訪日客の誘致にかかわる自治体やDMO(観光地域づくり法人)、観光事業者に向けて、JNTO(日本政府観光局)の位置づけ、仕事、組織とお金、観光庁との違い、訪日外客数の読み方を、法令とJNTO・観光庁の公表資料をもとに整理する。
JNTOは、国の目標と予算に沿って、海外で訪日客を呼び込む事業を企画・実施する公的な専門機関だ。2026年4月には、観光庁とJNTOが2030年度までの新しい訪日マーケティング戦略を策定した。
この記事のポイント
- 正式名称は独立行政法人国際観光振興機構で、海外での観光宣伝など法律で決まった業務を担う。
- 世界26都市に海外事務所を持ち、訪日プロモーションや国際会議の誘致、訪日外客数の発表を行う。
- 2025年度決算で収入の94.6%が国の運営費交付金。2026年度当初予算でJNTO向けに約136億円。
- 観光庁が政策と予算を担い、JNTOが事業を企画・実施する。地域や企業は会員制度などで活用できる。
JNTOは訪日客を呼び込む独立行政法人
JNTOの組織概要と沿革によると、JNTOは英語名Japan National Tourism Organizationの略称だ。正式名称は「独立行政法人国際観光振興機構」で、「日本政府観光局」は2008年に使い始めた通称である。
独立行政法人通則法によると、独立行政法人は、国が直接行う必要はないが、公共のために確実に実施されることが必要な事業を担う法人だ。JNTOはそのうち、国が定める中期目標に沿って業務を進める「中期目標管理法人」にあたる。所管する大臣(主務大臣)は国土交通大臣である。
JNTOの目的は、海外での宣伝や観光案内を通じて、外国人旅行者の来訪を増やすことだ。国際観光振興機構法の第3条は、目的を「海外における観光宣伝、外国人観光旅客に対する観光案内その他外国人観光旅客の来訪の促進に必要な業務を効率的に行うことにより、国際観光の振興を図ること」と定めている。
訪日6,000万人目標を海外で担う
観光庁によると、第5次の観光立国推進基本計画は2026年3月27日に閣議決定された。2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円とする目標は据え置いた。そのうえで、6,000万人に占めるリピーターを4,000万人にする目標を加えた。
この目標に向けた海外での宣伝を実行するのがJNTOだ。観光庁の2026年度予算の資料は、「戦略的な訪日プロモーションの実施」に136億2,700万円を計上し、交付先をJNTOとしている。このうち80億円は、国際観光旅客税(出国税)を財源とする分だ。
JNTOの令和7年度事業報告書によると、JNTO自身の2026年度予算は144億7,000万円で、このうち136億2,700万円が運営費交付金だ。
観光庁とJNTOは2026年4月28日、2030年度までの新しい訪日マーケティング戦略を策定した。両者の発表によると、テーマ別の誘客では、アドベンチャートラベルに加えて、食を目当てにした旅(ガストロノミーツーリズム)が新たに対象になった。
JNTOの英語の発表によると、同じ日には海外向けの新しいキャンペーン「Japan. Unforgettable」も始まった。主な対象は、欧州・米州・オセアニアで、日本を訪れたことはないが次の旅行先の候補に入れている人たちだ。
JNTOの仕事は法律で決まっている
JNTOが行える業務は、国際観光振興機構法の第9条で7つに決まっている。
- 外国人観光旅客の来訪を促進するための宣伝
- 外国人観光旅客に対する観光案内所の運営
- 全国通訳案内士試験の実施に関する事務
- 国際観光に関する調査と研究
- 国際観光に関する出版物の刊行
- 上の業務に附帯する業務
- 国際会議観光法の第11条に定める業務(国際会議の誘致の促進など)
同法の第16条は、この範囲を超える業務を行った場合、役員を20万円以下の過料(行政上の金銭罰)の対象にしている。
中心は1つ目の宣伝だ。観光庁の2026年度予算の資料は、取り組みの例として、ウェブサイトやSNSでの情報発信、航空会社との共同広告を挙げる。メディアやインフルエンサーの招請、現地の消費者向けの旅行博への出展も並ぶ。2026年度の重点には、国内の地方で海外市場向けの商談会を増やすことが入っている。
JNTOの告知によると、東京・丸の内の観光案内所(JNTO TIC)は、2026年3月31日でカウンター業務を終えた。いまはコールセンターで、英語・中国語・韓国語・日本語の案内を年中無休(9時〜17時)で続けている。
