デジタルノマドとは、決まった職場を持たず、オンラインで仕事をしながら好きな土地を移り住む人のことだ。日本では2024年3月31日、海外の勤め先や取引先の仕事を日本からリモートで続ける外国人のための在留資格ができた。観光などの短期滞在より長い、最長6か月の滞在が認められる。
観光庁はデジタルノマドを「ロングステイのビジネスインバウンド」と呼び、地域で受け入れる取り組みを支援している。本記事では、在留資格の条件と手続、滞在中にできることとできないこと、発給の数字、受け入れの課題を、出入国在留管理庁や観光庁などの公表資料をもとに整理する。
この記事のポイント
- デジタルノマド向けの在留資格は2024年3月に始まった「特定活動」で、滞在は最長6か月、更新はできない。
- 対象は51か国・地域の人で、本人の年収1,000万円以上と、死亡・けが・病気を補償する民間医療保険が条件になる。
- 在留カードは交付されず住民票もない。日本の会社や個人と契約して働くこともできない。
- 査証の発給は2024年が257件(約9か月分)、2025年が646件。国は地域の受け入れづくりを支援している。
デジタルノマドは海外の仕事を日本で続ける人
観光庁が2025年5月にまとめた調査報告書は、デジタルノマドを「決まった職場ではなく、自分で選んだ様々な場所でオンラインで働いて生計を立てる人」と捉えている(調査の対象条件の英文を編集部が訳した)。同じ調査では、回答者の54.4%が企業の従業員だった。経営者は18.8%、フリーランサーは17.6%である。
デジタルノマドというと自由業の人を思い浮かべやすいが、調査では企業の従業員が半数を超える。職業は多岐にわたり、選択肢の中ではソフトウェア開発が19.6%で最も多かった。
観光庁はデジタルノマドを、長く滞在して地域でお金を使い、日本企業との商談や投資にもつながる存在と位置づける。観光庁の事業紹介ページは、「観光ビザの期間を超えたロングステイのデジタルノマドの増加が予想されます」と書いている。
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在留資格は「特定活動」、最長6か月で更新なし
デジタルノマドが日本に滞在するための在留資格は「特定活動」である。このうち法務大臣が告示であらかじめ定めた活動の一つで、デジタルノマド本人は告示の第53号、その配偶者と子は第54号にあたる。
始まったのは2024年3月31日だ。この日に施行された出入国管理及び難民認定法(入管法)の施行規則の改正(令和6年法務省令第13号)で、デジタルノマドとその家族の扱いが規則に書き込まれた。観光庁の資料には「令和6年4月より施行」とする記述もある。
認められる活動は、告示によると次の2つである。1つは、外国の法人などとの雇用契約に基づき、日本で情報通信技術を使って、その法人の外国にある事業所の仕事をすることだ。もう1つは、外国にいる人に、情報通信技術を使って有償でサービスを提供したり、物品を販売したりすることである。
出入国在留管理庁のQ&Aは、前者の例に外国企業の従業員のリモート勤務を、後者の例に外国企業の経営者や、外国の顧客に仕事を請け負う個人事業主を挙げる。日本に入国しなければ提供や販売ができないものは、対象から外れる。
滞在は「1年のうち6か月」まで
在留期間は6か月で、更新はできない。出入国在留管理庁の案内によると、出国してから6か月が過ぎれば、同じ在留資格で再び日本に滞在できる。
告示は、この上限をもう少し細かく決めている。日本に上陸する年のいずれかの日に始まる、または終わる12か月の期間のどれをとっても、この活動での滞在は6か月を超えてはならない。出入国在留管理庁の概要資料は、これを「1年のうち6か月を超えないこと」と説明している。
観光などの「短期滞在」と比べてみる。入管法施行規則の別表によると、短期滞在の在留期間は90日、30日、15日など(90日まで)である。デジタルノマドの在留資格は、その上限を超えて滞在する人のための枠になる。
対象は51か国・地域、年収1,000万円以上
この在留資格を得られる国籍は限られている。告示によると、日本と租税条約などを結んでいる国・地域で、かつ短期滞在の査証が免除されている国・地域のうち、告示の別表に載る51か国・地域の人が対象だ。
アメリカ、カナダ、英国、ドイツ、フランス、オーストラリアのほか、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアなどが含まれる。中国本土は、告示の別表に含まれていない。
