訪日リピーターとは 4,000万人目標と統計で見る実像

夕暮れの空にそびえる京都・八坂の塔と、手前に並ぶ町家
Photo: Casey Horner / Unsplash
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訪日客の再訪を事業に生かしたい宿泊・観光施設や自治体に向けて、訪日リピーターの実像を観光庁の統計で整理する。日本に来るのが2回目以上の旅行者は、2025年に訪日客の約65%を占めた。政府は2030年に、その数を4,000万人に増やす目標を掲げる。

観光庁の統計を全体の平均で見ると、1回の旅行で使う金額は初めての旅行者の方が多い。ところが同じ国・地域どうしで比べると、多くの市場でリピーターの方が多く使っている。リピーターの消費を見るときは、全体の平均だけでなく国・地域ごとの違いを見る必要がある。

本記事では、定義と政府の数え方、市場ごとの違い、消費と訪問先の特徴を確かめる。そのうえで、事業者がLTV(顧客生涯価値)で考えるときの見方を整理する。

この記事のポイント

  • 訪日リピーターは来訪2回目以上の旅行者で、2025年は訪日客の約65%にあたる2,768万人だった。
  • 政府は2030年に、訪日客6,000万人の目標の3分の2にあたる4,000万人をリピーターにする目標を掲げる。
  • 1回の旅行の消費は全体の平均では初めての旅行者が上だが、同じ国・地域で比べると20市場中16市場でリピーターが上回る。
  • LTVは1回の消費・来訪の頻度・続く年数で考え、金額は自社の顧客データで追う必要がある。
目次

訪日リピーターとは「2回目以上」の旅行者

訪日リピーターとは、日本に来るのが2回目以上の外国人旅行者のことだ。観光庁のインバウンド消費動向調査は、出国する旅行者に「日本への来訪回数」を聞いている。答えは1回目から20回以上までの区分だ。観光・レジャー目的の旅行者を対象にした観光庁の2019年の分析は、2回目以上を「訪日リピーター」と呼ぶ。

来訪が10回以上の旅行者は、同じ分析で「訪日ヘビーリピーター」と呼ばれる。2025年の調査では、香港からの旅行者の約4割が10回目以上だった。

政府の計画の概要資料が示す2025年のリピーター数は、2,768万人だ。計画の本文には、1月の速報値として2,761万人と書かれている。2025年の訪日客4,268万人に、観光庁の調査で2回目以上だった64.85%を掛けても、概算で2,768万人になる(編集部算出)。商用なども含めた全目的の旅行者の数である。

全目的の旅行者で見た2回目以上の割合は、コロナ前の2019年が64.2%、2024年が65.7%、2025年が64.9%と、いずれも6割台半ばだった。

政府は2030年に4,000万人を目指す

第5次観光立国推進基本計画は、2030年までの目標の一つに「訪日外国人旅行者に占めるリピーター数」を置き、4,000万人とした。計画の概要資料によると、訪日客6,000万人の目標の3分の2にあたる数だ。

計画は、リピーターを重視する理由をこう書く。「リピーターは、日本文化や習慣への理解が深い傾向にあり、適切なマナーでの滞在も期待できる」。さらに、地方部などまだ訪れていない観光地への訪問意欲が高く、地方での消費拡大にも役立つ旅行者だとしている。

リピーターの目標は今回が初めてではない。2016年の「明日の日本を支える観光ビジョン」は、2030年に3,600万人を掲げていた。第5次計画は、これを4,000万人に引き上げた。

目標までの距離を計算すると、2025年の2,768万人から5年で1.45倍、年7.6%ずつの増加が要る。割合が2025年の64.9%のままなら、訪日客は約6,170万人必要になり、6,000万人の目標を上回る。訪日客が6,000万人ちょうどなら、割合を66.7%まで上げる必要がある(いずれも編集部算出)。4,000万人は、訪日客数の目標と割合の両方の動きで決まる。

人数の側には逆風もある。日本政府観光局(JNTO)の推計値によると、2026年1〜8月の訪日客は2,762万6,300人で、前年同期より2.7%少ない。中国は1〜8月の累計で56.7%減、8月単月では59.0%減だった。JNTOは9月16日の8月推計値の発表で、中国政府から日本への渡航を避けるよう注意喚起があったと説明している。

