観光人材の全体像 人手不足・給与・外国人材の現状

明るいホテルのロビーに立つ名札を付けたスタッフの女性。観光人材・ホスピタリティのイメージ
Photo: taka ac / photoAC
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観光産業は、需要が過去最高圏まで戻る一方で、その需要を支える人が足りない。2025年の延べ宿泊者数は6億5,348万人泊と高水準で、うち外国人は1億7,787万人泊と過去最高を更新したが、宿泊・飲食サービスの現場では、製造業や他産業を上回る深い人手不足感が続く。需要は伸びるのに、人は集まらず、残らない。これが「観光業の人手不足」の現状だ。

人手不足は一時的な景気の波ではなく、低い処遇・低い生産性・人口減という構造に根ざす。だからこそ打ち手も、賃上げと処遇改善、デジタルによる省人化、外国人材の受け入れ、多様な働き手の活用と、複数の面にまたがる。どれか一つで解ける問題ではなく、稼ぐ力を上げながら人を確保する好循環をつくれるかが問われている。

このページは「観光人材」分野の入口として、人手不足の現状・原因・政策の骨格・担い手の打ち手を一枚で俯瞰し、各テーマの深掘り記事への入り口を示す。

この記事のポイント

  • 観光業の人手不足は、需要が過去最高なのに人が集まらない「供給制約」として表れている。
  • 根っこにあるのは、16大産業で最も低い給与水準、全産業平均を下回る生産性、そして高い離職率という構造だ。
  • 第5次観光立国推進基本計画は「観光人材の確保」を独立項目に新設し、賃上げと稼ぐ力を一体で進める。
  • 担い手の打ち手は外国人材・省人化・多様な働き手の3つで、自社の課題に応じて組み合わせる。
目次

観光人材・人手不足とは 産業横断の「担い手」の問題

観光人材とは、特定の職業を指す言葉ではない。宿泊・飲食・旅行・交通・観光施設・DMO(観光地域づくり法人)など、観光に関わる産業すべての担い手の総称だ。観光は自動車産業(輸出額17.6兆円)に次ぐ基幹産業に位置づけられ、宿泊・飲食業など関連産業の従事者は約900万人にのぼる(第5次観光立国推進基本計画)。担い手を確保できるかどうかは、一企業の採用課題であると同時に、基幹産業を維持できるかという産業政策そのものの問題だ。

「観光業の人手不足」というとき、実際には採用の難しさ、定着の悪さ、低い処遇、低い生産性、外国人材の受け入れ、といった複数の論点が絡み合っている。本ハブではこれらを産業横断の「面」として俯瞰し、職種別(添乗員・通訳案内士・バス運転手など)や制度別(特定技能・育成就労)の各論は配下の解説記事へ送る。

宿泊の現場の人手不足を入口にすると全体像をつかみやすい。詳しいデータは『観光業の人手不足』、地域の担い手づくりは『地方創生・DMOの全体像』、省人化の手段は『観光DXの全体像』が隣接テーマになる。

この記事で使う主な統計の読み方

人手不足を語る統計は複数あり、母集団や対象が異なる。混同を避けるため、本記事で使う主な指標の意味と注意点を先に示す。

指標何を見るものか注意点
雇用人員判断DI(日銀短観)企業が人手を「過剰」と感じるか「不足」と感じるかの差マイナスが大きいほど不足感が強い。産業別に比較できる
欠員率(雇用動向調査)在籍者に対し、埋まっていない求人がどれだけあるか「実際に足りていない人数」の割合に近い
離職率(雇用動向調査)1年間に離職した人の割合高いほど人が定着しない。入職率とセットで見る
有効求人倍率求職者1人あたりの求人数産業別ではなく職業別・地域別で算出される点に注意
労働生産性従業員1人あたりが生む付加価値額母集団・年度・規模区分で数値が変わる

(注:指標の整理は各統計の定義に基づく編集部整理。個別の数値と出典は本文と末尾の<出典>を参照)

数字で見る人手不足の現状

人手不足の深さは、需要と供給のギャップで見ると分かりやすい。需要は過去最高圏にある一方、現場の人手不足感はとりわけ深い水準で続いている。2025年の延べ宿泊者数は6億5,348万人泊(うち外国人は1億7,787万人泊と過去最高)と高水準で、客室稼働率も61.8%まで上がった。宿泊の現場が必要とする人手も増えている。