通訳案内士法にもとづき、全国通訳案内士試験は観光庁長官に代わってJNTOが実施している。受験手数料はJNTOの収入になる。JNTOの試験案内によると、2026年度の試験では、事務手続きや運営業務を株式会社JTBに委託している。
国際会議観光法は、国際会議の誘致の援助、開催のための寄附金の募集と交付金の交付、関係者の研修などをJNTOの業務と定めている。JNTOの令和7年度事業報告書によると、国際会議協会(ICCA)の統計で、2025年の日本の国際会議開催件数は世界6位だった。
26都市の事務所と国の交付金で動く
海外26都市の事務所と職員
JNTOの海外事務所の一覧によると、事務所は世界26都市にある。内訳は東アジア6、東南アジア・南アジア7、オセアニア1、北米・中南米4、欧州7、中東1だ。沿革によると、2026年10月時点で最も新しいのは2024年に開いたストックホルム事務所である。
JNTOによると、海外事務所は在外公館や旅行会社、航空会社、メディアなどと日常的に連携し、現地市場の情報を集めて分析する。一般の消費者に向けた観光情報の発信も担う。
令和7年度事業報告書によると、常勤職員は2025年度末で219人で、このうち18人は国からの出向者だ。ほかに、自治体や民間企業からの出向者が36人、海外事務所の現地職員が95人いる。
収入の9割超は国の運営費交付金
同報告書によると、JNTOの2025年度の収入は決算で139億8,400万円だった。収入の94.6%にあたる132億2,300万円が、国から交付される運営費交付金だ。訪日プロモーションの費用も、この交付金から出ている。
残りは自己収入で、同報告書は、賛助団体からの協賛金や会員の会費、全国通訳案内士試験の受験料、受託事業の収入を挙げている。出国税を財源にした業務は、機構法の第10条にもとづき、ほかのお金と分けて会計処理している。
観光庁は政策を、JNTOは事業を担う
観光庁とJNTOは、どちらも訪日客の誘致にかかわるが、立場が違う。観光庁によると、観光庁は国土交通省の外局で、2008年10月に発足した国の行政機関だ。国土交通省設置法は、観光立国の実現に向けて観光に関する事務を行うことを観光庁の任務と定めている。
これに対してJNTOは、国とは別の法人である。令和7年度事業報告書は、主な事業の流れを、観光庁が予算を出し、JNTOが企画・実施する形で示している。訪日マーケティング戦略のように、観光庁とJNTOが共同で策定するものもある。
独立行政法人通則法により、JNTOの中期目標を定めるのは主務大臣の国土交通大臣だ。第5期の中期目標は、2023年4月から2028年3月までの5年間を対象にしている。JNTOはこれに沿って中期計画を作り、毎年度、大臣の評価を受ける。同報告書によると、2023年度と2024年度の総合評定はいずれも、Sに次ぐAだった。
JNTO向けに計上された136億2,700万円は、2026年度の観光庁関係予算の約1割にあたる。観光庁の予算資料の総括表で、観光庁関係予算の合計は1,383億4,500万円だ(いずれも当初予算で、補正予算は含まない)。
| 観光庁 | JNTO | |
|---|---|---|
| 国土交通省の外局(国の行政機関) | 立場 | 独立行政法人(国とは別の法人) |
| 2008年10月に発足 | 始まり | 1964年4月に前身が設立、2003年10月に現在の法人へ |
| 国土交通省設置法 | 根拠の法律 | 独立行政法人国際観光振興機構法 |
| 予算を計上し、JNTOに交付する | お金 | 交付金を受けて事業を企画・実施する |
| インバウンド消費動向調査(消費額) | 主な統計 | 訪日外客数(毎月発表) |
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日本の観光政策はどう動くか 観光庁・基本計画・予算の全体像
前身は1964年、いまの法人は2003年から
JNTOの沿革は、1893年に設立された喜賓会から書き起こしている。JNTOが「わが国初の外客誘致斡旋機関」と位置づける組織だ。
同じ沿革によると、JNTOの前身である特殊法人国際観光振興会は1964年4月に設立された。東京オリンピックが開かれた年で、JNTOはこの年を政府観光局としての出発点としている。
2003年10月1日に、いまの独立行政法人国際観光振興機構に移った。同じ2003年には、国の訪日プロモーションであるビジット・ジャパン事業が始まっている。
