DMO登録制度のガイドライン一部改正が8月から施行

格子戸と瓦屋根の町家が並ぶ古い街道筋を、数人の歩行者が行き交う。電柱と電線が続き、突き当たりは紅葉した山につながる。
Photo: Kate Kasiutich / Unsplash
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8月1日、指標の決め方が変わる

観光庁は2026年7月24日、「観光地域づくり法人の登録制度に関するガイドライン」の一部改正を公表した。施行は8月1日である。

変わったのは、登録DMO(観光地域づくり法人)が「何を測るか」の決め方だ。国が指標の名前まで指定して必ず測らせる項目は6つから4つに減った。一方で、KPIを設定すべき「観点」は6つから8つに増えている。

数だけ見ると緩和にも引き締めにも見える。改正後の登録要件が求めるものを一覧にすると、次のようになる。

8観点のうち必須は4つ
改正後の登録要件が求めるKPIの観点と具体例
地域の成果① 来訪者1人当たりの旅行消費 KPI例:1人当たり旅行消費額必須
② 域内の旅行消費を促す滞在 KPI例:延べ宿泊者数必須
③ 質の高い観光の実現により向上する来訪者の体験価値 KPI例:来訪者満足度必須
④ 観光振興に対する地域住民の理解と受容 KPI例:住民満足度必須
⑤ 域内の観光関連産業従事者への裨益 KPI例:観光関連産業従事者の平均給与額例示
⑥ 来訪者の季節的偏在 KPI例:月別来訪者数の平準化率例示
組織の基盤⑦ 持続的な組織運営に係る人材基盤 KPI例:職員満足度例示
⑧ 持続的な組織運営に係る財政基盤 KPI例:安定財源確保率例示
(注:「必須」は具体的な指標名まで全国共通で固定されるもの。「例示」の4観点はKPIの設定自体は必要で、指標は地域の実情に応じて選べる。「地域の成果」「組織の基盤」の区分は編集部による整理。広域連携DMOは観点④〜⑥、都道府県DMOは観点④が適用除外。更新登録要件では、実行計画に基づく自由設定のKPIが2観点加わり10観点になる)
出典:観光庁「観光地域づくり法人の登録制度に関するガイドライン」(令和8年7月24日一部改正)第6 1(1)イ

そもそもDMOは何をする組織か

DMOは、地域の観光を束ねる司令塔として国が登録する法人である。観光協会が母体になっていることが多く、宿泊事業者や交通事業者、行政をつないで地域全体の観光戦略を描く役割を担う。登録制度は2015年11月に始まった。

登録されると、国の補助事業の対象になりやすくなり、地域の関係者をまとめる旗印としての正統性も得られる。その代わり、データに基づく経営や安定した財源の確保といった要件が課され、3年ごとに更新の審査を受ける。看板を掲げるだけでは続かない仕組みになっている。

あわせて読む DMOという制度の成り立ちと、全国の登録状況はこちらで整理している。

御大典の幟を掲げて担がれる金色の神輿と担ぎ手たち。祭りでにぎわう地域の情景。地方創生・DMOのイメージ 地方創生・DMOとは 観光で地域が稼ぐ仕組みの全体像

その要件のなかで、近年もっとも重い位置を占めるようになったのがKGIとKPIだ。KGIは最終的に届きたい成果の目標値、KPIはそこへ向かう途中の達成度を測る指標を指す。旅行消費額や延べ宿泊者数といった数字を毎年集め、動きを説明できることが求められる。

出発点は2025年3月の改正

今回の改正は、単独で降ってきたものではない。前年3月に入った大きな改正のフォローアップという性格が強い。

観光庁は2025年3月25日、ガイドラインを大幅に改正した。趣旨は「インバウンド増加に伴うオーバーツーリズムの未然防止・抑制、地方誘客等新たな課題が顕在化していることを受け、DMOに求める役割の明確化や活動の質の向上を図ること」である。施行は同年10月1日だった。

このとき変わった量は大きい。登録区分を組み替えて都道府県DMOを新設し、CMO・CFOの配置と常勤職員3名以上を求め、財源計画の策定を必須にした。そして、KGIとKPIを必須要件として正面から要件表に入れたのも、この改正である。

