出国税の仕組みと使い道を知りたい旅行・観光の事業者や自治体の担当者に向けて、法令と財務省・国税庁・観光庁の資料をもとに整理する。正式名称は「国際観光旅客税」で、2019年1月に1回1,000円で始まり、2026年7月1日の出国分から3,000円になった。
税収は観光の財源に充てられるが、使い道は毎年度の予算で決まる。3,000円への引き上げで、出国税を充てる2026年度の予算は1,300億円になった。予算の拡大に伴い、その使い道が妥当かどうかが、国の審議会でも改めて議論されている。
本記事では、誰が払うのか、どう集めるのか、何に使われてきたのか、いま何が問われているのかを順に確かめる。
この記事のポイント
- 出国税は国際観光旅客税の通称で、船や飛行機で日本を出国する人に、国籍を問わず原則1回3,000円かかる。
- 航空会社や船会社がチケット代に上乗せするなどして集め、出国した月の翌々月末までに国に納める。
- 目的税ではなく、税収の見込み額に見合う金額を、法律が定める3分野の観光施策に充てる。
- 2026年度は出国税を充てる1,300億円を7府省庁が使い、その使い道の妥当性が改めて問われている。
出国税は「国際観光旅客税」の通称
出国税は、国際観光旅客税法(平成30年法律第16号)に基づく国の税で、「出国税」は通称である。財務省は、観光先進国の実現に向けて「観光基盤の拡充・強化を図るための財源を確保する観点から」出国1回につき負担を求める税だと説明している。
同法が定める税率は、出国1回あたりの定額だ。2019年1月7日に1,000円で始まり、2026年7月1日の出国分から3,000円に上がった。
観光ビジョンから生まれた税
参議院常任委員会調査室がまとめた資料によると、出発点は2016年3月の「明日の日本を支える観光ビジョン」である。ビジョンは、観光立国の受益者の負担によって、観光施策に充てる追加の財源を確保する方針を打ち出した。
同じ資料によると、観光庁は2017年9月に有識者の検討会を設けた。同年11月の中間とりまとめは、日本人を含む出国旅客に負担を求める案を示した。負担額は定額・一律とし、1人1回の出国につき「1,000円を超えない範囲」で検討するとしていた。
2017年12月の税制改正の大綱に創設が盛り込まれ、法律は2018年4月に公布された。その後、2025年12月の令和8年度税制改正の大綱に3,000円への引き上げが盛り込まれ、2026年3月に改正法が公布された。
国税庁のQ&Aは、引き上げの理由を「オーバーツーリズム対策の強化、地方への誘客や需要の分散の促進、アウトバウンド施策の充実などの観光施策に必要となる財源を確保するため」と説明している。
日本から出国する人は国籍を問わず払う
国際観光旅客税法は、船や飛行機で日本から出国する「国際観光旅客等」を、税を納める義務がある人と定める。国税庁のQ&Aによると、観光のほかビジネス、公務、就業、留学、医療などの目的で出国する人も含まれる。名前に「観光」と付いていても、目的や国籍に関係なく、日本を出国する人にかかる。
日本政府観光局(JNTO)の統計では、2025年の訪日外客数は4,268万人、日本人の出国者数は1,473万人だった。出国税は、訪日客が日本を出るときと日本人が出国するときの両方にかかる。
課税されない11のケース
国税庁のQ&Aは、出国税がかからない人を次の11の類型に整理している。「不課税」はそもそも課税の対象にならない人、「非課税」と「免税」は対象ではあるが税がかからない人を指す。
- 不課税:船や飛行機の乗員、強制退去者など、遠洋漁業者、公用の船や飛行機で出国する人、出国後に天候などで外国に寄らず戻ってきた人
- 非課税:入国後24時間以内に出国する一定の乗り継ぎ客、天候などで日本に寄港した船や飛行機に乗っていて、その便か事業者が手配した代わりの便で出国する人、2歳未満の子ども
- 免税:外国の大使や領事など(公用)、国賓など、合衆国軍隊や国連軍の構成員など(公用)。いずれも、航空会社など(旅行会社を通す場合は旅行会社)に所定の書類を出すなどの要件がある
