地産地消とは 数字で見る直売所と観光活用の事例

木箱に積まれた収穫野菜。手前にカリフラワーとブロッコリー、奥にラディッシュや玉ねぎが並ぶ
Photo: Shelley Pauls / Unsplash
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地産地消とは、ある地域で生産された農林水産物を、その地域内で消費する取り組みを指す。学校給食や直売所と結びつけて語られることが多い言葉だ。

ただし統計を追うと、その中心にある農産物直売所の姿は直近5年度で変わっている。事業体数は減り、販売総額と1事業体当たりの販売額はどちらも増えた。

ただしこれは名目の金額である。同じ期間の食料の物価上昇を差し引くと、販売額はむしろ減っている。

本記事では、地産地消の意味と法律上の位置づけを押さえたうえで、直売所の数字、政策目標との距離、観光との接点を解説する。地域で食を扱う事業者が次に何をするかを考える材料にしたい。

この記事のポイント

  • 地産地消を制度で支えるのは六次産業化・地産地消法。ただし法律が定義しているのは「地域の農林水産物の利用」という用語である。
  • 農産物直売所は令和6年度に20,960事業体、販売総額1兆1,344億円。令和2年度からの5年度で、事業体数は約2,600減り、販売総額は約800億円増えた。
  • ただしこの伸びは名目値。食料の消費者物価で割り戻すと、販売総額は同じ5年度で実質約1割減っている。
  • 年間販売額1億円以上の通年営業直売所は令和6年度で28.3%。令和7年度までに50%以上という目標を下回るが、令和7年度の最終実績は未公表である。
  • 観光との接点は道の駅と農泊。農泊の延べ宿泊者は令和6年度に867.6万人泊、インバウンド比率8.6%はコロナ禍前を上回った。
目次

地産地消を定める法律は何を決めているか

直売所での購入、学校給食への地場産物の使用、地元の飲食店が地元の食材を使うことなど、地産地消の形はさまざまだ。

制度としての中心にあるのが六次産業化・地産地消法(平成22年12月3日公布)である。正式名称は「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」で、6次産業化と地産地消の両方を1本の法律で扱う。

この法律は「地産地消」という語そのものを定義しているわけではない。法第25条が定義しているのは「地域の農林水産物の利用」という用語である(農林水産省の解説資料は、これを「地域の農林水産物の利用の促進」として整理している)。

その定義は、国内の地域で生産された農林水産物をその生産された地域内において消費すること、に加えてもうひとつの要素を含む。地域において供給が不足している農林水産物がある場合に、他の地域で生産された当該農林水産物を消費することまでが、定義の中に入っている。

つまり「地元のものだけを食べる」という意味ではない。地元で足りない分を他の地域の国産で補う形も、この法律の枠内にある。

法律が国と地方公共団体に求める施策は9つある。地域の農林水産物の利用の促進に必要な基盤の整備、直売所等を利用した利用の促進、学校給食等における利用の促進、地域の需要等に対応した農林水産物の安定的な供給の確保。

残りは、利用の取組を通じた食育の推進等、人材の育成等、国民の理解と関心の増進、調査研究等の実施等、多様な主体の連携等である。

都道府県と市町村は、地域の農林水産物の利用の促進についての計画(促進計画)を定めるよう努めることとされている(法第41条第1項)。努力義務であり、義務ではない。

あわせて読む 同じ法律のもう一方の柱が6次産業化だ。認定制度と交付金の名前の変遷は、こちらで整理している。

直売所の台に並ぶブルーベリーやイチゴのパックと手書きの価格札 6次産業化とは 意味・事例・補助金の基礎知識

数字で見る農産物直売所の5年

地産地消の現状を数字で追うとき、中心になるのが農産物直売所である。

農林水産省の6次産業化総合調査(令和6年度確報・令和8年7月7日公表)によると、令和6年度の農産物直売所の年間販売金額は1兆1,344億円で、前年度に比べ0.7%増加した。農業生産関連事業の年間総販売金額2兆2,244億円に対して51.0%を占め、農業生産関連事業の業態別では最も高い。

事業体数を並べると、令和2年度23,600、令和3年度22,680、令和4年度22,380、令和5年度21,240、令和6年度20,960である。令和2年度から令和6年度にかけて、4年連続で減った。

