スポーツツーリズムとは 「観戦」を地域の稼ぎに変える

スポーツの試合を観戦する大勢の観客(ピントをぼかした群衆)
Photo: Getty Images / Unsplash
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2026年9月19日から10月4日まで、愛知・名古屋でアジア競技大会が開かれた。日本での開催は1994年の広島以来32年ぶりだ。

観光庁の調査では、2025年に日本でスポーツ観戦をした訪日客は2.2%だった。次の訪日でしたいと答えた人は11.6%にのぼる。観戦した訪日客の1人当たり旅行支出は34.2万円(2023年)で、訪日客全体の21.3万円を大きく上回る。

人を呼ぶだけでなく、来た人に地域でお金を使ってもらう仕組みに伸びしろがある。ところが担い手の地域スポーツコミッションは、合宿や大会の誘致が最も多い事業だ。事務局が自治体にある団体の8割近くは、自治体の一般財源が最大の収入源になっている。本記事では、定義と市場の現在地、地域スポーツコミッションの仕組み、3つの事例と国の方針転換を一次資料で整理する。

この記事のポイント

  • スポーツツーリズムは、スポーツを「する」「みる」ことを目的にした旅行と、スポーツと観光を組み合わせた取り組みを指す。
  • 日本はスキーや合宿など「する」旅で育ち、次の訪日で観戦したい人が1割を超えるのに、観戦は十分に生かされてこなかった。
  • 担い手の地域スポーツコミッションは合宿誘致が最多の事業で、自治体に事務局がある団体の8割近くは一般財源が最大の収入源だ。
  • 国の第4期スポーツ基本計画(中間報告)は、観戦を軸に加えた一体型の旅と、コミッションの経営基盤の強化を掲げた。
目次

スポーツツーリズムとは何か

国の定義は、2026年3月に閣議決定された観光立国推進基本計画にある。「スポーツへの参加や観戦を目的とした地域の訪問や、自然や文化芸術等の地域資源とスポーツを掛け合わせた観光を楽しむスポーツツーリズム」。スポーツ庁も、参加や観戦を目的とした旅行と、スポーツと観光を組み合わせた取り組みと説明する。

中身は2つに分けるとわかりやすい。1つは自分でスポーツをする旅で、大会への参加やスキー、ゴルフ、合宿がこれにあたる。もう1つは試合をみる旅で、プロスポーツの観戦やスタジアムツアーがある。経済産業省とスポーツ庁のスポーツ未来開拓会議の事務局資料(2023年)も、この「する」と「みる」の2つで議論を整理している。

国がこの分野に本腰を入れたのは2010年代だ。同じ資料によると、2011年にスポーツ基本法ができた。2015年にスポーツ庁が発足すると、地域でスポーツツーリズムを進める組織の設立支援が始まった。2018年には、アウトドアと武道を新たな重点に据えた戦略もまとめている。

背景にあるのは、スポーツを成長産業に育てるという国の方針だ。スポーツ庁の第4期スポーツ基本計画(中間報告)によると、国内のスポーツ市場は2022年に11.6兆円だった。国は、遅くとも2030年に15兆円へ広げる目標を掲げている。

あわせて読む 観光体験の市場全体の中で、スポーツがどこに位置するかは、ハブ記事で整理している。

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スキーと合宿で育った日本の現在地

日本のスポーツツーリズムは、自分でスポーツをする旅を中心に育ってきた。同じスポーツ未来開拓会議が2025年4月にまとめたとりまとめは、その偏りをはっきり書いている。

「これまで我が国では、スポーツツーリズムについては主に観光客自らがスポーツを行うことを目的としたものが主流であり、スポーツ観戦はコンテンツとして十分に活用されてこなかった面もある」。国の会議のとりまとめ自身が、観戦を十分に生かせてこなかった面があると認めている。

「する」の柱はスキーだ。とりまとめは、スキーやスノーボードはすでに訪日旅行の大きな目的で、消費額も多いとする。令和6年版観光白書の試算では、2023年にスキー・スノーボードが訪日客の消費を押し上げた効果は643億円にのぼる。

一方でとりまとめは、スキー以外のスポーツツーリズムにはまだ開拓の余地があると続ける。国内では、地域スポーツコミッションの2025年度の事業を見ると、合宿・キャンプや大会の誘致が上位に並ぶ(後述)。

訪日客は次に何をしたいのか

訪日客の関心を示す数字もある。観光庁のインバウンド消費動向調査(2025年)で、日本滞在中にスポーツ観戦をした人は2.2%だった。一方、次の訪日でしたいことに観戦を挙げた人は11.6%と、5倍を超える。

