サイクルツーリズムとは ナショナルサイクルルート12本と「受け入れ」の仕組み

しまなみ海道に架かる吊り橋(愛媛県)
Photo: Valentin Klopfenstein / Unsplash
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2026年7月、国が「日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングルート」として指定するナショナルサイクルルート(NCR)が、6本から12本に倍増した。しまなみジャパンなどの発表によると、しまなみ海道では2025年度のレンタサイクルの貸出が17万3,279台と過去最多になった。

NCRの指定はゴールではなく、走れる・泊まれる・運べる状態を保ち続ける約束である。必須項目は指定時にすべて満たすのが基本とされるが、新しい6ルートは一部の項目を改善方針つきで通過し、指定は取り消されることもある。

本記事では、サイクルツーリズムの定義とNCRの仕組みを押さえたうえで、しまなみ海道・ビワイチ・つくば霞ヶ浦りんりんロードの3つの事例から、指定の後に何が問われるかを一次資料で整理する。

この記事のポイント

  • サイクルツーリズムは、自転車で景色や地域の観光資源を楽しみながら移動すること自体を目的にする旅である。
  • NCRの指定要件は必須28・推奨27項目で、受入環境は推奨の約6割にあたる16項目を含む最大の観点である。
  • 2026年に指定された6ルートは、必須28項目のうち4〜9項目を改善方針つきの判定で通過した。
  • しまなみは海外利用で貸出が過去最多、ビワイチは人数が減った年に経済効果が25%増、りんりんは利用者が8年で2.7倍になった。
目次

旅の目的になる自転車と「観光の足」

国の第3次自転車活用推進計画(2026年5月閣議決定)は、サイクルツーリズムを「自転車で沿道の景色や地域の観光資源を楽しみながら移動することを目的とする」ものと説明している。自転車での移動そのものを楽しむことが目的に含まれる点が、サイクルツーリズムの特徴である。

計画の根拠は、2017年5月に施行された自転車活用推進法である。第3次計画は5つの目標の1つに「サイクルツーリズム等の推進による観光地域づくりや地域の活性化」を掲げた。あわせて、観光地で駅や空港から先を移動する手段(二次交通)や、地域内を巡る手段として自転車を使うことも進めるとしている。

観光の側の計画も同じ整理をしている。2026年3月に閣議決定された観光立国推進基本計画は、「サイクルツーリズムの推進」の項を二本立てで書いた。

1つは、走行環境や、自転車を載せて乗れる列車(サイクルトレイン)などの受け入れ環境を整え、訪日客に通行ルールを発信して「自転車に乗ることそのものを楽しむサイクルツーリズム」を広げること。もう1つは、シェアサイクルなどを使った「観光の足としての自転車の利用」を広げることだ。

国の計画は、乗ること自体を楽しむサイクルツーリズムと、旅先の移動手段としての自転車利用を並べて推している。本記事が主に扱うのは前者で、その看板となる国の制度がNCRである。

あわせて読む 体験型観光の全体像と、サイクルツーリズムを含むテーマの位置づけは上位のガイドで整理している。

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6本から12本へ 5年ぶりの追加指定

国土交通省の説明では、NCRは優れた観光資源を走行環境や休憩・宿泊の機能、情報発信などと結びつけ、新たな観光価値をつくって地域の創生を図るための制度だ。ソフトとハードの両面で一定の水準を満たすルートを国が指定し、国内外にPRする。

制度ができたのは2019年9月で、同年11月に第1次の3ルート、2021年5月に第2次の3ルートが指定された。つくば霞ヶ浦りんりんロード、ビワイチ、しまなみ海道サイクリングロードは第1次の指定である。

そこから5年あまり空いて、2026年7月23日に第3次の6ルートが指定され、NCRは12ルートになった。新たに加わったのは、ふくしま浜通りサイクルルートやフジイチなどで、一覧は次の図のとおりだ。