年間販売金額は同じ期間に1兆535億円から1兆1,344億円へ増えた。1事業体当たりでみると4,464万円から5,412万円になっている。

事業体数が減りながら、販売総額も1事業体当たりの販売額も増えている。これが直売所のいまの姿だ。

事業体数は減り、1事業体当たり販売額は名目で増えた
農産物直売所の事業体数と1事業体当たり年間販売金額(令和2〜6年度)
農産物直売所の事業体数と1事業体当たり年間販売金額の推移(令和2〜6年度) 事業体数は令和2年度23,600から令和6年度20,960まで4年連続で減少した。1事業体当たり年間販売金額は同じ期間に4,464万円から5,412万円へ増えた。 5 10 15 20 25 (千事業体) 4,464万円 5,412万円 令和2 令和3 令和4 令和5 令和6 事業体数(左目盛) 1事業体当たり販売金額
(注:折れ線は1事業体当たり年間販売金額の動きを示すもので、目盛は持たない。値は始点と終点に表示した。各年の実数は下のデータ表を参照)(注:図の金額はいずれも名目値。食料の消費者物価で割り戻した実質値はデータ表に併記した)
出典:農林水産省「6次産業化総合調査」各年度確報 総括表1-1をもとに編集部作成
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年度事業体数総額(名目)総額(実質)1事業体当たり(名目)1事業体当たり(実質)
令和2年度23,600事業体1兆535億円1兆535億円4,464万円4,464万円
令和3年度22,680事業体1兆464億円1兆381億円4,613万円4,576万円
令和4年度22,380事業体1兆879億円1兆214億円4,862万円4,565万円
令和5年度21,240事業体1兆1,264億円9,845億円5,303万円4,635万円
令和6年度20,960事業体1兆1,344億円9,444億円5,412万円4,505万円

農林水産省「6次産業化総合調査」各年度確報 総括表1-1。総額は原表の100万円単位を億円に換算した。1事業体当たり年間販売金額は原表の掲載値で、総額を事業体数で割った単純計算とは末尾が一致しないことがある。全年度を原表で照合。実質は総務省統計局「消費者物価指数」の食料(年度平均・2020年基準)で令和2年度価格に換算した編集部試算。

ここまではすべて名目の金額である。この5年度は、食料の値段が大きく上がった時期でもあった。

総務省統計局の消費者物価指数(年度平均・2020年基準)でみると、食料は令和2年度の99.9から令和6年度の120.0へ、20.1%上がっている。

この上昇分を差し引いて令和2年度の価格に換算すると、様子が変わる。販売総額は1兆535億円から9,444億円へ、5年度で約1割減る。しかも1年も前年を上回っていない(編集部試算)。

1事業体当たりのほうは4,464万円から4,505万円で、ほぼ横ばいだ。名目の21.2%増は、食料の物価上昇20.1%とほとんど同じ幅だった。

農林水産省の資料は、直売所の年間販売金額における地場産商品の割合を約9割としている。直売所の売上の大半は、地場産商品が占めている。

同じ「直売所」でも規模はまるで違う

直売所を運営主体で分けると、構造がはっきりする。

農林水産省の「地産地消の促進について」(令和8年7月)によれば、直売所数全体の53.8%を占める農業経営体の販売総額の割合は17.3%である。これに対し、全体の10.4%である農業協同組合が販売総額の38.7%を占める。

1直売所当たりの販売金額でみると、農業協同組合が約2億円、農業経営体が1,741万円だ。全体平均は5,412万円である。

施設数の半分が、売上の2割弱
農産物直売所の運営主体別構成比(令和6年度)
農産物直売所の運営主体別構成比(施設数と販売総額) 施設数では農業経営体が53.8%、農業協同組合が10.4%、その他が35.8%。販売総額では農業経営体が17.3%、農業協同組合が38.7%、その他が44.0%。施設数の構成比と販売総額の構成比は一致しない。 農業経営体 農業協同組合 その他 施設数の構成比 53.8% 35.8% 10.4% 販売総額の構成比 38.7% 44.0% 17.3%
(注:「その他」は100%からの残差として編集部が算出した)(注:1直売所当たりの年間販売金額は農業経営体1,741万円、農業協同組合20,242万円、その他6,643万円、全体5,412万円)(注:この差が立地、品ぞろえ、集客のどれによるものかは、この統計だけでは判断できない)
出典:農林水産省「地産地消の促進について」(令和8年7月)をもとに編集部作成
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運営主体施設数の構成比販売総額の構成比1直売所当たり年間販売金額
農業経営体53.8%17.3%1,741万円
農業協同組合10.4%38.7%20,242万円
その他35.8%44.0%6,643万円
全体100.0%100.0%5,412万円