スキー・スノーボードも、したのは2.9%、次にしたいのは17.9%と差が大きい。日本食を食べることは98.2%がしたのに対し、次回したいは70.7%だ。多くの人がすでに体験した日本食とは逆に、スキーや観戦は、今回した割合より次にしたい割合のほうがずっと大きい。

観戦は次回したい人が1割超
訪日客が今回したことと次回したいこと(2025年・複数回答)
今回したこと体験次回したいこと
2.9%スキー・スノーボード17.9%6.2倍
2.2%スポーツ観戦11.6%5.3倍
1.9%その他スポーツ2.9%1.5倍
98.2%参考:日本食70.7%0.7倍
(注:倍率は次回したいこと÷今回したことで編集部が算出)
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」をもとに編集部作成

実際に体験した人の評価も高い。同じ調査で「満足した」割合は、スキー・スノーボードが97.1%、スポーツ観戦が96.8%だった。第4期スポーツ基本計画(中間報告)も、この「今回したこと」と「次回したいこと」の差を取り上げ、インバウンドの需要を広げるよう求めている。

お金の面でも、観戦した人は目立つ。令和6年版観光白書は、2023年の調査をもとに、体験の有無別に1人当たり旅行支出を出している。観戦した人は34.2万円で、治療・検診(48.9万円)に次いで高く、訪日客全体の21.3万円の1.6倍にあたる。

観戦した人の支出は平均の1.6倍
体験した訪日客の1人当たり旅行支出(2023年)
体験した訪日客の1人当たり旅行支出(2023年) 体験した訪日客の1人当たり旅行支出は、治療・検診48.9万円、スポーツ観戦34.2万円、スキー・スノーボード32.8万円、訪日客全体21.3万円。スポーツ観戦をした人は訪日客全体の約1.6倍を使っている。 治療・検診 48.9万円 スポーツ観戦 34.2万円 スキー・スノーボード 32.8万円 訪日客全体 21.3万円
出典:観光庁「令和6年版観光白書」をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
体験した訪日客1人当たり旅行支出(万円)
治療・検診48.9
スポーツ観戦34.2
スキー・スノーボード32.8
訪日客全体(平均)21.3

観光庁「令和6年版観光白書」コラムI-2。観光庁「訪日外国人消費動向調査」(2023年)の「今回の日本滞在中にしたこと」をもとに、体験した人の消費単価を算出した上位3項目。観戦した人の支出が高いことは、観戦が支出を生んだことを意味しない(滞在日数や出身国・地域の構成の違いを含む)。

スポーツ観戦をした訪日客は、日本での旅行支出が平均より大きい。ただし、この差は観戦そのものがお金を生んだことを示すものではない。観戦した人とそうでない人とでは、滞在日数や出身国・地域の構成が違う可能性がある。多く使う旅行者が観戦もしている、という関係として読むのが正確だ。

合宿誘致が最多の地域スポーツコミッション

4つの要件を持つ推進組織

スポーツツーリズムを地域で進める担い手が、地域スポーツコミッション(SC)だ。スポーツ庁の説明では、自治体、スポーツ団体、民間企業が一体になり、スポーツによるまちづくりや地域活性化を進める組織を指す。民間企業には観光協会や商工団体、大学、観光産業、スポーツ産業などが入る。名称は問わない。

スポーツ庁が示す要件は4つある。①一体となった組織 ②常設の組織 ③域外からの交流人口の拡大が主要事業の一つ ④年間を通じた幅広い活動だ。主な仕事には、地域の大会やイベントの開催、大規模大会や合宿・キャンプの誘致、住民向けのクラブ運営、健康づくりのイベントがある。

最多の事業は合宿の誘致

SCの実像は、「地域スポーツコミッション基礎調査2025」(2026年3月)で見えてくる。一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構がまとめ、スポーツ庁のサイトに掲載された調査だ。調査の対象は全国211団体で、176団体が回答した。事務局が自治体の中にある団体は67.0%で、79.5%は法人格を持たない。

2025年度に行っている(予定を含む)事業(複数回答)で最も多いのは、スポーツ合宿・キャンプの誘致で64.7%だった。自主的な大会・イベントの企画(54.9%)、既存の大会・イベントの誘致(51.4%)が続く。大会や合宿への補助制度の運営も36.4%ある。

「DMO(観光地域づくり法人)や観光事業者との連携」を独立した事業に挙げた団体は20.2%、誘致や大会、補助を除いたスポーツツーリズム事業の企画・運営は19.1%だった。誘致を挙げる団体に比べ、観光の側との連携を事業として掲げる団体は少ない。ただし、誘致の中で宿や交通と組んでいる団体もあり、この数字だけで連携の有無は決められない。