その後、2008年に「日本政府観光局」の通称を使い始め、2012年には外国人観光案内所の認定制度を始めた。JNTOは組織概要で、2015年に国の予算を執行する機関になってから、訪日プロモーション事業の実施主体になったと説明している。会員向けの案内でも、ビジット・ジャパン事業の実施で各市場の最前線を担うとしている。
訪日外客数はJNTOが毎月発表する
JNTOは統計の発表も担う。JNTOの統計資料によると、訪日外国人旅行者の数を示す「訪日外客数」は、法務省の出入国管理統計をもとにJNTOが算出し、毎月発表している。
ただし、訪日外客数は観光客の数ではない。JNTOの定義では、日本に住む永住者などを除いた外国人の入国者に、クルーズ船の寄港などで一時的に上陸した人を加える。駐在員やその家族、留学生も含まれる。
JNTOの統計によると、2025年の訪日外客数は確定値で4,268万3,301人で、そのうち観光客は3,896万2,366人だった。数字は推計値、暫定値、確定値の順に固まり、推計値は翌月に発表される。
同じ統計で、前身の国際観光振興会が設立された1964年の訪日外客数は35万2,832人だった。2025年はその約121倍にあたる。ただし、訪日客の増減には多くの要因が関わり、JNTOの事業の効果だけを取り出して測ることはできない。
この図表のデータを見る
| 年 | 訪日外客数(人) |
|---|---|
| 1964年 | 352,832 |
| 1965年 | 366,649 |
| 1966年 | 432,937 |
| 1967年 | 476,771 |
| 1968年 | 519,004 |
| 1969年 | 608,744 |
| 1970年 | 854,419 |
| 1971年 | 660,715 |
| 1972年 | 723,744 |
| 1973年 | 784,691 |
| 1974年 | 764,246 |
| 1975年 | 811,672 |
| 1976年 | 914,772 |
| 1977年 | 1,028,140 |
| 1978年 | 1,038,875 |
| 1979年 | 1,112,606 |
| 1980年 | 1,316,632 |
| 1981年 | 1,583,043 |
| 1982年 | 1,793,164 |
| 1983年 | 1,968,461 |
| 1984年 | 2,110,346 |
| 1985年 | 2,327,047 |
| 1986年 | 2,061,526 |
| 1987年 | 2,154,864 |
| 1988年 | 2,355,412 |
| 1989年 | 2,835,064 |
| 1990年 | 3,235,860 |
| 1991年 | 3,532,651 |
| 1992年 | 3,581,540 |
| 1993年 | 3,410,447 |
| 1994年 | 3,468,055 |
| 1995年 | 3,345,274 |
| 1996年 | 3,837,113 |
| 1997年 | 4,218,208 |
| 1998年 | 4,106,057 |
| 1999年 | 4,437,863 |
| 2000年 | 4,757,146 |
| 2001年 | 4,771,555 |
| 2002年 | 5,238,963 |
| 2003年 | 5,211,725 |
| 2004年 | 6,137,905 |
| 2005年 | 6,727,926 |
| 2006年 | 7,334,077 |
| 2007年 | 8,346,969 |
| 2008年 | 8,350,835 |
| 2009年 | 6,789,658 |
| 2010年 | 8,611,175 |
| 2011年 | 6,218,752 |
| 2012年 | 8,358,105 |
| 2013年 | 10,363,904 |
| 2014年 | 13,413,467 |
| 2015年 | 19,737,409 |
| 2016年 | 24,039,700 |
| 2017年 | 28,691,073 |
| 2018年 | 31,191,856 |
| 2019年 | 31,882,049 |
| 2020年 | 4,115,828 |
| 2021年 | 245,862 |
| 2022年 | 3,832,110 |
| 2023年 | 25,066,350 |
