インバウンド消費額の推移 9.5兆円の中身を国別・費目別に読む

提灯と看板が並ぶ夕暮れの浅草・仲見世通りを行き交う買い物客
Photo: tnkn29 / Unsplash
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訪日客が日本でどれだけお金を使ったかを示すのが、観光庁の「インバウンド消費動向調査」が推計する訪日外国人旅行消費額だ。2025年は確報値で9兆4,549億円となり、過去最高を更新した。2019年の4兆8,135億円のほぼ2倍にあたる。

ただ、総額だけを見ても自社の商売にどう効くかは分からない。この統計は、総額を「人数×単価」「費目」「国・地域」に割ると読める。本記事では2011年からの推移と2025年の内訳を、この3つの割り方で確かめ、使われた場所も見ておく。

この記事のポイント

  • 2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円で過去最高。2019年の約2倍。
  • 2019年からの倍増は、一般客の人数1.38倍と1人当たり旅行支出1.44倍の掛け算による。
  • 費目の首位は買物代から宿泊費に替わり、中国の構成比は4割弱から2割強に下がった。
  • 2030年15兆円には一定の割合で年9.7%の伸びが要る計算。2026年上半期は前年同期比1.4%増だった。
目次

過去最高の一方、2026年上半期は伸びが鈍る

観光庁が2026年3月31日に公表した2025年の確報によると、訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円だった。2024年の8兆1,257億円から16.4%増え、2019年の4兆8,135億円と比べると1.96倍になる。

1人当たりの旅行支出は、クルーズ客を除く一般客で22万8,782円だった。前年からの伸びは0.9%にとどまる。一般客は4,113万5,081人で2024年より15.5%多く、2025年の伸びはほとんどが人数の増加によるものだ。

2025年は9.5兆円で過去最高
訪日外国人旅行消費額の主な数字
2025年の消費額
9.5兆円
9兆4,549億円・前年比16.4%増
一般客1人当たり
22.9万円
22万8,782円・前年比0.9%増
2030年目標15兆円
63%
2025年の到達率・必要な年率9.7%
2026年上半期
1.4%
前年同期比(2次速報)
(注:2025年は確報値。2026年上半期は1-3月期と4-6月期の2次速報値の合計を前年同期と比べた。到達率と必要な年率は編集部算出。年率は2025年から一定の割合で伸びると仮定した値)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査」、観光庁「観光立国推進基本計画(第5次)」をもとに編集部作成

政府は2026年3月に閣議決定した観光立国推進基本計画(第5次)で、2030年に訪日外国人旅行消費額15兆円、1人当たりの消費額単価を「まずは25万円」とする目標を掲げた。2025年の9兆4,549億円は、15兆円の63%にあたる。2025年から2030年まで一定の割合で伸びると仮定すると、15兆円に届くには年9.7%の伸びが必要になる(編集部算出)。

1人当たりの目標25万円には、2025年の22万8,782円で9割強まで来ている。期間は異なるが、2026年4-6月期の2次速報では24万4,733円だった。

2026年に入ってからは、伸びが鈍っている。観光庁の2次速報によると、1-3月期は2兆3,373億円で前年同期比2.5%増、4-6月期は2兆5,125億円で0.3%増だった。上半期を合わせると4兆8,498億円で、前年同期の4兆7,846億円から1.4%の増加にとどまる(編集部算出)。

基本計画が定めているのは2030年の到達目標で、毎年の伸び率の目標ではない。年の伸び率と上半期の前年同期比は単純には比べられないが、2025年の16.4%が9.7%を上回ったのに対し、2026年上半期の1.4%はこれを下回っている。7-9月期の1次速報は、2026年10月21日に公表される予定だ。

2019年まで右肩上がり、コロナ禍で激減

観光庁の公表値で長い推移を見ると、訪日消費は2011年の8,135億円から2019年の4兆8,135億円まで、ほぼ一本調子で増えた。2014年に2兆円、2015年に3兆円を超えている。