自治体内SCの財源は一般財源

お金の面を見る。事務局が自治体にあるSC(117団体が回答)の2025年度予算は、平均が約3,077万円なのに対し、中央値は600万円だった。予算0円が5.1%、200万円未満が25.6%ある。

最も大きな収入源を聞くと(108団体が回答)、77.8%が「事務局がある地方公共団体の一般財源」を挙げた。国の補助金・委託費(7.4%)と都道府県の補助金・委託費(3.7%)を足すと、公的な資金が最大の収入源という団体は9割近くになる。

一般財源が最大の団体は8割近く
自治体に事務局がある地域SCの最大の収入源(2025年度・108団体)
地域スポーツコミッションの最大の収入源(団体の割合) 自治体に事務局がある地域スポーツコミッション108団体のうち、最大の収入源が自治体の一般財源という団体は77.8%。国・都道府県の補助金等は11.1%、会費・協賛金・事業収入は合わせて4.6%、その他6.5%。事業収入が最大の団体は0.9%。 自治体の一般財源 77.8% 国・都道府県の補助金等 11.1% 会費・協賛金・事業収入 4.6% その他 6.5%
(注:団体数の割合。予算に占める金額の割合ではない)
出典:日本スポーツツーリズム推進機構「地域スポーツコミッション基礎調査2025報告書」をもとに編集部作成
この図表のデータを見る
最も大きな収入源団体の割合(%)
事務局がある地方公共団体の一般財源77.8
国からの補助金・委託費7.4
都道府県からの補助金・委託費3.7
会員(企業・団体・個人等)からの会費2.8
事業収入0.9
民間企業等からの協賛金0.9
その他6.5

日本スポーツツーリズム推進機構「地域スポーツコミッション基礎調査2025報告書」(スポーツ庁サイト掲載)p16(地方公共団体内に事務局のある地域SC・n=108)。図の「国・都道府県の補助金等」は国と都道府県の合計、「会費・協賛金・事業収入」は3項目の合計で、編集部が合算した。

同じ108団体のうち、事業収入が最大の収入源という団体は0.9%だった。会費(2.8%)や民間企業などからの協賛金(0.9%)を合わせても4.6%だ。なお、この設問は最大の収入源を聞いたもので、予算に占める割合までは分からない。

少人数で運営する団体も多い。自治体に事務局があるSCでは、人員が「2〜5人未満」の団体が38.1%で最も多く、1人で回す団体も6.8%ある。

3つの事例に見る稼ぎ方の違い

では、人を呼ぶことから地域で稼ぐことへの分かれ目はどこにあるのか。性格の違う3つの事例で確かめる。1つめは観戦の消費の大きさ、2つめは誘致型の到達点、3つめは自前の収入で回すSCの形を示す。

RWC訪日客は平均16泊

「みる」旅の消費の大きさを示したのが、2019年に日本で開かれたラグビーワールドカップだ。大会組織委員会の依頼でEY Japanがまとめた分析によると、経済波及効果は6,464億円で、ラグビーW杯として過去最大だった。うち訪日客の消費による波及効果が3,482億円を占める。経済波及効果は、直接の消費額に関連産業への波及を加えた推計値だ。

訪日観戦客は約24.2万人で、欧州(約13.1万人)とオセアニア(約5.4万人)が中心だった。1人当たりの消費額は68万6,117円で、2018年の観光・レジャー目的の訪日客の平均(14万7,907円)の4.6倍にあたる。

差を生んだのは、滞在の長さと1泊あたりの支出の高さだ。訪日観戦客の平均滞在は16泊で、比較対象の平均6泊を大きく上回った。1人1泊あたりの支出も4万2,644円と、平均の2万5,056円より高い。

レポートは、接触の激しい競技のため試合の間隔が長いことを挙げる。1人あたりの観戦試合数が多い欧州・オセアニアの客が訪日観戦客の約76%を占めたことから、滞在が長くなったと考えられるとしている。宿泊数の約25%は開催都市以外だった。

訪日観戦客の約60%は初めての訪日で、75%が「必ず来たい」と再訪の意向を示した(2018年の観光・レジャー目的の訪日客は57%)。

RWC2019では、観戦のための長い滞在が、開催都市の外にまで消費を広げた。ただし、これは世界大会という特別な条件のもとでの数字だ。ふだんのリーグ戦の観戦客にそのまま当てはめることはできない。