割合の側では、2026年4〜6月期の2次速報で2回目以上が約67%だった。ただし、これは1つの四半期の速報で、暦年の数字とは単純に比べられない。

あわせて読む 第5次観光立国推進基本計画の目標と全体像は、こちらで解説している。

日本の象徴・富士山。観光立国推進基本計画の解説記事のイメージ 観光立国推進基本計画とは?訪日6000万人・消費額15兆円に向けた国の観光戦略

韓国・台湾・香港は8割超がリピーター

リピーターの多さは、国・地域によって大きく違う。2025年の調査で、全目的の旅行者のうち来訪が1回目だった人の割合は、香港が9.4%、台湾が12.1%、韓国が16.3%と低い。韓国・台湾・香港からの旅行者は、8割超がリピーターだ。

一方で、米国は63.2%、英国は62.1%、フランスは66.1%が1回目だった。スペインは82.2%と最も高い。欧米豪からの旅行者は、まだ初めて日本を訪れる人が中心になる。

中国は44.0%が1回目で、リピーターは半数を超える程度だ。タイ(28.8%)やシンガポール(24.7%)は、7割以上がリピーターだった。

あわせて読む 年齢構成や入国空港など、リピーターの特徴を民間のレポートで掘り下げた記事はこちら。

紅葉に包まれた山腹に張り出す清水寺の舞台(京都市) EYレポートで読む訪日インバウンドの実像 人数最高の裏にある6つのポイント

リピーターは本当にお金を使うのか

観光庁の2025年の調査で、観光・レジャー目的の旅行者が1回の旅行で使った金額を比べる。パッケージツアー代金に含まれる国内での支出も含めると、1回目は26万8,672円、2回目以降は19万9,816円だった。全体の平均では、初めての旅行者の方が約6.9万円多い(編集部算出)。

ところが同じ国・地域どうしで比べると、結果は逆になる。調査対象の20市場のうち16市場で、リピーターの方が1回の旅行で多く使っている。アジアは11市場すべてで、欧米豪とロシアの9市場では5市場でリピーターが上回った。

全体の平均では初めての旅行者が多く使うのに、同じ国・地域どうしで比べるとリピーターが多く使う市場が大半だ。例えば台湾は18.6万円で1回目より3.5万円多く、香港は23.1万円で4.5万円多い。インドやロシア、スペイン、イタリアのリピーターは回答数が少ないため、市場ごとの差は幅をもって見る必要がある。

全体の平均だけが逆になる理由は、観光庁自身が分析している。2024年の確報を使った観光・レジャー目的の旅行者の分析では、1回の消費は初回が最も高く、2〜5回目でいったん下がり、6回目以上で再び上がる。

観光庁はその理由を、2回目以降の旅行者では「欧米豪と比較し消費単価の低い傾向にあるアジア圏の比率が高まること」と説明している。なお、比べているのは1回の旅行あたりの金額で、泊数の違いも含んでいる。

多くの市場でリピーターが上
観光・レジャー目的の1回の旅行の消費 2回目以降と1回目の差(万円・2025年)
国・地域別 1回の旅行の消費の差(2回目以降−1回目) 観光・レジャー目的の旅行者が1回の旅行で使った金額の、2回目以降と1回目の差(2025年)。全体の平均では1回目の方が6.9万円多いが、20市場中16市場で2回目以降が上回り、アジアの11市場はすべて上回る(シンガポール+7.3万円、香港+4.5万円など)。欧米豪はドイツ・カナダ・スペイン・米国で1回目が上回る。 全体 −6.9 アジア11市場 シンガポール +7.3 マレーシア +4.9 香港 +4.5 タイ +4.5 ベトナム +4.5 台湾 +3.5 中国 +3.2 フィリピン +2.9 インド +2.9 インドネシア +1.9 韓国 +0.6 欧米豪・ロシア 豪州 +4.2 フランス +1.8 イタリア +1.7 英国 +1.3 ロシア +0.2 米国 −1.8 スペイン −2.8 カナダ −2.8 ドイツ −3.3
(注:観光・レジャー目的の旅行者)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年 集計表」をもとに編集部作成
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国・地域1回目(円)2回目以降(円)差(万円)回答数(1回目/2回目以降)
全体268,672199,816−6.99,692/15,052
シンガポール271,908344,429+7.397/352
マレーシア207,616256,713+4.9221/316
香港186,512231,262+4.5317/3,180
タイ173,267217,976+4.5213/568
ベトナム176,501221,083+4.5444/204
台湾150,690186,084+3.5247/2,028
中国219,963251,950+3.22,124/2,717
フィリピン181,952211,370+2.9398/739
インド272,756302,058+2.9213/43
インドネシア188,728207,261+1.9335/355
韓国97,112103,005+0.6489/2,551
豪州386,390428,405+4.2437/326
フランス366,874384,910+1.8297/112
イタリア346,470363,115+1.7262/63
英国407,326420,298+1.3303/139
ロシア317,259319,660+0.2137/51
米国355,736337,291−1.81,602/775
スペイン375,174347,557−2.8346/58
カナダ338,866310,883−2.8303/154
ドイツ425,356392,645−3.3261/106