2025年は2019年の約2倍
訪日外国人旅行消費額の推移(2011〜2025年)
訪日外国人旅行消費額の推移 訪日外国人旅行消費額は2011年の8,135億円から2019年の4兆8,135億円まで増え、コロナ禍の2020年と2021年は試算値で7,446億円と1,208億円に落ち込んだ。2023年に5兆3,065億円と2019年を上回り、2025年は9兆4,549億円となった。 調査結果 試算値 0.8兆円 4.8兆円 0.1兆円 9.5兆円 2011 2015 2019 2025年
(注:2017年以前は空港の旅客が中心の調査で、2018年からクルーズ客の調査結果を反映している。2020〜2022年は試算値。2024年4-6月期に調査名が変わったが、調査項目や推計方法は変えていない)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査」(2025年暦年確報、2022年暦年、2021年試算値の各資料)をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
年訪日外国人旅行消費額(億円)値の種別
2011年8,135調査結果
2012年10,846調査結果
2013年14,167調査結果
2014年20,278調査結果
2015年34,771調査結果
2016年37,476調査結果
2017年44,162調査結果
2018年45,189調査結果
2019年48,135調査結果
2020年7,446試算値
2021年1,208試算値
2022年8,987試算値
2023年53,065調査結果
2024年81,257調査結果
2025年94,549調査結果

観光庁「インバウンド消費動向調査」(旧「訪日外国人消費動向調査」)の公表値による。2011〜2021年は「2021年の訪日外国人旅行消費額(試算値)」、2022年は「2022年暦年 全国調査結果(試算値)の概要」、2023〜2025年は「2025年暦年の調査結果(確報)の概要」の図表7。

流れを断ち切ったのが新型コロナウイルス感染症だ。観光庁は2020年4-6月期から2021年7-9月期まですべての調査を中止し、2020年は7,446億円、2021年は1,208億円という試算値を公表した。2021年の試算値1,208億円は、2019年の約40分の1にあたる(編集部算出)。

その後は2022年の試算値8,987億円を経て、2023年に5兆3,065億円と2019年を上回った。2011年から2025年までの14年で見ると、約12倍に増えている(編集部算出)。

推移を読むときは、そのまま比べられない年があることに注意したい。観光庁は、2017年までは空港の旅客が中心の調査で、2018年からクルーズ客の調査結果も反映したため、2018年以降と2017年以前の比較には留意が必要だとしている。2020〜2022年は、いずれも試算値である。

調査名は、2024年4-6月期に「訪日外国人消費動向調査」から「インバウンド消費動向調査」に変わった。観光庁によると調査項目や推計方法は変えていないため、それ以前の年とも比べられる。

倍増の中身、単価の伸びが人数を上回る

消費額は、旅行者数と1人当たり旅行支出の掛け算で推計される。2019年と2025年の一般客で、この2つを比べてみる。

観光庁の2025年報告書によると、一般客の人数は2,985万5,742人から4,113万5,081人に増えた。1人当たり旅行支出は、15万8,531円から22万8,782円に上がった。人数は1.38倍、単価は1.44倍で、掛け合わせると一般客の消費額は4兆7,331億円から9兆4,110億円へ1.99倍になる。

倍増は人数×単価の掛け算
一般客の2019年→2025年の変化
人数
1.38倍
2,986万→4,114万人
×
1人当たり
1.44倍
15.9万→22.9万円
=
消費額
1.99倍
4.7兆→9.4兆円
(注:一般客=クルーズ客を除く訪日外国人。倍率は編集部算出)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査」「2025年報告書」図表2-5をもとに編集部作成

6年間の倍増には、人数の伸び(1.38倍)より、1人当たり支出の伸び(1.44倍)のほうがやや大きく効いている。

単価が上がった理由について、基本計画は「円安・物価上昇等の影響や、様々な国や地域からの訪日外国人が増え、訪日市場が多様化したことによる消費動向の変化などが考えられる」と書く。物価や為替の影響と、どの国・地域から来るかの変化が、ともに挙げられている。

一般客の1人当たり旅行支出は、2015年の17.6万円から、2016〜2019年は15万円台で推移していた。コロナ禍後は2023年に21.3万円、2024年に22.7万円、2025年に22.9万円と、一段高い水準に移っている。

宿泊と飲食に厚くなった使い道

観光庁の2019年と2025年の確報で費目別に見ると、首位が入れ替わっている。

2019年に最も大きかったのは買物代で、1兆6,690億円と全体の34.7%を占めた。宿泊費は1兆4,132億円で29.4%だった。2025年は宿泊費が3兆4,578億円、36.6%と最大になり、買物代は2兆5,541億円、27.0%に下がった。