日本でリモートで
続ける人
- 本人の年収1,000万円以上(申請の時点)
- 死亡・けが・病気を補償する医療保険(治療費1,000万円以上)
- 在留期間は6か月で、更新できない
- 日本での滞在は1年のうち6か月まで
- 在留カードは交付されない
- 配偶者と子は74か国・地域から同行できる
- 日本の会社や個人と契約して働くこと
- 資格外活動(原則として認められない)
年収の条件は、申請の時点で1,000万円以上であることだ。出入国在留管理庁のQ&Aによると、原則は直近の年収で判断し、昇給や新たな採用で今後の年収が1,000万円以上になると見込める場合も認められる。個人事業主は契約の金額ではなく、経費を差し引いた利益で判断する。安定した収入が複数あれば合算できる。
医療保険への加入も条件である。告示は、滞在中の死亡、けが、病気を補償する保険への加入を求めている。出入国在留管理庁は、滞在する期間をカバーし、けがと病気の治療費の補償額が1,000万円以上の保険としている。同庁のQ&A(2024年7月時点)によると、この在留資格で滞在する人は日本の公的医療保険に入れないため、民間の保険で備えることを求めている。
家族は74か国・地域から
デジタルノマドの扶養を受ける配偶者と子も、同じ「特定活動」で一緒に滞在できる。告示によると、家族の国籍は短期滞在の査証が免除されている国・地域のうち別表に載るもので、2026年4月8日に改正された告示の時点で74か国・地域ある。家族には租税条約の条件はかからないが、本人と同じ医療保険の条件がある。
申請は滞在地の大使館や領事館で
出入国在留管理庁の案内では、手続は2種類ある。新たに日本に入る人が事前に在留資格の審査を受ける「在留資格認定証明書」の交付申請と、日本で生まれた子などの在留資格取得許可申請だ。同庁の案内に載る手続は、この2つである。
ただし同庁のQ&Aによると、企業に招かれる場合と違い、日本に申請の代理人となる人がいない。このため、日本の外にいる人は、滞在している国の日本大使館や領事館で直接、査証(ビザ)を申請する。
出入国在留管理庁が在留資格認定証明書の申請で求める主な書類は、次のとおりである。在外公館での査証申請に要る書類は、各公館で確かめてほしい。
- 滞在中の活動予定を説明する資料
- 年収1,000万円以上を証明する納税証明書または所得証明書
- 雇用契約書や在職証明書など、今の仕事を証明する資料
- 民間医療保険の補償内容の説明書と、加入証書・約款の写し
クレジットカードに付く保険で補償内容を満たす場合は、それを証明する資料を出すよう案内している。
在留カードは出ず、住民票も作られない
デジタルノマドは、日本に半年近く滞在しても「住民」にはならない。
入管法は、在留カードを「中長期在留者」に交付すると定め、3か月以下の在留期間の人や短期滞在の人などを除いている。入管法施行規則は、この除かれる人にデジタルノマド本人とその家族を加えた。6か月の在留期間があっても、デジタルノマドには在留カードが交付されない。
住民票にも載らない。住民基本台帳法が住民票の対象とする外国人は、中長期在留者や特別永住者などに限られている。デジタルノマドはこのどれにも当たらないため、住民票の対象にならない。
| 短期滞在 (観光など) | デジタル ノマド | 中長期 在留者 | |
|---|---|---|---|
| 在留期間 | 90日、30日、 15日など | 6か月 (更新できない) | 3か月を 超える期間 |
| 在留カード | 交付されない | 交付されない | 交付される |
| 住民票 | 対象外 | 対象外 | 対象 |
(観光など)
ノマド
在留者
在留カードと住民票の扱いでは、デジタルノマドは中長期在留者ではなく、短期滞在と同じ側にいる。
移動は自由、仕事は海外向け
出入国在留管理庁のQ&Aによると、国内の街を移りながら生活するのに特別な手続は要らない。在留期限までに戻る予定なら、再入国許可やみなし再入国許可を使って一時的に出国することもできる。
税についても同じQ&Aが説明している。日本国内で行う活動に伴って得る報酬などは、日本での滞在が課税年度や継続する12か月で合計183日以下であるなど、租税条約の条件を満たせば、多くの場合は日本で免税になる。条件は租税条約ごとに異なり、個別の課税は税務の窓口で確かめてほしい。