観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年 集計表」参考9(1人1回当たり旅行消費単価、パッケージツアー参加費内訳含む、観光・レジャー目的)による。1回目は「日本への来訪回数」の1回目、2回目以降は「前回の日本来訪時期」の2回目以降の小計。回答数はウェイトバック前の単純な回収数で、インド・ロシア・スペイン・イタリアの2回目以降は回答数が少ないため幅をもって見る必要がある。1回の旅行あたりの金額で、泊数の違いを含む。

訪れた地域で初回客とリピーターの比率が違う

訪れた場所によって、初めての旅行者とリピーターの比率は違う。観光庁の2025年の地域別の調査(全目的)で、各地を訪れた人のうち来訪1回目の人の割合を見る。東京都は46.8%、京都府は57.2%、奈良県は65.6%だった。

地方運輸局の区分で見ると、九州を訪れた人では16.7%、北海道では17.5%、東北では19.4%にとどまる。九州や北海道を訪れる旅行者の8割強はリピーターだ。一方、中国地方は52.4%で、関東の46.2%より高い。広島県は63.4%、山梨県は60.3%と、地方にも初めての客が多い県がある。

これは各地を訪れた人の内訳で、リピーターの何割が九州を訪れたかを示す数字ではない。訪問地には出入国した空港・港の所在地も含まれ、どの国・地域から来た人が多いかの違いも含んでいる。

九州・北海道は8割がリピーター
各地域を訪れた旅行者の来訪回数(2025年)
地域別 訪れた旅行者に占める来訪2回目以上の割合 各地域を訪れた旅行者のうち、来訪2回目以上の人の割合(2025年)。九州83.3%、北海道82.5%、東北80.6%と8割前後に達する一方、近畿51.1%、関東53.8%、中国地方47.6%は5割前後にとどまる。 2回目以上 1回目 九州 83.3% 北海道 82.5% 東北 80.6% 沖縄 79.0% 四国 76.1% 中部 60.8% 北陸信越 60.2% 関東 53.8% 近畿 51.1% 中国地方 47.6%
(注:地方運輸局の区分。中国地方は鳥取〜山口の5県)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年 集計表」をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
地域1回目(%)2回目以上(%)回答数
九州16.783.39,041
北海道17.582.55,641
東北19.480.61,968
沖縄21.079.02,461
四国23.976.11,396
中部39.260.813,794
北陸信越39.860.26,412
関東46.253.855,330
近畿48.951.147,349
中国地方52.447.65,312

観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年 集計表」表1-3(訪問地別・地域調査【B1】)の「日本への来訪回数」による。2回目以上は100%から1回目を引いた値。地域は地方運輸局の区分(関東は山梨県を、中部は福井県を含む)。訪問地には出入国した空港・港の所在地を含む。図1と違い、全目的の旅行者が対象。各地域の数字は、訪れた旅行者の国・地域の構成の違いを含む。

計画は、リピーターは地方部への訪問意欲が高いとする。行動のデータとしては、観光庁が2024年の確報をもとに観光・レジャー目的の旅行者を分析した資料がある。対象も集計の方法も上の調査とは異なる。

この分析では、三大都市圏に行かず地方部(三大都市圏以外)だけを訪れた人の割合が、1回目の8.8%から、2〜5回目で27.0%、6回目以上で34.1%に高まる。地方部を含む訪問で見ると、1回目が50.3%、6回目以上が59.1%だった(編集部算出)。回数を重ねるほど、地方部だけを訪れる旅行者が増える。