NCRは12ルートに倍増
全12ルートの延長・指定時期・利用者数
ルート延長指定年間利用者数
(推計)
つくば霞ヶ浦りんりんロード176km第1次(2019年)13.2万人(2024年度)
ビワイチ193km第1次(2019年)11.9万人(2024年)
しまなみ海道サイクリングロード70km第1次(2019年)33.3万人(2018年度)
トカプチ400403km第2次(2021年)推計なし
太平洋岸自転車道1,487km第2次(2021年)推計なし
富山湾岸サイクリングコース102km第2次(2021年)2.7万人(2024年度)
ふくしま浜通りサイクルルート179km第3次(2026年)-
フジイチ163km第3次(2026年)-
雪国魚沼Golden Cycle Route193km第3次(2026年)-
いしかわ里山里海サイクリングルート517km第3次(2026年)-
鳥取うみなみロード152km第3次(2026年)-
あまいち152km第3次(2026年)-
延長
指定
年間利用者数(推計)
つくば霞ヶ浦りんりんロード
176km
第1次
2019年
13.2万人
(2024年度)
ビワイチ
193km
第1次
2019年
11.9万人
(2024年)
しまなみ海道サイクリングロード
70km
第1次
2019年
33.3万人
(2018年度)
トカプチ400
403km
第2次
2021年
推計なし
太平洋岸自転車道
1,487km
第2次
2021年
推計なし
富山湾岸サイクリングコース
102km
第2次
2021年
2.7万人
(2024年度)
ふくしま浜通りサイクルルート
179km
第3次
2026年
-
フジイチ
163km
第3次
2026年
-
雪国魚沼Golden Cycle Route
193km
第3次
2026年
-
いしかわ里山里海サイクリングルート
517km
第3次
2026年
-
鳥取うみなみロード
152km
第3次
2026年
-
あまいち
152km
第3次
2026年
-
(注:-は資料作成時に指定前。年次・推計方法はルートごとに違う)
出典:国土交通省「ナショナルサイクルルート」(延長・指定)、ナショナルサイクルルート審査委員会 令和7年度第1回 資料1(利用者数)をもとに編集部作成

延長は70kmのしまなみ海道から1,487kmの太平洋岸自転車道まで、ルートによって大きく違う。指定を受けると、国や日本政府観光局(JNTO)によるプロモーションや、防災・安全交付金などによる重点的な支援を受けられる。ナショナルブランドを使った誘客も見込めるというのが国の説明だ。

推奨項目の約6割が受入環境

NCRの指定要件は、ルート設定・走行環境・受入環境・情報発信・取組体制の5つの観点で組まれている。項目は全部で必須28・推奨27だ。必須項目は指定時にすべて満たすのが基本で、推奨項目は満たしていることが望ましいものとされる。

このうち受入環境は7つの要件からなる。鉄道駅などの玄関口(ゲートウェイ)、休憩、自転車を運びながら移動できる環境、宿泊、地域の魅力、トラブル対応、緊急時のサポートである。

必須項目には、休憩できるサイクルステーションをおおむね20kmごとに置くことや、サイクリストを受け入れる宿をおおむね60kmごとに置くことがある。日本語と英語の2か国語以上で情報を出すことも必須で、ゲートウェイにはレンタサイクルや着替えの場所が求められる。

推奨項目には、サイクルトレインやサイクルバス、日英2か国語以上のガイドツアーなどが並ぶ。受入環境は必須6・推奨16の計22項目で、5つの観点の中で最も多い。必須だけで見れば走行環境の8項目のほうが多く、受入環境の重さは推奨項目に表れている。

推奨の約6割は受入環境
NCRの指定要件 5つの観点と必須・推奨の項目数
ルート設定
必須5・推奨3
延長はおおむね100km以上(島しょ部を除く)
走行環境
必須8・推奨6
路面の矢羽根型の表示などによる自転車の通行空間
受入環境
必須6・推奨16
鉄道駅などのゲートウェイ(レンタサイクル・着替え場所)、サイクルステーションおおむね20kmごと、サイクリスト向けの宿おおむね60kmごと。推奨にサイクルトレイン・サイクルバス
情報発信
必須6・推奨2
日本語と英語の2か国語以上での情報発信など
取組体制
必須3・推奨なし
質の高いサイクリング環境を維持し、さらに高める継続的な取り組み体制
出典:国土交通省「ナショナルサイクルルート」、ナショナルサイクルルート審査委員会 令和8年度第2回 資料2「指定審査の概要」をもとに編集部作成

5つ目の観点の取組体制には推奨項目がなく、必須の3項目だけがある。考え方は「質の高いサイクリング環境を維持し、更なる向上を図るための継続的な取り組み体制がある」ことだ。指定の時点で整っているだけでなく、その状態を保てる体制まで問われる。