| 2024年 | 36,870,148 |
| 2025年 | 42,683,301 |
日本政府観光局(JNTO)「年別 訪日外客数、出国日本人数の推移(1964年‐2025年)」による。値はすべて確定値。図は万人単位で表示している。2020〜2022年は大きく減り、2021年は245,862人だった。
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地域や企業がJNTOを活用する方法
JNTOは、自治体や企業が訪日客を呼び込むときの窓口にもなる。令和7年度事業報告書の組織図では、地域連携部の地域プロモーション連携室が、地方運輸局や広域連携DMO、自治体の連絡窓口を担う。第5次の観光立国推進基本計画も、自治体や広域連携DMOなどの誘致活動に対するJNTOの支援を強化するとしている。
このほかの主な活用方法には、賛助団体・会員の制度、国際会議の誘致支援がある。受入環境の面では、外国人観光案内所の認定制度もある。
JNTOの案内によると、賛助団体は自治体やDMO・観光協会、業界団体、公共性の高い民間事業者などを主な対象とした寄附の制度で、賛助金はJNTOの活動財源になる。金額は、自治体なら人口や行政区分、企業なら業種や事業規模などを考慮してJNTOが期待額を示す。法人税の損金算入の優遇もある。
会員は日本に法人登記があり、直近1年分の財務諸表を出せる企業が対象で、年会費は30万円(税別)だ。
外国人観光案内所の認定は、受入環境を整えるための制度だ。JNTOは観光庁の指針にもとづき、案内所を3つのカテゴリーとパートナー施設に分けて認定している。認定は3年ごとの更新制だ。JNTOの集計では、2026年9月末時点でカテゴリー1〜3の案内所が1,063か所、パートナー施設が438か所、合わせて1,501か所ある。
国際会議の誘致支援では、JNTOによると、各都市で国際会議の誘致を担う組織(コンベンションビューロー)などと連携して支援する。対象は一定の条件を満たす国際会議で、誘致と開催の支援を無料で提供している。
賛助団体と会員向けには「JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」もある。JNTOの開催案内によると、2026年9月の第29回は26都市の海外事務所長らが集まる内容で、参加者は約500人を見込んでいた。海外事務所長や職員との個別相談も組み込まれていた。
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訪日マーケティング戦略、2026年改定の焦点は「単価・地方・多様化」
英国や豪州も別の組織が誘致を担う
政府の予算で動き、法律で設けられた別の組織が海外向けの誘致を担う形は、日本だけのものではない。
VisitBritainの公式サイトによると、英国ではBritish Tourist Authority(BTA)が、VisitBritainとVisitEnglandの名前で活動している。VisitBritainは21の海外市場で活動する(事務所の数ではなく市場の数)。
BTAは1969年の観光開発法にもとづいて設立された。政府の資金で運営される、省庁から独立した公的機関だ。
Tourism Australiaの公式サイトによると、同機関は2004年のTourism Australia法で設立された連邦政府の法人だ。運営は、政府の予算措置とそのほかの収入でまかなっている。
JNTOは、収入の9割超を国の交付金に頼り、目標も国土交通大臣が定める組織だ。動くのは国の重点に沿った市場とテーマであり、個々の地域の希望の順ではない。
地域がJNTOを使うなら、国の訪日マーケティング戦略の重点に自分たちの売り物を合わせて持ち込むのが筋だ。たとえば2026年度からは戦略の特定テーマにガストロノミーツーリズムが加わった。食を売りにする地域は、地域連携部や広域連携DMOを通じて、この枠に乗せる形で相談を始められる。
よくある質問
出典
- e-Gov法令検索「独立行政法人国際観光振興機構法(平成14年法律第181号)」
- 日本政府観光局(JNTO)「組織概要」
- 日本政府観光局(JNTO)「令和7年度事業報告書」
- 観光庁「令和8年度観光庁関係予算決定概要」
- 日本政府観光局(JNTO)「年別 訪日外客数、出国日本人数の推移(1964年‐2025年)」
- 日本政府観光局(JNTO)「外国人観光案内所の認定件数」