Q&Aは、持ち込んだ通信機器の扱いにも触れている。日本の技術基準を満たし国際規格に合う一部の機器は、入国から90日まで使える。それを超える場合は、日本の技術基準適合マークが付いた機器を使う必要がある。
一方、日本での仕事には制限がある。Q&Aによると、日本の会社や個人と雇用契約や請負契約などを結んで働くことはできない。在留資格の範囲外の活動を許可する「資格外活動」も、原則として認められない。
在留資格の外で報酬を得れば罰則がある
入管法第19条は、在留資格で認められた活動に属さない、収入を伴う事業や報酬を受ける活動を禁じている(業として行わない講演の謝金など、法務省令で定める報酬は除く)。違反すると、第73条により1年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科される。
そうした活動をもっぱら行っていると明らかに認められる場合は、第70条により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方となる。
外国人に不法就労活動をさせた側を罰する規定もある。入管法第73条の2は、事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた者などに、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方を科す。同じ条文は、その活動が在留資格の範囲外だと知らなかったことを理由に処罰を免れることはできない(過失がない場合を除く)と定めている。
査証の発給は2025年に646件
外務省の査証発給統計によると、デジタルノマドの査証は2025年に646件発給された。制度が始まった2024年は257件で、1年で約2.5倍になった(編集部算出)。2024年は3月31日からの約9か月分である。
国籍で見ると、2025年はアメリカが240件と全体の37.2%を占めた。オーストラリア114件、カナダ46件、ドイツ39件、フランス29件、英国28件が続き、この6か国で76.8%になる(いずれも比率は編集部算出)。
この図表のデータを見る
| 国籍 | 発給件数(件) | 構成比(%) |
|---|---|---|
| アメリカ | 240 | 37.2% |
| オーストラリア | 114 | 17.6% |
| カナダ | 46 | 7.1% |
| ドイツ | 39 | 6.0% |
| フランス | 29 | 4.5% |
| 英国 | 28 | 4.3% |
| オランダ | 14 | 2.2% |
| ノルウェー | 13 | 2.0% |
| イスラエル | 13 | 2.0% |
| ニュージーランド | 12 | 1.9% |
| その他 | 98 | 15.2% |
| 合計 | 646 | 100.0% |
外務省「令和7年(2025年)査証(ビザ)発給統計」国籍・地域別の「デジタルノマド(配偶者含む)」欄による。構成比は編集部算出。2024年の発給は257件。
数字の読み方には注意が要る。統計の欄は「デジタルノマド(配偶者含む)」で、配偶者の分も含む。また、これは査証の発給数で、実際に入国した人や今滞在している人の数ではない。
日本に何人のデジタルノマドが滞在しているかは、今回確かめた公表統計では分からない。
ノマドが探すのは月単位の住まいと仕事場
デジタルノマドが滞在先に何を求めるかは、観光庁の調査報告書が手がかりになる。海外に住むデジタルノマド250人(アメリカ100人、オーストラリア、ドイツ、フランス各50人)に2024年7月に聞いたアンケートで、日本に来た人の実績ではない点に注意したい。在留資格の保有者(年収1,000万円以上)に限った調査でもない。
滞在の長さにも特徴がある。最も気に入った国で最も長く滞在した日数は、回答から推計した平均で112.3日だった。報告書は比較として、観光・レジャー目的の訪日客の平均宿泊日数6.9日を挙げている。指標は異なるが、差は大きい。
お金の使い方も異なる。1か月あたりの支出の平均(推計)は、宿泊費716ドル、飲食費635.1ドル、コワーキングスペース利用料499.3ドル、アクティビティ費577.1ドルだった。報告書は、訪日客が買い物に多く使うのに対し、デジタルノマドはコワーキングスペースに支出すると指摘している。
長期の滞在者はホテル以外も選ぶ
