MICEとは 7,699億円市場を「件数・単価・誘致力」で読む

講堂の座席を埋め資料を手にする参加者を俯瞰した光景。国際会議・展示会などMICEの会場イメージ
Photo: Mikael Kristenson / Unsplash
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MICE(マイス)は、企業会議や国際会議、展示会といったビジネスイベントの総称だ。一般の観光より滞在が長く、消費単価が高く、平日に人が動く。だから観光振興であると同時に、地域の産業や雇用を底上げする経済政策の色合いが濃い。

2024年に日本国内で開かれた国際的なMICEの総消費額は約7,699億円(観光庁・確報)に達した。国際会議の開催件数も、ICCA(国際会議協会)の基準で2025年に初めて世界6位まで上がった。国際会議の件数や展示会など、主要な指標では着実に戻っている。

ただし事業者にとっての論点は、総量が戻ったかどうかではない。件数の回復と、地域に落ちる「効果の質」は別物であり、単価の高い催事をどう取り込むかが次の勝負になる。このページはMICE分野の入口として、市場の全体像・主要な論点・事業者タイプ別の打ち手をまとめて解説する。

この記事のポイント

  • 2024年の国際MICEの総消費額は約7,699億円で、国際会議(C)と企業会議(M)が市場の主役。
  • 国際会議の開催件数はICCA基準で2025年に初の世界6位へ上昇したが、次の課題は規模の大きいMと単価の高いIの取り込み。
  • 報奨・研修旅行では参加者単価が7.2万円から28.7万円へ約4倍に上がり、I領域の高単価化が目立つ。
  • 誘致は12のグローバルMICE都市が競う都市間競争で、大型拠点の整備も進むが、会場の量より受け入れ体制とレガシー設計が勝負を分ける。
目次

MICEとは 4つのビジネスイベントの総称

MICE(マイス)とは、Meeting(企業などの会議)、Incentive Travel(報奨・研修旅行)、Convention(国際会議など)、Exhibition/Event(展示会・見本市、イベント)の頭文字をつなげた言葉だ。多くの集客や交流が見込まれるビジネスイベントの総称として、観光庁が用いている。

なぜMICEが経営テーマとして重要なのか。観光庁は意義を5つに整理している。地域への経済効果、ビジネスやイノベーションの機会創出、国・都市の競争力向上、平日中心で交流人口を平準化できること、そして開催後に残るレガシーだ。

MICEは平日に動き、滞在も長く、消費の裾野が広いとされる。この性格が、純粋な観光振興とは別の価値を生む。

参加するのはレジャー客ではなく、医師や研究者、企業の経営層や購買担当者といったビジネス層が中心だ。彼らが数日間滞在し、宿泊・飲食・移動・視察に支出する。だからMICEは宿泊や飲食といった特定業種の話ではなく、地域経済全体に関わる横断テーマになる。

この記事で使う主な統計の読み方

MICEの数字は、調査ごとに「何を、いつ時点で数えているか」が違う。混同を避けるため、本記事で使う主な指標の意味と注意点を先に示す。

用語意味注意点
総消費額(観光庁)国内開催の国際MICEで生じた消費額の推計直接の消費額。経済波及効果とは別指標
経済波及効果(観光庁)総消費額をもとに産業連関分析で推計した波及額2024年分は今年度算出外(直近は2023年分・約8,923億円)
国際会議の件数(ICCA基準)国際会議協会の統一基準で数えた国際会議数世界順位の比較用。JNTO基準より件数は少なくなる
国際会議の件数(JNTO基準)日本政府観光局が独自基準で数えた国際会議数国内の総量を見る指標。定義が広く件数は多くなる

7,699億円市場の主役は国際会議と企業会議

2024年に国内で開かれた国際的なMICEの総消費額は、約7,699億円(観光庁・確報)だった。内訳は、国際会議(C)が2,788億円で最も大きく、企業会議(M)2,682億円、展示会・見本市など(E)1,641億円、報奨・研修旅行(I)589億円と続く。

総消費額で見ると、市場の重心は国際会議(C)と企業会議(M)の2つにある。

国際会議2,788億円と企業会議2,682億円で全体の約7割。展示会1,641億円、報奨旅行589億円
この図表のデータを見る
類型総消費額(億円)構成比
国際会議(C)2,788.036.2%
企業会議(M)2,681.834.8%
展示会・見本市等(E)1,640.621.3%
報奨・研修旅行(I)588.57.6%
合計約7,699100%