農林水産省「地産地消の促進について」(令和8年7月)。令和6年度。「その他」の構成比は100%からの残差として編集部が算出した。

運営主体別に見ると、施設数の構成比と販売総額の構成比は大きく食い違う。 ただし、その差が何から生まれているのかは、この統計からは分からない。

多数派である農業経営体の直売所は、平均すると小規模である。

もうひとつ、直売所の数字を読むときに知っておきたい仕組みがある。

直売所には、生産者が持ち込んだ農産物を店が預かって売り、売れた分から手数料を受け取る形がある。この形だと、店頭を通った金額と、運営会社の売上高は別の数字になる。

愛媛県内子町の道の駅「小田の郷せせらぎ」を運営する小田まちづくり株式会社の場合、町議会に報告された第24期の決算では、農産物の出荷者から受け取る販売手数料を「販売額の17%」と説明している。手数料収入の額は978万4,913円だった。

目標50%に対して28.3% しかも前年度から低下

政策の側は、地産地消に数値目標を置いてきた。主なものを3つ見ておく。

1つ目が直売所の販売額である。基本方針(平成23年農林水産省告示第607号・最終改正 令和3年)は「主として農畜産物を取り扱う通年営業の直売所について、年間販売額が1億円以上のものの割合を、令和7年度までに50%以上とすることを目指す」としていた。

基準となる令和元年度の割合は26%と、農林水産省の資料が示している。ただし、この26%がどの母集団からどう算出されたかは資料に書かれていない。

この割合は令和6年度で28.3%である(編集部算出)。6次産業化総合調査の原表で、常設施設・通年営業の直売所(10,580事業体)のうち「1〜3億円」19.2%と「3億円以上」9.1%を足した値だ。同じ方法で計算すると令和5年度は30.3%で、そこからは下がっている。

目標年度である令和7年度は、2026年8月時点ですでに過ぎている。最終実績はまだ公表されていない。

2つ目が学校給食である。文部科学省の調査によると、令和7年度の地場産物使用割合は全国平均57.2%、国産食材は90.0%だった(いずれも金額ベース)。ここでいう地場産物は都道府県内産を指す。地場産物は令和3年度の56.0%から令和7年度の57.2%へ、1.2ポイントの動きにとどまる。

ただし食育推進基本計画が置いた目標は、使用割合そのものではない。「現状値から維持・向上した都道府県の割合を90%以上」という形になっている。令和7年度の実績は地場産物70.2%、国産食材83.0%で、いずれも90%に届いていない。

3つ目が消費者の意識だ。「産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選んでいる」と答えた国民の割合は令和7年度で66.0%である。令和3年度の74.8%から全体として低下した(令和6年度は前年から0.1ポイント上昇したが、令和7年度は再び下がっている)。

3つの目標に、どこまで届いているか
地産地消に置かれた政策目標と直近実績(帯の全体が100%)
地産地消に置かれた3つの政策目標と直近実績 年間販売額1億円以上の通年営業直売所の割合は実績28.3%に対し目標50%以上。学校給食の地場産物使用割合が維持・向上した都道府県の割合は実績70.2%に対し目標90%以上。産地や生産者を意識して食品を選ぶ国民の割合は実績66.0%に対し目標80%以上。いずれも目標に届いていない。 年間販売額1億円以上の 通年営業直売所の割合 実績28.3%(令和6年度・編集部算出) 目標50%以上 学校給食の地場産物使用割合が 維持・向上した都道府県の割合 実績70.2%(令和7年度) 目標90%以上 産地や生産者を意識して 食品を選ぶ国民の割合 実績66.0%(令和7年度) 目標80%以上
(注:3つの指標は対象も調査方法も異なる。達成度どうしを比べる図ではない)(注:直売所の28.3%は6次産業化総合調査の原表の構成比を編集部が合算した値。目標年度の令和7年度はすでに経過しているが、最終実績は未公表)(注:国民の割合の目標80%以上は第4次食育推進基本計画の値。第5次計画では70%以上に変わった)
出典:農林水産省「地産地消の促進について」「6次産業化総合調査」「食育推進基本計画」、文部科学省「学校給食における地場産物・国産食材の使用状況調査」をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
指標直近実績目標実績の時点・備考
年間販売額1億円以上の通年営業直売所の割合28.3%令和7年度までに50%以上令和6年度・編集部算出
学校給食の地場産物使用割合が維持・向上した都道府県の割合70.2%90%以上令和7年度
産地や生産者を意識して食品を選ぶ国民の割合66.0%80%以上(第4次計画)令和7年度