同じQ&Aによると、乗り継ぎ客が非課税になるには、1枚の航空券が発行され、その航空券で日本に着いてから24時間以内に出発することが明らかになっている必要がある。天候のせいで実際の出国が24時間を超えても非課税のままだ。ただし、日本に来る直前の出発空港と日本を出た直後の到着空港が同じ場合や、船による乗り継ぎは非課税にならない。2歳未満かどうかは原則として出国する日の年齢で判定するが、往復が1枚の航空券になっている場合などは別の日で判定する(よくある質問を参照)。
税率は出国1回につき3,000円
国際観光旅客税法第15条は、税率を「本邦からの出国一回につき、三千円」と定める。国税庁のQ&Aによると、クルーズ船で日本の港から出国し、外国に寄ったあと日本の別の港から再び出国すると、出国ごとに2回かかる。
2026年7月1日の引き上げには経過措置がある。同じQ&Aによると、7月1日より前に結んだ運送契約で、その時点で出国日が決まっていれば、7月以降の出国でも1,000円になる。
ただし、航空会社などの約款で運賃とは別に税を集めると決めている場合は、7月1日より前の契約でも3,000円がかかる。出国日を決めずに契約して7月1日以後に決めた場合や、7月1日以後に出国日を変えた場合も同じだ(所得税法等の一部を改正する法律〔令和8年法律第12号〕附則第22条)。手元の航空券がどちらにあたるかは、航空会社などの約款で確かめる必要がある。
あわせて読む 3,000円への引き上げが旅行者や旅行会社にどう響くかは、こちらで詳しく解説している。
出国税が7月に3倍へ 1,300億円の使い道と海外旅行への影響
航空会社や船会社が旅客から集めて納める
出国税は、旅客が自分で税務署に納める税ではない。国際観光旅客税法第16条・第17条により、航空会社や船会社が搭乗・乗船の時までに旅客から集め、出国した月の翌々月末日までに国に納める。国税庁のQ&Aは、集め方を「チケット代金に上乗せする等の方法」と説明している。
同じQ&Aによると、納める先は事業者によって分かれる。日本に本店や事務所などがある国内の事業者は税務署へ、それ以外の国外の事業者は出国する空港や港の税関へ納める。航空会社などを使わずにプライベートジェットで出国する場合は、本人が搭乗の時までに税関に納める。
旅客が負担し、航空会社や船会社が集めて納める、という役割分担が出国税の基本だ。国税庁のQ&Aによると、航空会社などは集めた税を、旅客から預かったお金(預り金)として処理する。旅客から集めて国に納めるものなので、消費税の課税対象となる取引の対価にはあたらない。
罰則は集めた税を納めない事業者に重い
国際観光旅客税法は、旅客から集めた税を納めなかった事業者に「十年以下の拘禁刑若しくは二百万円以下の罰金」、またはその両方を科すと定める。納めなかった額が200万円を超えるときは、情状により、罰金をその額まで引き上げられる。
同法は、旅客から税を集めなかった事業者には「一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」を科すと定める。プライベートジェットなどで自ら納めるべき旅客が納めなかった場合や、出国の事実を帳簿に記載しなかった事業者も、同じ罰則の対象になる。
使い道は別の法律で3分野に限られる
出国税は、国のふだんの収入と支出をまとめる一般会計に入る。出国税は使い道を税法で定めた目的税ではなく、別の法律が使い道を定めている。
2018年3月の参議院総務委員会で、財務省の審議官は、出国税は「目的税という分類には入ってございません」と答弁した。審議官は、目的税にすると前例では特別会計で分けて管理し、費目まで法令で決める扱いになると説明した。そのため「使途等が固定化してしまう、硬直化してしまう」懸念があると説明している。
使い道を定めているのは、外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律(国際観光振興法)の第12条だ。政府は出国税の「収入見込額に相当する金額」を、次の3分野の施策に充てる。
- 国際観光旅客が円滑かつ快適に旅行できる環境の整備
- 日本の多様な観光の魅力に関する情報を入手しやすくすること
- 地域固有の文化や自然などを活かした観光資源の開発・活用による、体験と滞在の質の向上
同じ条文は、充てる施策の基本として3つの要件を挙げる。納税者の理解を得られること、先進的で費用に比べて効果が高いこと、地域経済の活性化など政策課題の解決に役立つことだ。
充てる金額は「その年度の予算金額」で計算すると定められている。出国税を充てる額は予算の見込みで決まるため、その年度の実際の税収と一致するとは限らない。