総消費額には主催者・出展者・参加者の支出を含む。出典:観光庁 令和7年度報告書。

国際会議は、医療や学術分野の大型学会が目立つ。数千人規模の参加者が数日滞在するため、1件あたりの地域への波及が大きい。企業会議は、社内会議から顧客向けセミナー、研修・視察、式典まで幅広い。コロナ禍からの戻りが急で、企業内会議の参加者は2023年の5.6万人から2024年に13.3万人へ倍増し、消費額も倍増した。

展示会・見本市は、2024年に調査対象102件で参加者約180万人、総消費額1,641億円となり、コロナ前の2019年(1,619億円)を上回った。

なお、イベント産業全体ではより大きな市場が広がる。JACE(日本イベント産業振興協会)の推計では、2024年のイベント産業全体は2兆8,535億円で、コロナ前を超えている。MICEは、こうした広いイベント産業とも重なる重要分野だ。

MICEは規模・単価・伸びの異なる4類型で読む

MICEを事業判断に使うには、M・I・C・Eを一括りにせず、4類型ごとに「規模・単価・伸び」の性格を読み分けるのが要点だ。

規模で効くのは企業会議(M)と国際会議(C)だ。この2つで総消費額の約7割を占める。とくに企業会議は、自社や取引先のイベントとして日常的に発生するため、地域にとって取り込みやすい類型だ。

単価で効くのは報奨・研修旅行(I)だ。消費額の総額は589億円と4類型で最も小さいが、参加者1人あたりの消費単価は2017年度の7.2万円から28.7万円へ約4倍に跳ね上がっている。背景には物価や旅行代金の上昇があるとみられ、少人数でも地域に落ちる金額が大きい。高単価な体験や宿泊と接続しやすい市場だ。

伸びで効くのは国際会議(C)と展示会(E)だ。国際会議は件数の回復が続き、展示会はコロナ前超えを果たした。とくに大型の国際学会は、誘致決定から開催まで数年単位で準備が進む案件もある。

規模が大きい企業会議・国際会議、単価が突出して高い報奨旅行、規模中位の展示会の位置づけ
この図表のデータを見る
類型総消費額(億円)推計参加者(万人)1人当たり(万円・概算)
国際会議(C)2,788.0124.1約22.5
企業会議(M)2,681.867.1約40.0
展示会・見本市(E)1,640.6179.6約9.1
報奨・研修旅行(I)588.57.1約83.4

1人当たり消費額=総消費額÷推計参加者数の概算(主催者・出展者支出を含む総消費のため、参加者個人の消費単価とは異なる)。報奨旅行の参加者消費原単位は287,485円。出典:観光庁 令和7年度報告書をもとに編集部作成。

この4類型を組み合わせると、自地域が「件数で母数を稼ぐ企業会議」を取りに行くのか、「単価で稼ぐ報奨旅行」を取りに行くのか、戦略の出発点が見えてくる。どの類型を軸にするかを先に決めることが、限られた誘致予算と人手の配分判断につながる。各類型の実務は配下の深掘り記事で解説する。

件数は世界6位まで上昇、課題は「効果の質」

国際会議の開催件数は、コロナ禍から着実に戻った。ICCA基準で2024年は日本428件(前年比+18%)で世界7位、2025年は491件(同+15%)で初の世界6位へと過去最高順位を更新した(2025年は速報段階)。JNTO基準の国内総件数も2024年に1,702件(前年比1.2倍)まで回復している。

実際に大型の国際学会の開催も相次いだ。計算知能分野の世界最大級の会議「IEEE WCCI 2024」は日本で初めて横浜(パシフィコ横浜)で開かれ、リウマチ学のアジア太平洋会議「APLAR 2025」は福岡コンベンションセンターで最大3,000人規模を集めた。

政府は「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」で、2030年に国際会議の開催件数を世界5位以内、アジアでNo.1にする目標を掲げる。世界5位以内という目標には近づいたが、アジアNo.1の達成は競合国・都市の動向にもよる。

ただし、件数の回復と地域に落ちる「効果の質」は別物だ。件数だけでは地域への効果は測れず、規模・参加者単価・滞在日数・周遊もあわせて見る必要がある。報奨旅行の単価が約4倍に上がったように、件数の回復だけでなく、単価や滞在、周遊という「効果の質」を見る重要性が増している。