背景には有識者の議論があった。改正ガイドラインによれば、観光庁は2023年2月に有識者会議を設置し、2024年1月に「観光地域づくり法人の機能強化に関する有識者会議」へ改称した。2025年6月に公表された意見集約には、現場の数字が並ぶ。

回答した305のDMOのうち84%が財源を課題に挙げ、65%がDXに課題があると答えた。回答した170のDMOのうち経営戦略を策定しているのは38%にとどまる。

住民との合意形成を行っているDMOは26%で、意見集約は「何らかの関係構築をしているDMOを加えても57%にすぎず」と書く。2025年6月現在、登録DMOの約6割は前身が観光協会である。

現場から出た「対応が難しい」

要件を引き上げた側は、その反応も受け取っていた。観光庁が今回あわせて公表した改正の概要は、見直しの理由をかなり具体的に書いている。

DMOからは「どのように解釈すべきか」「どこまで求められているのか」という問い合わせが寄せられ、記載の不明確さが課題になっていた。運用上の判断事例が増えたことで、認識に差異が生じるケースもあった。

KGI・KPIについては、新たに必須要件として追加した経緯に触れたうえで、DMOから「対応の難しさを指摘する声が多く」と続ける。そして形式的な要件対応に偏り、本来注力すべき取組への影響が懸念される、と記した。

要件対応が形になぞるだけの作業に流れ、本来の観光地経営が薄くなる。制度の設計側が自らその懸念を文書に書き込み、施行から10か月で手直しに入った。

指標の指定から観点の提示へ

では、何をどう直したのか。観光庁は新旧対照表を公表していないため、本誌が両版を突き合わせた。

改正前の登録要件は、6つの指標を並べたうえで、その全てのデータを収集・分析できる仕組みが構築されていること、と定めていた。指標名がそのまま要件だった。

改正後は表の作りが変わり、左に「観点」、右に「具体的なKPI例」が並ぶ。そして名前まで固定されるのは4つだけになった。

なお、8つの観点がすべてのDMOに一律にかかるわけではない。広域連携DMOは④〜⑥、都道府県DMOは④が適用除外になる。

指標の指定から観点の提示へ
登録要件におけるKPIの定め方(改正前後)
改正前(2026年7月31日まで)
  • KPIは6指標を列挙し、そのすべてが要件
  • 何を測るかは指標名で国が指定
  • 職員満足度・安定財源確保率はKPIの外に別要件として存在
改正後(2026年8月1日から)
  • KPIは8つの観点で提示し、原則すべての観点で指標の設定が必要
  • 指標名まで固定されるのは4つ(1人当たり旅行消費額・延べ宿泊者数・来訪者満足度・住民満足度)
  • 残る4観点の指標は例示。地域の実情に応じて選べる
(注:観点⑤〜⑧の例は、観光関連産業従事者の平均給与額、月別来訪者数の平準化率、職員満足度、安定財源確保率。広域連携DMOは観点④〜⑥、都道府県DMOは観点④が適用除外となる。更新登録要件では、実行計画に基づく自由設定のKPIが2観点加わり10観点になる)
出典:観光庁「観光地域づくり法人の登録制度に関するガイドライン」(令和7年3月25日一部改正版・令和8年7月24日一部改正版)をもとに編集部作成

ただし、これを単純な緩和と読むと足をすくわれる。指標名の固定は6から4へ減ったが、KPIを設定すべき観点は6から8に増えているからだ。

増えた2つは職員満足度と安定財源確保率で、改正前も要件ではあった。ただしKPIの列挙とは別の場所に置かれていたものが、今回KPIの表に組み込まれた。新しい負担が足されたのではなく、散らばっていた要件が表に結び直された形である。

導入文の書きぶりも変わった。改正前は「収集及び分析ができる仕組みが構築されていること」と、体制の存在を問う書き方だった。

改正後は「その状況及び経年変化を把握し、分析・評価するためのKGI及びKPIを設定し、必要なデータの収集を行うこと」となる。仕組みがあるかどうかではなく、DMO自身が設定して経年で追えているかを問う形に変わった。

