で、売上高の1割を超える。契約の見直しや設備更新で下げる余地はあるが、その設備更新もまた投資判断の問題に戻ってくる。
道の駅の決算を2社並べて見えるのは、分離そのものが成否を決めているのではない、ということだ。指定管理収入2億1,474万円を売上に計上して営業赤字2,719万円の会社があり、指定管理収入の科目を持たず市に施設使用料763万円を払って営業利益2,950万円の会社がある。差がついているのは、分離を前提に収益と投資をどう組んだかである。
だとすれば、道の駅の経営を評価する物差しは売上高でも来場者数でもない。見るべきは協定書の3か所だ。修繕の負担区分、指定期間、そして指定管理料と使用料のどちらが動いているか。この3つで、稼ぐ側が投資を判断できる範囲が決まる。
設置者である自治体は、施設更新の計画を指定期間と揃えているか。運営者は、稼いだ分を修繕積立として残す条項を交渉できているか。参入を検討する事業者は、募集要項でこの3点を先に見る。売上規模の比較はその後でいい。
あわせて読む 観光施設全体の稼ぎ方の違いは、ピラー記事で整理している。
テーマパークから道の駅まで 観光施設の全体像を3つの稼ぎ方で読む
よくある質問
出典
- 国土交通省「道の駅案内」
- 国土交通省「「道の駅」の第65回登録について」
- 国土交通省「第14回「道の駅」第3ステージ推進委員会 配布資料」
- 国土交通省「今後の「道の駅」のあり方について(新「道の駅」のあり方検討会 提言)」
- 国立国会図書館「道の駅の現状と役割の拡大」
- 南房総市「道の駅を運営している第三セクターの決算状況」
- 旭市「令和8年第3回定例会審議案件一覧(報告第6号 株式会社季楽里あさひの経営状況)」
- 川場村「第三セクター等経営健全化方針」