あわせて読む 単価を支える高付加価値な体験設計と、訪日全体の市場構造は、それぞれこちらで詳しく解説している。

誘致は都市間競争、ハコだけでは勝てない

MICE誘致は、国内外の都市が同じ案件を奪い合う競争だ。観光庁は札幌・仙台・東京・千葉・横浜・名古屋・大阪・神戸・京都・広島・福岡・北九州の12都市を「グローバルMICE都市」に選び、国際競争力の強化を支援している。

供給面では、2030年秋ごろに開業予定の大阪IR(総投資額約1.5兆円)が、会議室の収容計1.2万人以上、展示計約2万平方メートルの大型MICE拠点を加える。会場という「ハコ」は増えていく。

しかし、会場の量だけでは誘致に勝てない。勝負を分けるのは、その都市にしかない体験と、開催を支える受け入れ体制だ。その象徴がユニークベニューである。博物館や歴史的建造物、神社仏閣、城郭などを会議やレセプションの会場として特別に開放し、参加者に特別感と地域らしさを届ける手法だ。

京都では二条城や京都国立博物館でのレセプションが高く評価されている。福岡では川端通商店街そのものを会場に、地域の店が飲食を提供する立食レセプション(実績で約1,000名規模)を開いた例もある。

誘致の主体も「ハコ」ではなく人と組織だ。地域では、会場や宿泊の紹介・助成金情報の提供を担うコンベンションビューロー(地域の誘致支援機関)と、学会・国際会議の企画や運営を専門に請け負うPCO(Professional Congress Organizer)が連携して案件を取りにいく。

誘致の現場では、その分野の日本人研究者が「JNTO MICEアンバサダー」として開催地を売り込み、地域のコンベンションビューローとJNTOが「チームジャパン」として投票を取りにいく。

こうした官民連携を背景に、脳神経放射線分野の世界会議(Symposium Neuroradiologicum)も36年ぶりの日本開催として2030年に札幌で開かれる。国も「国際会議誘致・開催貢献賞」で優良案件を毎年表彰し、横展開を促している。

こうした取り組みは大都市だけのものではない。2024年には北九州・つくば・広島・金沢が開催件数を大きく伸ばした。1件以上の開催都市は国内60を超え、地方都市での開催の広がりも日本全体の件数を支えている。

あわせて読む 地域の合意形成と推進体制と、会場の予約・データ基盤は、それぞれこちらで詳しく解説している。

MICEは観光振興か、産業政策か

MICEをどの部署の仕事として捉えるかは、地域でしばしば曖昧になる。観光振興の一環と見れば観光部局の話になるが、平日型・高単価・イノベーション創出というMICEの性格は、純粋な集客とは別軸にある。

MICEは「観光客を増やす」施策というより、「ビジネスと知の往来を地域に呼び込む」産業政策として設計するほうが、効果を取りこぼしにくい。

この視点が見えやすいのが、開催後に残る「レガシー」だ。2025年の大阪・関西万博では、関連する企業会議や報奨旅行で、海外の有力企業の参加増、国際会議の日本開催や報奨旅行を後押しする効果、滞在の長期化と関西圏外への周遊、顧客単価の上昇などが主催者調査で確認された。

一方で、開催期間中の宿泊費高騰により、他地域の報奨旅行案件が一部減るという需要の競合も起きた。大型イベントの効果は自動的に全国へ広がるわけではなく、需要を奪い合う側面もある。レガシーを地域に根づかせるには、運営知見や人的ネットワークを次の誘致へ引き継ぐ設計が要る。

国も、MICEの効果を数字で測る仕組みを整えている。観光庁は「MICE簡易測定モデル」を2026年3月にVer.4へ改訂し、自治体や施設が誘致予算の要求や開催効果の確認に使えるよう整備した。利用申請は1,000件を超える。MICEの効果を数字で語り、予算を獲得する基盤が広がっている。