ところが、人の供給が追いつかない。日本銀行の短観で雇用人員判断DI(人手が「不足」と答えた企業から「過剰」と答えた企業を引いた値)を見ると、宿泊・飲食サービスはマイナス60〜75前後で推移し、製造業や他の非製造業を大きく下回る「不足」超が続く。

第5次観光立国推進基本計画も、宿泊業・飲食サービス業の欠員率は全産業平均の約1.8倍、非正規雇用者の割合も約1.5倍と明記している。人が足りないうえに、非正規雇用の比重が大きいことを示す数字だ。

求人の出やすさも際立って高い。宿泊分野の職種の有効求人倍率は2024年度で4.71倍と、全国平均(2024年で1.25倍、2025年は1.22倍)をはるかに上回る。求職者1人に対し、宿泊分野の職種では求人が約4.7件ある計算だ。なお有効求人倍率は職業分類・地域別で算出されるため、「宿泊業」という産業単位の倍率は統計上存在しない。本記事で職種別の倍率を示すのはこのためだ。

宿泊業の需要は過去最高圏(延べ宿泊6億5,348万人泊・客室稼働率61.8%)の一方、雇用人員判断DIは▲60〜75・有効求人倍率4.71倍と人手不足が深刻

なぜ人が来ない・残らないのか

人手不足の根っこには、処遇・定着・生産性という三つの構造課題がある。まず処遇だ。宿泊業・飲食サービス業の所定内給与額は月27万7,200円で、16大産業のうち最も低い。全産業計(34万600円)の約8割にとどまり、最高の電気・ガス(44万4,000円)とは大きな差がある。賃上げで前年から2.9%増えたが、順位は最下位のままだ。

次に定着の悪さがある。2024年の宿泊業・飲食サービス業の離職率は一般労働者18.1%・パート29.9%と、全産業計(11.5%・21.4%)を大きく上回る高い水準にある。入職率も高く、人の出入りが激しい。採用できても残らないことが、慢性的な不足を生んでいる。

そして、低い処遇と表裏の関係にあるのが低い生産性だ。第5次基本計画は宿泊業の労働生産性を全産業平均の約7割とし、宿泊事業者の6割以上が資本金1,000万円未満の小規模事業者であることを課題に挙げる。稼ぐ力の低さが低い処遇を生み、低い処遇が人を遠ざける循環が、人手不足を慢性化させている。処遇だけ、生産性だけを切り離して解こうとしても、この循環は断ち切れない。

(注:生産性は第5次観光立国推進基本計画の「全産業平均の約7割」を採用。算出方法の異なる指標もあるが、いずれも全産業平均を下回る点は共通する)

宿泊・飲食サービスの所定内給与は277.2千円で主要16業種中最下位、全産業計340.6千円を大きく下回る
この図表のデータを見る
産業所定内給与額(千円)
電気・ガス・熱供給・水道業444.0
学術研究・専門技術サービス業440.3
金融業・保険業437.0
情報通信業406.0
鉱業・採石業・砂利採取業388.3
教育・学習支援業379.4
建設業366.3
不動産業・物品賃貸業360.1
卸売業・小売業349.1
製造業330.0
複合サービス事業319.0
医療・福祉315.7
運輸業・郵便業312.7
生活関連サービス業・娯楽業295.2
サービス業(他に分類されないもの)284.9
宿泊業・飲食サービス業277.2
全産業計340.6

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」第5-1表(男女計・年齢計)。単位=千円(月額・所定内給与額)。図は主な業種を抜粋、表は全16大産業を収録。

政策の骨格、第5次基本計画が「人材確保」を独立目標にした

人手不足への打ち手を方向づけるのが、国の中長期方針だ。2026年3月に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画(計画期間2026〜2030年度)は、「観光人材の確保」を独立項目として新設した。個別施策に分散しがちだった人材確保を、独立した政策テーマとして束ねた形だ。

計画は、生産性・収益力の向上、賃上げ・処遇改善、省力化投資、外国人材の受け入れ環境整備、デジタル人材の育成を一体で進める方針を掲げる。

象徴的なのが新しい目標設定だ。「宿泊業が創出した付加価値額」を2030年度までに6.8兆円へ(2024年度実績4.3兆円)と定めると同時に、「付加価値の伸びが従業員に還元されているかを確認する観点から、宿泊業の平均賃金の推移も注視する」と明記した。稼ぐ力を上げることと、それを賃上げにつなげることをセットで管理する姿勢だ。