指定は「改善方針つき」の約束

第3次指定の審査資料を見ると、新しい6ルートでも、必須28項目のすべてが「要件を満たす(○)」だったわけではない。4〜9項目は「概ね要件を満たし改善方針が示されている(△)」という判定だった。

最も多いいしかわ里山里海サイクリングルートは△が9項目、最も少ない鳥取うみなみロードでも4項目である。△は走行環境に多く、ふくしま浜通り、いしかわ里山里海、あまいちの3ルートは走行環境8項目のうち5項目が△だった。

改善方針つきが4〜9項目
第3次指定6ルート・必須28項目のうち△の数
第3次指定6ルートで改善方針つきの判定(△)となった必須項目の数(2026年) 必須28項目のうち、概ね要件を満たし改善方針が示されている(△)と判定された項目の数。いしかわ里山里海サイクリングルート9、あまいち8、ふくしま浜通りサイクルルート7、フジイチ7、雪国魚沼Golden Cycle Route6、鳥取うみなみロード4。6ルートとも△が4〜9項目ある。 いしかわ里山里海サイクリングルート 9項目 あまいち 8項目 ふくしま浜通りサイクルルート 7項目 フジイチ 7項目 雪国魚沼Golden Cycle Route 6項目 鳥取うみなみロード 4項目
(注:△は概ね要件を満たし改善方針が示されている判定)
出典:ナショナルサイクルルート審査委員会 令和8年度第2回 資料2「指定審査の概要」をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
ルート要件を満たす(○)改善方針つき(△)必須項目計
いしかわ里山里海サイクリングルート19928
あまいち20828
ふくしま浜通りサイクルルート21728
フジイチ21728
雪国魚沼Golden Cycle Route22628
鳥取うみなみロード24428

ナショナルサイクルルート審査委員会 令和8年度第2回(2026年7月16日)資料2「指定審査の概要」p2〜7の判定表。単位はいずれも項目。△は「概ね要件を満たし改善方針が示されている」。図の帯の全体は10項目を表す。

一方で、取組体制の必須3項目は6ルートとも○だった。受入環境の推奨16項目では、○は7〜14項目にとどまり、残りは△か、満たしていない判定である。指定の時点で整っていない部分は、走行環境と受け入れの推奨項目に残っている。

指定の後には国による点検(フォローアップ)が続く。国は計画期間内に1回、3〜5年ごとに点検し、要件を満たさなくなったり、水準を保つ取り組みがなされていなかったりすれば、是正を求めて改善計画を出させる。改善が見込めなければ、指定は区間ごとを含めて取り消される。

審査を分けたルートもある。事務局は2026年3月、候補7ルートのうち「わかさいくる」は満たしていない項目が1つあるとして、ほかの6ルートと分けて改めて審査する方針を示した。4月の委員会では、不足していた路面表示の整備が進めば審査を早められるかという質問が出て、事務局は早まる可能性もあると答えている。

制度そのものにも見直しが控えている。2026年3月の審査委員会では、フォローアップの頻度、候補ルートの選び方、指定要件に見直すべき点がないかといった視点の案が示され、議論は第3次指定の後に始める予定だ。区間ごとの体力レベルや危険箇所を利用者に示す方法も、同じ3月から審議している。

54%と測れていない利用者数

サイクルツーリズムの規模を全国で示す国の統計は限られる。第3次自転車活用推進計画が目標に置く指標の1つが、国内旅行で「バイク・自転車を利用した旅行者」の割合で、2025年は1.54%だった。2030年に1.78%へ引き上げることを目指す。

この指標は、年間の国内旅行者のうち旅行中にバイクか自転車を使った人の割合で、自転車だけの数字ではない。観光の足として自転車を使った人も含む。バイクと自転車を合わせても、旅行中に使う人は国内旅行者の2%に届かない。

もう1つの指標が、先進的なサイクリング環境を目指すモデルルートの数だ。官民の協議会を置いて国に登録した、複数の市町村にまたがる広域ルートを指し、計画の時点で117ルートある。2030年度に140ルートとする目標で、事務局はNCRの候補をこのモデルルートの中から選んでいる。

ルートごとの利用者数は、国の審査委員会のフォローアップ資料に年間の推計がある。りんりんロードは13.2万人(2024年度)、ビワイチは11.9万人(2024年)で、しまなみ海道は2018年度の33.3万人が最新の値になっている。