あわせて読む 地域経済への波及は、こちらで詳しく解説している。

御大典の幟を掲げて担がれる金色の神輿と担ぎ手たち。祭りでにぎわう地域の情景。地方創生・DMOのイメージ 地方創生・DMOとは 観光で地域が稼ぐ仕組みの全体像

事業者タイプ別の打ち手

MICEの論点は業種を横断する。自社の立場から、まず見るべき数字と最初の打ち手、次に読む記事は次のとおりだ。

  • 自治体・コンベンションビューロー
    ボトルネックは会場不足だけでなく「誘致体制と財源」にある。まず自地域の開催件数・類型構成・宿泊容量を押さえる。初手はPCOとの連携体制づくりと、簡易測定モデルを使った効果の見える化。
    関連ガイド:地方創生・DMOの全体像観光政策の全体像
  • 宿泊・会場施設
    まず平日稼働とMICE単価、団体受け入れ可能規模を見る。初手はレセプション対応や貸切プランの整備と、ユニークベニューとしての自社空間の商品化。
    関連ガイド:宿泊業の全体像
  • PCO・MICE専門業者
    まず誘致中の大型国際会議のパイプラインと開催地決定の時期を見る。初手は自地域と相性のよい学会・会議分野への提案強化と、ユニークベニュー・体験を束ねた差別化提案。
    関連ガイド:観光新規事業の全体像観光DXの全体像
  • 一般企業(出張・インセンティブ部門)
    まず自社の出張・研修・報奨旅行の費用対効果を見る。初手は報奨旅行の高単価化を踏まえた設計と、出張に余暇を組み合わせるブレジャーの活用。
    関連ガイド:旅行業の全体像観光体験の全体像
  • 観光施設・体験事業者
    まずMICE参加者向けの貸切・特別開放の可否と単価を見る。初手はレセプション・エクスカーション商品の造成と、コンベンションビューローへの登録。
    関連ガイド:観光施設の全体像観光体験の全体像

MICE誘致・受け入れの5ステップ

業種を問わず、MICEへの取り組みは次の順で進めると迷わない。順番を飛ばして会場整備から入ると、需要とのズレが生じやすい。

  1. 自地域のMICE適性を見極める
    現に来ている催事を類型(M・I・C・E)・規模・単価で押さえる。感覚でなく観光庁やJNTOのデータで「どの類型が地域に合うか」を数字にするのが出発点だ。
  2. 狙う類型を決める
    件数で母数を稼ぐ企業会議か、単価で稼ぐ報奨旅行か、波及の大きい大型国際会議か。自地域の会場規模・宿泊容量・資源に合わせて1〜2類型に絞る。
  3. 会場と受け入れ体制を整える
    会場だけでなく、ユニークベニュー・多言語対応・二次交通・宿泊容量という受け入れの土台を、狙う類型に合わせて用意する。
  4. 誘致体制を組む
    コンベンションビューローとPCOが連携し、学会・企業へ提案する体制をつくる。国際会議は決定から開催まで数年かかるため、早く動く地域が取り込める。
  5. 効果を測り、レガシーへつなぐ
    開催後に消費額・泊数・周遊を測り、簡易測定モデルで効果を可視化する。運営知見と人脈を次の誘致へ引き継ぎ、一度の開催で終わらせない。

このテーマを深掘りする

本記事で触れた論点は、今後それぞれの専用記事で順次深掘りしていく。

  • 会場・演出:ユニークベニュー活用
  • 出張需要:BTM(出張旅行管理) ・ ブレジャー
観光ビジネスの視点

国際会議で世界6位に上がったことは前進だ。ただ地域の実務で効くのは、順位そのものより、開催が宿泊・飲食・周遊・次の誘致にどれだけつながるかだ。回復した「件数」と、地域に落ちる「効果の質」は別物だからだ。

会場という「ハコ」を増やすだけの誘致は、都市間競争で消耗しやすい。大阪IRで供給は増えるが、勝負を分けるのはユニークベニュー・受け入れ体制・レガシー設計だ。MICEを観光集客の延長でなく、ビジネスと知の往来を呼び込む産業政策として設計できるかどうかが、これからの地域の分かれ目になる。

よくある質問

MICEと一般の観光は何が違うのか。

MICEはビジネス目的のイベントで、参加者は会議や展示会のために訪れる。一般の観光より滞在が長く消費単価が高く、休日でなく平日に動くのが特徴だ。このため交流人口を平準化でき、地域経済への波及が大きいとされる。

「総消費額7,699億円」と「経済波及効果8,923億円」はどちらが正しいのか。

どちらも正しいが、指標と対象年が違う。7,699億円は2024年の総消費額(現場で直接使われたお金)、8,923億円は2023年の経済波及効果(それが地域を巡って生んだ効果まで含めた額)だ。2024年分の波及効果は今年度の算出対象外のため、本記事は2024年の総消費額で市場規模を語っている。

自地域はどの類型のMICEを狙うべきか。

会場規模・宿泊容量・地域資源で決める。大型会場と多数の宿泊があれば国際会議や展示会、特別な体験や高級宿があれば単価の高い報奨旅行が向く。あれもこれもと全方位に張らず、1〜2類型に絞るほうが現実的だ。

<出典>

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