直売所の割合は、常設施設・通年営業10,580事業体の販売金額規模別構成比のうち「1〜3億円」19.2%と「3億円以上」9.1%を編集部が合算した値(全直売所20,960事業体を母数にすると14.4%)。学校給食は金額ベース。国民の割合は令和7年度の食育に関する意識調査(有効回収2,391人)。第5次食育推進基本計画では国民の割合の目標が70%以上に変わった。

2026年6月に決定した第5次食育推進基本計画は、学校給食の2つの目標について「維持・向上した都道府県の割合90%以上」という水準を据え置いた。第4次計画で未達のまま、同じ水準が引き継がれた形だ。

産地や生産者を意識して選ぶ国民の割合の目標は、80%以上から70%以上に変わった。

地域の食は、来訪者にも売れている

直売所の現場では、来訪者が客の一定割合を占めることは前提になっている。政策文書の側にも、早い段階から観光の要素が入っていた。

地域の食と接点が生まれる場は3つある
地産地消の需要が生まれる場と、それぞれの直近指標
地域の農林水産物が届く3つの先 地域で生産された農林水産物は、住民の食卓、学校給食、来訪者の食という3つの先に届く。住民の食卓では農産物直売所の販売総額が1兆1,344億円、学校給食では地場産物使用割合が全国平均57.2%、来訪者の食では農泊地域の延べ宿泊者数が867.6万人泊。3つの指標は対象も単位も異なる。 地域で生産された農林水産物 法律が促すのは「地域の農林水産物の利用の促進」 住民の食卓 直売所 1兆1,344億円(令和6年度) 学校給食 地場産物 57.2%(令和7年度) 来訪者の食 農泊 延べ宿泊者数867.6万人泊(令和6年度)
(注:3つの指標は対象者・期間・単位がいずれも異なる。並べて大小や成長余地を比べることはできない)(注:農泊の延べ宿泊者数は農泊地域に泊まった人数であり、地域の食材が届いた量を測る指標ではない。うちインバウンドは8.6%)
出典:農林水産省「6次産業化総合調査」「農泊をめぐる状況について」、文部科学省「学校給食における地場産物・国産食材の使用状況調査」をもとに編集部作成

基本方針は「道の駅、マルシェ等を活用した直売の取組」を施策に挙げている。国土交通省の登録によれば、その道の駅は2026年9月6日時点で全国1,234駅ある。

来訪者が食に使う金額も、政策の数字として扱われている。農林水産省はインバウンドによる食関連消費額を2024年(令和6年)に2.3兆円と推計し、2030年に4.5兆円へ引き上げる目標を置いている。 同省はこの2.3兆円を「過去最高」としている(農林水産省「農泊をめぐる状況について」令和8年8月13日時点、p.4・p.8)。

観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円(全旅行者ベース)で、うち飲食費は2兆688億円、構成比21.9%だった。宿泊費36.6%、買物代27.0%に次ぐ第3位である。

同調査の年次報告書によると、日本滞在中に「日本食を食べること」をした人は98.2%で、選択率が最も高い。次回もしたいと答えた人は70.7%、今回した人のうち満足した人は95.2%である。

(注:全国籍・地域、複数回答。図表6-1・図表6-2による。)

農泊も伸びた。農泊地域数と延べ宿泊者数は、平成29年度の206地域・190.3万人泊から令和6年度の673地域・867.6万人泊になっている。地域数は令和7年度末で701地域だ。

宿泊者に占めるインバウンドの割合は、令和元年度の6.4%に対し令和6年度は8.6%だ。農林水産省の資料はこれを「コロナ禍前を上回ったものの、さらなる誘客の可能性」と表現している。

食で訪日客を呼び込む制度もある。SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)は平成28年度に始まり、認定地域は45地域(令和8年4月現在)である。

学校給食や消費者意識といった住民側の指標と、訪日消費や農泊といった来訪者側の指標は、対象者も期間も指標の作り方も異なる。両者を並べても「住民向けより来訪者向けのほうが伸びしろが大きい」と統計的に証明することはできない。