一方で、トカプチ400と太平洋岸自転車道は利用者数の推計がない。2026年3月の資料の時点で、2つのルートは指定から5年近くたっていたが、何人が走っているかを国の資料で確かめられなかった。

整備の進み方にも差がある。同じ資料の、指定基準上の通行空間の整備率(矢羽根などの路面表示による区間を含む)は、第1次の3ルートが100%なのに対し、太平洋岸自転車道は県別に千葉74%、神奈川65%、静岡73%、愛知97%、三重87%、和歌山78%だった。

訪日客の数字はさらに乏しい。観光庁のインバウンド消費動向調査には、サイクリング単独の体験項目がなく、訪日客のうち何人がサイクリングをし、いくら使ったかはこの調査からは分からない。

しまなみ海道 開通後の低迷から過去最多へ

伸びが加速したのは2013年度から

尾道(広島県)と今治(愛媛県)を結ぶしまなみ海道は、1999年5月にルートの全橋が開通した。本州四国連絡高速道路によると、新尾道大橋を除く各橋に自転車と歩行者のための専用の道があり、島内の道路を含めて全体が結ばれたのは2006年4月である。

ただ、レンタサイクルの貸出台数は開通後すぐには伸びなかった。しまなみジャパンとナビタイムジャパンの発表によると、開通した1999年度の7万10台から減り、2005年度には2万9,896台まで落ちた。その後は持ち直したが、開通年度を上回ったのは2012年度(7万4,872台)である。

伸びが加速したのは2013〜2014年度だ。2014年度の貸出は11万6,303台で、前年度の8万1,851台から4割以上増えた。この時期、愛媛県は大会と受け入れの両面で動いている。

愛媛県の資料によると、2011年に知事が台湾の自転車大手ジャイアントの会長と面談し、翌年に会長がしまなみを走った。2013年には高速道路を通行規制した初めての大会をプレ大会として開いた。2014年10月の「サイクリングしまなみ2014」には、国内外から7,281人が参加している。

県は2015年に県庁へ自転車新文化推進室を置いた。貸出台数については、自転車の通行料金の無料化や、米CNNで世界7大サイクリングコースの1つとして紹介されたことなどを挙げ、その「効果もあり、H29年度はH22年度の約3倍に増加」したと説明している。

施策と台数の伸びは時期が重なるが、どの施策がどれだけ効いたかを示す資料はない。確かめられるのは、台数の伸びが加速した時期と、県が大会や受け入れに動いた時期が重なっていることまでだ。

過去最多を押し上げた海外の利用

2025年度の過去最多は、海外の利用が押し上げた。同じ発表によると、貸出17万3,279台のうち海外は7万4,146台で、全体の42.8%を占める(編集部算出)。前年度の4万3,681台から70%増えた。

最多更新は海外利用が押し上げ
しまなみ海道レンタサイクルの貸出台数(万台)
しまなみ海道レンタサイクルの貸出台数(国内・海外、2015〜2025年度) 2025年度は17万3,279台で過去最多。うち海外7万4,146台、国内9万9,133台。国内は2015年度以降で最も多かった2017年度(13万4,213台)を下回ったままで、最多の更新は海外利用の増加による。2020・2021年度は7万台台に落ち、海外利用はほぼゼロだった。 国内 海外 2015 16 17 18 19 20 21 22 23 24 2025 15.0万 17.3万 (年度)
(注:レンタサイクルのみで、自分の自転車で走る人は含まない)
出典:しまなみジャパン・ナビタイムジャパン「しまなみ海道レンタサイクル、貸出実績が過去最多17.3万台を記録」(2026年4月20日)をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
年度国内海外合計
2015年度125,8419,388135,229
2016年度126,88714,318141,205
2017年度134,21315,527149,740
2018年度114,88717,188132,075
2019年度125,81823,547149,365
2020年度74,56634774,913
2021年度70,80112470,925
2022年度116,8614,949121,810
2023年度97,78029,678127,458
2024年度92,05443,681135,735
2025年度99,13374,146173,279

しまなみジャパン・ナビタイムジャパン発表(2026年4月20日)のグラフ「レンタサイクル貸出実績(国内・国外対比)」の表示値。単位はいずれも台。2025年度の海外比率は42.8%(編集部算出)。

国内の利用は9万9,133台で、前年度から8%増えた。ただし、2015年度以降で国内の利用が最も多かった2017年度の13万4,213台は下回ったままだ。レンタサイクルの最多の更新は、国内の利用が戻ったからではなく、海外からの利用が大きく増えたことによる。