2025年のそのほかの費目は、飲食費が2兆688億円で21.9%、交通費が9,449億円で10.0%、娯楽等サービス費が4,236億円で4.5%である。

宿泊の比重が上がり買物は下がる
訪日外国人旅行消費額の費目別構成比
訪日外国人旅行消費額の費目別構成比(2019年・2025年) 2019年は買物代が34.7%で最大、宿泊費29.4%、飲食費21.6%だった。2025年は宿泊費が36.6%で最大となり、買物代は27.0%、飲食費21.9%だった。 宿泊費 飲食費 交通費 娯楽等サービス費 買物代 2019年 29.4% 21.6% 34.7% 2025年 36.6% 21.9% 27.0%
(注:交通費は2019年10.4%・2025年10.0%、娯楽等サービス費は4.0%・4.5%。「その他」(2019年22億円・2025年58億円)は図から省いた。2019年・2025年とも確報値)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査」(2019年暦年確報、2025年暦年確報の概要)をもとに編集部作成
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費目2019年(億円)構成比2025年(億円)構成比
宿泊費14,13229.4%34,57836.6%
飲食費10,39721.6%20,68821.9%
交通費4,98610.4%9,44910.0%
娯楽等サービス費1,9084.0%4,2364.5%
買物代16,69034.7%25,54127.0%
その他220.0%580.1%
合計48,135100%94,549100%

観光庁「インバウンド消費動向調査」2019年暦年確報(別表・図表2)と2025年暦年確報の概要(図表2・図表3)による。構成比は観光庁の公表値で、四捨五入のため合計は100%にならない場合がある。

金額で比べると、2019年から2025年に宿泊費は2.45倍、娯楽等サービス費は2.22倍、飲食費は1.99倍になった。買物代は1.53倍で、金額は増えたものの、ほかの費目の伸びに追いつかず構成比が下がった(編集部算出)。宿泊費の2.45倍は、一般客の人数1.38倍と1人当たり宿泊費1.78倍の掛け算にほぼ相当する。

1人当たりで見ても同じ形になる。一般客1人当たりの宿泊費は2019年の4万7,336円から2025年は8万4,057円になり、買物代の6万1,136円を上回った。宿泊費と飲食費を合わせた構成比は、2019年の51.0%から2025年は58.5%に上がった(編集部算出)。

中国の比重が下がり、市場は分散

観光庁の2025年の確報によると、国・地域別の上位5つは中国、台湾、米国、韓国、香港だった。中国が2兆58億円で構成比21.2%、台湾が1兆2,033億円で12.7%、米国が1兆1,186億円で11.8%である。韓国は9,906億円で10.5%、香港は5,614億円で5.9%となり、5つで全体の62.2%を占める。

上位5市場で6割強を占める
国・地域別の訪日外国人旅行消費額(2025年)
国・地域別の訪日外国人旅行消費額 上位10(2025年) 2025年の訪日外国人旅行消費額は中国が2兆58億円で最も多く、台湾1兆2,033億円、米国1兆1,186億円、韓国9,906億円、香港5,614億円が続いた。6位以下はオーストラリア、タイ、シンガポール、カナダ、英国。 中国 20,058億円 台湾 12,033億円 米国 11,186億円 韓国 9,906億円 香港 5,614億円 オーストラリア 4,067億円 タイ 2,527億円 シンガポール 2,308億円 カナダ 2,202億円 英国 2,076億円
(注:濃い色は上位5市場。確報値。11位以下の国・地域の合計は2兆2,572億円(編集部算出))
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査」「2025年暦年の調査結果(確報)の概要」をもとに編集部作成
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国・地域消費額(億円)構成比
中国20,05821.2%
台湾12,03312.7%
米国11,18611.8%
韓国9,90610.5%
香港5,6145.9%
オーストラリア4,0674.3%
タイ2,5272.7%
シンガポール2,3082.4%
カナダ2,2022.3%
英国2,0762.2%
上記10市場以外の国・地域(編集部算出)22,57223.9%
全国籍・地域94,549100%

観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年暦年確報の概要(図表1・図表3)による。クルーズ客を含む総額。「上記10市場以外」は全国籍・地域の総額から10市場を差し引いた値で、観光庁の区分「その他」(9,534億円)を含む。

2019年の確報では、中国だけで1兆7,704億円、構成比36.8%に達し、上位5つの合計は71.1%だった。6年で中国の比重は4割弱から2割強に下がり、消費額を生む市場が広がった。2025年は前年比でドイツ57.7%増、ベトナム49.6%増、インド39.8%増など規模の小さい市場が伸びた一方、上位5市場の香港は15.0%減だった。

