民泊「ゼロ日」条例を容認へ 観光と生活環境のバランス、民泊新法の8年

Photo: Tayawee Supan / Unsplash
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条例で民泊「ゼロ日」に、観光庁が容認へ

共同通信の報道によると、観光庁は、住宅地などで居住環境が損なわれる恐れがある場合に、自治体が条例で民泊の営業を事実上禁止できるとする方針を固めた。6月中にも全国の自治体へ通知する見通しだ。

これまで通年での実質的な全面禁止は「適切ではない」としてきた国の運用が、自治体による規制をより広く認める方向へ見直されることになる。

住宅宿泊事業法(民泊新法)では、自治体に届け出た施設は年180日を上限に営業できる。報道されている通知案は、この上限を条例で「ゼロ日」に設定し、特定の地域で営業を事実上禁じることを認める内容とみられる。

観光庁が2017年に整えた指針(ガイドライン)は、条例による区域や期間の制限は認める一方、受け入れ拡大の観点から営業を通年でゼロにする事実上の全面禁止は「適切ではない」としてきた。報道によれば、今回の方針はこの立場を転換するものだ。

報道によれば、通知では、住宅地や教育施設の周辺で民泊の増加が見込まれ、住民の生活環境を損なう恐れがある場合に、条例で立地を規制できると示す見通しだ。すでに弊害が生じている地域では、既存の民泊への制限も可能とされる。

事業者に対しては、騒音計や監視カメラの設置を条例で義務づけられるようにする内容も含まれると報じられている。国も、住民からの苦情を受け付ける夜間コールセンターを新設するとされる。背景には、訪日客らによる騒音やごみ出しをめぐるトラブルの増加がある。

なお、この通知は本記事の公開時点(2026年6月18日)でまだ発出されていない。条文や指針の最終的な扱いは、通知の発出後に確認が必要だ。

「振興」から「規制」へ振れた民泊新法の8年

今回の方針は、単発の規制強化ではない。民泊をめぐる国の姿勢が、8年かけて「振興」から「規制」へと比重を移してきた延長線上にある。

民泊新法が施行されたのは2018年6月だ。それ以前は、Airbnbなどの普及で届け出も許可もない「違法民泊」が急増していた。

新法は、こうした民泊を年180日という上限つきで合法の枠組みに取り込む狙いがあった。出発点からして、振興と規制を抱き合わせた制度だったといえる。

その後の数年は、コロナ禍で民泊が落ち込んだ時期だ。2020年からのコロナ禍で訪日客が激減し、民泊事業も低迷した。

流れが変わったのは、インバウンドの回復だ。民泊の新規届け出は2024年に過去最大級の純増を記録し、2025年初めには累計でおよそ4万7千件に達した。

インバウンド回復と届け出増が進むなか、住宅地などでは騒音やごみ出しをめぐるトラブルへの対応が課題になっている。今回の方針転換の背景には、こうした届出施設の増加とトラブルへの対応がある。

こうしたなか、自治体は条例で独自の規制を強めてきた。墨田区は2026年4月、区内全域で営業できる時間帯を金曜正午から日曜正午までに絞る条例を施行した。

豊島区も改正条例が区議会で可決・成立し、2026年12月から既存施設も含めて営業日数の上限を年120日へ短縮する。

京都市も規制強化を検討しており、有識者会議で議論を始め、営業日数や立地の規制を盛り込む条例改正案を2026年度中に市議会へ提出することを目指している〔条例案はまだ検討段階だ〕。

根拠とする法律は異なるが、国家戦略特区の「特区民泊」でも、大阪市が2026年5月29日で新規受付を終了することを決めた。民泊のあり方を見直す動きは、制度の枠を越えて広がっている。

自治体で上乗せ規制の動きが広がるなか、国も「ゼロ日」設定を認める方向へ運用を見直す。国が、規制を自治体に委ねる範囲を広げる形だ。

民泊規制をめぐる主な動き(2016〜2026年)。2016年に特区民泊が始動、2017年に国がガイドラインで通年の全面禁止は不適切との立場、2018年に民泊新法施行(年180日上限)。2020年のコロナ禍で低迷後、2024年にインバウンド回復で民泊が急増し苦情が再燃、2026年に墨田区が金〜日のみに制限・大阪市が特区民泊の新規受付終了・豊島区が年120日へ短縮を決定し、観光庁が条例での「ゼロ日」容認へ方針転換した流れを示す年表。

世界の大都市はすでに民泊を絞っている

民泊規制の強化は、日本だけの現象ではない。ニューヨーク、バルセロナ、パリなどの大都市は、住宅市場や生活環境への影響を理由に、すでに短期賃貸を厳しく絞り込んでいる。

ニューヨーク市は2023年9月、短期賃貸を登録制とし、ホストがその住居に同居していることなどを条件とする規制を施行した。プラットフォーム側にも未登録物件の取引を禁じた結果、30日未満のAirbnbの登録件数は施行後に8割超減ったとされる。

バルセロナはさらに踏み込み、市内の観光用短期賃貸の認可およそ1万件を2028年の期限切れで更新せず、2029年以降はゼロにする方針を打ち出している。2025年にはスペインの憲法裁判所がこの計画を合憲と認めた。

パリも、主たる住居の短期賃貸に課す年間の営業上限を、2025年に従来の120日から90日へ短縮している。

日本の「ゼロ日容認」は、手法こそ各都市と異なるものの、観光の受け入れと住宅地の生活環境のバランスを取り直そうとする世界的な動きと軌を一にしている。各都市に共通するのは、住宅を観光客に明け渡すことへの住民の反発が、政治を動かしている点だ。

観光ビジネスの視点

今回の「ゼロ日」容認は、民泊活用の停止ではない。国は2030年に訪日客6000万人を掲げ、受け皿としての活用は続ける。焦点は振興か規制かではなく、どの地域・条件で、既存施設まで規制を及ぼすかという制度設計だ。

見落とせないのは、条例による日数規制が民泊新法の届出事業者にしか及ばない点だ。旅館業法の簡易宿所や無届けの営業には、「ゼロ日」にしても網がかかるとは限らない。

新設の夜間コールセンターや自治体の監視が、無届け物件まで実効性を持てるか。通知はまだ発出前であり、正式な文言と運用を見極める必要がある。

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