愛媛県は2022年度からの第4ステージとして、広域の「グレーターしまなみ・えひめ」を形成し、体験型のコンテンツや宿泊施設を生かして「通過型から『滞在型』観光への転換」を進めるとしている。2027年には自転車の国際会議Velo-cityが、日本で初めて愛媛県で開かれる予定だ。

レンタサイクルを運営するしまなみジャパンは、尾道市・今治市・上島町を中心とする観光地域づくり法人(DMO)だ。2023年10月に予約と貸出をデジタル化し、今後は利用データの分析用ダッシュボードや、高身長向けのクロスバイク、電動アシスト付きのスポーツ自転車(E-Bike)を導入するとしている。

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ビワイチ 人が減った年に経済効果が増えた

琵琶湖を自転車で一周するビワイチでは、人数と経済効果が逆の動きを見せた。滋賀県の推計によると、体験者数は2023年に約12万8,000人と過去最高になり、2024年は約11万9,000人だった。前年より約9,000人(7%)少ないが、過去2番目の水準である。

それでも、2024年の経済波及効果の試算は約21億2,000万円で、前年から約25%増えた。県は増えた理由を「レンタサイクルを利用して気軽にサイクリングをされる方が増えていることや、宿泊しながらビワイチを楽しまれる方の割合が増加していること等」が寄与したとみている。

体験者数が減った理由について、県は各地の観光施設の利用に分散したことなどと推定している。また、ビワイチで宿泊する人の1人あたりの観光消費額は、一般の宿泊者より「やや多い」という。金額は示されていない。

人数が減った年に経済効果が増えた理由として、県は宿泊とレンタルの広がりを挙げている。1人がどれだけ長く滞在し、何にお金を使うかで、地域に落ちる額は変わりうる。

体験者数は、県のアプリ「ビワイチサイクリングナビ」の走行データと、通過する自転車の台数を数えるエコカウンターのデータから推計している。経済波及効果はアプリ利用者へのアンケートにもとづく試算だ。

推計の方法が違うため、ビワイチの経済効果をしまなみ海道やりんりんロードの数字と横に並べて比べることはできない。なお、2025年の体験者数は、2026年10月4日時点で滋賀県のサイトに公表が見当たらない。

りんりんロード 駅直結の拠点と宿

茨城県のつくば霞ヶ浦りんりんロードは、利用者を8年で2.7倍に増やした。県の推計(沿線の定点観測から算出)では、2017年度の5.5万人から、2022・2023年度の横ばいを挟んで増え、2025年度は14.9万人と県の公表値で最も多くなった。

東京から電車で来やすい駅に、自転車を持ち込める拠点と宿を民間と組んでつくってきたのが、このルートの特徴だ。玄関口になるJR土浦駅には、2018年3月に駅直結のサイクリング特化施設「PLAYatre TSUCHIURA(プレイアトレ土浦)」が開業した。館内に自転車を持ち込める。

2020年3月には、同じ建物の3〜5階に「星野リゾート BEB5土浦」が開業した。90室で、自転車を客室に持ち込めるサイクルルームがある。アトレの発表によると、東京から電車で最短49分の立地だ。

2026年3月のNCRフォローアップ資料によると、郊外部171kmの走行環境は2024年度に整備を終え、案内看板なども2025年度に設置を終えた。2023年度には新たな玄関口「サイクルパークつくば」を設け、2025年度には台湾とシンガポールからのインバウンドツアーも実施している。

移動の手段も組み合わせてきた。2021年のフォローアップ時点で、迂回や回送の手段として船の「霞ヶ浦広域サイクルーズ」の寄港先を増やし、サイクルトレイン(B.B.BASE)なども運行していた。「サイクリストにやさしい宿」の認定も、この時点で11か所から25か所に増えていた。

一方で、緊急時の支援物品をおおむね20kmごとに置く項目は、2026年の点検でもまだ満たしていない。広域レンタサイクルは、知事が会長を務める「つくば霞ヶ浦りんりんロード利活用推進協議会」が運営しており、2023年度の貸出は3,852台だった(民間のレンタルは含まない)。