つまり国の方針は、人を増やすだけでなく、稼ぐ力の向上を処遇改善につなげることに軸足を置いている。事業者の打ち手も、この方向に沿って整理すると見通しがよい。

省人化で効率を上げるか、給与を上げて人を確保するか

事業者がまず直面するのが、限られた原資をどこに振り向けるかだ。大きくは「省人化で少ない人手でも回る体制をつくる」か、「賃上げ・処遇改善で人を確保する」かの二つの方向がある。実際にはどちらか一方ではなく、省人化で生んだ余力を処遇に回す両輪で考えるのが要点だ。

省人化の手段は観光DXと地続きだ。PMS(宿泊施設管理システム)やセルフチェックイン、配膳・清掃ロボット、AIチャットボットなどで定型業務を圧縮すれば、限られた人手を接客や企画といった付加価値の高い仕事に振り向けられる。観光庁は「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」や登録制度を設け、省力化投資への支援とあわせて生産性向上を促している。人手不足対策の入口を、省人化投資に位置づけている形だ。

一方で、省人化だけでは人は集まらない。賃上げと労働環境の改善が伴って初めて、採用と定着が進む。小規模事業者にとっては、まず省人化で現場を回せる状態をつくり、生まれた余力を段階的に処遇へ回す進め方が現実的だろう。

あわせて読む 省人化ツールの選び方と、現場の収益管理は、それぞれこちらで詳しく解説している。

外国人材にどう向き合うか

人手不足の即戦力として存在感を増すのが外国人材だ。2025年10月末の外国人労働者数は257万1,037人と過去最多を更新し、外国人を雇用する事業所も37万1,215所に達した。観光の現場でも、外国人材は重要な担い手になりつつある。

宿泊分野で外国人材の受け入れの軸となる制度が、在留資格「特定技能」だ。宿泊分野の受入れ見込数は2024〜2028年度の5年間で2万人と定められ、うち1号特定技能外国人が1万4,800人(受入れ上限)、新制度の育成就労が5,200人とされている。

これは、2028年度に見込まれる約8万1,000人の人手不足のうち、生産性向上(約3万4,000人分)と国内人材の確保(約2万7,000人分)でもなお埋まらない分を外国人材で補う、という積み上げで設定された数字だ。

ただし足元の就労はこれからだ。宿泊分野の特定技能在留者は2025年12月末で1,968人。5年間で2万人という受入れ見込みに対し、就労はこれから本格化する段階にある。直近半年で55.6%増えるなど、伸びは急だ。

外国人雇用の前提も変わる。技能実習に代わる新制度「育成就労」が2027年4月に施行される。目的を技能実習の「国際貢献」から「人材育成・人材確保」へ転換し、就労開始時の日本語要件を設け、一定条件下で本人の意向による転籍を認める(宿泊分野の転籍制限期間は1年)。育成就労から特定技能1号、さらに宿泊分野でも認められた特定技能2号へ、という長期就労の道筋を見据えて、採用と定着を組み直す段階に入る。

あわせて読む 外国人材が活躍する現場と、地域ぐるみの担い手づくりは、それぞれこちらで詳しく解説している。

多様な働き手をどう取り込むか

外国人材や省人化と並ぶ第三の打ち手が、多様な働き手の活用だ。日本人の働き手が減るなかで、これまで主戦力と見なされにくかった層や新しい雇用形態を取り込む動きが広がっている。

代表が、スキマ時間に単発で働く「スポットワーク」だ。市場規模(総賃金額)は2024年で約1,216億円(タイミー推計)、プラットフォーム大手5社の延べ登録者は2024年10月に約2,800万人にのぼる(スポットワーク協会)。市場は2025年も四半期ベースで前年比3割前後の伸びが続く。タイミーによれば、ホテル・旅館は新規に利用が広がる業界の一つで、宿泊現場でも繁忙時の人手をスポットで補う動きが出ている。

