コンビニの駐車場が「泊まれる場所」に 広がる有料の車中泊施設

後部ハッチを開けた車の荷室に腰かけて話す2人の旅行者
Photo: FineGraphics / 写真AC
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車中泊を趣味として楽しむ人たちがいる。その需要を、コンビニエンスストアやRVパークの運営者が「有料の滞在サービス」として受け止め始めた。店舗の駐車場が一泊数千円の滞在拠点になり、RVパークと呼ばれる認定施設は全国で650件に達した。無料で仮眠する場所ではなく、料金とルールをそなえた「泊まれる駐車場」が、旅の選択肢として形になりつつある。

目次

節約だけではない車中泊需要を捉える

車中泊と聞くと、宿代を切り詰める節約の手段を思い浮かべるかもしれない。実際、コストを抑える目的で使う人は一定数いる。ただ、動機はそれだけではない。後述するローソンの取り組みでは、利用者の約8割が50歳以上で、半数以上がキャンピングカーの利用者だった。運営するローソンも、当初は節約志向の若年層を想定していたが、ふたを開けると「車中泊という趣味」を楽しむ層が目立ったと説明している。

つまり、少なくともローソンの実証が捉えたのは、節約だけが動機ではない需要だった。コスト削減のために使う人もいるが、それと並んで、車中泊そのものを楽しむ利用者が確かな厚みを持っている。事業者はこうした需要を読み、駐車場に「泊まる」機能を足すことでサービスに変えている。

背景として、宿泊料金の上昇はたしかにある。総務省の消費者物価指数でも、宿泊料は前年を上回って推移している。ただしそれは追い風の一つであって、車中泊を選ぶ人が増えた主因ではない。広がる車中泊需要に、受け皿の整備が追いついてきた局面と見るほうが、いまの動きを正しくとらえられる。

泊まれる駐車場の三類型
コンビニRVパーク・RVパーク・道の駅の比較
コンビニ
RVパーク
RVパーク 道の駅
宿泊利用
(予約制)

(認定施設)
原則不可
(車内仮眠は可)
料金の目安2,500〜
3,000円/区画
施設により
有料
無料
主な設備店舗のトイレ・
物販
100V電源・
ごみ処理など
トイレ・
休憩スペース
位置づけ有料の滞在有料の滞在道路利用者の
休憩施設
展開・規模28店舗
(年度内70目標)
全国650件
(26年6月末)
コンビニRVパーク
RVパーク
道の駅
宿泊利用
可(予約制)
可(認定施設)
原則不可(車内仮眠は可)
料金の目安
2,500〜3,000円/区画
施設により有料
無料
主な設備
店舗のトイレ・物販
100V電源・ごみ処理など
トイレ・休憩スペース
位置づけ
有料の滞在
有料の滞在
道路利用者の休憩施設
展開・規模
28店舗(2026年度内70目標)
全国650件(2026年6月末)
出典:ローソン・日本RV協会・国土交通省の各資料をもとに編集部作成

コンビニの駐車場が滞在拠点になる

象徴的な動きが、ローソンの「コンビニRVパーク」だ。店舗の駐車場を車中泊できる区画として貸し出す取り組みで、2026年7月17日から千葉・埼玉・静岡・愛知の計28店舗へ広げた。料金は1回1区画あたり2,500〜3,000円。2026年度内には約70店舗規模での展開を目指すとしている。この70店舗は目標値であり、確定した出店数ではない。

店舗駐車場を活用したRVパークに駐車するキャンピングカー
Photo: Lawson(店舗駐車場を活用したRVパークのイメージ)

先行して運用してきた千葉県内の7店舗では、お盆・年末・ゴールデンウィークの平均稼働率が90%を超えた。注目すべきは、利用者の90%超が滞在中に500円以上をローソン店内で購入していることだ。駐車場の区画貸しが、そのまま店舗の売上につながる構図が生まれている。利用者アンケートでは、エリア拡大を望む声が99%にのぼった。

コンビニは全国に張り巡らされた既存インフラで、トイレ・食料・照明がそろう。そこに「泊まる」機能を薄く一枚重ねるだけで、旅行者には利便を、店舗には来店動機と客単価を生む。既存の駐車場を滞在商品に変える発想が、この取り組みのポイントだ。

RVパークという「市場のインフラ」

個社の取り組みの外側でも、車中泊を受け入れる施設は着実に増えている。日本RV協会が認定するRVパークは、2026年6月末時点で全国650件となった。24時間利用できるトイレや100V電源、ごみ処理などの条件を満たし、あらかじめ宿泊利用が認められた駐車場で、道の駅や温泉施設、観光地の遊休地などに広がっている。

ポイントは、これが一時のブームではなく、「有料でルールのある車中泊」が定着に向けた土台を築きつつあることだ。施設側は遊休の駐車スペースを収益化し、周辺の物販や入浴へ送客できる。旅行者はどこに停めてよいか迷わず、電源やゴミ処理を気にせず滞在できる。無料の場所取りにはない価値が、料金の裏側で提供されている。

一方で、車中泊はどこでも自由に泊まれるわけではない。道の駅は本来、道路利用者のための休憩施設だ。国土交通省は、運転の途中に車内で仮眠をとることは認める一方、駐車場を宿泊目的で利用することは基本的に控えるよう求めている。全国一律で車中泊が違法・禁止とされているわけではないが、施設ごとに利用ルールは異なる。

だからこそ、宿泊利用があらかじめ認められたRVパークやコンビニRVパークのような専用施設には、ルールの曖昧さを避けられるという明確な意味がある。トラブルの回避と快適さを、料金という形で買える。無料の仮眠場所と有料の滞在施設は、似て非なるものとして整理したほうがよい。

手持ちの駐車場を「滞在」に変える

ここから観光事業者や自治体が汲み取れる示唆は明快だ。第一に、車中泊の受け皿づくりは価格競争ではなく、利便とルールの設計だという点。電源・給排水・ゴミ処理・周辺送客をセットにできるかどうかが、選ばれる施設と敬遠される場所を分ける。第二に、コンビニ・道の駅・温泉・遊休地といった既存の駐車場アセットを持つ事業者ほど、低コストで参入できる余地が大きい。新たに用地を取得しなくても、いまある空間に薄く一枚、滞在の機能を重ねればよい。

もっとも、市場の規模はまだ小さい。認定施設は650件、コンビニの展開も数十店舗の段階で、宿泊市場全体を左右する数字ではない。過大評価は禁物だが、趣味としての車中泊需要を既存インフラで受け止める動きは、確実に旅の選択肢を一つ増やしている。

あわせて読む 宿泊業全体の見取り図と、同じくアウトドア需要を受け止めるグランピング事業は、別の記事で整理している。

観光ビジネスの視点

車中泊は「安く泊まるための手段」だと思われがちだ。実際に安さを求める人もいるが、それだけではなく、車中泊そのものを楽しむ人も少なくない。だとすれば、受け皿づくりで大事なのは値段の安さだけではなく、快適さと使いやすさをどう整えるかになる。有利なのは、コンビニや道の駅のように、もともと駐車場と人の集まる場所を持っている事業者だろう。新しく土地を用意しなくても、いまある場所に「泊まれる」しくみを足すだけで始められるからだ。ただし施設の数も売上もまだ小さく、宿泊のビジネス全体を大きく変える段階ではない。過度に期待するのではなく、手持ちの資産を活かす取り組みとして見ておきたい。

出典

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