指定の後に残る4つの課題

3つの事例は成果を出したルートだ。しかしNCR全体を見ると課題は残っており、国の審査委員会の議事概要からその中身が見える。

基準に届かない区間が残る

2026年4月の審査委員会で、委員長は議論を「NCRとして指定したルートの中には基準を満たしていない区間が残っており、その危険個所の情報を提供できていないことを問題視したもの」と整理した。

名前が挙がったルートの1つが、6県にまたがる延長1,487kmの太平洋岸自転車道だ。委員からは「5年経過しても大きく変わらない状況である」との意見や、迂回コースの情報がウェブサイトに出ていないとの指摘があった。ビワイチについても、交通量が多く路肩が狭い区間を子どもが走れるのかという意見が出ている。

既存ルートの点検全般については、指定の取り消しも含めて議論すべきだという意見もあった。委員長は、改善が図れていない区間は積極的なPRを控え、毎年のフォローアップで整備の進み具合を確かめる考えを示した。

効果も体制も測れていない

2026年3月の審査委員会では、委員から「地域振興の効果や地域住民の利用などの効果」の評価が必要だという意見や、「定点観測などによる利用者数の経年的な評価は重要」だという意見が出た。4月には「取組体制については、ルートによる違いがあり、体制によって取組状況が異なる」として、予算や体制、協議会の開催状況を確かめるよう求める意見もあった。

第3次指定の前の既存6ルートでも、2ルートは利用者数の推計がない。新しい6ルートの効果はこれから測ることになり、地域が稼いでいるかを示す消費や宿泊の数字となると、全国でそろった統計はない。

走る人にルールが届くか

2026年4月1日、16歳以上の自転車の運転者を交通反則通告制度、いわゆる青切符の対象とする改正道路交通法の規定が施行された。観光立国推進基本計画と第3次自転車活用推進計画はどちらも訪日客へのルールの周知を掲げ、後者は訪日客向けのシェアサイクル事業者と組んで多言語で伝えるとした。

自転車を使う旅行者はまだ少ない

国の指標で、旅行中にバイク・自転車を使った国内旅行者は1.54%で、2030年の目標も1.78%である。この数字は観光の足としての利用やバイクも含むため、乗ること自体を目的にする旅行者はさらに少ない。

観光ビジネスの視点

NCRの指定は、地域にとって分かりやすい目標になりやすい。だが審査で見ると、新しい6ルートの体制の項目は全て○でも、走行環境と受け入れの推奨項目には埋まっていない部分が残る。

その残りをどう埋めるかが問われるのが、3〜5年ごとのフォローアップである。△の項目が改善方針どおりに埋まったか、利用者を数え続けているかが点検される。審査委員会でも、ルートによって体制と取り組みに差があるという意見が出ている。

分かれ目は指定を取ることではなく、指定の後も受け入れを回し続ける運営体制を持てるかどうかだ。自治体や事業者がNCRを目指すなら、整備計画と同じ重さで、誰が利用者を数え、誰が宿と交通をつなぎ続けるかを先に決めておく必要がある。

よくある質問

ナショナルサイクルルートとは何か。

国が「日本を代表し、世界に誇りうるサイクリングルート」として指定するルートである。ルート設定・走行環境・受入環境・情報発信・取組体制の5観点で必須28・推奨27項目の要件があり、必須項目などの審査を経て、一定の水準を満たすルートを国が指定し国内外にPRする。2026年7月時点で12ルートが指定されている。

NCRに指定されると、地域にとって何が変わるか。

国の説明では、国やJNTOによるプロモーション、防災・安全交付金などによる重点的な支援、ブランド価値の向上が見込める。一方で、計画期間内に1回、3〜5年ごとのフォローアップがあり、水準を保てなければ是正を求められ、改善が見込めない場合は指定を取り消される。

宿泊施設や交通事業者は、どこから関われるか。

NCRの受入環境の要件には、サイクリストを受け入れる宿、玄関口のレンタサイクルや着替えの場所、自転車を運びながら移動できる環境が含まれる。りんりんロードでは、駅直結の施設や自転車を客室に持ち込めるホテルが受け入れを担い、茨城県は「サイクリストにやさしい宿」の認定も設けている。

訪日客が日本で自転車に乗るとき、注意すべきことは何か。

日本では2026年4月1日から、16歳以上の自転車の運転者が交通反則通告制度(青切符)の対象になった。国の計画は、訪日客向けのシェアサイクル事業者と連携し、交通ルールを多言語で周知するとしている。

出典

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