滞在先の選び方にも特徴がある。報告書によると、泊まる施設はホテルが最も多いが、滞在が長い回答者ほどホテルの割合は低い。6か月以上の滞在では、コンドミニアムやアパート、民泊など、暮らすための場所が増える(日本の在留資格の上限を超える長さでの傾向である)。仕事をする場所も、現地で借りた部屋が最も多かった。
コワーキングスペースを選ぶ際に重視する点は「価格が安い」が最も多く、セキュリティや24時間使えることが4割近くで続いた。参加したいプログラムでは、同じ地域に来ているリモートワーカー同士の交流会が最も多く、地域住民と交流できる場が続いた。
日本への関心は高い。日本でリモートワークをしたいと「非常に思う」「やや思う」を合わせると81.6%に上った(編集部算出)。一方、日本のデジタルノマド向けビザを「知らない」人は53.2%だった。
日本の弱みは長期滞在の住まい
報告書は、日本の受け入れ環境の弱みも挙げている。中長期の滞在に対応した施設が不足していると考えられ、賃貸は家主との契約に就労証明書や収入証明書などの審査書類が要るため、デジタルノマドには借りるハードルが高い。報告書は日本の宿泊・滞在施設を、旅館業法の施設、住宅宿泊事業法に基づく民泊、賃貸物件の3つに分けて整理しており、民泊は営業日数の上限が年180日である。
このほか、英語をはじめ外国語での対応力が弱いこと、町中のフリーWi-Fiが整っていない地域が少なくないこと、デジタルノマド向けのコーディネーターやコミュニティがないことなどを挙げる。
国は誘客を後押し、地域で実証が続く
国は、デジタルノマドの誘客を観光政策に位置づけている。2026年3月27日に閣議決定された観光立国推進基本計画は「デジタルノマドの誘客促進」の項を設け、長期滞在に適した受入環境の整備や観光コンテンツの造成、国内の複数地域を周遊・滞在する仕組みづくりなどへの支援を掲げた。数値の目標は置いていない。
実証は3年目、補助は2年目
観光庁は2024年度からモデル実証事業を続けている。2024年度は宮崎県日向市、石川県金沢市、福岡市、和歌山県白浜町、沖縄県名護市などを舞台にした5事業を選んだ。
観光庁によると、2026年度は実証事業4件と、受け入れ環境の整備を支える補助事業5件を採択している。補助は経費の2分の1以内で、上限は2025年度の500万円から700万円に上がった。
2026年度の実証事業の公募は、先進的な取り組みの例として「デジタルノマド向けビザを活用した90日を超える長期滞在促進に向けた体制整備」を挙げている。補助事業の採択先には、北海道鹿追町、宮城県大崎市、秋田県仙北市など地方の地域が並ぶ。
福岡には436人が参加
観光庁のナレッジ集は、福岡市などの実証事業の成果として、2024年10月に開かれた誘致プログラム「Colive Fukuoka 2024」を挙げている。参加者は436人で、うち226人が45か国・地域から来た海外の参加者だった。滞在中の消費額は、アンケートをもとに約1億1,000万円と推計されている。参加者の在留資格は、資料には示されていない。
なお、本記事で確かめた公表資料には、在留資格の条件(年収、期間、対象の国・地域)を見直すという発表は見当たらない(2026年10月7日時点)。
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デジタルノマドの在留資格は、観光客と住民の間にいる滞在者をつくった。観光の短期滞在より長く日本にいられるが、在留カードも住民票もなく、公的医療保険にも入れない。
観光庁の調査では、滞在が長い回答者ほどホテル以外の住まいを選ぶ割合が高い。ところが住宅宿泊事業法に基づく民泊は営業が年180日までで、6か月滞在する1人を受け入れるだけで1年の営業上限の大半が埋まる。賃貸には審査書類の壁がある。
6か月の滞在者を民泊だけで受け止めるのは難しく、地域には観光客向けでも移住者向けでもない、月単位で暮らせる受け皿が要る。
観光庁の公募が例に挙げた「90日を超える長期滞在」の受け入れは、この住まいの手当てから始まる。
よくある質問
出典
- 出入国在留管理庁「在留資格「特定活動」(デジタルノマド(国際的なリモートワーク等を目的として本邦に滞在する者)及びその配偶者・子)」
- 出入国在留管理庁「デジタルノマド向け在留資格のQ&A」
- 法務省「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」
- 外務省「令和7年(2025年)査証(ビザ)発給統計」
- 観光庁「国際的なリモートワーカー(デジタルノマド)に関する調査報告書」
- 観光庁「デジタルノマド誘客促進事業」