地域に根ざした担い手づくりも進む。地域おこし協力隊は2025年度に隊員数8,196人と過去最多を更新し、政府は2026年度に1万人を目標に掲げる。任期を終えた隊員の約70.3%が同じ地域に定住しており、地域の担い手づくりという観点でも注目される。インバウンド対応の中核人材である全国通訳案内士は登録者2万7,950人(2025年4月時点)だが、約7割が英語・大都市圏に偏り、地方や英語以外の言語では担い手の偏在が課題になりやすい。

あわせて読む 多様な働き手の活用を支える省力化・デジタル化は、こちらで詳しく解説している。

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人手不足を乗り越えた現場の工夫

抽象論だけでは動きにくい。実際に定着と採用を改善した宿の取り組みで見ると、打ち手が具体的につかめる。以下はいずれも観光庁が2023年にまとめた事例集に収録された、休館日の設定とマルチタスク化、処遇改善を組み合わせた例だ。

知床グランドホテル(北海道斜里郡)=賃上げとマルチタスクで若手を確保。閑散期の休館日を増やして従業員の年間休日を80日台から115日へ広げ、施設・部門を超えたマルチタスク化とシフトの自動化で少人数運営を実現した。2022年には採用強化のため最低賃金を大幅に引き上げ、人材獲得競争が激しいなかでもコロナ前と同水準の応募者数を確保。離職率は2018年度の10.6%から2021年度に9.5%へ下がった。

竹屋旅館(静岡県)=データに基づく休館日で離職率を3分の1に。稼働率や従業員満足度のデータをもとに、売上が低い日を休館日に充ててワークライフバランスと利益を両立させた。離職率は2019年度の15%から2022年度に5%へ低下し、従業員満足度は約50%から約75%へ上昇。満足度の向上が紹介採用(リファラル)を呼び、入社者の約3割を占めるまでになった。

山水荘(福島県)=高付加価値化で原資を作り処遇に回す。団体客中心から個人客中心へ切り替え、客室の改装などで平均単価を約1万4,000円から約2万2,000円へ引き上げた。生まれた余力で基本給の下限を約10%引き上げ、年間休日も82日から105日へ拡大。新卒採用は2015年比で約3割増えた。

三つに共通するのは、稼ぐ力を高めて生まれた余力を休日と給与に回し、その結果として定着と採用が改善したことだ。省人化や高付加価値化は、処遇改善とセットで初めて人手不足の出口につながる。

事業者タイプ別の打ち手

人手不足の論点は業種を横断する。自社の立場から、まず見るべき数字と最初の打ち手、次に読む記事は次のとおりだ。

  • 宿泊事業者
    まず離職率と客室あたりの人時、採用単価を見る。初手はPMS・セルフチェックイン等の省人化で現場を回せる状態をつくり、生まれた余力を処遇改善に回すこと。
    関連ガイド:宿泊業の全体像
  • 飲食事業者
    まずピーク時の人手と非正規比率を見る。初手はモバイルオーダー・配膳ロボット等の省人化と、スポットワークによる繁忙時間帯の補強。
    関連ガイド:フードツーリズムの全体像
  • 観光施設・体験事業者
    まず繁閑差と専門人材の確保状況を見る。初手は予約・受付のデジタル化で定型業務を圧縮し、ガイド等の専門人材を育成・確保すること。
    関連ガイド:観光施設の全体像観光体験の全体像
  • 旅行・交通事業者
    まず添乗員・運転手など職種別の不足を見る。初手は資格・免許のいる職種の計画的な採用・育成と、外国人材を含む担い手の多様化。
    関連ガイド:旅行業の全体像観光と交通の全体像
  • 自治体・DMO
    大きなボトルネックは、個社では解きにくい地域全体の担い手不足だ。まず地域の有効求人倍率・欠員率を把握する。初手は地域おこし協力隊や移住・関係人口づくりと、事業者横断の採用・定着支援。
    関連ガイド:地方創生・DMOの全体像観光政策の全体像

人手不足対策の進め方(5ステップ)