ただし市場によって違う。観光庁は中国について「訪日回数の増加が必ずしも地方部訪問の拡大につながっていないことが分かる」とし、米国は回数にかかわらず三大都市圏中心の訪問の傾向が強いとしている。また、これは初めての旅行者とリピーターを比べたもので、同じ人の変化を追った結果ではない。

LTVで考えるリピーター化

LTV(顧客生涯価値)は、1人の客が取引を続ける期間全体でもたらす価値を指すマーケティングの用語だ。観光に置き換えると、「1回の旅行での消費」「来訪の頻度」「来訪が続く年数」の3つで考えられる。本記事で使った観光庁の調査は同じ人を追ったものではなく、1人のLTVを直接示すものではない。

観光庁の統計には、1回の消費と再訪の間隔の手がかりがある。1回の消費は前の節で見たとおりだ。再訪の間隔については、2025年の調査で、商用客も含む全目的の旅行者のうち前回の来訪が「1年以内」だった人が38.7%いた。

リピーターに限ると、約6割が前回の訪日から1年以内に来ていた計算になる(編集部算出)。ただし、これは直前の来訪の時期で、この先どのくらいの頻度で来るかを示す数字ではない。

前回の来訪が1年以内の人は、香港で65.2%、台湾で55.7%、韓国で50.2%と5割を超える。再び訪れたいかという質問には、77.9%が「必ず来たい」、19.2%が「来たい」と答えた。ただし、これは意向であって、実際に再び来たかどうかを示す数字ではない。

事業者が使うときは、2つの違いに注意が要る。観光庁の1回の消費は日本での旅行全体の支出で、個々の宿や施設の売上とは別物だ。また、日本に何度も来ている訪日リピーターでも、自社には初めての客であることがある。

LTVを金額でつかむには、事業者が自社の顧客データで来訪回数と再訪の間隔、自社での支出を追う必要がある。売上より利益で見て、再訪を促す費用と比べると、施策の判断に使いやすい。

国は再訪の喚起と初訪からの地方誘客

第5次計画は、リピーターを増やす施策として「アジア市場等のリピーター層の再訪日意欲喚起」を掲げる。訪日経験者が多い東アジアと、リピーターが増えている東南アジアを中心に、地方の魅力を発信し、地方への旅行商品づくりを促す。

欧米豪や中東の市場では、まだ日本に来たことのない層に向けて、宣伝に地方のコンテンツを多く盛り込む。初めての訪日から地方を訪れるよう、関心を高める狙いだ。

観光庁の観光DX推進のあり方に関する検討会も、2023年3月の最終取りまとめで、DXを進める意義に旅行者の消費拡大と「再来訪促進」を挙げた。顧客データを地域や事業者で生かす取り組みは、リピーター化の土台にもなる。

あわせて読む 訪日市場の規模や主要市場の特徴は、インバウンドの全体像のガイドで整理している。

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観光ビジネスの視点

「初めての客の方がお金を使う」は、全体の平均だけを見たときの姿だ。観光・レジャー目的では、全体で初めての旅行者が約6.9万円多いのに、同じ国・地域で比べると20市場中16市場でリピーターが上回る。

自社の客を国・地域で分けずに初回とリピートの売上を比べると、この逆転に気づけない。宿や観光施設がリピーター施策の効き目を測るときは、まず客を国・地域別に分けて比べることだ。

よくある質問

訪日客のリピーター率は何%か。

観光庁の2025年の調査では、来訪が2回目以上の人の割合は64.9%だった。2019年は64.2%、2024年は65.7%で、6割台半ばが続いている。

政府のリピーター目標は達成できそうか。

目標は2030年に4,000万人で、2025年の実績は2,768万人だ。達成には年7.6%ずつの増加が要る。割合が2025年のままなら訪日客は約6,170万人必要で、訪日客が6,000万人なら割合を66.7%まで上げる必要がある(いずれも編集部算出)。

リピーターは初めての旅行者よりお金を使うのか。

観光・レジャー目的の旅行者の全体の平均では、初めての旅行者の方が1回の消費が多い。ただし同じ国・地域で比べると、20市場中16市場でリピーターの方が多い。アジアは11市場すべてでリピーターが上回る。

観光でLTVはどう測ればよいか。

1回の消費、来訪の頻度、来訪が続く年数の3つで考える。観光庁の調査は同じ人を追ったものではなく、1人のLTVを直接示さない。金額でつかむには、自社の会員・予約・決済のデータで来訪回数と自社での支出を追う必要がある。

出典

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