人数と単価の組み合わせは、国・地域によって大きく違う。2025年の一般客の人数は韓国が942万人で最も多いが、1人当たり旅行支出は10万5,058円と全体平均の半分に届かない。平均泊数も4.0泊と短い。

一方、1人当たり旅行支出が高いのはドイツ39万2,251円、英国39万1,320円、オーストラリア38万6,512円の順だ。英国は人数が53万人で韓国の約18分の1だが、1人当たりの支出は約3.7倍になる(編集部算出)。平均泊数は英国14.4泊、ドイツ18.0泊と長い。

人数の市場と単価の市場
一般客の人数と1人当たり旅行支出(2025年・消費額上位10)
国・地域別の一般客数と1人当たり旅行支出(2025年) 韓国は一般客数が約942万人で最も多いが、1人当たり旅行支出は約10.5万円と平均22.9万円の半分に届かない。英国・オーストラリア・カナダ・シンガポールは人数が少ないが1人当たり32万〜39万円と高い。米国は人数約329万人・1人当たり約34.0万円。中国は人数約801万人・1人当たり約24.7万円。 0万 10万 20万 30万 40万 円 平均22.9万円 50万 100万 300万 1000万人 中国 台湾 米国 韓国 香港 オーストラリア タイ シンガポール カナダ 英国
(注:横軸の人数は対数目盛り。一般客=クルーズ客を除く訪日外国人。平均は一般客全体の1人当たり旅行支出)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査」「2025年暦年の調査結果(確報)の概要」図表4をもとに編集部作成
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国・地域一般客数(人)1人当たり旅行支出(円)
中国8,005,441246,550
台湾6,484,286184,413
米国3,291,885339,708
韓国9,420,144105,058
香港2,481,393226,011
オーストラリア1,051,815386,512
タイ1,230,929205,246
シンガポール720,879319,901
カナダ682,279322,489
英国530,238391,320
一般客全体41,135,081228,782

観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年暦年確報の概要(図表4)による。旅行者数の出典は、同資料の注によるとJNTO「訪日外客数」、法務省「出入国管理統計」船舶観光上陸許可数。

この図の横軸は、目盛りが10倍ごとに等間隔になる対数目盛りで、人数の大きく違う市場を1枚に並べている。右下に人数の多い市場、左上に単価の高い市場が集まる。

2026年は、中国の比重がさらに下がっている。日本政府観光局(JNTO)の推計値によると、2026年1〜8月の中国からの訪日客は290万4,600人で、前年同期より56.7%少ない。JNTOは、中国政府から日本への渡航を避けるよう注意喚起があったと説明している。

消費額では、観光庁の2次速報によると、2026年4-6月期の中国は2,635億円で前年同期比48.0%減、構成比は10.5%だった。前年同期に首位だった中国に替わり、米国が3,860億円で首位に立った。客数はJNTO、消費額は観光庁の統計で、対象の期間も異なる。

同じ4-6月期の中国の一般客は、人数が52.5%減った一方、1人当たり旅行支出は27万1,093円で11.2%増えた。4-6月期に限れば、全体の費目構成でも買物代は27.1%と、前年同期の26.1%を上回っている。

あわせて読む 2026年上半期に、中国の減少を費目別にどの市場が埋めたかは、こちらで分解している。

歩行者天国の東京・銀座中央通りを行き交う大勢の人。交差点に「銀座三丁目」の標識が立ち、沿道に百貨店やブランド店のビルが並ぶ 訪日消費4兆8,469億円で横ばい 減少したのは買物代

消費はどこで使われているか

使われた場所も見ておきたい。観光庁は地域調査をもとに、都道府県別の旅行消費額も集計している。2025年は三大都市圏(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫)が6兆5,081億円、それ以外の地方部が2兆1,338億円だった。都道府県別に集計した消費額の4分の3が、三大都市圏で使われている。

この集計はクルーズ客を除く一般客が対象で、都道府県をまたぐ交通費や訪問地が分からない支出を含まない。そのため合計は8兆6,419億円で、全国の9兆4,549億円とは一致しない(編集部算出)。三大都市圏の割合75.3%は、この合計に対する値である。

