リファンド方式とは 何がいつから変わる
2026年11月1日、免税での買い物の仕組みが根本から変わる。これまでは免税店の店頭で消費税分を差し引いた税抜き価格で買えた。11月からは、旅行者はいったん税込みで支払い、出国時に税関が商品の持出しを確認したうえで、消費税相当額が後から返る。この後払いの還付方式を「リファンド方式」と呼ぶ。
還付を受ける条件は、購入日から90日以内の出国時に税関の確認を受けることだ。1回の購入記録に含まれる商品のうち一つでも持出しが確認できなければ、その購入記録の全商品が免税の対象外になる。買っただけでは免税は成立せず、持ち出して初めて成立する建て付けに変わる。
あわせて品目のルールも整理される。これまで分かれていた一般物品と消耗品の区分は撤廃され、消耗品にあった同一店舗1日あたり50万円の上限や特殊包装の要件はなくなる。免税を受けられる購入下限額は、これまでどおり同一店舗の同じ日で税抜5,000円以上に据え置かれる。購入者が購入後にEMSなどで自ら発送する「別送」の扱いは、先行して2025年3月末に廃止された。店頭でその場に運送事業者へ引き渡す直送や、販売事業者が国外へ輸出する方法は引き続き認められる。
| 現行「その場免税」 | リファンド方式(11月〜) | |
|---|---|---|
| 消費税を引いた税抜き価格で買える | 会計時の価格 | 税込み価格でいったん支払う |
| 店頭で購入した時点で成立 | 免税の成立時点 | 出国時に税関が持出しを確認した時点で成立 |
| その場で差し引かれる | 消費税分 | 確認後に返金(リファンド) |
| とくになし | 持出し確認 | 購入日から90日以内の出国時に必要 |
| 一般物品と消耗品を区分 | 品目の区分 | 区分を撤廃(購入下限5,000円は維持) |
なぜ変えるのか 「持ち出さない免税品」という抜け穴
政府が掲げる狙いは、不正利用を排除し、免税店が不正排除のための負担を負わない制度にすることだ。現行のその場免税では、税抜きで手に入れた商品を国内で転売したり、そもそも出国時に持ち出さず消費税の負担を免れたりする例が問題になってきた。持ち出さなかった物品には本来消費税がかかるが、出国時にそれを取りきれていなかった。
その一端は数字にも出ている。日本総研の分析によると、2022年度に免税で1億円以上を購入した374人のうち、税関で捕捉・検査できたのは57人(15.2%)にとどまる。その57人のうち、持出しが確認できたのは1人だけだった。残る56人は免税の条件を満たさず消費税を課され、うち55人はその税を納めないまま出国していた。ただしこれは購入額が飛び抜けて大きい層に絞った数字で、免税購入者全体の未持出し率を示すものではない。
背景には免税店と免税消費の急拡大がある。免税店は2014年の5,777店から2024年秋には61,392店へと約11倍に増えた。2022年4月からの2年間で免税購入額は2兆4,979億円にのぼる。訪日外国人の旅行消費額も2014年の2兆円から2024年は8.1兆円へと膨らんだ。免税販売の規模が広がるなか、不正利用を防ぐ仕組みの重要性も高まっていた。
リファンド方式では、出国時に持ち出しが確認された取引だけが免税として成立する。持ち出しの有無は税関の確認情報として国税庁のシステムに記録され、免税店はその結果を受け取って初めて返金し、免税売上げとして処理する。買っただけでは免税にならず、確認を経て成立する建て付けになる。
店頭はどう変わるか 消える手間と、加わる手間
11月からの変化は、店頭にとって負担が「増える」だけの話ではない。まず、これまで手間だった作業のいくつかが消える。一般物品と消耗品の区分がなくなり、商品ごとに扱いを分ける必要も、消耗品の特殊包装もいらなくなる。区分をまたぐ購入の判定や梱包に割いてきた時間は、そのまま軽くなる。日本総研は、こうした店頭確認の簡素化で店舗の負荷が下がり、これまで免税販売を敬遠してきた地方の小規模店が参入しやすくなると期待する。
一方で、新しく加わる作業もある。会計は税抜きから税込みに変わり、税関の確認結果を取得して保存し、それに基づいて消費税相当額を返金する。免税販売管理システムやレジ・免税端末の対応も前提になる。ただし旅券の確認や購入記録情報の作成・送信は現行制度でも行っており、店頭が「税抜きで会計するだけ」だったわけではない。ゼロからの上乗せというより、確認結果の取得・保存と返金処理が新たに乗る形だ。
- 一般物品と消耗品の区分・品目の判定
- 消耗品の特殊包装
- 同一店舗1日50万円上限の管理
- 税込みでの販売会計
- 税関確認結果の取得・保存
- 消費税相当額の返金(返金方式の選択)
判断が要るのは、返金をどう返すかだ。自社で返す方法もあれば、返金を代行する事業者に委ねる方法もある。タイミングも、税関の確認後に返す事後返金と、確認前に店頭で先に返す事前返金がある。事前返金はその場で旅行者に応じられる半面、確認が取れず免税が成立しなかったときの消費税を店が負う。手数料の有無や負担者、返金の条件は委託先ごとに異なり、詳細はこれから詰められる段階にある。
加えて、購入から90日以内の出国や、購入記録に一品でも未確認があれば全体が対象外になる条件を、外国語の客にどう伝えるかも店頭の課題になる。返金の仕組みが十分に伝わらなければ、問い合わせは店や返金事業者に向かう。
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訪日客をめぐる見直しのなかで
リファンド方式は、訪日客をめぐる費用や手続きの見直しが相次ぐなかの一つでもある。2026年7月には国際観光旅客税(出国税)が出国1回あたり1,000円から3,000円へ引き上げられ、訪日ビザの発行手数料も同時に引き上げられた。いずれもすでに施行されている。
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もっとも、リファンド方式の性格はこれらとは異なる。出国税やビザ手数料が旅行者の実質負担を増やすのに対し、リファンド方式は税負担そのものを増やすわけではない。変わるのは、免税が受けられるかどうかが出国時の税関確認にかかる点と、その確認を支える手続きが店頭と税関の双方に生じる点だ。旅行者にとっては、購入した商品について出国時に税関の確認を受ける手順が新たに加わる。
リファンド方式では、免税が「会計時の割引」から「購入後の返金」に変わる。ただし、店の負担が一方的に増えるわけではない。品目の区分や特殊包装、購入上限額の管理などが不要になり、従来の手間は減る。免税販売を敬遠してきた地方の小規模店も、参入しやすくなる可能性がある。
一方、新たに必要になるのが返金方法の設計だ。自社で返金するか代行会社に任せるか、税関の確認前に返すか、確認後に返すかを決めなければならない。確認前に返金すると、免税が成立しなかった場合の損失を店側が負う。重要なのは、返金手数料や時期、免税が成立しなかった場合の扱い、客への説明まで含め、自店に合った方式を選ぶことだ。負担が一律に増えるのではなく、返金方式の選び方によって軽くも重くもなる。
出典
- 国税庁「リファンド方式(輸出物品販売場制度の見直し)について(概要編Q&A・税関確認結果FAQ)」
- 観光庁「消費税免税店サイト(新制度・リファンド方式)」
- 日本総研「新たな免税店制度(リファンド方式)導入への期待(リサーチ・フォーカスNo.2025-018、高坂晶子、2025年6月3日)」
- 財務省「ファイナンス 令和7年5月号(リファンド方式への見直しの趣旨)」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱(国際観光旅客税の引上げ)」