更新時の経済波及効果は3年に1回

運用ルールの明文化も入った。わかりやすいのが、3年ごとの更新登録で求められる経済波及効果の扱いである。

改正後のガイドラインは「更新登録申請を行う前年度までの直近3年間に1回計測することで足りるものとする」という但し書きを新設した。改正前の版にこの記述はない。

経済波及効果は、産業連関表を使って地域内の旅行消費額から誘発される効果を計測する。観光庁は2025年4月に計測の手引書も出している。専門知識を要する作業について、必要な頻度が条文に書き込まれた。

観点の書き方にも「産業別」という限定が加わった。求める粒度が先に示された形だが、産業別の内訳まで求める要求の明確化とも読める。

指標を選べることは楽になることか

では、現場の負担は軽くなるのか。ここは見方が割れる。

軽くなる、と読む根拠はある。経済波及効果の計測が3年に1回でよいと明文化され、給与額や平準化率といった、地域によっては取りにくいデータが必須の指定から外れた。解釈の幅が狭まった分、審査で想定外の指摘を受ける場面も減るとみることはできる。

一方で、必須指定が外れた4つの観点が消えたわけではない。観点についてはKPIを設定しなければならず、何を指標に据えるかの判断がDMO側に移ったとも言える。

改正前も、並んだ指標のデータを集めて分析する体制は求められていた。変わるのは、⑤〜⑧について「なぜこの指標がこの観点を測るのに適切か」という選定の理由が生じる点だ。条文が説明を義務づけているわけではないが、審査を通す実務では整理しておく意味が大きい。

選べる自由は、選んだ理由を語れる組織にとってだけ自由である。意見集約によれば、回答した170法人のうち経営戦略を策定しているのは38%にとどまる。戦略がなければ、観点に合う指標を導く手がかりも乏しい。緩和と設計責任の移転は、同じ改正の裏表だ。

更新登録に効くのは2027年4月

実務のカレンダーも押さえておきたい。今回の改正は8月1日に施行されるが、更新登録の要件だけは2027年4月1日施行と別建てになっている。

この2027年4月という期日は2025年改正の附則がすでに置いていたもので、今回もそのまま引き継がれた。観光庁の登録制度のページも、2027年3月末までの更新登録審査には旧ガイドラインの登録要件を適用すると案内している。更新登録の審査で経済波及効果や自由設定のKPIが問われ始めるのは、2027年4月以降になる。

新規登録の側も、今回の版がすぐ効くわけではない。登録DMO第21弾の募集は2026年7月31日17時で締め切られ、審査に用いるガイドラインは「令和7年3月25日改正」版と明記されていた。登録予定日は2027年4月1日である。

登録の規模も見ておきたい。観光庁の登録一覧によれば、2026年4月1日現在の区分別登録数は広域連携DMOが10、都道府県DMOが38、地域DMOが280である。候補DMOは24を数える。

同じ日に、前回登録から3年を経過した26法人が更新登録を受けた(注:北海道と沖縄県は広域連携DMOと都道府県DMOを兼ねるため、区分別の件数を合計しても法人数とは一致しない)。

取消の扱いも確認しておく。更新登録の申請をしなかった法人の登録を「取り消すものとする」という規定は、改正前後で変わっていない。動いたのは、更新登録要件を満たさない法人に対する取消の留保だ。

改正前は、再申請の意思を書面で示せば1年に限り留保していた。改正後は対象を2025年3月改正で追加された事項に絞り、適用も更新登録要件の施行後に最初に行う更新登録に限った。この経過措置に限れば、対象も回数も絞られたことになる。

観光ビジネスの視点

今回の改正で、DMOの「説明する力」がこれまで以上に大切になる。①〜④は引き続き全国共通の指標だが、⑤〜⑧は、国が示す観点に沿って各DMOが指標を設定する。2027年4月以降の更新登録から、この運用が始まる。

経営戦略が明確なら、観点を指標に落とし込みやすい。一方、戦略が十分に整理されていない組織は、指標選びに迷うかもしれない。経営戦略を策定しているDMOは、回答した170法人の38%にとどまる。指標を選べるようになる分、今後は組織ごとの考え方や取り組みの差が見えやすくなりそうだ。

出典

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