地方部の割合は2018年の27.5%、2019年の26.7%から2024年は24.1%に下がり、2025年は24.7%とやや戻した。金額では、地方部は2019年の1兆1,661億円から2025年は2兆1,338億円と1.83倍に増えている(編集部算出)。

都道府県別では東京都が3兆2,867億円で最も多く、大阪府1兆6,688億円、京都府6,802億円、福岡県4,728億円、北海道4,512億円が続く。地方部の消費額の4割強は、北海道と福岡県の2道県が占める(編集部算出)。

この統計を読むときの4つの注意

1つ目は、一般客とクルーズ客の区別だ。クルーズ客は船舶観光上陸の許可を受けた人で、2025年は154万8,756人、1人当たり2万8,357円、消費額は439億円だった。1人当たり旅行支出の22万8,782円は一般客の値で、クルーズ客を含めた平均ではない。

2つ目は、消費額に含まれないものだ。日本と出発国の間の航空運賃は含まれない。パッケージツアーの参加費は、日本国内の宿泊や飲食などに回った分だけを推計して加算している。日本に住んでいる外国人の消費も対象外で、業務目的や親族・知人訪問で来た外国人は含む。

3つ目は、速報と確報の違いだ。四半期の数字は1次速報、2次速報と順に公表され、年の値は翌年1月に速報、3月末に確報が出る。2026年4-6月期は、1次速報の2兆5,096億円が2次速報で2兆5,125億円に改定された。前の記事や資料にある数字が、いまも最新とは限らない。

4つ目は、国・地域の区分の変更だ。観光庁は2026年の調査から、メキシコ、北欧、中東を独立した区分として集計している。2025年以前はこれらが「その他」に含まれるため、「その他」の前年比はそのまま比べられない。

あわせて読む 訪日客の数や主要市場の特徴は、インバウンドの全体像のガイドで整理している。

雷門・浅草寺周辺を行き交う観光客でにぎわう情景。訪日インバウンドの象徴的なイメージ インバウンドとは 9.5兆円市場を3つの数字で読む
観光ビジネスの視点

訪日客の1人当たり旅行支出は、2019年から2025年に1.44倍になった。この数字を自社の客単価の伸びと比べたくなるが、費目ごとに見ると伸び方はまったく違う。一般客1人当たりの宿泊費は1.78倍、飲食費は1.45倍、買物代は1.15倍だった(編集部算出)。

市場の伸びを自社に重ねるなら、全体の1.44倍ではなく、自社が売っている費目の伸びを目安にしたい。自社の宿泊客単価が1.44倍以上に伸びていても、1人当たり宿泊費の1.78倍には届いていない可能性がある。ただし1人当たりの額は滞在全体の合計で、泊数が延びれば上がり、買わなかった人も含めた平均だ。宿泊費には長期滞在者の家賃なども入る。自社の客単価と同じ指標ではないため、伸び方の目安として使うのが限度だ。

よくある質問

1人当たり旅行支出は、自社の客単価とそのまま比べてよいか。

そのままでは比べにくい。1人当たり旅行支出は、日本滞在中の宿泊・飲食・交通・買物などをすべて足した額だ。平均泊数も、2025年の一般客で韓国4.0泊、英国14.4泊、ドイツ18.0泊と、国・地域によって大きく違う。市場の傾向を見るなら費目別・国籍別の表が参考になるが、それも購入しなかった人を含む平均で、自社の客単価とは定義が違う。

国際収支統計の「旅行」の受取とは何が違うか。

作成する機関が異なる別の統計だ。財務省と日本銀行が公表する国際収支統計では、2025年の旅行の受取は9兆2,847億円(速報)だった。観光庁の訪日外国人旅行消費額9兆4,549億円と近い値だが、別々に推計・公表されている数字なので、足したり差を取ったりしない。

速報と確報のどちらを使えばよいか。

年の数字を引くなら、3月末に出る確報を使う。四半期の数字は1次速報から2次速報で改定されることがあるため、引用するときは「2次速報」などの段階と公表日を添えておくと、後から確かめやすい。

自分の都道府県の訪日消費額はどこで見られるか。

観光庁のインバウンド消費動向調査のページに、都道府県別の集計表が参考として掲載されている。四半期と暦年の表がある。値はクルーズ客を除く一般客のもので、都道府県をまたぐ交通費を含まないため、県の値を足しても全国の総額にはならない。

出典

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