閣僚会議が決めた基本方針
運用の決まりは、観光立国推進閣僚会議が決めた「国際観光旅客税の使途に関する基本方針等について」にある。2017年12月に当初の方針が決まり、2021年12月の全部改正を含めて改定を重ねてきた。
基本方針は、出国税を「既存施策の財源の単なる穴埋め」には使わないとする。受益と負担の関係が不明確な国家公務員の人件費や国際機関の分担金などにも充てない。充てる事業は毎年度洗い替えができるよう、民間有識者の意見も踏まえて予算を組む。無駄遣いを防ぐ仕組みとしては、各省の事業を点検する行政事業レビューによる第三者のチェックを挙げている。
同じ基本方針では、予算はいったん観光庁にまとめて計上し、そこから関係する府省庁に移し替えて使う。出国税を充てる事業は観光庁だけでなく、出入国管理や文化財、国立公園などを担う府省庁にも広がっている。ただし「大手休憩所(仮称)」の整備費は、移し替えではなく皇室費(宮廷費)として扱う。
予算と税収の金額はずれる
観光庁の資料によると、出国税を充てる当初予算(年度の初めに成立した予算)は、2019年1月7日からの徴収分にあたる2018年度に60億円、2019年度500億円、2020年度540億円だった。コロナ禍の2021年度は300億円、2022年度は90億円に縮み、その後は2023年度200億円、2024年度440億円、2025年度490億円と増えた。
財務省の決算額調によると、コロナ禍の2021年度の税収は19億円だった。その後は2022年度126億円、2023年度399億円、2024年度525億円と増え、2025年度は581億円となった。
2021年度は税収を大きく上回る300億円を予算で充てたが、2022〜2025年度は税収が予算を上回った。
この図表のデータを見る
| 年度 | 出国税を充てる当初予算(億円) | 税収・決算(億円) |
|---|---|---|
| 2018年度 | 60 | - |
| 2019年度 | 500 | - |
| 2020年度 | 540 | - |
| 2021年度 | 300 | 19 |
| 2022年度 | 90 | 126 |
| 2023年度 | 200 | 399 |
| 2024年度 | 440 | 525 |
| 2025年度 | 490 | 581 |
| 2026年度 | 1,300 | - |
| 2027年度 | 1,800(要求) | - |
当初予算は観光庁「交通政策審議会観光分科会(第57回)資料1」の「観光庁予算の推移」の数値(概数)。2027年度は概算要求額。税収は財務省「租税及び印紙収入決算額調」(2022〜2025年度)と「令和4年度一般会計税収の予算額と決算額(概数)」の前年度決算額(2021年度)。-は掲載なし、または対象外。
3,000円になった2026年度は、税収の見込みそのものが大きくなる。財務省の予算の説明によると、2026年度の収入見込みは、それまでの税率による600億円に、引き上げによる増収700億円を加えた1,300億円だ。
令和8年度税制改正の大綱は、引き上げによる増収を初年度700億円、1年を通して3,000円がかかる平年度で1,200億円と見込んでいる。
2026年度は1,300億円を7府省庁が使う
観光庁が2026年9月の交通政策審議会観光分科会に出した資料によると、出国税を充てる予算は、2025年度の490億円から2026年度は1,300億円に増えた。約2.65倍である(編集部算出)。
同じ資料は、令和8年版観光白書から引いて、増えた分を地方誘客や混雑・マナー違反への対応など「オーバーツーリズムの未然防止・抑制等新たな課題への対応に重点的に充当」すると説明している。
3分野でみると、快適な旅行環境の整備が596億円、情報を入手しやすくする施策が92億円、地域の観光資源の整備が612億円だ。1つ目にはオーバーツーリズム対策や円滑な出入国、日本人の安全・安心な海外旅行環境の整備などが入る。2つ目は訪日プロモーションなど、3つ目は文化や国立公園、食などを活かしたコンテンツづくりにあたる。
使う府省庁は7つある。基本方針等に載る2026年度の府省庁別の金額では、観光庁が3分野あわせて468億円と最も多く、文化庁、環境省、外務省が続く。同じ資料の円グラフは、観光庁を含む国土交通省を467億円としており、いずれも概数のため1億円ずれる。円グラフでは、2025年度の配分にはなかった外務省が2026年度に加わった。