それでも、地域の食を来訪者の消費につなげる取組は、事業者が自分で選べる打ち手のひとつではある。

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年間7億円の道の駅で起きていること

ここから事例を3つ見る。いずれも公的資料と自治体の公表資料で数字を確認できるものだ。

1つ目が愛媛県内子町の株式会社内子フレッシュパークからりである。道の駅として特産品直売所を核に、シャーベット工房、レストラン、パン工房、薫製工房、農産加工場を運営する。国土交通省が選んだ全国モデル「道の駅」6駅の1つで、主な機能は「産業振興」に分類されている。

規模は、2015年の選定時点で年間利用者約80万人、販売額約7億円、雇用58名とされている。

令和6年度(第28期)の実績は町議会に報告されている。令和7年9月の第150回内子町議会定例会の資料によると、会社全体の売上総額は7億1,416万6,000円で、対前年度比0.3%増だった。同社は第28期の総売上目標を8億円に置いており、達成率は89.2%である。

主な内訳は直売所4億3,535万8,000円(前年度比4.2%減)、パン工房6,287万1,000円(13.0%減)、シャーベット工房4,125万5,000円(9.2%増)、特産事業部4,300万2,000円(19.1%増)である。

核である直売所とパン工房が減り、シャーベット工房と特産事業部が伸びた。

もう1つ、群馬県川場村の道の駅 川場田園プラザも、国の資料で「『農業プラス観光』で自立する群馬県川場村の産業、情報、交流の核」と評価されている。

運営会社の決算は、総務省の第三セクター等の状況に関する調査で公表されている。令和6年度の経常収益は18億2,888万9,000円、当期利益は262万6,000円だった。

川場村が公表している経営健全化方針の取組状況によれば、令和2年度と令和3年度は当期純損失で、令和4年度から黒字に転じている。

地元に売りながら、県外にも売る

2つ目が福井県小浜市である。この市では、地産地消と食を軸にした観光が並走している。

福井県農業協同組合の「若狭ふれあい市場」は、集出荷機能を備えた直売所として整備された。農林水産省の事業活用事例は、県内農産物や6次化商品を販売するとともに、県外での市場獲得のため「地産外商」による販路の確立を図るとしている。

新商品等の売上高は令和4年度の約1億円から令和6年度の約3億円へ、雇用者数は7人から16人へ増えた。収穫体験ツアーも実施している。

同じ市にはOBAMA食と農の景勝地実行委員会があり、SAVOR JAPANの認定を受けている。漁港と漁業集落が海岸沿いに点在し、漁業と漁家民宿の複合経営が行われていること、食と関わりが深い行事が600を超えることを認定資料は挙げる。

県外に販路を広げる取組と、食文化を海外に発信する取組が、ひとつの市のなかで並行して進んでいる。 地産地消と地産外商は、同じ地域のなかで両立しうる。

無料だった体験を商品にする

3つ目が徳島県のにし阿波地域である。一般社団法人そらの郷がSAVOR JAPANの認定を受け、農泊を運営している。

SAVOR JAPANの認定計画資料は、この地域の取組を「交流体験の有料化等地域にお金が落ちる仕組みを追及」「古民家を高級感ある農泊施設として整備することで、交流し共感できる滞在型地域としてインバウンドを呼び込む」と説明する。

実績は、農林水産省の農泊事例集によれば、210軒の受入民家が最大400名に対して民泊体験を提供し、令和5年度は約7,000人泊を受け入れた。第12回ディスカバー農山漁村の宝(令和7年度・30地区)にも選ばれている。

認定計画が正面に置いているのは「有料化」という言葉である。 地域の人が当たり前にやっていた交流を、値段のついた商品に組み替える、という方針だ。

数字が示す4つの壁

ここまでの数字を並べると、地産地消と観光の組み合わせは順調に見える。実際には、公的資料から読み取れる制約がいくつもある。

1つ目が収益性だ。内子フレッシュパークからりの令和6年度の損益計算書は、営業損失444万6,406円、経常損失205万5,780円、当期純利益20万3,186円である。 ただし単年の決算だけで施設の巧拙は判断できない。設備の更新時期や気象条件でも動く数字である。