あわせて読む 世界大会の誘致が開催地に何を残すかは、北米開催のサッカーW杯を例に別の記事で扱っている。

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宮崎は観客が効果を押し上げた

誘致型の代表例として、スポーツキャンプ・合宿の受け入れを長く続けてきた宮崎県を見る。県の集計では、2025年度に県外から受け入れたスポーツキャンプ・合宿は1,135団体だった。参加者は3万2,036人、延べ参加人数は20万2,110人にのぼる。延べ人数は前年度より3.04%減ったものの、過去2番目の多さだ。

ただし団体数(15.49%減)と参加人数(11.81%減)は、いずれも前年度を下回った。県は、5月の大型連休と12月の冬休みに来る学生チームが減ったことを理由に挙げる。2025年度は、来てくれる学生チームの事情が実績を左右した。

同じ2025年度のうち、2026年1〜3月の春季キャンプでは別の動きが出た。延べ参加人数は10万1,962人と5.21%減ったが、観客数は88万6,755人と34.67%増えた。春季キャンプの経済効果は126億2,700万円で、前年より27.12%増えている。

県は観客が増えた理由に、侍ジャパン宮崎キャンプ2026と福岡ソフトバンクホークスの歓迎パレードを挙げる。経済効果の伸びも、侍ジャパンのキャンプによる観客増で説明している。2月14〜24日のこのキャンプだけで、観客は20万人(NPBエンタープライズ発表)、経済効果は24億500万円にのぼった。

県の経済効果は、参加者と観客の直接消費から県外に流れる分を除いた額と、関連産業への波及効果を合わせたものだ。2026年春季の宮崎では、キャンプ参加者の延べ人数が減っても、観客が増えて経済効果が伸びた。侍ジャパンのキャンプという特別な年だった点には注意が要る。

さいたまは協賛金を集める

大会ごとに民間の協賛を集めている例として、さいたまスポーツコミッションを見る。さいたま市が出資する一般社団法人で、2018年12月に設立された。主催事業の柱は、自転車レースの「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」と、ウオーキング大会の「さいたマーチ」だ。

さいたま市の外郭団体の取組結果によると、令和6年度のクリテリウムは第10回の記念大会だった。大会組織委員会との共同主催で、同コミッションは大会事務局として2億4,097万円の協賛金を集めた。前年度の2億2,590万5,000円を上回る。団体自身が、協賛金は「事業予算の多くの部分を占める」と説明している。

賛助会員は36社ある。ただし行政から離れたわけではない。団体が直接雇う職員を2人採用し、市職員からの業務の移行を進める一方、資料には「引き続き、行政による人的支援を受けつつ」と記されている。

同コミッションは、協賛金や参加者収入、賛助会員の拡大を自主財源の確保の手段に位置づけている。ただし大会の協賛金は、その大会の事業費に充てるお金でもある。団体全体の収支と分けて見る必要がある。

伸びしろを阻む人・金・データの壁

需要がありながら、担い手の側には壁がある。第4期スポーツ基本計画(中間報告)は、SCについて「財政面や人材面のリソースの制約等から、あまり取組が進んでいないコミッションも存在する」と書く。

とりまとめも、SCの課題を「知見やノウハウを有する人材が不足していることや、組織の経営基盤が脆弱であること」とする。基礎調査でも、自治体に事務局を置くSCには、予算や人員の小さい団体が少なくない(前述)。

データの壁もある。とりまとめは「スポーツ旅行者のデータは現状十分把握できていない課題がある」と認めている。国の目標にある「スポーツ目的の訪日外国人旅行者数」も、スポーツを主な目的に来た人の数ではない。

同会議の事務局資料によれば、この人数は訪日客数に、滞在中にスポーツをした人や観戦した人の割合を掛けて出す推計だ。国の指標そのものも動いている。第4期計画(中間報告)は、消費額の目標を訪日客の消費に絞った「訪日外国人のスポーツツーリズム関連消費額」に切り替えた。

消費をどれだけ生んだかを確かめるためのデータは、まだ十分にそろっていない。とりまとめは、スポーツツーリズムを広げる際には、地域住民のスポーツの環境やオーバーツーリズムなどの課題との両立にも留意が要るとしている。

第4期計画は観戦軸とSCの基盤強化へ

国の計画も、観戦の位置づけを強めている。スポーツ審議会は2026年7月27日、第4期スポーツ基本計画の中間報告を公表した。スポーツツーリズムの目標は、スポーツ目的の訪日外国人旅行者数340万人と、訪日外国人のスポーツツーリズム関連消費額800億円だ。