| 分野 | 主な使い道/府省庁 | 億円 |
|---|---|---|
| ①快適な旅行環境 596億円 | オーバーツーリズム対策、円滑な出入国、観光地へのアクセス、日本人の安全・安心な海外旅行環境など | |
| 出入国在留管理庁 | 128 | |
| 財務省 | 71 | |
| 観光庁 | 223 | |
| 外務省 | 175 | |
| ②情報の入手 92億円 | 訪日プロモーションなど | |
| 観光庁 | 92 | |
| ③地域の観光資源 612億円 | 文化、国立公園、食、アクティビティなど地域の特性を活かしたコンテンツづくり | |
| 文化庁 | 224 | |
| 環境省 | 178 | |
| 観光庁 | 153 | |
| 宮内庁 | 58 | |
あわせて読む 2026年度の観光庁予算を事業ごとに分けた中身は、こちらで整理している。
観光庁予算は2.4倍の1,383億円 出国税3倍化を何に使うのか
使い道の妥当性が改めて問われている
財源が大きくなり、大臣会見でも使い道が質問に上った。国土交通省が公表した2026年8月25日の金子恭之国土交通大臣の会見要旨によると、記者はクマ対策への充当を挙げ、受益と負担のバランスを問うた。前年度まで一般財源で行われていたとみられる事業が加わったとも指摘し、既存事業の穴埋めではないかと質問した。
大臣は、クマの出没範囲には訪日客が多く訪れる国立公園なども含まれ、注意を呼びかけることは必要だとの認識を示した。各事業の使途の適正性や効果の検証は、事業を所管する府省庁の責任で行われているともした。そのうえで「より効果の高い事業への充当や事業の適正性の確保、予算編成プロセスの透明化などを図ってまいります」と述べた。
9月14日には、交通政策審議会観光分科会が出国税を充てた2026年度の事業を議題にした。観光庁は開催の案内で、出国税を活用した施策について「その使途の適正性や予算プロセスの透明性を一層確保し、より効果的な事業に充当させていくことが重要」と書いている。
分科会の資料は、基本方針に照らして今年度の事業の継続性や改善点をどう考えるかを、委員に論点として示した。観光庁の2027年度概算要求では、出国税を充てる分として1,800億円を求めている。観光庁によると、具体的な事業は、予算編成の過程で民間有識者の意見も踏まえて検討し、観光立国推進閣僚会議で決めるとしている。
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観光庁の概算要求1,905億円 94%が出国税財源
あわせて読む 観光政策の全体像は、政策のガイドで整理している。
日本の観光政策はどう動くか 観光庁・基本計画・予算の全体像
出国税を充てる予算は、2025年度の490億円から2026年度は1,300億円に増え、2027年度は1,800億円が要求されている。2027年度は、3,000円の税率が1年を通してかかる最初の年度だ。
観光庁は概算要求の資料で、税率の引き上げが1年分そろうのに「先んじて2026年度で大幅に増額した分野も含め」、毎年度洗い替えができるよう予算を組むと明記した。2026年度に先行して増やした分野も、2027年度の予算編成で見直しの対象になる。
2026年度に出国税を財源として始まった事業でも、2027年度も続くとは限らない。どの事業に充てるかは、例年12月の観光立国推進閣僚会議で決まる。事業に関わる自治体やDMO(観光地域づくり法人)、事業者にとっては、それまでに続ける理由を示せるかが分かれ目になりそうだ。
よくある質問
出典
- e-Gov法令検索「国際観光旅客税法(平成30年法律第16号)」
- e-Gov法令検索「外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律(平成9年法律第91号)」
- 国税庁「国際観光旅客税に関するQ&A(令和8年4月改訂)」
- 観光庁「交通政策審議会観光分科会(第57回)資料1」
- 財務省「令和7年度租税及び印紙収入決算額調」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」