それでも、先に見た川場田園プラザの令和6年度も、経常収益18億円台に対して当期利益は262万6,000円だった。全国モデルに選ばれた2社の同じ年度の決算は、どちらも利益が薄い。

2つ目が出荷者である。先ほどの小田まちづくり株式会社の報告は、売上50万円未満の出荷者が全体の76%を占め、高齢化などで出荷者数が減少傾向にあると説明している。

第24期の出荷者は119人で、前期から6人減った。同社は「生産出荷体制の強化」を大きな課題と位置づけている。

棚に並べる人が減れば、品ぞろえは薄くなる。1施設の数字ではあるが、直売所の売上を左右する条件が客の側だけにあるわけではないことは示している。

3つ目が地域差だ。学校給食の地場産物使用割合は、山口県85.1%に対して大阪府6.6%と開く。その要因は、この調査からは分からない。

4つ目が単価である。食料・農業・農村基本計画(令和7年4月11日閣議決定)は「農泊地域の平均宿泊費が観光旅行全体のそれに比べて安価にとどまっていることから、所得の向上と雇用の創出を実現するため、高付加価値化を図る必要がある」と書いている。令和6年度の農泊の平均宿泊費は13,196円/人泊、観光旅行全体は18,940円だ(後者は観光庁「旅行・観光消費動向調査」)。

農泊のKPIは、令和6年度実績の868万人泊(KPI上の表記)・売上高1,598億円から、令和11年度に1,200万人泊・売上高2,200億円である。売上高を延べ宿泊者数で単純に割ると、1人泊当たりの値はおおむね横ばいになる(編集部算出)。

公的な資料が「地産地消のデメリット」を一覧で整理しているわけではない。ここに挙げたのは、統計と個別の決算から読み取れる制約である。一般論としての短所ではなく、数字が示している制約として扱いたい。

観光ビジネスの視点

合計だけを見ていると、中身の動きに気づけない。内子フレッシュパークからりは直売所に加えて加工と飲食を持っているが、令和6年度は営業損失だった。見るべきは会社全体の合計ではなく、部門別の前年比のほうである。 同社で減ったのは直売所4.2%減とパン工房13.0%減、増えたのはシャーベット工房9.2%増と特産事業部19.1%増だ。主力の外側が伸びている。名目の売上が前年並みなら、実質では減っている。その前提で部門別の前年比を見ると、手を入れる場所が変わってくる。

よくある質問

地産地消と地産外商は矛盾しないのか。

両立する。福井県小浜市のように、集出荷機能を持つ直売所で地域内に売りながら、同じ施設で県外向けの販路も広げる例がある。なお六次産業化・地産地消法が定義しているのは、地元産を地域内で消費することと、地域で供給が不足している場合に他の地域産を消費することの2つであり、地産外商そのものは定義に含まれない。

直売所の販売額が増えているのは、物価が上がったからか。

その影響は大きい。令和2年度から令和6年度にかけて、食料の消費者物価指数は20.1%上がっている。同じ期間の1事業体当たり販売額の伸びは21.2%で、ほぼ同じ幅だ。物価上昇分を差し引くと、1事業体当たりはほぼ横ばい、販売総額は約1割減となる(編集部試算)。

直売所を新しく作れば地産地消は進むのか。

この統計だけでは、新設によって地産地消が進むかどうかは判断できない。事業体数は令和2年度から令和6年度にかけて4年連続で減り、その一方で販売総額と1事業体当たりの販売金額は増えている。

学校給食の地場産物使用割合はどう読めばよいか。

全国平均は令和7年度で57.2%(金額ベース)だが、これは各都道府県で7場(校)を抽出した調査の結果であり、悉皆調査ではない。また食育推進基本計画の目標は使用割合そのものではなく「現状値から維持・向上した都道府県の割合」で置かれている点にも注意したい。

「1億円以上の直売所が28.3%」はどの母集団の数字か。

常設施設で通年営業の直売所10,580事業体を母数とした割合である(編集部算出)。全直売所20,960事業体を母数にすると14.4%になる。政策目標が対象にしているのは前者だ。

促進計画は自治体に義務づけられているのか。

努力義務である。六次産業化・地産地消法第41条第1項は、都道府県と市町村が計画を定めるよう努めることとしている。令和7年9月末時点で都道府県は47すべて、市区町村は1,507(86.6%)が策定済みだが、他の行政計画に関連事項が記載されている場合も策定済みに計上されている。

出典

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