業種を問わず、人手不足対策は次のような順序で整理すると見通しやすい。人を増やすことから入ると、低い処遇のまま採用に追われ、定着せずに疲弊しやすい。

  1. 不足を数字で特定する
    離職率・欠員率・採用単価・繁閑差など、自社のどこが・どれだけ足りないかを数字で押さえる。何が問題かが、打つべき手を決める。
  2. 省人化で現場を回せる状態をつくる
    PMS・セルフチェックイン・ロボットなどで定型業務を圧縮し、繁忙のピークはスポットワークなど多様な働き手で補う。
  3. 生んだ余力を処遇に回す
    省人化や効率化で生み出した余力を賃上げ・労働環境の改善に振り向け、採用力と定着率を上げる。効率化を処遇改善につなげる段階だ。
  4. 担い手を多様化する
    外国人材(特定技能・育成就労)、地域おこし協力隊、多様な働き手など、自社に合う供給ルートを開く。受け入れ環境の整備も同時に進める。
  5. 稼ぐ力を上げて還元を続ける
    高付加価値化で単価と生産性を上げ、その成果を継続的に処遇へ還元する。補助金や登録制度も活用しながら好循環を回す。

このテーマを深掘りする

本記事で触れた論点は、今後それぞれの専用記事で順次深掘りしていく。

  • データ・現状:観光業の人手不足
  • 外国人・多様な働き手:特定技能「宿泊」 ・ スポットワーク
  • 専門人材:全国通訳案内士 ・ 添乗員になるには ・ バス運転手不足
  • 事業の継続・育成:観光業の事業承継 ・ 接遇研修
  • 隣接テーマ:観光DXの全体像地方創生・DMOの全体像
観光ビジネスの視点

観光業の人手不足は、しばしば「人が採れない」という採用の問題に矮小化される。だが正体は、低い生産性が低い処遇を生み、低い処遇が人を遠ざける構造の循環だ。採用の数を追う前に、稼ぐ力を上げて処遇へ還元する循環をつくれるかどうかが、人手不足を抜け出せるかの分かれ目になる。外国人材も省人化も、その循環を回すための手段であって、それ自体がゴールではない。第5次基本計画が付加価値額の目標に賃金の注視をセットで据えたのは、この循環の重要性を国が認めた表れといえる。

よくある質問

観光業はなぜ人手不足が深刻なのか。

需要が過去最高圏まで戻る一方、現場では強い人手不足感が続き、人も定着しないためだ。宿泊・飲食サービスの所定内給与は16大産業で最も低く、離職率も全産業計を大きく上回る。背景には全産業平均の約7割という低い労働生産性があり、稼ぐ力が低いから賃金を上げにくく、賃金が低いから人が集まらないという循環が起きている。景気の波ではなく、処遇・定着・生産性の構造に根ざした問題だといえる。

観光業の人手不足対策は何から始めればよいか。

まず自社の不足を数字で特定することから始めるとよい。離職率が高いのか、繁忙時間帯の人手が足りないのか、採用単価が重いのかで、打つべき手は変わる。多くの場合、PMSやセルフチェックイン、スポットワークなどの省人化で現場を回せる状態をつくり、生まれた余力を賃上げや労働環境の改善に回す順序が現実的だ。本記事の「人手不足対策の進め方(5ステップ)」も参照してほしい。

特定技能の宿泊分野では何人まで受け入れられるのか。

2024〜2028年度の5年間で、宿泊分野全体の受入れ見込数は2万人と定められている。内訳は1号特定技能外国人が1万4,800人(受入れ上限)、2027年4月施行の育成就労が5,200人だ。ただし足元の特定技能在留者は2,000人弱にとどまり、制度の枠に対して実際の就労はこれから増える段階にある。最新の人数や要件は出入国在留管理庁・観光庁の公表資料で確認するとよい。

育成就労制度で外国人雇用はどう変わるのか。

技能実習に代わる新制度として2027年4月に施行され、目的が「国際貢献」から「人材育成・人材確保」へと変わる。就労開始時に一定の日本語能力が求められ、一定条件下で本人の意向による転籍が認められる(宿泊分野の転籍制限期間は1年)。育成就労から特定技能1号、さらに特定技能2号へとつながる長期就労の道筋を見据えて、採用と定着を組み直すことが事業者に求められる。

賃上げをすれば人手不足は解決するのか。

賃上げは必要だが、それだけでは続かない。原資となる稼ぐ力(生産性)が伴わなければ、無理な賃上げは経営を圧迫する。だからこそ、省人化や高付加価値化で生産性を上げ、その成果を処遇に還元する循環をつくることが要点になる。第5次観光立国推進基本計画も、付加価値額の向上と賃金の推移をセットで管理する方針を示している。賃上げ・省人化・担い手の多様化は、どれか一つでなく組み合わせて進めるのが現実的だ。

<出典>

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