重点施策に掲げたのが「一体型スポーツツーリズム」だ。これまでの重点テーマだった武道とアウトドアに加え、スタジアムやアリーナでのプロスポーツなどの観戦を軸に、観光・食・文化体験を組み合わせる。訪日客には長期滞在や広域の周遊を、国内の旅行者には滞在の延伸や再訪を促すとしている。

旅行会社と連携した商品づくりや、販売の導線の整備も盛り込んだ。国の重点は、「する」に加えて、「みる」を軸にした滞在と消費へ広がり始めた。

SCについては、自走できる(継続して活動できる)環境や体制を整えるとし、中長期的な計画・戦略を持つSCの割合を60%にする目標を置いた。法人化などで、取り組みと人材・財源の確保の好循環をつくることも書き込んでいる。

SCの現状と第4期計画の重点
基礎調査2025(2025年度)と第4期計画(中間報告)の記述
現状(2025年度の調査)
  • 最多の事業は合宿・キャンプの誘致(64.7%)
  • DMO・観光事業者との連携を事業に挙げたのは20.2%
  • 事務局が自治体の団体の8割近くは一般財源が柱
→
第4期計画が加える重点
  • 観戦を軸に観光・食・文化を組み合わせる
  • 訪日客は長期滞在・広域周遊、国内客は滞在延伸・再訪
  • 中長期計画を持つSCを60%に
出典:日本スポーツツーリズム推進機構「地域スポーツコミッション基礎調査2025報告書」、スポーツ庁「第4期スポーツ基本計画(中間報告)」をもとに編集部作成

観光の側の計画も同じ方向を向く。観光立国推進基本計画は、スポーツホスピタリティによって観戦の機会を高付加価値化することや、SCの質の向上を掲げた。2026年のアジア競技大会や、2027年のワールドマスターズゲームズ関西への支援も明記している。

なお、第4期計画はまだ中間報告の段階で、最終決定までに目標の値や施策が変わる可能性がある。

観光ビジネスの視点

第4期計画はSCの自走を掲げる。だが自治体に事務局を置くSCでは、予算の中央値が600万円で、事業収入を最大の財源とする団体は0.9%だ。この体制で、観戦客の宿泊や食事、周遊までSCが自ら売るのは現実的ではない。

問われるのはSC自身の売上ではなく、大会やキャンプの日程と観戦の機会を、誰が宿泊・交通とセットで売るかという地域の役割分担だ。SCが自ら販売するのか、旅行会社や宿に日程とチケットの情報を早く渡すのか。地域ごとにそれを決めておけば、第4期計画が掲げる旅行会社との商品づくりも動きやすくなる。

よくある質問

スポーツツーリズムにはどんな種類があるか。

本記事では、わかりやすく「する」と「みる」の2つに分けて整理した。「する」は大会への参加やスキー、ゴルフ、合宿など自分でスポーツをする旅で、「みる」はプロスポーツの観戦やスタジアムツアーなど試合を見に行く旅だ。国の観光立国推進基本計画は、自然や文化芸術などの地域資源とスポーツを掛け合わせた観光も含めて位置づけている。

地域スポーツコミッションとは何か。

自治体、スポーツ団体、民間企業が一体となり、スポーツによるまちづくりや地域活性化を進める組織だ。スポーツ庁は、一体の組織、常設の組織、域外からの交流人口の拡大が主要事業の一つ、年間を通じた幅広い活動の4つを要件にしている。2025年度の基礎調査は全国211団体を対象にした。

スポーツツーリズムの市場規模はどれくらいか。

スポーツツーリズムだけの市場規模は、本記事で扱った国の資料には示されていない。参考として、国はスポーツ市場全体を2022年に11.6兆円とし、遅くとも2030年に15兆円とする目標を掲げる。スポーツツーリズムについては、第4期スポーツ基本計画(中間報告)が2つの目標を置く。訪日外国人のスポーツツーリズム関連消費額800億円と、スポーツ目的の訪日外国人旅行者数340万人だ。

観戦する旅行者はなぜ消費が大きいのか。

令和6年版観光白書によると、2023年にスポーツ観戦をした訪日客の1人当たり旅行支出は34.2万円で、訪日客全体の21.3万円を上回る。ラグビーワールドカップ2019では、訪日観戦客の平均滞在が16泊と長く、分析レポートは試合の間隔が長い競技の特性などを理由に挙げている。ただし、観戦した人とそうでない人とでは滞在日数や出身国・地域の構成が違う可能性があり、観戦そのものが支出を生んだとまでは言えない。

出典

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